('、`*川 あまり親切ではない魔女のようです
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ちいさな森がありました
ちいさな森のちいさな家に
一人の魔女が住んでいました
('、`*川「ぼっちってわけじゃないわよ」
('、`*川「……」
('、`*川「ほんとよ」
('、`*川 あまり親切ではない魔女のようです ◆fG1I1UcIeI
彼女は一人で住んでいます
けれどもたまに、人が訪ねて来るのです
悩みを抱えた人達です
とても繊細なその人達は、自らこう望むのです
( ^ω^)「魔女さん魔女さん、どうか僕を殺してくれお」
('、`*川「いやよ面倒くさい」
今日は森から離れた町にあるお屋敷から人が来ていました
( ^ω^)「魔女さん、魔女さん」
('、`*川「はいはい帰って帰って」
彼女は面倒が大嫌いでした
けれどもやって来ていた少年は食い下がります
( ^ω^)「聞いてください魔女さん、僕はもう役たたずになってしまいましたお」
( ^ω^)「足を壊してしまいました。これではお嬢様を運べない」
( ^ω^)「馬車や車ではダメなのですお、僕がお嬢様を運ばなければ」
('、`*川「あなたが運転すればいいでしょう」
( ^ω^)「いけませんいけません、僕がお嬢様を運ばなければ」
('、`*川「ああ、いつもお嬢様をあなたは背中にのせていましたね」
( ^ω^)「そうですお、お嬢様は少しおかしいんですお」
('、`*川「そうはいってもあなたの主人でしょう」
( ^ω^)「そうですお。だから僕は死なないといけない」
( ^ω^)「お嬢様のお役にたてないのですから」
そう話す少年はどこか悲しい目をしていました
少年の主人であるお嬢様
彼女は少しばかり頭がおかしいとの評判でした
その評判は森の木々すら越えて、
魔女の下まで届いていたのです
( ^ω^)「ああ、だけど、ですけれど」
( ^ω^)「お嬢様は僕の大切な主人なんですお」
( ^ω^)「僕が」
( ^ω^)「ちゃんと仕えられないなら」
('、`*川「死なないといけないと」
ジーザス。狂ってやがる
そんな風に彼女は思いました
('、`*川「まぁまぁ落ち着いて」
( ^ω^)「お嬢様に申し訳ないですお」
('、`*川「どう頼まれようと面倒は嫌いなのよ」
お嬢様ごめんなさい、ごめんなさいと謝り続ける少年を彼女は追い出しました
('、`*川「ここから真っ直ぐ進みなさい、来た時とは違う道でも帰れるから」
そういってバタン、と扉を閉めました
('、`*川「ああ面倒くさい」
彼女は身支度を整え始めました
ξ ゚听)ξ「……」
お嬢様は窓から外を見ていました
少年を想っているのです
彼が足を壊してしまったことを彼女は知っていました
ξ ゚听)ξ「ああ、帰りはまだかしら」
ξ ゚听)ξ「思い詰めてなけれはいいけれど」
お嬢様は少しおかしい娘でありました
それでも優しさを持った娘でもありました
ξ ゚听)ξ「足が壊れたのなら次は……」
少し考えます。椅子にしようか
机なんかはどうかしら
仕事を、彼に仕事をあげなければ
そうしなければ
そうしなければ彼とはいられない
仕事がなければ一緒には
('、`*川「お嬢様お嬢様」
ふと気がつくとそこには魔女が立っていました
このお屋敷はとても広いのですが住んでいるのはお嬢様と少年だけ
お嬢様はきょとんとした顔でした
ξ ゚听)ξ「まぁまぁあなたはどちら様ですか?」
そんな暇はないのに、少年に仕事を与えないと
私は一人になってしまう
広いお屋敷に一人になってしまう
('、`*川「私の家に少年がやってきましたよ」
ξ ゚听)ξ「まぁまぁ一体どうしてかしら」
お嬢様は悲しみました
何をするかは知り得ませんが悩んでいたのでしょう、彼は
きっと足が壊れたせいで
ξ ゚听)ξ「私の足になれないことを」
悲しんでいたのでしょう
('、`*川「そうですね」
魔女は何でもない、そんな様子でした
('、`*川「どうでしょうお嬢様、私に彼をくれないですか?」
ξ ゚听)ξ「いやですわ、彼は私の物ですもの」
('、`*川「しかしお嬢様、彼に仕事はございません」
('、`*川「足を壊した彼はお嬢様の足になれないのです」
ξ ゚听)ξ「……」
('、`*川「机や椅子など代わりがあります、別に彼じゃなくてもいいでしょう」
ふるふるとお嬢様は首をふります
目には涙を浮かべていました
ξ ;;)ξ「いやです、いやなのです私は」
ξ ;;)ξ「彼と離れたく無いのです」
('、`*川「……」
('、`*川「そうですか、ですが仕事はないでしょう」
('、`*川「あなたはお嬢様ですから」
ばたん、扉が開く音が聞こえました
( ^ω^)「お嬢様お嬢様どうして彼女がいるのです」
中に入ってきたのは少年でした
「お」「お」などの語尾は消えていました
少年は怒っています
よくも
よくもお嬢様を泣かしたな
そう怒っています
('、`*川「ではどうしましょうか」
ξ ;;)ξ「……」
少年を無視して魔女は話を続けます
魔女はどこか優しい目をしていました
('、`*川「ではこういうのは」
('、`*川「どうでしょう」
('、`*川「お屋敷を出る、とか」
('、`*川「お屋敷にはもう誰も」
('、`*川「いないのですよ?」
('、`*川「お二人以外」
ξ ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「……」
お屋敷は昔沢山の人が住んでいました
執事にメイド、雇い主であった家族
そして
敷地内に孤児二人が家族に知られぬようこっそりと
住んでいました
孤児二人はこっそりと
雨をしのぎ、風をしのぎ、
二人でそこにいました
「ツン、ツン」
「なぁにブーン?」
「僕達も、僕達もこの家の人達のようになれるのかお?」
「……」
ツンと呼ばれた少女はとても利口な子でした
わかっていました、わかっていたのです
この家の人達のようになれないことぐらい
それはささやかな遊び心でした
ほんの気まぐれ
「ブーン、私をお嬢様といいなさい」
「お?」
「その、『お』ってのもだめ!」
「わ、わかりました…」
「いい!いつかこんなお家に住んだ時の予行練習なのよ!」
その予行練習は続きました
春が来て夏が来て
秋が来て冬が来て
それを何週しても続きました
そうしている内にその家からは人々がいなくなりました
忘れ去られてしまいました
二人だけが遊びを続けていたのです
いつしか遊びだったのかすら、わからなくなってしまっても
( ^ω^)「お嬢様お嬢様私が貴方を運びましょう」
ξ ゚听)ξ「ええ、頼むわねブーン」
そうしてまた季節は巡って行きました
( ^ω^)「……」
ξ ゚听)ξ「……」
('、`*川「どうですか?まだこの遊びを続けますか?」
('、`*川「お嬢様には仕えなくてはいけません」
('、`*川「遊びを続けるのなら」
('、`*川「仕えなくてはいけません」
ああ、けれど、だけれど
足無き彼に仕事はもう……
ああ、けれど、だけれど
別の生き方なんかわからない
('、`*川「もしも遊びをやめるなら」
('、`*川「もしもここから行くのなら」
('、`*川「貴方達はどうなるのでしょうね」
( ^ω^)「……」
ξ ゚听)ξ「……」
意地の悪い事をいいます
どうせ、どうせその先には
ξ ゚听)ξ「何もないのに……」
そう、お嬢様が言った時でした
( ^ω^)「ツン、ツン」
ξ ゚听)ξ「……ブーン」
少年はそう言いました
今までとは違う少年がいました
( ^ω^)「貴方は意地の悪い魔女ですお」
('、`*川「そうですねぇ」
( ^ω^)「きっと僕はこれから苦しい事や悲しい事に悩まされるのですお」
('、`*川「ですねぇ」
( ^ω^)「意地の悪い魔女ですお」
そういってお嬢様、ツンの手を少年は取りました
( ^ω^)「ツン、君はきっと守ってくれていたんだお」
ξ ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「あの時、僕がおかしな質問をしたときから」
ξ ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「だから」
( ^ω^)「今度は僕が君を守るお」
( ^ω^)「君に仕えるのではなく」
( ^ω^)「ブーンとして」
二人は抱きしめ合いました
ぽろぽろと、ぽろぽろと
二人は涙を流しました
('、`*川「……」
それを横目で見ながら魔女は
('ー`*川 「……」
にっこりと微笑みました
二人はお屋敷を出る事にしました
準備に時間などはかかりません
僅かな荷物を鞄に入れて、二人は旅に出るのです
( ^ω^)「じゃあ」
ξ ゚听)ξ「さようなら」
('、`*川「さようなら」
二人は魔女に背を向けて歩き始めました
ぴたり、急に少年は止まりました
('、`*川「?」
( ^ω^)「ええと、その」
( ^ω^)「ありがとうございましたお」
そういって再び二人は歩いて行きました
('、`*川「……」
('、`*川「いやぁ感謝されるとは」
('、`*川「……」
小さく魔法を唱えます
普段はこんなことはしないのですが
彼らが幸せになるように
二人の未来に祝福を
('、`*川「いやぁらしくないわね…」
('、`*川「帰るかぁ」
帰り道のことです
('、`*川「あら小鳥」
('、`*川「怪我しちゃってる」
見ると小鳥は羽に深い傷がありました
('、`*川「ほれほれ」
軽く手をかざしてなにやら唱えます
すぐさま「ちぃちぃ」と元気そうな声が聞こえてきました
('、`*川「こうした方が楽だったかもなぁ」
そう、一人ぼやきました
ちいさな森がありました
ちいさな森のちいさな家に
一人の魔女が住んでいました
その魔女はとても面倒くさがりで
('、`*川「あー」
('、`*川「眠い」
とても優しい魔女でした
おしまい
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