( ^ω^) は最高速度は215キロのようです (http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1185200803/)
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:26:43.05 ID:OSZdtwl60
- 以外に長くなったからサブタイつける。
前編 青空万歳 一話
中篇 夕暮れ万歳 二話
中篇2 曇り空万歳 四話
ドックン番外編 夕立万歳 3話
五話 太陽万歳 投下
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:27:25.10 ID:5ZlOJgUM0
- / .\
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| | 逝ってよし。 | |
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- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:29:04.78 ID:OSZdtwl60
-
甲高い音がする2ストロークのエンジンを目一杯回して、さらに自分の足で漕ぐ。
モペッドならではの走行方法。二輪駆動の自転車。漕ぐ漕ぐ漕ぐ。ひたすら漕ぐ。
(♯^ω^)「ぬぉおおおおおおお。」
流れていく景色の中、遠くにある大きな時計台が目に入った。
VIPカップ開催まで後20分。まだ間に合う時間だ。だから漕ぐ。
さっき転倒したときに腕を擦ったが気にしない。とにかく漕ぐ。
VIPカップの会場から青空に白い煙と、爆発音がなった。景気付けの花火。
もうすぐ始まるという合図に、ブーンの心は焦り、ペダルを漕ぐ足にさらに力を入れる。
レンガ造りの家に声が吸収されまいと、ワケのわからない対抗心を持って、叫んだ。
(♯^ω^)「イッパァーツ。」
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:30:14.43 ID:n+Rbi6eL0
- ほあげ
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:31:06.44 ID:OSZdtwl60
-
(*゚∀゚)「うぁわ。かっこいいー。」
/ ,' 3「うひょひょひょ。珍しい形じゃの。」
(*゚∀゚)「つー、この赤いの応援する。だって一番かっこいいんだもん。」
すでにブーン達の機体を含め、出場する10機が桟橋を挟んで2列5行に集められていた。
カラフルなものから、シンプルなもの。社名を前面に押し出すもの。
そのなかで、ひときわ目立つ機体があった。それには801のマークが小さく描かれている。
_
( ゚∀゚)「あー、ついに出ちゃったか。801の新型機が。」
('A`)「あの一番前の赤いやつですよね。あれ速いんですか?なんか、回りの機体から浮いてるような気がするんですけど。」
_
( ゚∀゚)「ばっか、目ん玉ひん剥いてよく見てみろあの流れるようなフォルム。
今回はあれが優勝掻っ攫っていくな多分。」
ドクオはジョルジュの遠慮のない言葉に幾分かむっとした。
プロペラが機体の後部についている珍しいタイプの機体だが確かに綺麗なフォルムをしている。
造詣に関しては認めたが、その性能については懐疑的だった。というよりわからなかった。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:31:20.88 ID:achakuc/0
- おせーよ!
人を待たせんな!wktk!!!!!
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:33:18.92 ID:OSZdtwl60
-
('A`)「でも、新しいからって言っても失敗作だったら意味ないですよね。」
皮肉を込めたドクオの言葉に、赤ん坊を見るように優しい目で見るジョルジュ。
生意気なドクオの発言に、頼もしくも若者らしい意地をみたからだ。
川 ゚ -゚)「ふん言ってくれるな。そういうお前さんの機体はどれだ?」
(;'A`)「むおっ」
ドクオが口を尖らせ機体を見ていたら、急に肩を後ろから掴まれ前後に揺すられる。
振り向くと、長身の女性が真後ろに立っていた。
_
( ゚∀゚)「おお、クーじゃないか。何年ぶりだ?」
川 ゚ -゚)「よお、アレ以来じゃないか。あの後私はすぐにこの地から離れたからな。」
_
( ゚∀゚)「そうか、懐かしいな。紹介するぜ、こいつはドクオ。
今回VIPカップに出ることになったドクオだ。ホントはパイロットが出れなくなって換わりに出るんだけどな。」
('A`)「どうも、ドクオです。」
川 ゚ -゚)「君が出るのか?まあ今回は残念だったな。今年は我が801が優勝するからな。」
('A`)「どうっすかね、始まらなきゃわかんないっすよ。」
_
( ゚∀゚)「そんなつっかかんなよ。ところであの機体どれくらい出るんだ?」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:35:46.78 ID:OSZdtwl60
-
ジョルジュが機体の最高速度を尋ねると、クーは待ってましたといわんばかり笑い顔をした。
その顔はすぐさま消え去ったが、それの余韻の残る表情で口を開いた。
川 ゚ ー゚)「801の最高速度は286キロだ。」
_
( ゚∀゚)「マジかよ?そんなに出るのか?エンジンなに使ってんだよ?何気筒だ?」
川 ゚ ー゚)「どれも最高のものだ。そろそろ私は行こう。
ああそれとその鳥打帽似合ってないぞ。脱いだ方がいい。」
_
(;゚∀゚)「うるせーな、気に入ってんだよ。」
クーは手をひらひらと宙に振り自分の居場所へと歩いていった。
('A`)「ジョルジュさん、あの人と知り合いなんですか?」
_
( ゚∀゚)「ああちょっと古い知り合いでな。ここで会えるとは思わなかったぜ。
しかし286キロとは以外だな。直線だとぶっちぎりじゃないか。」
ノパ听)「ふん、あんなのたいしたことないに決まってる。どうせ法螺に決まってるさ。」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:36:32.10 ID:tH/o45VsO
- wktk支援
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:37:59.67 ID:OSZdtwl60
-
川 ゚ -゚)「お前が泣くとは想像もつかんな。」
_
(;゚∀゚)「お前、行ったんじゃないのか?」
川 ゚ -゚)「なにヒートが見えたからな。挨拶しておこうと思って。
それと今、そこの可愛らしい少女から顔色の悪い君に渡し物を頼まれたんだ。ほい。」
('A`)「え、ああどうも。」
クーから紙袋を受け取った。
関係者以外立ち入り禁止の柵がある方を見ると、しぃが手を振っていた。
袋を開けると、手作りの金属製のお守りが入っていた。裏に簡単な応援のメッセージが書いてある。
川 ゚ -゚)「久しぶりだな。ヒートもジョルジュと同じぐらい振りか?」
ノパ听)「私はあんたと喋ることなんてないね。さっさと自分のとこ行けばいいさ。」
_
( ゚∀゚)「冷たいな、もう昔のことじゃないか。」
ノパ听)「うるさい!!」
ヒートの声で一瞬四人が沈黙した。
会話に入れなかったドクオがその隙を縫って割り込む。
('A`)「なにかあったんですか?」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:41:03.97 ID:OSZdtwl60
-
('A`)「なにかあったんですか?」
川 ゚ -゚)「ああ、昔な…何年前だっけ?」
_
( ゚∀゚)「もう数えるのやめちまったからな。忘れちまったよ。」
ノパ听)「お前ら喧しい!!その話をするな!!」
川 ゚ -゚)「なんでそんなに嫌がるんだ?」
_
( ゚∀゚)「ちょっとワケありでね。クーも黙っててくれるか。」
川 ゚ -゚)「まあいいだろう。もう行こう。じゃあなまた後で。
ドクオといったなそろそろ機体に乗ったほうがいいんじゃないか?」
('A`)「そうですね、じゃあジョルジュさんヒートさん。カッコいいとこ二人に見せますよ。」
_
( ゚∀゚)「おう、期待してるぜ。」
ノパ听)「みっともない真似さらすんじゃないぞ!!」
ジョルジュとヒートの言葉を背中に受けて、クーと一緒に乗り場へと歩いていった。
ヒートが見ているため一緒に歩きたくないと思ったドクオだが
クーの言葉に嫌味さを感じさせない人柄に少なからず好感を持った。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:41:06.83 ID:rwqemDp00
- 支援
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:42:09.91 ID:1dEXeMbW0
- こういうのよく書けるよなぁ。と思う
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:43:21.69 ID:5Xu0MJhT0
- 支援
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:43:23.84 ID:8IDRzS9f0
- 支援
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:43:56.59 ID:OSZdtwl60
-
('A`)「あの、昔何かあったんですか?」
川 ゚ -゚)「あの二人を知らないのか?」
('A`)「知ってますよ。」
川 ゚ -゚)「じゃあいいじゃないか。
ところで、お前はあまり飛ぶことに興味はないだろ?」
('A`)「ん、ええ、本当はブーンって奴が乗るはずだったんですけど来れなくなって。
実のところ俺はあんまり飛ぶことに興味はないんですよね。飛ばすほうがいいです。」
川 ゚ -゚)「だろうな。空を見るときあんまり憧れが見えなかったからな。
それよりも、機体を見てるときのほうが真剣な目をしていた。」
('A`)「そうですか?」
川 ゚ -゚)「ああ、それでよく出ようと思ったな。」
('A`)「VIPカップに出るのは夢だったんですけどね。」
緊張のためかドクオは口が軽くなっていた。
それをほぐす為に半年ほど前にジョルジュに
初めて会ったとき言ったことをほとんどそのまま伝える。
すると突然クーがその顔を緩ませ笑い出した。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:44:33.98 ID:tH/o45VsO
- あれ?
何か抜けてないか?
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:44:39.84 ID:rwqemDp00
- 支援
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:46:01.26 ID:OSZdtwl60
-
川 ゚ ー゚)「そうか、そういうことか。いや納得言ったよ。どうりでヒートが私を嫌うわけだ。」
('A`)「?」
川 ゚ ー゚)「優勝は譲らんが頑張ってくれ。いい色だなお前らの飛行艇は。じゃあな。」
ドクオの疑問顔を無視して、自分の機体へと歩いていくクー。
ドクオはしぃから貰ったお守りを握りしめ、自分の、ブーンとの機体に乗り込もうとした。
コックピットに座り、計器類を確認した後、どこで曲がるかをまとめた紙を確認しお守りをかける。
回りの機体を見渡すとそれぞれがエルロンやラダーを動かして最後の確認をしている。
皆緊張しているんだなと思い少し安心するも、来るはずのないブーンがきてくれることを願った。
スタートの時間まで後五分ほど。狭いコックピット内でじっとしていることができず
何度もノートのまとめを見直したり、他の機体を見てみる。
そのとき、ふと気付いた。他のパイロットも自分と同じくどこかうずうずしていると。
だがドクオはスタートがもっと遅くなればいいのにと考えているのに、回りは早くスタートしないかなという顔だった。
それを見て、ああ、やっぱり自分は向いていないんだなと感じる。
せめて、いい順位を取りたいと願うがすでに萎縮してしまった。
あまりやりたくなかった秘策をやるしかないようだ。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:47:18.91 ID:i7QkWH6OO
- 支援
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:47:34.72 ID:1dEXeMbW0
- 普通に面白いw
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:48:25.58 ID:OSZdtwl60
-
「スタートまで後3分です。」
拡声器を使った放送が響く。
もう一度辺りを見渡すと、観客席にしぃの姿が見えた。
目があったのがわかり、笑顔で手を振ってくる。
それに肘だけ少し上げて返した。
「スタートまで後2分です。エンジン始動させてください。」
後2分か、と、もっと先延ばしにしたい気持ちになった。
エンジンをかけベルトをする。
ベルトの締め付け具合が自分を守ってくれるようで頼もしかった。
十機のエンジン音が低く唸る中、甲高いエンジン音が聞こえた。
2ストロークかなと考える。
歓声がエンジン音を越えてやってくる。しかしそれは重圧にしかならなかった。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:49:03.18 ID:UJAVwoXj0
- 支援
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:49:24.83 ID:1dEXeMbW0
- 支援
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:49:41.63 ID:OSZdtwl60
-
(♯^ω^)「イッパァーツ。」
( ^ω^)「ドクオー間に合ったおー!」
急に見たいつもの顔に安堵するドクオ。
なぜここにいるかを考えてすぐにその疑問を口に出す。
('∀`)「よお、来たのか?追試はどうしたよ?諦めちまったのか?」
「スタートまで後1分です。ゼッケン9番の青い機体。パイロット以外はどいてください。」
('∀`)「なんだなんだ?ええおい。間に合ったのかよ?出れるのか?正直緊張しまくってたぜ。」
時間が無いのに、ドクオは緊張が解けてべらべらと喋りだす。
ドクオがベルトを外すと、焦るブーンはそのドクオの体を持ち上げて水の中へ叩き込んだ。
(♯^ω^)「やかましぃ!さっさとどけお!」
誰もいなくなったコックピットに乗り込み、ベルトをする。
計器類を確認する暇もないままスタートを告げる花火が鳴り一気にスロットルを押し上げた。
一気に図太いエンジン音が耳の中で反響する。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:49:51.57 ID:8IDRzS9f0
- 支援
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:52:10.51 ID:i7QkWH6OO
- 支援
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:52:45.85 ID:OSZdtwl60
-
二列に五行で並んだ十機の機体が同じ加速度で走っていき、先頭の二機から順に空へと上がって行く。
観客席が大きく賑わった。
その中でクーの赤い機体が、群れを離れてどんどん加速していく。
(;^ω^)「あの機体速すぎだお。」
来たばかりのブーンはその異形な飛行艇を見て呟いた。
十機全部が空に浮かび、レースが本格的に始まろうとしている。
まずブーンは、いいポジションをとろうとした。
これはカーブの際に大きく影響してくる。
それぞれが躍起になって牽制している中、ブーンはいとも簡単に最高のポジションを獲得した。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:53:08.21 ID:rwqemDp00
- 支援
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:54:54.07 ID:OSZdtwl60
-
ブーンの20メートル先ではカーブに入る前の争奪戦で、8機が入り乱れている。
その中にブーンの機体は入っていけなかった。スピードが違いすぎた。
('A`)「落とすことねぇだろ。」
ドクオは水の中で顔だけ出してブーンが飛んでいくのを見ていた。
そのあとずぶ濡れで桟橋に上がり、ジョルジュたちのもとへ歩いていった。
_
( ゚∀゚)「よお、いい男になっちまったな。こりゃガチホモがほっとかないぜ。」
('A`)「そんなことはどうでもいいですよ。それよりも、何でブーンあんなに遅いんですか?」
_
( ゚∀゚)「ああ、お前ら運がなかったな。多分ありゃ全部がそれぞれの新型エンジンだろ。
何ヶ月か前だったらいい勝負してたんだろうけどな。俺のエンジンはもうすでに旧型だよ。」
ジョルジュの話を聞いてブーンの機体へと目を戻した。
すでに50メートルほど差がつけられていた。直線で。
ドクオはそれを見て、瞬時に結果を悟った。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:55:48.20 ID:rwqemDp00
- 支援
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:57:23.20 ID:OSZdtwl60
-
(♯^ω^)「クソ、もっと回れお!」
スロットルを前回にしてキャブレターに大量の空気を流しても追いつけない。
それどころか、じわじわと確実に離されていく。
前方の8機が翼を傾けて、コーナーを曲がっていく。ほとんど速度は落としていない。
それに10秒ほど遅れてブーンの機体が曲がっていった。同じく速度を落としはしなかった。
ここからは会場の観客からは見えなくなる。まず第一のチェックポイント。
カーブを曲がり終えて、また離されていることに気付く。
エンジンが高い悲鳴を上げているのがわかったが、スロットルは絞れなかった。
今でさえ離されているのに、それを助長することは出来ない。
会場の観客に向けた放送が流れる。各チェックポイントからの情報だ。
( ・∀・)「えー第一チェックポイントより入りました。
トップはゼッケン2番の801社。搭乗者はクーです。
二位以下を大きく離しすでに独走態勢でいる模様です。」
観客がどよめいた。通年ならここで熱いデッドヒートが約束されていたからだ。
隣の者同士で話し始める人も少なからずいた。放送がもう一度入る。
( ・∀・)「えー、二位以下は8機の飛行艇が入り乱れていて正確な順位は不明。
その8機から10秒遅れてゼッケン9番のジョルジュ長岡工場。登場者ブーンです。
このブーン氏は友人らと飛行艇をつくった今大会では唯一の出場者です。」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:57:27.72 ID:1dEXeMbW0
- 久々の良話
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:58:03.45 ID:rwqemDp00
- 支援
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/23(月) 23:58:28.29 ID:8IDRzS9f0
- 支援
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:00:53.39 ID:Ad8kP4br0
-
なんとか、くらいつこうと最高の軌跡を残して飛んでいく。
しかし、それでも牽制しあいながら飛んでいる前の8機には追いつけない。
(♯^ω^)「なんで今年はこんなにレベルが高いんだお!!」
第二チェックポイントに入る手前。今大会の肝ともいえるカーブの連続地帯に入った。
ここからは川幅が狭まり、横に3機並んで通れるか通れないかの幅になる。
ポジション取りに勝った飛行艇が前につき、後ろの飛行艇が狭いながらもそれを抜こうと上下に左右に飛び、機を狙う。
ブーン機はそれから20秒遅れていた。
高速の連続コーナー。
操縦桿を右にきり、ラダーを動かす。
スロットルを絞ってエンジンブレーキだけで減速する。
旋回していると景色の流れが速いように見えた。
似たような行動を何回も繰り返しようやく連速コーナーから抜け出した。
差はさらに広がっている。エンジンの回転数を限界まで上げる。
第二チェックポイントを通り越した。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:02:11.07 ID:CX5dLZr20
- wktk
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:02:20.76 ID:YQAJaYny0
- 支援
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:03:16.99 ID:Ad8kP4br0
-
( ・∀・)「第2チェックポイントから情報が入りました。
一位は以前ゼッケン2番の801社クー氏。それからかなり遅れて8機が団子状態。
こちらは先ほどと同様に正確な順位がわかっていません。かなり接戦のようです。
さらに遅れてゼッケン9番のブーン氏。差はどんどん広がっています。
去年ならなかなかのタイムですが、どうやら各社のフラッグシップモデルにかなり苦戦している模様です。」
観客席にいるミルナが放送に聞き入っていると、密名を授けた三人が寄ってきた。
(=゚ω゚)ノ「ぃょぅ、集めてきたょぉ。」
( ^Д^)「俺も集合かけてきたぜ。」
( ><)「僕もなんです。」
三人はミルナの命により、観客席にいるクラスメイトを探して一箇所に連れて行った。
その報告として告げたのだが、ミルナは浮かない顔をしている。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:06:08.22 ID:wikH96FA0
- しーえーん
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:07:05.02 ID:Ad8kP4br0
-
( ^Д^)「おいどうしたんだよミルナ先生。暗い顔して。ほとんど全員とツンも集めたぜ。」
( ゚д゚ )「ん、お前らか。計画は中止かも知れんな。」
( ><)「どうしてなんです?首尾は上々なんです。」
( ゚д゚ )「お前ら放送聴いてないか?ブーンは今10位だ。しかも大分離されてな。
このままだとゴールする頃にはかなり差がついているだろう。
そうなると、俺たちの計画はブーンにとって残酷な仕打ちになってしまう。」
(=゚ω゚)ノ「せっかく集めたのにそれはないょぉ。」
思いもよらない事態に、四人はこれからのブーンの活躍によって計画が成功することを願った。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:07:46.74 ID:ppnoI/PqO
- 支援
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:08:09.89 ID:YQAJaYny0
- 支援
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:08:13.07 ID:0xq2TAHe0
- これはwtkr
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:08:51.42 ID:Ad8kP4br0
-
(♯^ω^)「くそ!!」
ブーンの目にはもう参加者の飛行艇は映っていない。
第3チェックポイントの前にある、Rの大きなひょうたん型の高速コーナーで離されてしまった。
エンジンはほとんどいつもフルスロットルだ。
これ以上離されたくはないが、油温を見て少し絞る。
景色が粒になって後ろに流れていくかのように見える。
目の処理速度からこぼれた残像が、ブーンの脳に今の速度を知らせる。
第3チェックポイントが見えた。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:08:59.62 ID:gYPk953r0
- 支援
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:10:06.44 ID:Ad8kP4br0
-
( ・∀・)「第3チェックポイントより入りました。
ゼッケン2番、801社のクー氏が二位以下をさらに離して独走。
2位以下は依然として8機による団子状態。
どうやら会場内を飛ぶ直線でかなりの見もののようです。」
ノパ听)「ブーンはなにやってんだ。」
( ・∀・)「第3チェックポイントよりさらに入りました。
ゼッケン9番ジョルジュ長岡工場のブーン氏が今通過した模様。
どうやら個人出場のブーン氏はかなり苦戦しているようです。」
_
( ゚∀゚)「あいたー。こりゃもう駄目だな。ここまで開いちゃな。」
ジョルジュは率直な感想を言った。
それを聞いたドクオだが、その通りだと思った。
差が開きすぎている。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:10:57.06 ID:0xq2TAHe0
- スレタイが気になる
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:11:33.73 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:12:33.55 ID:Ad8kP4br0
- ( ・∀・)「第4チェックポイントより入りました。
ゼッケン9番クー氏がもうすぐ会場の直線に入ります。
おっともう見えました。真っ赤な機体。後部プロペラ。
間違いありません。クー氏です。」
多くの観客が集っている会場に異形の飛行艇が見えた。
空気の隙間を縫うフォルム。スカイブルーに混じって映える赤。
まだ小さな点だが、観客はその姿に声を上げた。
( ・∀・)「速い速い速い。
機体情報によりますと最高速度はなんと286キロを記録しています。
他の機体に比べ圧倒的な速さを誇ります。さあ来ました。」
放送席からスピーカーを通して興奮が伝わってくる。
観客の目から見て、右から左へと飛んでいく。
今まで見たどんな飛行艇より速いその機体は歓声の的となり一瞬にして過ぎ去っていく。
何百人もの人間が一斉に首を振る様は機体への注目を示していた。
赤い機体は観客の前を通り過ぎるときに、くるっとロールをしてその旋回性の良さをアピールした。
_
( ゚∀゚)「かぁー、速えなあ。さすがに後部プロペラにしてねえな。」
( ・∀・)「おっと、ここで団子状態になっている8機が会場内を突っ切ります。
この8機の最高速度は横並びで250キロ程度です。
さあ、どんな激戦を私達の前で繰り広げてくれるのでしょうか。」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:13:11.30 ID:VE0Lv1aJO
- >>48
そういえばスレタイ間違えてるよな。
支援
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:13:55.70 ID:0xq2TAHe0
- >>51
まぁいいんじゃね?俺は215が気になる
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:16:23.62 ID:gYPk953r0
- 時速215km支援
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:17:40.32 ID:0xq2TAHe0
- 支援
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:17:41.57 ID:Ad8kP4br0
-
クーの機体が観客から見えなくなると、ほぼ同時ぐらいに8個の点が見えた。
まだ遠くだが、8機全部が上へ下への空中戦みたいに飛んでいる。
それを確認した観客は、クーのときの静かな期待とは違い、熱い期待を胸にした。
( ・∀・)「これでは機体とゼッケンを呼ぶことは出来ません。
二位だったものが八位になったり、前でヒートしている二機の隙を狙って抜いたりと
これでは実況のしようがありません。しかし実況などなくても皆さんは楽しめるでしょう。
それだけ熱いデッドヒートを、それも8機が繰り広げてくれているのです。」
混戦の8機による重厚なメロディーと、それを支える低いエンジン音が響き渡る。
一機が上がろうとすると、それを阻止するために軌道を防ぐ飛行艇。
右から抜かそうとフェイントをかけて左にロールする飛行艇。
だがその空いた空間から違う飛行艇が獲物を掻っ攫っていく。
さらに一機が周りの飛行艇から距離をとろうとロールを繰り返して領域を確保しようとする。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:19:11.05 ID:0xq2TAHe0
- 支援
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:19:38.55 ID:Ad8kP4br0
-
フラッグシップモデルに乗る熟練のパイロット達はその腕を遺憾なく発揮し続けた。
観客は自分の贔屓の機体を応援するもの。華麗に抜く機体に賞賛の声をかけるもの。
それらが渾然となり会場内は熱気と声援と興奮に包まれた。
_
( ゚∀゚)「くっはぁー見ろよおい。見たか今の?」
ジョルジュもその興奮に包まれて誰ともなしに口を開く。
ドクオは通り過ぎていく八機をみて落ち込み、空から目を離した。
人を魅了する、ここまでの人間とここまでの機体が出る大会なんだと感じた。
そして、ここまでの人間と機体をも軽く凌駕するものも出ている。
('A`)「俺らが出ていい大会じゃなかったんですね。」
ドクオが呟いた。
その声は会場の歓声に消されて、ドクオの耳にすら届かなかった。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:21:24.56 ID:0xq2TAHe0
- wktk
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:21:58.98 ID:Ad8kP4br0
-
ダントツの最下位。
しかもたった一人っきりの飛行艇の座席。
会場からの視線が怖かった。
いくらスロットルを押しても針が指す最高速度は……215キロ。
直線に差し掛かる前のカーブで、ブーンは速度計を何度も凝視した。
(♯ ω )「なんで……」
ブーンにとって唯一の救いは機体の色がブルーということ。
誰にも気付かれずに通り過ぎたかった。
しかしそんなわけにはいかない。
ブーンは目を閉じて下を向きながら長い直線を飛んでいった。
( ・∀・)「遅れながらもブーン氏が飛んで行きます。
綺麗なブルーカラーに身を包んだ機体。
去年なら白熱したデッドヒートを見せてくれたでしょう。
今年は運がなかったとしか言いようがありません。」
ノパ听)「もっとスロットルを上げんかぁーー!!」
ヒートが叫ぶ。ブーンに届くようにと。
_
( ゚∀゚)「アレで限界のはずだぜ。エンジンが悲鳴あげてる。
あのエンジンであのスピード出せればなかなかのもんだ。な、ドクオ。」
ジョルジュが慰めるかのように声を出す。
ブーンとドクオの機体を弁護し、ドクオを元気付けようとした。
だけれども、それは観客にはわからない。あちこちでおこるため息の音をドクオは聞いていた。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:22:54.21 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:24:01.81 ID:gYPk953r0
- なんか俺もくやしい支援
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:24:49.94 ID:Ad8kP4br0
-
観客からは飛んでいく飛行艇が真横から見える。
先ほどの速度に慣れていたため、ブーンの青い機体の細部まで見えた。
( ^Д^)「なんだよ、これじゃあまりにも酷すぎてプギャーできねぇジャンかよ。」
( ><)「ブーン君もっと頑張るんです。」
(=゚ω゚)ノ「おそいょぉ。かっこわるいょぉ。」
全機体が二週目にはいった。
ほとんど一週目と変わらなかった。
クーの独走も。8機による混戦も。ブーンの最下位も。
かわったのは、クーがさらに差を広げ、ブーンが遅れを広げるということだけ。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:25:57.25 ID:0xq2TAHe0
- 支援
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:26:28.65 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:26:38.54 ID:Ad8kP4br0
-
ブーンは何度も座席の上でクソと呟いた。
せめて一機でも墜落してくれればと思った。
そうすれば最下位の汚名はきせられない。
しかし、いくら墜落して脱落したからといってブーンの遅れは決定的だ。
そういったことにさえ、頭が回らないほどになっていた。
せめてドクオの憧れていた青を汚したくない。
自分をここに連れてきてくれたドクオに最高のブルーを見せてやりたい。
それだけだった。
少しの直線の合間に空を見上げる。
空は眩しいほどの綺麗なブルースカイだった。
乗っている飛行艇の青がこの世のものとは思えないほど汚く見えた。
二週目の最後の直線。
ブーンは一週目と同じように目を瞑って飛んだ。
観客は一部を除いてもうブーンに興味がなかった。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:28:10.28 ID:0xq2TAHe0
- もう寝るけど明日の楽しみが増えた。支援
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:28:43.29 ID:+KzlUWff0
- 支援
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:30:17.95 ID:Ad8kP4br0
-
( ・∀・)「ブーン氏が二週目を他から圧倒的に離されてきました。
クー氏はすでに三週目の第四チェックポイントを通過しました。
個人出場にしては健闘したと思われます。」
ξ゚听)ξ「なによあの言い方。ブーンだって頑張ってるんだから。」
(*゚ー゚)「そうよ。あんなに速いので出場するなんて反則よ。」
ブーンの機体が飛んでいく。
ほとんどはそれを目で追いはしなかった。
すぐ後に来る、クーのゴールシーンを見るためだった。
少ししてクーの真っ赤な飛行艇が現れた。
後部プロペラの異形さをすでに憧れと受け入れ、会場は祝福の嬌声と興奮の叫びを持って、クーの機体を迎えた。
( ・∀・)「さあ、今大会で最高速度を記録し、他者をまったく寄せ付けずにゴールしようとしています。
あの機体をここで見るのは三度目ですが、何回見ても慣れません。速すぎます。
残像という赤い粒を彗星のごとく尾を引いて、たった今ゴールしました。」
赤い点はスカイブルーと白い雲を切り裂くかのように加速していく。
わかりきった結果を誰もが興奮を抑えて見守った。
流麗なフォルムと突き刺すほどの赤に誰もが魅了されていた。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:31:42.45 ID:Ad8kP4br0
-
そしてクーは最後まで手を抜かずに機体の持てる最高速度でレースの終焉を迎えた。
観客のボルテージが一気に高まる。叫ぶもの褒め称えるもの。
そして隣同士でクーと801社の偉業を興奮して語る者ばかりだ。
( ・∀・)「あれ?クー氏スピードを落としません。
通例ならウイニングフライトは栄光の機体を見せるためゆっくり飛ぶはずです。
どうやら最後の最後までその圧倒的な速さを我々に見せてくれるようです。
おっと、このままだとブーン氏の機体を抜いてしまうかもしれません。」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:31:48.18 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:34:06.35 ID:Ad8kP4br0
-
川 ゚ -゚)「どうせだ、801の技術力をもっと焼き付けてやろう。」
クーは801の高性能さをアピールするために速度を落とさなかった。
青い機体にはには悪いと思ったが、周回遅れにさせるつもりだった。
直線を終えて、始めに来るカーブを高速で曲がりブーンを追いかけていく。
三回目の第一チェックポイントを通り過ぎたブーンはもうスロットルを全開にしてはいなかった。
前半からの無理がたたり、油温が大分前からレッドゾーンに入っていたからだ。
それでもあげれるだけギリギリの速度で飛んでいく。
最後まで手を抜かないことしかブーンにはできなかったからだ。
( ・∀・)「おっと第一チェックポイントより入りました。
ゼッケン9番最下位のブーン氏の後ろにクー氏が追いついたようです。
ブーン氏の機体はどうやら前半で回しすぎたため速度を落としているようです。」
('A`)「くそ、嫌味なことしやがる。」
ノパ听)「フンあいつはそういう奴なのさ。人の心を平気で踏み潰す性格さ。」
_
( ゚∀゚)「おいおいそりゃいい過ぎだ…」
ノパ听)「あんたは黙ってろぉ!!」
_
(;゚∀゚)「ひぃ、はい!!。でもまあブーンが帰ってきたら暖かく迎えてやろうぜ。
今頃すげえ落ち込んでるだろうさ。」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:35:17.22 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:36:06.47 ID:Ad8kP4br0
-
ブーンはエンジン音に注意を払っていた。
油温はどうにか正常値に下がっているものの、肝心のエンジン内部の状態を知りたかった。
少し高い音がしていたようだが、熱の所為でそうなっているのだと判断した。
スロットルを上げ下げしても滑らかに回転数が変わるため異常はないと思った。
そして、せめて最高の軌跡でもってラストの周を回ろうとしていた。
それが自分に出来るせめてもの贖罪だと感じていた。
注意を耳から目へと移そうとしたとき、エンジン音に以上があった。
ダブって聞こえる。急に音が大きくなった。
おかしいと思い後ろを素早く振り返ってみる。
そこにはスカイブルーに映える赤いクーに機体があった。
(;^ω^)「そんな、もう周ったのかお?」
ブーンの問いかけに答えるかのごとく赤い機体は翼を左右に振った。
そして、ダブって聞こえたエンジン音が真っ二つにされた。
川 ゚ -゚)「悪いが恥をかいてもらおう」
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:38:57.42 ID:mGR22BIZO
- 普通に良作
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:39:06.01 ID:Ad8kP4br0
-
あわてたブーンが前を向いたとき、すでに、赤い機体が並んでいた。
そんな馬鹿なと自分の常識を疑ってみたがどうみても横にいる。
そしてブーンが軌道を防ぐ間もなく赤い機体が前に躍り出た。
目の前の赤い機体が減速した。ブーンと同じ速度で飛んでいる。
周回遅れになってしまった。
最下位という不名誉と鈍足という恥を両方持ってしまった。
(♯^ω^)「クソ!!」
歯切れのいい罵倒の言葉と同時に、右手で思いっきりコックピットの側面を叩いた。
小指からジーンと振動が伝わってくる。
赤い機体はまるでブーンを笑うかのように
ロールを繰り返したり、半円を描く飛び方をしている。
明らかにブーンを馬鹿にしていた。
もし、もう少し速度が出ればいつでも抜かせられるだろう。
だが、向こうはそれが出来ないことを承知しているはず。
相手の行動によって、言葉を聞かずともその意図が明確にわかった。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:39:08.14 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:39:46.48 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:39:59.93 ID:gYPk953r0
- こんなにムカつくクーは初めてかもしえん
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:40:25.65 ID:Ad8kP4br0
-
( ・∀・)「おっと第二チェックポイントから入りました。
クー氏がウイニングフライトでブーン氏を抜かした模様。
ブーン氏の前で子供をもあやすように飛んでいるそうです。」
この放送をきいた大多数の観客は失笑を漏らした。
今年がいくらレベルが高かろうとも出場した以上は嘲笑の対象にもなる。
そしてそれは紛れもなくブーンだった。
( ゚д゚ )「あーお前ら中止だ。」
(=゚ω゚)ノ「やっぱり中止かょぉ。」
( ゚д゚ )「ああ。最下位でも接戦だったらよかったけどここまでいくとちょっとな。
多分ブーンは今日誰にも会いたくないだろう。」
( ><)「わかったんです。皆には適当に言っておくんです。」
( ^Д^)「流石の俺でも今日ばっかりはプギャーできねぇよ。」
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:45:24.82 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:46:20.88 ID:VE0Lv1aJO
- さるの悪寒
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:46:29.10 ID:Ad8kP4br0
-
第二チェックポイントの手前、高速カーブが連続するところでもクーはブーンの前にいた。
カーブのたびにブーンの前から姿を消すのだが、減速して再び前に来る。
ブーンは、せめて赤い機体を焦らすぐらいのことをしたかった。が、不可能だった。
(♯^ω^)「クソ!!ぜってぇー抜いてやるお。どっちが恥をかくか勝負してやるお。」
ブーンはレースに熱中していた。
ここで自分が少しでも赤い機体を抜けばそれは観客に伝わる。
自分がたとえ最下位の周回遅れだろうとも、それに抜かされた一位がいる。
そうなれば、それこそ嘲笑の対象になるであろう。そう思ったのだ。
赤い機体がまた加速した。
エルロンとラダー、エレベータを傾け曲がっていく。限りなく滑らかに曲がっている。
しかしそれを凝視するわけにもいかない。次に曲がるのは自分だ。
赤い機体が見えなくなった。カーブの間に離されてしまう。
そしてまた前に来る。自分に見えるようにわざわざ減速して。
ブーンにとってカーブの連続するここしかチャンスはなかった。
直線では勝てない。そうなればカーブが続いて同じぐらいの速度になる、ここでしか抜かせはしない。
だが、ブーンの予想に反して赤い機体は速かった。
もしブーンの機体で同じ速度を出していたら曲がりきれない。
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:48:02.88 ID:Ad8kP4br0
-
( ・∀・)「第二チェックポイントよりはいりました。
クー氏がブーン祖を従えたまま連続するコーナー地帯を抜けました。
ブーン氏にはどうやら鬼気迫るものがあるようですが
しかし、それをクー氏はいとも簡単に跳ね除けています。」
(♯ ω)「ごめんだお。ジョルジュさん、ドクオ。」
カーブ地帯を抜けてもう自分に出来ることはにないと悟った。
ここから先はエンジンパワーとお互いの駆け引きによって飛ぶところになる。
ブーンの機体はその両方を持っていなかった。
少し幅広になったところで、ブーンは泣いた。
どうしようもできない自分が歯がゆくて、大口を叩いた自分が憎くて
もしかしたら優勝できるかもしれないと思っていた自分が恥ずかしくて。
( ;ω;)「……」
滲んでいる視界がクリアになった。
俯いているブーンから涙がコックピット内に落ちた。
クリアになった視界の先に紙を発見した。
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:48:52.23 ID:4WGN5zna0
- 支援
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:50:14.17 ID:Ad8kP4br0
-
それをみてより泣けてきた。足元に貼ってあるのはドクオが書いた、コースの攻略図だった。
どこで舵をきるか、どこで加減速するか。
詳細に距離やカーブのRまで書いてあった。
ドクオは優勝しようとここまでしていたんだ。
それに比べて自分はなんだ。
ドクオの好意に甘えて出させてもらって
そのくせろくに勉強もしないでそれを自ら破ろうとして。
今だって諦めていて。しかしどうしようもなかった。
たとえドクオの通り飛んだとしても順位はこのままだろう。
しかしドクオは自分の出来ることをやっていた。
己のふがいなさに打ちのめされていた。
息を吸うとしゃくりあがってしまう。
鼻を啜って喉をごくりと鳴らした。
もう一度足元を見ると攻略図の裏があることがわかった。
まだ直線は続く。ブーンはそれを手にとってみた。
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:51:11.57 ID:gYPk953r0
- 支援
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:51:26.10 ID:QQW1PCiKO
- 腐女子ワロスw
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1176814715/
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:53:53.51 ID:Ad8kP4br0
-
直線100メートル。右にR120、75メートル。
左にR80、200メートル。そのまま左にR100、70メートル。
それは始めてコースを下見したときドクオが発見したトンネルの内部だとわかった。
ドクオ自身、自分の腕では優勝はおろかろくな順位を残せないと思っていた。
このメモを見てブーンは思い出す。
今朝ドクオが言った「なんとかなるんじゃねぇの」を。
( ;ω;)「ドクオ。ここまでしてたのかお?」
もうすぐ第三チェックポイントの手前にあるトンネルにつく。
ブーンはここを飛ぼうかと考えた。そうすれば多分、遠回りになる赤い機体を抜かせるだろうから。
しかし本当に飛べるのだろうか。
まだ30秒ほど余裕があったのでとにかくトンネル内部の道を覚えようとした。
思ったほど複雑な曲がり方はしていなかった。
だが、もし翼の端が触れたりしたら確実に大破するだろう。
ドクオの気持ちの応えてやりたかったがそれがブーンの決断を鈍らせる。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:55:24.67 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:57:24.83 ID:VE0Lv1aJO
- 支援
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:58:30.67 ID:Ad8kP4br0
-
後10秒で通り過ぎる。
ブーンはもう一度何かないかと足元を見る。
もう何も無かった。ドクオがかけたであろうお守り以外。
( ^ω^)「あいつお守りとか信じない筈じゃ。」
ふと気になり手に取ってみる。
ドクオには似合わない乙女チックな造形だった。
裏も見てみる。
そこには簡単なメッセージと、簡略化されたドクオの似顔絵があった。
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 00:59:16.77 ID:Ad8kP4br0
-
自分を信じて
('A`)b
(♯^ω^)「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
操縦桿を前に倒し機体を傾ける。
機種をトンネルへと向けた。
五話 太陽万歳 〜終わり〜
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 01:03:15.79 ID:VE0Lv1aJO
- 乙!
>>8の後に一つ抜けてないか?
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 01:05:01.17 ID:gYPk953r0
- いいねえ
乙!
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 01:06:53.17 ID:Ad8kP4br0
- >>93見落としてました。
_
( ゚∀゚)「おお、今来たのか。お前は相変わらずあいつが嫌いだな。いい加減いいじゃないか。」
ノパ听)「いいや絶対許さんね。あいつのおかげで私がどれだけ枕を涙で濡らしたことか。」
>>8の後にこれ足しといてください。あとスレタイも間違ってます。
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 01:08:06.94 ID:cV+URHiX0
- 乙〜
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/24(火) 01:15:02.63 ID:ppnoI/PqO
- 乙
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