川 ゚ -゚)クーとモナーが出会うようです   [ログ]  [コメントへ]  戻る



「クーさんって何考えてるのか、わかんないよね」

そんなことを言われたのは、四月の初め。

今では話しかけられたことすら懐かしい。

川 ゚ -゚)(次は数学か……)

高校に進学してから二週間。

周りでは個々のグループが形成され、わいわいと楽しげに雑談をしている。

川 ゚ -゚)「……くだらない」

せいぜい、彼らの話す内容と言えば音楽だのテレビ番組だの。

本当にどうでもいい話ばかりだ。





( ´∀`)「あの」

川 ゚ -゚)「む?」

声の方へ振り返ると、そこには男子生徒が立っていた。
確か、一番前に座っているモナーとかいう男子。

川 ゚ -゚)「何か用か?」

( ´∀`)「ガムいる?」

川 ゚ -゚)「え?」

思わず、間抜けに聞き返してしまった。

( ´∀`)「ねぇ、ガムいる?」

そこで、ようやくモナーが持っているガムの存在に気付く。
どうやらガムが必要か、と聞いているらしい。





川 ゚ -゚)「いや、私は――」

( ´∀`)「いるの? いらないの?」

川 ゚ -゚)「いや、別にいらないが……」

( ´∀`)「ガム食べようよ。おいしいよ」

川 ゚ -゚)「むぐっ!?」

モナーは、強引に私の口にガムを押し込む。

瞬間、口の中に奇妙な味が広がった。

川 ゚ -゚)「まずっ……何味だ?」

( ´∀`)「トウモロコシ味。じゃあね」

そう言うと、モナーは自分の席へと戻っていった。





川 ゚ -゚)「トウモロコシ味って……」

食えなくは無いが、吐き出したい欲求に駆られる。

……彼は何がしたかったのだろう。

私にはわからない。

他人の気持ちも、何も。





――……


川 ゚ -゚)「ふう」

授業が終わり、掃除の時間になる。

今日は私達のグループが教室の当番だ。

私は箒を取り出す為、ロッカーを開ける。

( ´∀`)「やあ」

川 ゚ -゚)「……ロッカーの中で何をしているんだ?」

( ´∀`)「トウモロコシの真似」

意味がわからない。

とりあえず、無視して掃除をすることにした。





川 ゚ -゚)「……」

( ´∀`)「トウモロコシってさ」

川 ゚ -゚)「……」

さて、塵取りで集めるか。

( ´∀`)「不思議だよね。たくさん粒があるし」

川 ゚ -゚)「……だから?」

( ´∀`)「今度、よーく見てごらん。じゃあね」


それだけ言うと、モナーは足早に去っていった。

駄目だ。彼の思考回路が理解できない。

川 ゚ -゚)(……理解する必要も無いか。関わらない方がよさそうだし)





さて、掃除も終わったことだし帰宅するとしよう。

('A`)「掃除終わったか?」

( ^ω^)「待たせてすまんお! 今終わったとこだお!」

川 ゚ -゚)「……」

( ^ω^)「あ、クーさんバイバイだお!」

今、私の名が呼ばれたような気がする。

……だが、振り返って違ってたら恥ずかしい。

川 ゚ -゚)(落ち着け、今のはきっと幻聴だ)

そうだ。私は空気なのだ。

空気に挨拶する奇抜な人間など、このクラスにはいない。

(;^ω^)「あれ? スルーされちゃったお」

('A`)「バカ。クーに話しかけたって反応しねーっつーの」

やはり、私に話しかけていたのか?

……だが、今さらクラスメイトと馴染む気はない。





帰り道。

いつものように、一人で帰路を歩く。

( ´_ゝ`)「フゥフゥハァハァ……ウヒヒヒ」

前方に妙な男が現れた。

サングラスにマスク。完全な強盗スタイルの男だ。

( ´_ゝ`)「お、おおおおおおおっぱい触らせてくれん?」

川;゚ -゚)「は……?」

( ´_ゝ`)「む、むにゅむにゅしてたまらんのが好きなんじゃい」

痴漢だ。

どう見ても痴漢だ。





川;゚ -゚)「すいませんが、先を急ぐので……」

( ´_ゝ`)「乳首だけでいいんや。拝ませてくれないかにゃ?」

駄目だこいつ……。

早く逃げないと。そう判断し、私は地面を思い切り踏み、走った。

( ´_ゝ`)「ヒョヒョヒョヒョ! たまらん、たまらんぞよ! ハァハァハァ……」

後ろから痴漢が追っかけてくる。

しかも満面の笑みだ。キモすぎるし、怖すぎる。

川 ゚ -゚)「だ、誰か――」

叫ぼうとするが、騒ぎになったら恥ずかしい。

いや、ここは身の安全を優先するべきなのか……!?





( ´_ゝ`)「ばぁぁっぁっぁああ! 捕まえたぁぁ」

川;゚ -゚)「しまっ……」

腕を掴まれる。

振りほどこうとするが、女と男の筋力差だ。

まるで話にならない。

( ´_ゝ`)「大丈夫、触るだけだから! ……おい、暴れるんじゃねえ!」

川#゚ -゚)「この、変態が……!」

(#´_ゝ`)「ふ、ふふふふ。俺はオマエみたいに強気なおにゃのこを苛めるのが
       最高に快感なのだよ!! ブヒヒヒヒ!!」

生暖かい鼻息が耳にかかる。

川 ゚ -゚)「やめろ! 誰か!」

恥もクソも無い。

私は、必死で助けを叫ぶ。





「知ってるかい?」

声が聞こえた。

( ´_ゝ`)「誰だ!?」

「トウモロコシはね……」

不意に、私の体を掴んでいた手が離れた。

痴漢が妙な悲鳴をあげながら、アスファルトに転がる。

( ´∀`)「野菜なんだよ!!」

川 ゚ -゚)「お前……モナー?」

目の前に現れたのは、クラスメイトのモナーだった。

手には物干し竿を持っている。





(;´_ゝ`)「クソ、邪魔が入ったか……! ふざけやがって!」

痴漢は起き上がると、懐からナイフを取り出す。

( ´∀`)「おい……」

( ´_ゝ`)「許さん、こ、こここ殺しちゃる!!」

痴漢はナイフを持ったまま、モナーに突進する。

危ない、無意識のうちに叫んだ。

( ´∀`)「ナイフじゃ刈り取れねえよ」

( ´_ゝ`)「何!?」

モナーは物干し竿を振る。





( ´∀`)「トウモロコシは夏野菜なんだよ。優しく扱えモナ!!」

(;´_ゝ`)「ぐわぁぁぁぁ!!」

痴漢は泣き崩れ、そのまま逃げていった。

川 ゚ -゚)「……」

呆然と立ち尽くす。

助かった……の、だろうか。

( ´∀`)「大丈夫かい?外道トウモロコシ女」

川 ゚ -゚)「誰がトウモロコシ女だ!」

( ´∀`)「お前は、トウモロコシになれてない……欠陥品だ」





( ´∀`)「トウモロコシってのはな、粒の一つ一つが支えあって出来てるんだ。
      お互いに養分を取り合うことなく、それぞれ一粒一粒がプライドを持っている。
      お前は、そんな粒になりきれない不良品だ。不良トウモロコシだ」

川 ゚ -゚)「!!」

ああ、そういうことだったのか。

私は、他人を恐れていた。拒否していた。自らの思い込みで、他人との間に壁を作っていたんだ。

川 ゚ -゚)「私は……」

自分のおろかさに気付き、その場に座り込んでしまう。

川 ゚ -゚)「トウモロコシにすら、なれない……」





( ´∀`)「立てよ」

川 ゚ -゚)「……」

( ´∀`)「お前にも、家族はいるんだろう?」

川 つ -゚)「……ああ」

( ´∀`)「だったらせめて、花くらいは咲かせてやれ」

不意に、頭の中で何かが弾けた。

( ´∀`)「ジャガイモだって、腐っても芽が出るだろう?」

川 つ -゚)「……私は、やり直せるだろうか?」

モナーは、笑みを浮かべながら、私に手を差し伸べる。



( ´∀`)「大地に生きろ」





――――その言葉が、私を変えた。

私は弾けたのだ。ポップコーンのように。

川 ゚ -゚)「おはようクズ共! 馴れ合ってんじゃねえぞ童貞!」

('A`)「ヒュー! 相変わらずクーの罵声は痺れるぜ!」

( ^ω^)「クソ女が、調子付いてんじゃねえぞ!」

川 ゚ -゚)「黙れポップコーンの残りカスが」

もう、大丈夫だ。

私は生きていける。

この大地に、しっかりと踏みとどまって!





今、私は屋上にいる。
大切な思いを伝える為だ。
目の前には、大事なことを教えてくれた人がいる。

言おう。私の思いを。
立派な花を咲かせるために。

川 ゚ -゚)「トウモロコシって漢字でどう書くんだ?」

( ´∀`)「玉蜀黍」


おわり




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