( ^ω^)猛暑のようです(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/6178/1238906621/)
- 1 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:43:41
- 避難所、お借りしますね。
半ながらになってでも、終わらせることにしました。
こんな形になってしまい、本当に申し訳なく思います。
それでは。
- 2 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:44:05
-
【第24話:写真】
内藤ホライゾンは緊張していた。
それこそ、足は震え、冷や汗を垂れ流し、挙動不審になる程に。
(*゚ー゚)「どうしたの?調子悪いのかな?」
(;^ω^)「いや……その、えーとですね……」
(*゚ー゚)「んー?」
下から覗きこむような目線。
それは図らずも上目遣いになるので、内藤の心音は加速する。
(;^ω^)(やっぱり、改めて僕は思う、『圧倒的可愛さ』……!!)
(*゚ー゚)「んー!?何だよぉー、黙るなよぉー!!」
ぷくりと頬を膨らませれば、さぁ大変。
内藤は溢れ出そうになる鼻血を気合いで押し戻した。
- 3 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:44:19
-
(*゚ー゚)「で、どうしたのさ?」
( ^ω^)「えーと、それは―――」
思い返すのは、つい先日のドクオとツンのこと。
二人の仲は進展していた。
凸凹なコンビではあるが、仲の良さが容易に伺える。
思わず男共が、嫉妬という名の殺意を覚える程である。
そして、内藤もそれに触発される。
自分も、しぃとの関係を一歩進めたいと考えたのだ。
(;^ω^)「――し、しぃちゃんはものすんごく可愛いお!」
(;*゚ー゚)「ふぇっ!?」
- 4 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:44:37
-
想定外の一言にむせ返った。
だが、捲くし立てるように内藤の言葉は続く。
(;^ω^)「それにちょっと意地悪なとこもあるけど、本当は優しいことは分かってるお。
話も面白いし、本を読んでるときは綺麗だし……」
(;*゚ー゚)「ちょっ、ちょっと待って!
それ以上はなんか、その、えと……と、とにかくダメなの!」
積み重なる賞美の言葉は、少女の心のリミットを超えていた。
顔は赤くなるし、妙なむずかゆさも出てくるし、内藤の顔がまともに見られないし。
もし、言葉の雨が治まらなかったのなら、一刻も早く逃げ出していたことだろう。
(;*゚ー゚)「どうしたの!?何か、今日おかしいよ?」
(;^ω^)「うう……ごめんなさいだお」
(;*゚ー゚)「謝る事は無いけどさ……。
そりゃ、ブーン君にそういう事言われるのは……嬉しいし」
- 5 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:44:58
-
石を投げつけたくなるほどの、甘酸っぱい空気が流れていた。
両者とも、動けず、赤面するしか出来ない。
二人はリンゴに成り果てていた。
しかし、今日こそ、今日こそはという想いが内藤を突き動かす。
自らの頬をバチンと叩き、闘魂注入。
驚くしぃの肩を逃がさんとばかりに、その手で捕らえた。
(;^ω^)「し、しぃちゃん!大事なお話があるんですお!!」
(;*゚ー゚)「は、はい」
(;^ω^)「とってもとっても大事なお話なので、聞き逃さないで欲しいんですお!」
(;*゚ー゚)「……が、頑張ります!」
- 6 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:45:14
-
(;^ω^)「僕は……えと、いつからか、いや、違うな……その……」
決心はしたものの、言葉が上手く綴れない。
伝えたい言葉は山ほどあるのに、そこから選抜する事が出来ない。
しかし恐らく、しぃも内藤の言わんとしようとしている事がおぼろげに理解出来ているのだろう。
だからこそ、何も言わず見守るように、その場でじっと構えていた。
( ^ω^)「そうだ、僕は―――」
思い返すのは、今までのしぃと触れ合った時の記憶。
そして、その時に感じてきた沢山の気持ちたちだった。
楽しかった、しぃが笑えば、自分も幸せな気持ちになれた。
彼女といる時は、どんな喜びよりにも勝る至福の時だった。
一体、どうしてそんな気持ちになれたのだろうか。
- 7 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:45:41
-
( ^ω^)「思えば、きっと、初めて会った時から――」
いや、そんな事は分かっりきっている。
答え何て、とうに自分の中で見つけ出していた。
それは、きっと初めて会った時から。
あの初夏の日、このベンチで君を見つけた時からだった。
想いは膨らみ続け、今もなお、廃れることもなく輝きを増していく。
言葉にするのは簡単で、でも口に出すには難しい言葉。
今なら言える、いや、今日こそ伝えてみせる。
( ^ω^)「――僕は君が好きだったんだお」
内藤ホライゾンは、しぃを愛していだのだから。
- 8 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:45:54
-
(*゚ー゚)「…………」
( ^ω^)「…………」
(;*゚ー゚)「…………っあ」
( ^ω^)「……?」
(*////)「わっ!!あわわわわっ!!
ひあっ、なんっ、ばばばばばばばかっ!!」
(;^ω^)「ちょっ、痛っ!!落ち着いてくれおっ!!」
ぽかぽかという擬音の聞こえそうな打撃の連打。
かと思えば、その勢いは増していき、風切り音が唸りだし、拳に炎が宿り、
(; ゚ω゚)「おぶしっ!!」
左右に体を振りだす、その技の名前はデンプシーロール。
内藤の骨身が軋み、空中に浮き上がり、それでも剛腕の嵐からは逃れられない……ッ!!
- 9 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:46:08
-
(;*゚ー゚)「はぁ……はぁ……」
( ω )「…………」
(;*゚ー゚)「はぁ……はぁ……んっ……」
( ω )「…………」
(;*゚ー゚)「ごめん……恥ずかしくてって、つい……」
( ω )「つい、かお……ははは、そうかお……」
内藤は燃え尽きていた。真っ白な灰と化していた。
しかし、それはやり遂げた漢の姿に限りなく近かった。
(*゚ー゚)「でも、そっか、ブーン君が私の事を好きと……」
( ^ω^)「ん……そういうことだお」
- 10 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:46:21
-
(*゚ー゚)「えへへ、どうしよう、にやけちゃう」
その笑顔には、結果を聞くまでもない喜びが溢れだしていた。
当然、内藤の心にも安堵が芽生えていく。
( ^ω^)「ということは……?」
(*゚ー゚)「そりゃあ、もちろん―――」
しぃの言葉を遮ったのは、内藤の携帯電話の奏でる着信メロディーだった。
その曲の名は『ALI PROJECT』の『人生美味礼讃 』
空気をぶち壊すには十分過ぎた。
(;^ω^)「……あうあう」
(;*゚ー゚)「……出ていいって」
- 11 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:46:35
-
申し訳ないと連呼しながら携帯を確認した。
大凡の予想はついていたが、映し出されたジョルジュという文字に、内藤は舌打ちという形で感情を露わにする。
とはいえ、鳴り続ける音楽を無視する訳にもいかず、着信ボタンを押した。
『ぐおらぁ!!遅いんじゃボケェ!!』
思わず耳から電話を突き放してしまう程の罵声。
渋柿を食べた様な顔を浮かべながら、それに対応する。
( ^ω^)】「正直すまんかった。もうすぐ行くから待ってて欲しいお」
『お前のせいで、ドクオがさっきから俺達のストレスの捌け口になってるぞ……』
(;^ω^)】「絶対僕には関係ないことだお」
その後、他愛のない会話を終えて、電話での会話を終える。
今すぐにでも、ジョルジュの家に向かわなければならないようだ。
- 12 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:46:52
-
(;^ω^)「ごめんだお、友達と遊ぶ約束をしてて……」
(*゚ー゚)「いいよ、いいよ、私はいつでもここにいるしさー」
( ^ω^)「……返事は、また今度ゆっくり聞かせて貰うお」
(*゚ー゚)「あはは、じゃあ楽しみにしておいてね?」
内藤は大きく首を縦に振り、肯定した。
満足げな表情を浮かべたしぃを見て、顔も綻ぶ。
( ^ω^)「じゃあ、ばいばいだおー!」
(*゚ー゚)「うん、またねー!!」
別れを済ませ、内藤は駆け出した。
これだけ暑ければ、ジョルジュの家に着く頃には汗だくだな、なんて思いながら。
- 13 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:47:23
-
(*゚ー゚)(今のって……まさか、ね)
だから、気づかなかったのかもしれない。
しぃが憂いを帯びた瞳で、去っていく内藤の事を見つめていたことを。
- 14 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:47:38
-
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
(;^ω^)「……なんだお、この状況」
内藤がジョルジュの家、そして部屋に踏み入ると、中には組み合った二人の男の姿。
関節を上手く決められているのか、まるで動けないといった状況だった。
( ゚д゚ )「いや、何、ははは、たまにはじゃれ合うのも良いかなとな」
(;゚∀゚)「ちっげーんだよ、聞いてくれよ!!
コイツ、ゲームに負けただけで悔しがって、とうとうリアルファイトに……痛てててててっ!!」
( ゚д゚ )「初心者相手に手加減もしないお前が悪い」
TV画面には対戦ゲームの戦績が映し出されている。
45-2という数字を見れば、どのような問答が繰り広げられたかは軽く検討が付く。
( ゚д゚ )「お前、体硬いな、そんなだからサブミッションに弱いんだ」
(;゚∀゚)「知るか、ていうかブーン!! これ外してくれよ!!」
- 15 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:47:52
-
( ^ω^)「…………」
(;゚∀゚)「ん?」
( ^ω^)b
(;゚∀゚)「グッ!じゃねーから!! つか、折れる折れる! うああああああああ!!」
ミシミシと骨が軋み始めた所で、ようやく技が解かれる。
ぐったりとその場に伏せるジョルジュに与えられたのはミルナの嘲笑だった。
( ゚д゚ )「情けない男だ……といった所で、再戦と行こうじゃないか」
( ∀ )「いや無理……コントローラー握れないもん……」
(; ゚д゚ )「なにっ!? それじゃあ俺がゲーム出来ないじゃないか!!」
( ∀ )「知るか……ストーリーモードでもやってろ……」
(; ゚д゚ )「ぐぐぐ……!!」
- 16 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:48:06
-
( ^ω^)「ミルナさんはゲーム好きなのかお?」
( ゚д゚ )「む……というより、俺は今までゲームをやった事がなかったんだ」
( ^ω^)「で、今日やってみたら見事に嵌ったと」
(; ゚д゚ )「ま、まぁそういう事になるか」
今時ゲームをやったこともない人間がいるものか。
という疑問は『ミルナだから』という理由で消え去った。
慣れというものは心底恐ろしい。
( ^ω^)「あれ、そういえば、ドクオはどうしたんだお?」
( ゚∀゚)「あー買い出しだよ、ブーンの奢りで」
(;^ω^)「ちょっ、なんで僕が……!!」
( ゚∀゚)「ちーこーく!! 40分!!」
どんな弁明をしようとも、時間とは決して戻せないもの。
幸せの代償だと、内藤は溜息をつくも諦めた。
- 17 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:49:40
-
( ゚д゚ )「しかし、ドクオが買い出しに行ったのも40分前だぞ?
いい加減、遅すぎはしないか?」
( ^ω^)「あーそれなら、別に心配はいらないお」
( ゚∀゚)「なんで?」
( ^ω^)「多分、コンビニで立ち読みしてるお。
もしくは暑くて外に出れなくなったか……」
( ゚∀゚)「んな訳ね―――」
と言った所で、ジョルジュの携帯の着信音が響く。
恐る恐る画面を確認すると、案の定ドクオからのメールだった。
(;゚∀゚)「…………」
( ^ω^)「確認してみると良いお」
- 18 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:49:58
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【From ドクオ】
暑いよぉ〜〜。゚(゚*ω⊂ グスン
もう外になんて出れないワラ
暫くしてからそっちに戻るね〜。
どれくらいって??
うぅーん☆ 2時間くらいかな(o´・∀・`o)ニコッ♪
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(#゚∀゚)「よし殺そう、今すぐアイツを殺しに行こう」
(;^ω^)「落ち着くお、それがドクオっていう男なんだお」
( ゚д゚ )「むぅ……やはりオレが行くべきだったか……」
( ゚∀゚)( ^ω^) 「「いや、それは勘弁」」
以前、ミルナが買い出しをした時には、袋一杯のウイダーinゼリーを抱えて帰ってきた。
『暑い日にもピッタリ』等と言われたからには、殴らない訳にはいかなかった。
- 19 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:50:24
-
( ゚∀゚)「しょーがねー、おらミルナ、もう一回コテンパンにしてやんよ」
( ゚д゚ )「良いんだな? その後に何があるか分かってるんだろうな?」
(;゚∀゚)「おまっ……遊びで八百長して何が楽しいんだよ」
( ゚д゚ )「何にせよ、お前が負けてる姿を見るのはとても愉快だからな」
暴走寸前の二人を、内藤は阿呆くせぇと吐き捨てる。
彼らを横目に置きながら、ジョルジュの部屋を探索していた。
ジョルジュの家は至って平凡な一軒家である。
当然、この部屋自体もあまり大きなものではなく、男四人も入れば窮屈に感じてしまうだろう。
整理整頓が成されているのがせめてもの救いだった。
- 20 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:50:38
-
( ^ω^)「意外と、片付いてるお」
( ゚∀゚)「『意外と』は余計だなぁ」
カチカチとゲームのボタンを弾きながらジョルジュが答える。
その目は一心にテレビ画面に向けられていた。
( ^ω^)「エロ本が散乱してたりとか……僕はそういうのを期待してたんだけど」
( ゚∀゚)「俺のイメージって一体……うおっ、何で今の技が当たらねぇんだよ」
( ゚д゚ )「ふははは、ビギナーズラックというやつだな」
画面内では、力士とやたら体の伸びるヨガの人が戦っていた。
内藤自身もゲームを頻繁にやる訳ではないが、圧倒的に力士が勝っているという事は理解できる。
滑空する肉塊がなんともシュールだった。
- 21 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:50:54
-
( ^ω^)「綺麗好きなのかお?」
( ゚∀゚)「いや別に……確かに、昔は部屋汚かったしなぁ」
( ^ω^)「ふぅん、じゃあ何で今は片付ける様にしてるんだお?」
( ゚∀゚)「片付けてくれる奴がいなくなったから……かな」
( ^ω^)「片付けてくれる奴? 誰だお?」
ふと口にした言葉が、暫しの沈黙を作り上げた。
ゲームの効果音だけが室内に淡々と響き続けている。
(; ゚д゚ )「……あっ、あー、また負けてしまったか、ははは!!」
( ゚∀゚)「……別に良いよミルナ、ブーンなら別にな」
ミルナの不器用な笑いを遮ったのは、他ならぬジョルジュだった。
視線が動く事はなかったが、内藤は蛇に睨まれたカエルの状態を、これでもかと実感していた。
- 22 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:51:11
-
( ゚∀゚)「俺によー、妹がいるって話はしたよなぁ」
( ^ω^)「う、うん、今日は家にいないのかお?」
( ゚∀゚)「帰って来ねぇんだよ、交通事故に巻き込まれたからな」
(;^ω^)「え、あ、えと……」
( ゚∀゚)「もう、あの事故が起きてから一年が経つってのに、ホント何でだろうなぁ……。
これくらいで何が起きるって訳じゃないんだけどな。
アイツにいつも言われてた通り、部屋を綺麗にする様にしちゃうんだよなぁ」
ジョルジュの扱うキャラクターの動きが鈍くなっていた。
連打するかの如く響いていたボタンの音も、今では時計の針の進む音の様である。
(;^ω^)「まさか、荒れてたのも……」
( ゚д゚ )「……そういうことだな、こいつにも色々とあったという訳だ。
だから……な、責めないでやって欲しい」
(;^ω^)「……うん」
- 23 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:51:31
-
( ゚∀゚)「へっ、何か湿っぽくなっちゃったな。
折角の夏休みなんだしよ、もっと盛り上がんなきゃよぉ」
( ゚д゚ )「そうだな、青春は思っている以上に短いぞ」
( ^ω^)「何をじじ臭い事を言ってるんだお……」
( ゚∀゚)「何なら、妹の写真でも見てみるか?
可愛いぞー、一目惚れとかしちゃうかもな」
( ^ω^)「それは無いと思うお」
(#゚∀゚)「ああん!? これを見てもそんな事が言えるのか!?」
内藤が否定したのは、しぃの存在が故だった。
彼女の事を愛していたから、他の女性に現を抜かすことなど無いと確信していた。
だから、ジョルジュの差し出した彼の妹の写真を見ても、取りみだすこと等、有り得ない。
―――はずだった。
- 24 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:51:43
-
( ^ω^)「―――え?」
( ゚∀゚)「ふふん、どうだよ、可愛いだろ」
( ^ω^)「え、でも何で……この人がジョルジュの妹……なのかお?」
( ゚∀゚)「似てないとでも言いたいのかよ、まぁ気持ちは分からんでもないけどな」
そんな事が言いたいんじゃなかった。
そんなちっぽけ事で、内藤が取り乱す筈がなかった。
内藤の頭に真っ先に訪れたのは混乱で、その次に訪れたのは恐怖だった。
明るく照らされた未来に影が差し、次第に漆黒に染まっていく感覚。
幻想が入り混じったかの様な現実と、それを認めたくない心は葛藤し、そして先に折れたのは内藤の心だった。
- 25 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:51:55
-
( ^ω^)「しぃ……ちゃん?」
( ゚∀゚)「あ、何でお前が俺の妹の名前を知ってるんだ?」
ジョルジュの何気ない一言で、人違いという最後の希望も失われた。
美府公園でいつも内藤と話を交わしていた少女の姿が、その写真に納められていた。
ジョルジュの妹として、事故に遭い今もこの場に帰らぬ少女として―――
写真を手中から落とすと、ジョルジュが慌ててそれを拾った。
内藤に罵倒を浴びせ、大切そうに写真を元の場所へと仕舞いなおした。
内藤にその言葉は届いていない。 他者の行動など眼中にはない。
理解しきれない現実と対峙し、それでも理解しようと足掻いている。
手中から落としたのは写真と、そして幸福と―――
【第24話:おしまい】
- 26 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:53:34
- こっからながらです。
本当ごめんなさい。
今日中の完結を目安にしてるので、ゆっくりになると思いますです。
- 27 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:55:58
- 【第25話:全てを知る時】
早朝、夜に冷めた大地が、ようやく温まって来る頃。
内藤は寝不足の体を引き摺り、美府公園へと足を踏み入れた。
それはもちろん少女に会いに来る為である。
普段の彼なら、こんな時間にはまだいないだろうと考えている筈。
だが、今の彼は間違いなく少女がいると確信している。
(*゚ー゚)「や、今日は早いね」
( ^ω^)「……おはようだお、しぃちゃん」
そして、その予想は現実となっていた。
- 28 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 13:57:31
- いつもの様に、内藤が来るまでは本を読んでいる。
内藤に気付くと、本を閉じて嬉しそうに笑顔で語りかけてくる。
その様子を日頃楽しみにしていたのに、今日はそうならないで欲しいと心の底から願っていた。
それでも、少女はまるで変わらぬ笑顔を内藤に向けるのだ。
いつも、いつだって変わらない、その笑顔を。
(*゚ー゚)「ちょっとお疲れ気味?」
( ^ω^)「うん……昨日は中々寝れなくて」
(*゚ー゚)「へっへー、実は私も胸がドキドキして眠れなかったんだー」
( ^ω^)「しぃちゃんも、かお?」
(*゚ー゚)「そだよー、だって、ねぇ?」
- 29 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 14:03:08
- そこまで聞いて内藤はようやく思い出した。
昨日、自分がしぃに告白をしたという事を。
少女の緩みきった頬や、浮かれた態度が心苦しかった。
間違いなく昨日の自分達は幸福で、本来なら今はその幸せに浸かっているはずなのだ。
だというのに、内藤の心は嵐が過ぎ去った後の様に荒れていた。
幸せな気持ちなんて、根こそぎ吹き飛ばされていってしまっていたのだ。
(*゚ー゚)「……ねぇ、本当に辛そうだけど大丈夫? 一回家に帰った方が良いんじゃ」
( ^ω^)「―――しぃちゃん、僕は昨日色々な事を考えたんだお」
少女の言葉を遮るように言った。
あえて視線は合わせず、強く言葉を吐き出した。
しぃもまた、内藤の様子が自分の考えとは違う異変を持っている事に気付いた。
- 30 :名無しさん:2009/04/05(日) 14:09:02
- は、花束さんが見れない……だと……。
まじごめんなさい、もしかしたら伏線抜けとか出るかもしれません。
- 31 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 14:09:59
- ( ^ω^)「嘘だって思いたかったんだお、そんなことがあり得る筈ないんだって。
でも、もしかしたらって気持ちが膨らんで、そうなんじゃないかって疑念で一杯になって。
どうしようもなくなって……気付いたら朝になってたお」
(*゚ー゚)「……どうしたの、やっぱり変―――」
( ^ω^)「聞きたいことがあるんだお、どうしても、君の口から、直接。
しぃちゃんは何で、この場所にいるんだお?」
(*゚ー゚)「何でって……それは、この場所が好きで、ブーン君が来てくれるからで……」
困ったような表情を浮かべて答えを返す少女の瞳が、今の内藤には痛く感じた。
不快な思いを与えているのは確かで、それでも問いを重ねることを止めるのは出来ない。
真実を知ると、決めてしまったから。
( ^ω^)「しぃちゃんはいつだって、ここにいたお、僕が来たときには必ずいたお。
そして、僕が来てない時だって、いつもここにいた筈なんだお」
(*゚ー゚)「…………」
そこまで言われて、ようやくしぃは内藤の言いたいことの全容を把握した。
この先紡がれる言葉が、二人の関係を破壊することまで、それを知っていて尚語ろうとする内藤の決意も、全て。
- 32 :名無しさん:2009/04/05(日) 14:10:51
- ( ^ω^)「でも、それはおかしいんだお。
だってしぃちゃんは、しぃちゃんは……」
このまま何も知らない振りをして過ごすのが良いのではないかという考えはもちろんあった。
真実に目を覆ったまましぃと接していくのも、一つの選択肢ではあった。
そうしたのならば、とても幸せな日常を手に入れられたことだろう。
正確な返事は未だ貰っていないものの、思いが通じ合っているのはつい先日確認したばかりで、
これからより一層厚みを増した幸せに包まれて、その内永遠の愛を誓うという妄想も膨らんでいた。
しかし、それが本当に幸せなのかに疑問を抱いてしまった。
見たくないものに蓋をして、真実に逃げて脅えて暮らすのが正しいとは思えなくなった。
更に言うのであれば、その様な状態で、しぃを真剣に愛せる自信が無くなってしまった。
だから、真実を知り、かつ乗り越えるという道を内藤は選んだ。
正確に言うならば、それ以外の道では、自身が正常でいられなくなるので、選ばざるを得なかった。
その道へ、もう引き返せないその道へと、踏み込むため、今一度呼吸を整える。
- 33 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 14:14:06
- ( ^ω^)「有り得ないんだお。
しぃちゃんは……『ジョルジュの妹』のしぃちゃんは……。
一年前にトラックに撥ねられて……そのまま……」
そして、枯れそうな声だったとしても、言い上げた。
迷いを断ち切るように、決別の意味合いを持つともとれる言葉を吐きだした。
吹き抜けた風。
木々がざわついていた。
- 34 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 14:56:49
- (*゚ー゚)「……なんだ、ばれちゃったんだ」
( ^ω^)「じゃあ、やっぱり」
(*゚ー゚)「そうだよ、私はお兄ちゃん、長岡ジョルジュの妹。
普通ならこんなこと言っても信じてもらえないけど、ブーン君は違うんだね」
( ^ω^)「……うん、だってしぃちゃんは、あまりにも……」
(*゚ー゚)「おかしいって? 普通の人間っぽくないって?
それはそうだよね、いつもどんな時でもこの場所に居続けるなんて、普通は出来ないもんね」
『普通』を強調するのは、自身が異常であると理解してるからなのだろう。
強がりか、開き直りか、何にせよ無理をしているのは確かだった。
- 35 :名無しさん:2009/04/05(日) 18:09:02
- やべ、寝ちゃった、終わるかなぁ。
書き溜め→少し投下→書き溜め……
という感じにしますです。
終わるかなぁ。
- 36 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 19:56:08
- (*゚ー゚)「私が事故に遭ったっていうのは知ってるんだ?」
( ^ω^)「……うん」
(*゚ー゚)「それを知ってるなら話は早いね、私はさ、気がついたらここにいたんだ」
笑みを浮かべて、悪戯めいて話す姿は、いつもと変わりなかった。
ただ、心の持ちようからか、どうにも違って見えてしまう。
(*゚ー゚)「なんとなくだけどね、ああ、死んじゃったのかなーって思ったんだ。
思い出せるのはトラックが目の前に迫ってきたとこまでだしさ。
でも、こんなに普通なら生きてるのとは何にも変わらないと思うでしょ?」
(*゚ー゚)「でも違った、私の体は結局普通じゃなかった。
この公園から出られないんだ、入口まで行って、気付くと何故かここにいる。
逃げられない、私はこのベンチに囚われた」
それは絶望の日々だったというのが、表情から見て取れた。
どこか影を感じ、言葉も重い。
- 37 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 19:56:37
- (*゚ー゚)「そんな時、ブーン君が現れた。
嬉しかったなぁ、だってこの場所には誰も来てくれないんだもん。
話し相手になってくれて、これからも来てくれる約束をしてくれて……あはは、救われたっていうのかな」
( ^ω^)「…………」
(*゚ー゚)「ねぇブーン君、私のことが好きなんだよね?」
(;^ω^)「えっ、あっ、それは、その……」
返答に困った。
内藤が好きだったのは、あくまで少し変わりものだけど、平凡な女子高生であるしぃなのである。
幽霊の類に近いような、人外の存在を愛してると言うには、少し戸惑いがあった。
しかし、それでも―――
( ^ω^)「―――うん、僕はしぃちゃんのことが大好きだお」
この気持ちは嘘じゃない。
例え何があろうとも、絶対に曲がらない想いだったのだ。
それを聞いて、しぃは本当に嬉しそうに微笑んだ。
- 38 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 19:57:02
- (*゚ー゚)「じゃあ、ずっと一緒にいれくれるよね?」
そして、強く、華奢な腕からは考えられない程の力で内藤の腕を掴んだ。
思わず振りほどくと、逃がさないとでも言わんばかりに、またぎゅうと掴まれる。
(*゚ー゚)「なんで逃げるの? ずっとずっと、ここで一緒にいようよ?
私のことが好きなんだよね? それなら他の所に行こうだなんて考えないよね?
……ねぇ、ブーン君?」
(;^ω^)「ぼ、僕は……」
やはり違うのだろうか。
内藤の知っているしぃと、今全てを曝け出したしぃは違う存在なのだろうか。
そんな迷いが生まれた。
圧迫された腕は感覚を失っていき、鈍い痺れが走り始めている。
ほんの僅かに恐怖を感じたのだって、嘘ではない。
- 39 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 19:57:25
- (;^ω^)「す、少しだけ考えさせてほしいお!」
(*゚ー゚)「んー?」
(;^ω^)「ずっと一緒にいたいのは山々だけど……色々けじめをつけないといけないことがあるんだお!
だから、ちょっと考えさせてほしいというか……」
(*゚ー゚)「しょうがないなぁ、ブーン君はちょっと情けない所があるもんね。
……良いよ、少しだけ、少しだけだよ? 考える時間をあげる」
( ^ω^)「……ありがとうだお」
しぃの手が離れ、ようやく自由を取り戻す。
笑顔を絶やさない少女が、どこか不気味に思えた。
内藤は、一先ず水飲み場まで行くことにした。
それは、公園の敷地内で最もベンチに離れた場所に位置しているからである。
少しでも遠くに行きたかった。 しかし、公園からは出られないような、そんな気がしていた。
水を補給しながら、心を落ち着かせる。
- 40 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 19:57:46
- 本当は、自分の中で結論はついていた。
どうすればいいのかだなんて、そんなもの答えは一つしかない。
ただ言えることは、思った以上に自信がしぃを愛しすぎていたことだった。
ずっと一緒にいたいという、どこか狂気に満ちた言葉を、肯定したい想いがあった。
しかし、それでは幸せにはなれない。
しぃを救う方法は、もっと別の、正しいものがある。
視線を感じる。
まるで監視しているかのように、しぃは内藤を見続けているのだろう。
きっと、それは不安だったからなのだ。
こんな場所で、一人っきりで居続けて、脅える気持ちが少しだけ異変をもたらした。
( ^ω^)「……もう大丈夫だお、しぃちゃん」
そう呟いて、元いたベンチへと歩き出した。
【第25話:おしまい】
- 41 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:21:09
- 【最終話:夏の終わり】
(*゚ー゚)「えへへ、もうずーっと放さないからね……」
腕をからませ、首を内藤の肩に乗せるしぃ。
傍から見ればむつまじい恋人なのだが、実際はそうもいかない。
( ^ω^)「しぃちゃん、僕もずっと一緒に居たいお」
(*゚ー゚)「そうだよね!
だって、ブーン君は私が好きだし、だから――」
( ^ω^)「――でも、そうはいかないんだお」
(*゚ー゚)「……どうして?」
不思議そうに、そしてあからさまに不機嫌だという口調でしぃは返した。
それでも内藤は淡々と言葉を紡ぐ。
- 42 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:21:51
- ( ^ω^)「君は、生きてるんだお」
(*゚ー゚)「……え?」
( ^ω^)「病院で、昏睡状態のまま目を覚まさないでいる。
トラックで轢かれたけど、本当は死んでなんていなかったんだお」
(*゚ー゚)「…………」
( ^ω^)「体の方は、もう大分前に完治してるってジョルジュが言ってたお。
後は意識を取り戻せれば良いんだけど……何故だか原因不明の仮死状態に陥っている」
( ^ω^)「きっと、それは……君の魂がここにいるからだと思うんだお。
戻りたいと願えば、もしかしたら戻れるんじゃないかって……僕はそう思うお」
(*゚ー゚)「……ふぅん」
反応は、内藤が思っていた以上に小さなものだった。
驚きのあまり、といった訳でもなく、唯単に興味がないというような。
- 43 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:22:08
- ( ^ω^)「……元の体に戻りたくないのかお?」
(*゚ー゚)「少しはね、そう思うかな」
( ^ω^)「……少し?」
(*゚ー゚)「だって、元に戻ったら……」
( ^ω^)「何か、困ることでもあるのかお_?」
(*゚ー゚)「……私はさ、自分の体に戻ったとして……ブーン君のことを忘れちゃったりしないかな?」
( ^ω^)「あ……」
- 44 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:22:50
- (*゚ー゚)「こんな有り得ないはずの体験をして、その記憶が残るだなんて確証は持てないよね?
ううん、それどころか記憶が無くなっちゃう可能性の方が高い。
もっと言うなら、今私が見ているのは全部夢なのかもしれないよね?」
(;^ω^)「ぼ、僕は夢なんかじゃ……」
(*゚ー゚)「ブーン君がそう言ったって、それが本当だって証拠がある訳じゃない。
嘘じゃないって信じたい心が見せた、幻の言葉なのかもしれないんだもん」
(;^ω^)「で、でも、ジョルジュは! 家族だって心配してるし……!!」
(*゚ー゚)「私は酷い子なんだよ、家族のことよりも自分のことを優先したいんだ。
ブーン君のこと、忘れたくないよ、離れたくないよ、どうすればいいの?」
その思いつめた表情と、大きな想いの乗せられた言葉を、誰に否定することが出来るだろうか。
ましてや、自分を好いているからこその問題なのだ。
内藤には、とても答えが出せそうにはなかった。
- 45 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:23:13
- (*゚ー゚)「……本当はね、ちょっと前から本当の自分が生きてるって気が付いてたんだ」
( ^ω^)「……え?」
(*゚ー゚)「目を閉じると、誰かが呼んでいる気がするの。
それはきっと本当の私、体が戻ってきてほしいって呼んでるんだ、ふらふらしてるこの私を」
(*゚ー゚)「でも聞こえない振りをしていた。
今が楽しくて、幸せで……このままでいたいなぁって思っちゃった。
それこそ、元の生活に戻るのが嫌なくらい」
(*゚ー゚)「ねぇ、ブーン君、告白の返事だけど、やっぱり私は貴方が好き。
もしも好きって言ってくれた時の気持ちが変わってないなら、私と一緒にいよう?
この公園の、このベンチでずっとずっと……ね?」
ふと、今存在している場所が、現実ではないような錯覚にとらわれた。
いや実際そうなのかもしれない。 この返事次第ではもう戻れなくなるのだろう。
深く、後悔しないように考える。
- 46 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:23:40
- 答えを出すのは難しい。
だが、今出来る事は為さなければならない。
彼女の想いを否定はしない。
自分の気持ちに嘘はつかない。
唯、自分出来ることだけを考えた結果がこれだった。
( ^ω^)「しぃちゃん、大好きだお」
(*゚ー゚)「え?―――」
何か、言おうとしたしぃの口を塞いだ。
自身の唇を使った―――口付けで。
- 47 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:24:07
- (*゚ー゚)「……えと」
( ^ω^)「しぃちゃん、僕はここにいるお。
確かに存在しているし、夢なんかじゃないんだお。
このキスが、温もりがその為の証明になると思うんだお」
(*゚ー゚)「…………」
( ^ω^)「それに、例え君が僕を忘れてしまったとしても、僕は君を覚えているお。
いや二人が互いを忘れてしまったとしても、きっと僕たちは愛し合うんだお。
ここに二人でいることが、運命なんだから」
支離滅裂な言葉になったって構わなかった。
しぃを不安にさせたくない。 しぃに信じてほしい。
それだけを考えて、それだけの為に今ここに存在している気がしていた。
- 48 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:24:25
- (* ー )「随分、変なこと言うんだね……」
( ^ω^)「そうかお?」
(* ー )「そうだよ、そうなれば良いって希望を全部連ねてるだけじゃん……」
でも、としぃは続けた。
(*;ー:)「本当に…本当にそうなれば良いよね……」
( ^ω^)「……お!」
(*;ー:)「運命なんてさ、良く分かんないけど……。
ブーン君と一緒になるのが運命だって言うなら、信じてもいいよね……」
( ^ω^)「もちろんだお!」
- 49 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:24:43
- (*;ー:)「絶対、絶対私のこと忘れないでね?」
( ^ω^)「忘れたくても、忘れらんないお」
(*;ー:)「また会ったら、その時も好きだって言ってね?」
( ^ω^)「しぃちゃんも言ってくれると嬉しいお」
(*;ー:)「アイスも奢ってね?」
( ^ω^)「何でも買ってあげるお!」
(*;ー:)「……ずっとずっと一緒に居てね?」
( ^ω^)「ずっとずっと……ずっーーーーと一緒だお!」
- 50 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:25:17
- (*;ー:)「……ありがとう、私なんだか頑張れる気がする」
( ^ω^)「大丈夫だお、しぃちゃんは僕よりずっと良い子だから」
(*;ー:)「だよね、ブーン君頼りないもんね」
(;^ω^)「う……人にそう言われるとちょっぴり傷ついたり」
(*;ー:)「でも……優しくて、頑張る時は頑張れて、面白くて……。
ちょっぴりドジで、一緒にいると楽しくて、幸せな気分になれて……。
私はそんなブーン君が大好きだったから、これはホントの本当だから」
( ^ω^)「うん……」
しぃは、こぼれおちる涙を腕で拭った。
それでも涙は溢れ出てきたけど、流れる前に、顔をこちらに向けて。
- 51 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:25:36
-
『絶対、また会おうね!
―――約束だよ!!』
今までで一番の笑顔を見せてくれた。
可愛くて、愛しい少女の、最高の贈り物だった。
- 52 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:26:16
-
( ^ω^)「……お?」
そこはいつも美府公園に行く前に通うコンビニの前だった。
何故、こんなところにいるのか見当もつかない。
呆然と立ちすくむ。
暫くそうした後、ようやく記憶が戻ってくる。
少女の――泣きながら笑うしぃの姿が脳裏に浮かんだ。
(;^ω^)「しぃちゃん!」
叫び、公園に向かおうとする。
しかし、何故だか道がわからなかった。
というより、今までどうやってあの場所へ行っていたのかが思い出せない。
細道を使用していた気がしたが、そこに道などはなく、見覚えのない雑貨屋が存在していた。
- 53 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 21:26:56
-
その時、一陣の風が通り抜ける。
暑さも一瞬で掻き消され、身震いが体に訪れた。
秋の訪れを予感させる。
夏はどこかへと消え去る前に異変を残していく。
まるで少女が夏に攫われたかのようだった。
【最終話:おしまい】
- 54 :名無しさん:2009/04/05(日) 21:27:52
- もう少し、あとすこし!
やれる気がしますです!
無理やり感?……大丈夫、きっと。
- 55 :名無しさん:2009/04/05(日) 22:07:43
- 頑張れ!
- 56 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 22:26:55
- 【エピローグ】
「なぁ、知ってるか?」
「何を?」
男の問いかけに、女は『聞かせて』という意味を込めてそう返した。
女の乗った車いすを押しながら、男は語り始める。
「この街の都市伝説なんだけどな。
不思議な公園の話」
「へぇ、どんなの?」
「何でも、そこには一組の男女しか入れないんだとよ。
んで、出られなくなっちゃう訳だが……無事脱出すると二人には愛が芽生えているとかなんとか」
「ホラーなんだか、ロマンチックなんだか、はっきりしないね」
「……そう言われれば……そうかもなぁ……」
男は淡白な答えに満足いかないのか、やや残念そうに零した。
- 57 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 22:27:25
- 「でも私は信じるよ、その話」
「お、まじか?」
「きっと、そこにはベンチがあってね、二人はそこで語り合うんだよ!
ここを出てもずっと一緒だよ……なんて言っちゃったりしてさ!」
「お前がそんな妄想するなんて珍しい……暑さで頭がおかしくなったか?」
「……別に良いじゃん、私は、本当にそういうことがあるって知ってるんだもん」
「怒るなよー、冗談だって、俺も信じてる信じてる!」
「絶対嘘だ……」
拗ねた様子を見せる女と、それを調子よくなだめようとする男。
この二人の関係は、こんな風に続いているらしい。
- 58 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 22:27:46
- 「……あ、ちょっと待って『お兄ちゃん』」
「どうした?」
兄は言われるがまま車椅子を止める。
妹はどこか虚空を見つめたまま、視線を動かそうとしない。
「ここで待っててくれないかな、行きたい所があるんだ」
「俺が一緒じゃダメなのか?」
「うん……どうしても、私一人で行かないと」
あまり我儘を言うタイプではないだったので、妹の発言に兄は少し驚かされた。
何かとても大事なことがある。 そういった風だった。
- 59 : ◆9d9cVF02x2:2009/04/05(日) 22:28:22
-
「わかった……でもすぐ帰ってこいよ?」
「ありがとう! お兄ちゃん!!」
妹はお礼を言うなり精一杯の力で車椅子を漕ぎだした。
心配になった兄は、ずっとその背中を見つめ続ける。
そして、風が吹いた。
目にゴミが入ったらしく、目を擦る。
すると、先までそこにいた筈の妹がいなくなった。
少し周囲を見渡してみるが、どこ
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