( ^ω^)ブーン小説作家のようです 後編 戻る
- 145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:28:59.09 ID:XcT7i+xA0
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休止から、1週間が経った。
未だ絶えないアドレイバー休止の論争。
「読者が作品を潰した」
「某スレのせいだ」
「いや、違うだろ」
あらゆる論争が飛び交い、復活を望む声も未だ多く残っていた。
('A`)「ま、こいつはもう潰れたし、別の標的でも探すか」
ドクオは満足そうに笑い、某スレを覗く。
しかし、そこで話題になっているのはアドレイバーのことばかり。
('A`)「チッ! 潰しがいのある新人は他にいねーのかよ」
まとめサイトを巡回するも、どれもぱっとしない作品ばかりだ。
- 149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:31:51.46 ID:XcT7i+xA0
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('A`)「……」
ふと、ドクオは物足りなさを感じていた。
アドレイバー。二十話まで投下していたが、あそこまでつぶしが楽しめた作品は未だかつて無かった。
信じられないほどの人気と話題力。
多くの人間が集まっているスレは、祭りのような状態だった。
その近くで雑談する某スレは、いわば祭りの近くの公園。
それが、今はどうだ。
祭りの終わった跡地には、寂れた大地。
祭りの余韻すら残らず、残された人々はむなしさを嘆いている。
- 153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:34:31.84 ID:XcT7i+xA0
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その影響は、ブーン系全体に及んでいた。
作品が更新されても、某スレが立たなくなった。
どことなく、どの作品も元気が無くなった様に見えた。
('A`)「なんだよ……つまんねぇな」
ドクオはブーン系を開いていたブラウザを閉じ、ニコニコ動画を見る。
画面には、組曲や歌ってみた、などのオナニー動画が映し出されている。
('A`)「……」
心に、穴があいたみたいだ。
ドクオは、PCの電源を切り、今日は早めに就寝した。
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:37:49.74 ID:XcT7i+xA0
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――……
(´・ω・`)「じゃーねー」
「おう、また明日!」
学校の帰り道。
部活に入っていないショボンは、一人、帰宅する。
(´・ω・`)「……」
PCの電源をいれ、すぐにブーン系のスレ一覧を開く。
(´・ω・`)「やっぱり、きてないか」
ため息をはき、PCの電源を再び切った。
休止宣言から、一週間以上が経った。
アドレイバーの更新がなくなった後、僕は他のネット小説を見て回ったが
どれもイマイチな出来で、次第にネットから遠ざかっていった。
勉強をしたり、友達と遊んだり、文化祭の手伝いをしたり……
楽しかった。毎日が、満たされていた。
しかし、何かが足りない。日常では決して補えない、あの感覚が。
- 161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:39:54.82 ID:XcT7i+xA0
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(´・ω・`)「もう、更新しないのかな」
作品の中で、アドレイバーになったブーンは、今も葛藤し続けてるのだろうか。
敵組織のボス、ロマネスクの過去はどうなっているのか。ツンとの恋は?
(´・ω・`)「……忘れよう」
そうだ、所詮は、素人の書いた小説もどき。
逃亡なんて、よくあることじゃないか……。
そうだ、忘れれば、いいんだ……。
- 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:42:41.12 ID:XcT7i+xA0
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――……
( ^ω^)「いらっしゃいませー」
ブーン系小説をやめたブーンは、大学も中退しアルバイトをしていた。
余った時間を全てバイトに打ち込み、ネットをする時間を減らしたのだ。
( ^ω^)「……」
今でも、時々思い出す。
アドレイバーになった主人公ブーンが、戦っているシーンを。
( ^ω^)「終わったことだお。それより、これからどうするかお……」
このまま、スーパーに就職でもするか。
そんな事を考えながら、ブーンはバイトを終え帰路に着いた。
- 169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:44:50.40 ID:XcT7i+xA0
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J( 'ー`)し 「おかえり、ブーン」
( ^ω^)「ただいまだお、カーチャン」
家に帰れば、母のおいしい手料理が待っていた。
腹ペコだったブーンは、それをおいしそうに食べる。
J( 'ー`)し 「どうだい? おいしいかい」
( ^ω^)「うんだお。すごくおいしいお」
母親とも、少しずつ話すようになってきた。
小学生のような会話だけど、ブーンにはそれが癒しとなっていたのだ。
( ^ω^)「ごちそうさまだお」
ご飯を食べ終え、自室へと向かう。
( ^ω^)「そうだ、就職のこと、ぐぐってみるかお」
久々に、ブーンはネットを開いた。
- 173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:48:26.95 ID:XcT7i+xA0
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(;^ω^)「やっぱり中退からの就職は難しいかお」
カチカチとマウスを動かし、ブーンはネットサーフィンする。
色んなサイトを回ったが、どこも同じようなことし書かれていなかった。
( ^ω^)「お……」
お気に入りの中に、ブーン系小説スレ一覧、というのがあった。
もう1ヶ月も見ていないそのサイト。
ブーンはなんとなく、そのサイトを開いた。
( ^ω^)「おー、懐かしいお」
そこに並んでいるのは、VIPに投下されている作品だ。
しかし、現行の数は少なく、総合案内も保守ばかりであった。
( ^ω^)「なんか……過疎ってるお」
ブーンはとりあえず、唯一の現行であるスレを開き、ROMることにした。
( ・∀・)モララーが絵本を読むようです
- 178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:50:45.30 ID:XcT7i+xA0
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( ^ω^)「……」
その作品は、ありがちな絵本形式の作品だった。
支援もほとんどなく、スレでは淡々と1のレスが続いている。
作品自体は、悪くない。
丁寧に作られており、悪役もいるし、主人公もしっかり性格付けがされている。
( ^ω^)「……支援、全然ついてないお」
同情を感じ、支援を打ってやろうかと思う。
しかし、それすらも面倒に感じ、ブーンはただROMりながら、リロードを押していた。
- 184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:54:02.71 ID:XcT7i+xA0
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その作品は、森の神様であるモララーと、動物達の交流から物語が始まる。
ほのぼのとした場面が続き、しかし、中盤で人間達が都市開発のために、森を壊し始める。
そして終盤。モララーは自らの命を断ち切って、荒れた大地に木々を生やした。
人間達はその光景に驚き、自らの行いを反省し自然との共存を考えるようになる……。
( ^ω^)「奇麗事だお」
純粋な、感想だった。
世の中、こんな綺麗に進むわけが無い。
それが、この作品をイマイチにしているとブーンは感じた。
- 194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 16:55:51.04 ID:XcT7i+xA0
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( ^ω^)「もっと人間の醜い部分。そして、死亡とかそういう山場を増やさないと
ただ、よかったねって感じになって終わりだお」
ブーンは無意識のうちに、そのアドバイスをスレに書き込んだ。
場違いな書き込みなのは、わかっていた。
しかし、ブーンは書き込みのボタンを押した。
( ・∀・)「……」
まばらな乙の中、作者から、返信レスが書き込まれた。
- 205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:01:17.12 ID:XcT7i+xA0
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( ・∀・)「確かに、物語としてみればそういうストーリーの方が面白かったかもしれません。
でも、これは僕が考えたストーリーですから、僕の好きなハッピーエンドで終わらせました。
読者さんの中には、あまり面白くないと感じた人もいるかもしれません」
長文による、返信だった。
ブーンは続きを読む。
( ・∀・)「でも、僕は楽しめました。話を考えている時、投下している時、すごく楽しかった。
そして何より、作品を完結することができた。これ以上は何も望みませんし、批評もお願いしません。
僕自身が、一番満足してるんですから」
心が、揺れた。
( ^ω^)「なんでこんなに……楽しそうなんだお」
文面から伝わってくる、生き生きとした作者の言葉。
昔なら、叩かれるのを恐れて発言しなかった作者達。
それが、どうだ。
この作者は、堂々と、自らの考えを述べている。
この作品は、自己満足だ、と。そう言っているのだ。
- 214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:03:57.95 ID:XcT7i+xA0
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( ;ω;)「あ、あ……!!」
不意に、ブーンの心に、初めてブーン系小説を書いた時の気持ちが湧き上がってきた。
自分の思い通りの話が作れて、
好き勝手にキャラを動かして、
伏線も、ストーリーもめちゃくちゃだったけど、完結させて……総合に投下して……
楽しかった。
誰かの為とかじゃなく、自分が楽しいから、書いていたんだ。
何かに縛られる事も無く、自分のやりたいように、書いていた。振舞っていた。
- 222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:06:29.40 ID:XcT7i+xA0
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僕はそのスレに、最大級の気持ちを込めて「乙」と書き込んだ。
乙。
たった、一文字。
だけど、そこに込めた気持ちは、五文字。
( ^ω^)「ありがとう」
ブーンは、しばらく使っていなかったワードを呼び起こす。
時の止まっていた作品に、再び命を吹き込む作業に入る。
( ^ω^)「ごめんな、ずっと、放置してしまってたお」
ブーンがアドレイバーになるようです。
そこに描かれたAA達が、おかえり、と言っているように、ブーンは感じた。
- 237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:09:15.99 ID:XcT7i+xA0
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( ^ω^)ブーンがアドレイバーになるようです
いつもの投下時刻。
スレ一覧に、その名前が載った。
ブーン「休止撤回です。また、投下するのでよろしくお願いします」
今度は、誰のためでもない。
自分のために。この作品を最後まで投下するために。
それは、自己満足だ。スレの反応や状態は、読者に任せればいい。僕の口出しする事じゃない。
さあ、始めよう。
最高の、自己満足を。
- 246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:11:18.03 ID:XcT7i+xA0
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川;゚ -゚)「ドクオー!!ドクオ!!!ちょっとこい!!」
('A`)「なんだよ姉貴。永久就職は成功したのか?」
川 ゚ -゚)「そんな事はどうでもいい! 早くVIPを見るんだ!!」
('A`)「あー? 俺、いまFFで忙しいんだよ」
川 ゚ -゚)「いいから早く! アドレイバーが復活してるぞ!!」
ドクオは持っていたコントローラーを落とした。
(;'A`)「な、何だって――――!?」
- 264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:14:21.37 ID:XcT7i+xA0
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「もしもし!? ショボン、見ろよ! アドレイバーが復活してるぜ!!」
(´・ω・`)「ああ。僕も今、リアルタイムで見ているよ」
ショボンはリロードを何回も押しながら、電話で友達と話す。
その声は、心底嬉しそうな声だ。
「おいおい、見ろよ! あの荒れようが嘘みてえだ!!支援とwktkで埋まってるぜ!!」
(´・ω・`)「ああ。僕もいま、必死で打ち込んでるよ」
ショボンはwktkとスレに書き込む。
リロードすれば、画面いっぱいに広がる支援やwktk、どうなる!?とかミルナァァァ!などの叫び声。
(´・ω・`)「世界が、広がっている……まるで、アドレイバーの世界の中にいるみたいだよ」
- 278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:17:13.48 ID:XcT7i+xA0
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(;'A`)「ちっきしょー!! 待たせやがってようやく復帰かよ!!」
川 ゚ -゚)「どけ! 私が先に見るんだ! 続きが気になって仕方なかったんだぞ!」
('A`)「やかましい! 俺だって徹夜で読んじゃって何回も読み直してるんだ!!」
川#゚ -゚)「だまれラドンが! 作品も書かないくせに偉そうに!」
(;'A`)「うっせー! 次回作の参考にすんだよ!!」
PCを取り合い、ドクオとクーはてんやわんやしている。
足払いをかけ、素早くPCの前に陣取ったクーは、ある言葉を打ち込んだ。
川 ゚ -゚)「支援!」
- 288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:18:47.60 ID:XcT7i+xA0
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( ゚∀゚)「何だこのパートスレ……」
( ,,゚Д゚)「すげぇ。支援ばっか」
ミ,,゚Д゚彡「つーかめっちゃ伸びてね? 面白いのかな」
普段はブーン系などに見向きもしないヴィッパー達。
しかし、空気を読み、流れに乗る彼らは、ある言葉を書き込んだ。
( ゚∀゚)( ,,゚Д゚)ミ,,゚Д゚彡「支援!!」
- 302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:21:18.07 ID:XcT7i+xA0
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( ・∀・)「本当に面白い作品だ」
モララーは、本業である絵本を描く手を止め、PCに食い入るように見入っている。
( ・∀・)「俺も、人の心に呼びかけるような絵本を書きたいぜ」
彼もまた、想いを込めて二文字の言葉を打ち込む
( ・∀・)「支援、と」
- 348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:25:03.94 ID:XcT7i+xA0
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あらゆる人々が、そのスレに集結した。
ブーン系を見放し、それでもROMしていた人々が。
作品を破棄し、己に諦めをつけていた人々が。
まとめサイトを管理している、中の人が。
いつもは叩きをしている人々が。
彼らには、共通点があった。
それは、ブーン系小説が、好きだという事だ。
それらの想いを呼び起こしたのは、一つの、しかし壮大な作品。
それを取り巻く、全てのものが物語となり、皆の気持ちを一つにまとめたのだ。
- 384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:28:17.47 ID:XcT7i+xA0
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( ^ω^)ブーンがアドレイバーになったようです
ブーン系を復活させたと言われた名作は、それから毎日のように投下され、
僅か一ヵ月後に完結した。
最後のスレには、乙という文字がずらりと並んでいた。
以降、過疎っていたブーン系小説は再び息を吹き返し、新しいまとめサイトも生まれた。
当然、某スレも立ったし、叩きや馴れ合いもいまだに存在している。
しかし、それでも彼らは、ブーン系が大好きなのだ。
だからこそ、無くならない。
だからこそ、彼らは今日も書き続ける。
- 414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:30:47.58 ID:XcT7i+xA0
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( ^ω^)「楽しい事も、辛い事も、全部含めてブーン系小説なんだお。
叩かれて辛い? そう言う時もあるお。だけど、そんな時は思い出して欲しいお。
書いている時の、あのwktk感を。あの楽しさを。きっと、君は大丈夫だお。さあ、一緒にブーン系を楽しもうお!」
- 427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/06(日) 17:31:59.28 ID:XcT7i+xA0
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( ^ω^)ブーン小説作家のようです
全てのブーン系小説に、乙。
そして、これからのブーン系小説に……
「「支援!!」」
( ^ω^)ブーン小説作家のようです
Fin
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