それが最後のコーヒーとなるようです

 

141 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:11:43.99 ID:Xotv13Tr0
あぁ、今日はなんて素晴らしい快晴の日だろう!
うんざりするこの乾いた熱気も、運河の涼やかさで和らいで、心地良さすら感じられる
私は今、サン・マルコ広場の前のカフェのオープンテラスで
1人黄昏れながら、しみじみとイタリアの味を噛み締めていた

……かつての相棒が、私の退職祝いに、30年越しの再会を約束してくれたのだ
私の最後の大仕事に対する報酬を、その手で渡してくれるらしい
―――というのも、彼は私の組織のボスであり、特に私などは易々と会えない人であった―――

……あぁ、それにしてもコーヒーが上手い、何と言う豆か聞いてみると……
どうもイリー豆というらしい、後で家にも取り寄せることとしようか
とにもかくにも気分が良い、それに、イタリアで飲む最後のコーヒーが最高級のものだなんて、何と洒落たことか



―――――それが最後のコーヒーとなるようです――――――



あぁ、彼はまだ来ないのか。私の胸は期待と不安で高鳴っている



142 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:12:15.43 ID:Xotv13Tr0
……私の心中を知ってか知らずか、大きな鐘の音が広場、更に街全体を大きく包む
広場の時計塔が、今は3時であると告げたのだ
普段この時計塔が時を告げることはないのだが
復活祭から40日後の今日は、例外であるらしい


その作動した仕掛けを見て感傷に浸る内、私はふと、自分について考えて込んでいた
―――今までの自分は、まるでロボットだ。与えられた仕事をこなすのみの人形だ
しかし、本当にこれからもそうやって生きるべきなのか。最近はこのことばかり考えているのだが……


―――その時だ、思考の海に泳ぐ私を釣り上げる者が現れたのは


从^∀从「失礼。良ければ、ティータイムをご一緒しません?」



143 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:12:48.73 ID:Xotv13Tr0
……女の目の前には、コーヒーを片手に何か考え込んだ初老の白髪紳士が座っていた
女が声をかけると、彼は何事かと驚いて女の方を向いた
しばしその、理想的な豊満な体つきを眺めてから、彼は穏やかな声で語りかけた


('A`)「……それは、私に対して言ったのかい? それとも……」


  _
( ゚∀゚)



('A`)「先程傍を通った、眉毛の素敵な彼に言いそびれたものかな」

从^∀从「ご冗談を。瞳は前についてますのよ?」



144 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:13:19.78 ID:Xotv13Tr0
('A`)「……うぅん……これは全く、奇怪な……」

('A`)「60過ぎの白髪の老人が口説かれた相手は、あなたのようなお嬢さんだなんて……
一体誰が得をするのでしょう?」

从 ゚∀从「私ですね。老人と婦人の禁じられた愛、あぁ何と背徳的!」

('A`)「おやおや…………私の息子が生きていれば、きっと大賛成したことでしょう」

从-∀从「……これは、お気の毒に。軽率でした」

(;'A`)「あ、あぁいえ! そう言う訳では!……ん……
えぇと、つまり、彼は彼の役目を果たしたので、気になさることはないのです」

从 ゚∀从「そうでしょうか……」

('A`)「そうですとも…………あぁ、通じない下卑な冗句が、かくも痛ましいとは……」

从^∀从「……?」



145 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:14:10.36 ID:Xotv13Tr0
('A`)「……今更ながら、私にはこの後会う用事がありますよ。おまけに妻子持ちだ」

从 ゚∀从「でしたら、その方が来るまででも。後、私自身は禁断の愛など求めてませんよ?」

('A`)「ふむ……なるほど、老爺の淡い恋心は持て余すに限りますな」

从^∀从「ご冗談がお上手で……ますます、午後の平和な一時を共にしたくなりました」

('A`)「はっは、どうも先程からあなたのペースだ……
これだから、イタリア人男性は女好きで調子者なのだ、とバカにされる……ん、失敬」


目の前の白髪老人は、その手をそっと、しかし力強く挙げた
―――皺にまみれているものの、仕事をその手で成した男ならではの手だ―――
ウェイターを呼ぶ為だろうか、現に、先の眉毛のウェイターは来てしまった
だが、どうも違うらしい。丁重に謝ってそれを帰したのだ



146 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:15:06.68 ID:Xotv13Tr0
从 ゚∀从「……どうなさいました?」

('A`)「あぁ、いえ。向こうの部下共に挨拶を」

从 ゚∀从「どういったもので?」

(‘∀`)「『どうだ、私もまだまだイケるだろう』ってね」

从^∀从「これはこれは……『老いてなお健在』とは、見習いたいものです」

('A`)「はは、光栄です。けどね、健在というのは少し違う。私は、今日を境に退職するのですから」

从 ゚∀从「それは失敬……もう退職ですか? 気力ありそうなお方なのに」

('A`)「見た目が良かろうが、中がガタガタで上手く機能しない、というのは良くある話ですよ」


話疲れたかのように、白髪老人はカップを持ち上げ
香りを楽しんだかと思うと、一気に飲み干してしまった
傍のウェイターが、空いたカップに再びコーヒーを注ぐ
その時に老人は、女の分にと、自分と同じコーヒーを注文してやった



147 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:15:27.53 ID:Xotv13Tr0
('A`)「……しかし、あれですな。最近のイタリアは、ますますもって明るい」

从 ゚∀从「明るく、ですか。というと?」

('A`)「お若い方はご存知ないか……
今はヴェネツィアも、水の都なんて名がありますがね
昔、この辺りには、そりゃあどでかい農場がいくつも並んでいたもんですよ」

从 ゚∀从「あぁ、祖母が口酸っぱく教えてくれましたよ」

('A`)「良いことです。懐古と言われようが、過去は大事にすべきだからね
大地主制を解体させた方々には、つくづく感謝せねば……」

从 ゚∀从「誠にその通りでしょうね……ですけど、祖母はこう続けていましたっけ」

('A`)「ふむ、何とだね?」


从 ゚∀从「……『地主がトンズラしたら、今度はマフィア。パン一切れだって増えやしなかった』と」



148 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:16:19.98 ID:Xotv13Tr0
刹那、騒がしかったはずのカフェに、一筋の静寂がこぼれ落ちた
たった一瞬、けれど女には永遠とも言える程の一瞬だった
……その時、ウェイターが女の元にコーヒーを届けに来たのは、幸いなことだっただろう


('A`)「…………ふふっ、なるほど、なるほど……素晴らしい教育だ
ですがね……あなたのお婆さまは、一つ勘違いなさってる」

从 ゚∀从「勘違い、ですか。それは?」


('A`)「この土地に来たのはな、あの薄汚く、愚図で、のろまなマフィアなんかじゃあなく
我らがデルブレンタ――del Brenta――ってことだ」


目の前に居た筈の好々爺は、狡猾な老狼に喰い尽くされたようだ
隙を見せれば、今度はこちらが何もかも貪り尽くされる
そう考えた女は、白髪老人の変貌振りには気付かぬ顔をして、こう続けた


从-∀从「……大変申し訳ありません。無知は罪といいますが
隣人の名誉を汚す事に勝る大罪もないでしょう、どうかお許しを」

('A`)「いえ、分かれば良いのです。無知を恥じろとは言いません……」



150 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:16:53.15 ID:Xotv13Tr0
先ほどとは打って変わって和やかな声調であったが
もはや胸の中に渦巻く暴力的な混沌を隠そうとはしていなかった

……だが、女もただ圧倒されていた訳ではない
胸の中の確信―――成すべき使命を持つという自負―――
それが彼女を奮い立たせた。沸き起こる勇気は、鋭く光る銃弾となる
……彼女ははっきりと尋ねた


从 ゚∀从「……そして、あなたがデルブレンタの一員というのなら
是非とも意見を伺いたいのです」

('A`)「……ほぉ。中々胆の座ったお嬢さん、いや失敬、淑女のようだ
私などで良ければ、答えましょう」

从 ゚∀从「……最近のデルブレンタの隆盛は、著しい
マスコミはこぞってあなた方の活躍を、尻尾を振っては待ち構えていますね」

('A`)「……」


白髪老人は、何を当たり前のことを、と呆れたような
しかし一方で、勝利者のみが独占出来る恍惚の笑みをちらつかせていた



151 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:17:31.78 ID:Xotv13Tr0
从 ゚∀从「……しかし、ドクオさん」

('A`)「……」


教えてもいない名前を呼ばれても、白髪老人が狼狽えることはなかった
それは余裕から来るものだったのか、それともそうではないのか
だが、そんな白髪老人に構わず、女は続けた


从 ゚∀从「不思議な事に、貴方に関しての情報はこれっぽっちも聞かないんですよ
一体これは何故でしょう、貴方の口から教えて頂きたい」

('A`)「…………ハッ! アハッ、アハッハッハッハ!…………
貴方を買い被っていたようだね! 大罪は2度犯すべからず、分かりますね?」


緊張の絶えない会食であったが
この時の、絶対零度のようなドクオの怒り、純然たる殺意は
ドクオの人生の中ですら、二度と再現することは出来ないだろう



153 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:18:16.60 ID:Xotv13Tr0
……しかし女の正義は、それでも折れない



从 ゚∀从「でもですね、ドクオさん。貴方はデルブレンタを創設した1人じゃありませんか?」



その言葉が出た瞬間、白髪老人は初めて狼狽した様子を見せた



(#'A`)「……ッ! バカバカしい、何を考えてそんなッ! 適当なことは言うな!」

从 ゚∀从「どうかお気持ちを鎮めて……パリスヒルトンも真っ青の注目っぷりだ」

(#'A`)「……どうやらねぇ、あんたの祖母は一番大事な教育をし損ねたらしい!
支配者に逆らうべからず、ってな!」



もはや白髪老人は、心中の邪悪な感情を隠さない
昂る感情そのままに吐き出される汚らしい言葉は、しかし彼の気高い姿勢と相まって
女の肉も骨も魂すらも引き裂いてしまうかのような、そんな暴力性に溢れていた
……だが、女はなおも屈さない。言葉は紡がれる



154 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:19:16.84 ID:Xotv13Tr0
从 ゚∀从「そう、そこです。私が言いたいことは」

('A`)「あぁやっとかい。……まだるっこしくて、ねちねちとしてて!
まるで私に媚びへつらう女が、ふぅ、陰部から滴らせる愛液のようなね!
げへっ、気持ちの悪い会話も、はぁ、やっと、終わるってのかい!」

从 ゚∀从「えぇ、今まで貴方に声をかけたのなんて、路地裏の花売り位なものでしょうが」

('A`)「貴様なんぞ、50年も昔なら、炭坑に備え付けの慰安婦として、1日たりとも生き残れまい
……っと、もういい、もう疲れた。用件を言え。下らなければ殺す。そうでなくとも殺すがな」



やっと餌に食いついた、と女が机の下で、秘かに拳を握りしめると
続けて、これ以上無い程愛想を振りまいた笑顔を浮かべて言った



从^∀从「ならば率直に言いましょう。貴方をこちらの”マフィア”に迎え入れたい
そして、新たな支配者となりましょう!」



('A`)「…………は?」



155 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:19:51.27 ID:Xotv13Tr0
从 ゚∀从「分かりにくいかな。つまりね、貴方、カルロ・ドックオを、
我々マフィア、”VIP”の一員、いえ、幹部として迎え入れたいのです」




('A`)「………………ぶっ」


(‘∀`)「はっは! あーっはっはっは! これはこれは!
ま、まさか、あなたがあの”VIP”の一員だなんて、そんなジョークを言うとは!
イタリアに吹く熱風に聞いても、分からなかったことでしょう!」


('A`)「…………だけどね、先程言ったろう。下らなければ殺すと。
残念だがね、貴方以上の大罪を犯す事を私は決断したよ」


从 ゚∀从「……こちらも時間がない。楽しい会談を続けたいのは山々だが……」

从 ゚∀从つ□「……こちらを」



156 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:20:44.91 ID:Xotv13Tr0
('A`)「……なんだ、その紙は」

从 ゚∀从つ□「用心深いですね、指紋を取ろうなんて考えませんよ
むしろ、貴方との契約をスムーズにさせる魔法の契約書なんですから」

□ど('A`)「……はぁ?……分かったよ。いい加減、君にはうんざりだからな。どれ、……」



('A`)「…………」


(;'A`)「………………ッ!……………」




何度も何度もその紙を舐め尽くすように眺めた後
白髪老人は観念したかのように、ぼそりと呟いた



(ii'A`)「…………はぁ…………色々、聞きたいことはあるがな……」

('A`)「……まず始めに。これ、どうやって調べた?」



157 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:21:29.22 ID:Xotv13Tr0

その紙に書かれていたのは、今までドクオが手がけた犯罪全て
大小の区別なく、あまり残さず記したリストだったのだ



しかし、ドクオが驚いたのは”それ自体”にではない
……”マフィア”の中ですら、ただ1人ドクオのボスを除いて、犯罪者としての”ドックオ”を知る者はいなかったのだ
「組織の一員として、しかし決して”裏社会の表舞台”に立たず、着実に仕事をこなす誠実な人間」
それが彼の自負心の拠り所だったが、この瞬間、それに大きなヒビが入ってしまった



从 ゚∀从「……貴方を幹部に据えようというマフィアが存在するのです
この程度の調べが着かないようでは、”VIP”の名が恥じます」

('A`)「ははっ、それは、大したもんだ……
これだからイタリア男はダメなんだ……悪女と気付かず、甘い一時を夢見てしまう……」

('A`)「……隠遁間近の老人を捕まえて、こんな仕打ちとはね……」

从 ゚∀从「お分かりいただけましたか。こちらがどれ程に本気であるか……」

(#'A`)「あぁあぁ、たっぷり分かったとも。マトモな人間には無理だ!
どうせ断れば、このリストはマスコミにリークされるんだろう!
……あぁいや、貴様らがこの私を直接断罪するのが先か。貴様ら如き、汚らしいゴミ共がッ!」



158 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:22:21.94 ID:Xotv13Tr0
先程の気品溢れる態度とは真逆に、粗暴に手元のカップを持ち上げ
豪快に中の液体を飲み干した。味も、ましてや香りなど楽しもうとしない
……幾分落ち着きを取り戻したが、未だ興奮冷めやらぬようだった


('A`)「……それで、”VIP”はこの私に、一体何をさせたいのかね
先ほども言ったが、下らない要件なら容赦はしない」

釣り上げられた魚が、手元で力なくはねているようだ、と女は思う


从 ゚∀从「えぇ、その点は安心して下さい……ですが、その話の前に、一つ聞きたいことがあるのです」

('A`)「何ですかな。話も大詰めなのに、そんな」

从 ゚∀从「”ヴェネツィア・ドラッグ”」

('A`)「……ふむ?」

从 ゚∀从「これの流通経路、これが知りたい」

('A`)「……あぁ、なるほど。そんなことですか
私の罪歴を把握しても、それすら分からんのですか」


バカにするのではなく、ただ単に疑問を口にするかのような口調で老人は言った



159 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:22:48.63 ID:Xotv13Tr0
从 ゚∀从「えぇ、貴方を迎え入れる最大の利益は、目下のところこれなもので」

('A`)「…………なるほどな。薄汚いブタのいる組織は、求めるものもやはり、薄汚いものに過ぎない……」


こちらが拍子抜けする程、毒々しさの薄れた罵倒を呟くと
ドクオは観光客で賑わう広場の方をじっと見ていた
そこには、青い空と、サン・マルコ広場に堂々とそびえ立つ時計塔しかなかった
先程3時の鐘が鳴ったばかりなのに、長針はもうすぐ一周を終えるところであった


('A`)「……分かりましたよ、いい加減飽き飽きだ、もうたくさん!
早くここからオサラバしたい……待ち人も来ないとは、全く散々だ……」

从 ゚∀从「……」

('A`)「…………”アレ”はな、俺と彼のかつての努力の結晶なんだ」

从 ゚∀从「……?」

('A`)「……まぁ良い。率直に言ってしまおう
デルブレンタ所有のカルロ農場にある、古びた水車小屋に行け
袋詰めの穀粉をどかしたら地下への入り口がある……そこにあるだろうさ」



161 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:23:28.01 ID:Xotv13Tr0
从 ゚∀从「……本当ですかな」

('A`)「”マフィア”は義理を通すというが、私もそれは正しいと思うよ」

从 ゚∀从「……もう一度だけ確認を。そこで、貴方は”ドラッグ”を製造しているんですね?」

(#'A`)「しつこい奴め! 熱に浮かされたはな垂れ小僧でも、まだ幾分聞き分けがあるぞ!」

从 ゚∀从「……最後に問います。答えは”Si”?」

(#'A`)「……”Si! Lei e una prostituta!”――そうだとも! この淫売!――」



白髪老人が、空にも届くかと言う程の怒鳴り声で、口汚く女をののしった



162 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:24:05.74 ID:Xotv13Tr0
―――まさにその瞬間、不敵な笑みを零しながら
華麗さを微塵も無くした女が、勢い良く立ち上がるや否や、



从# ゚∀从「や~~っと白状しやがったか、このクッソキモジジィ! ペッペッペ!
あまりのキモさに何度吐きそうになったことか! この歩く公然わいせつ罪!」



―――アホっぽくわめいた



163 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:24:24.24 ID:Xotv13Tr0
('A`)「……あ、え?」

从 ゚∀从「なぁ~に惚けてんだコラァ、てめぇこの野郎! ……っとと、」


从^∀从「警察のみなすわぁ~~ンッ! 言質はとれましたよぉ~~ン!……だぁからァ!」


从# ゚∀从「このキモオタを、とっとと取り押さえろやぁぁあああぁぁッッ!」


====(#'_L’)うおぉぉぉおおおぉあぁぁぁああッ!!!
===(# ゚∀゚)おっぱあぁぁあッ!!!いいいッ!!!おぱああいぁッ!!!


(;'A`)「……は、はひッ!?」

(;;'A`)「あっあっ! う、うわなにをするやめあqすぇdrftぐじこlp;……」






164 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:24:49.24 ID:Xotv13Tr0
(;メ'A`)「……私も焼きが回ったもんだ……まさか、まさか……」

从* ゚∀从「この美少女ハイン様が、覆面捜査官とは思いもしなかっただろう! フハハハハァッ!」


(#'_L’)「おら! グズグズ言わんと、とっとと歩かんか!」

(;メ'A`)「クソが! こんな小さな鉄の輪で俺を……ぐうぅッ!」

从^∀从「惨めなもんだねぇい!……しっかし、
社会の癌たるクソジジィが連行されるってのは、清々しいもんだ!」


(#メ'A`)「ぐうぅ……ぐぅッ!……おい、クソ共ォ! 冥土の土産に教えろ!
これは、どこからどこまで仕組まれたものだ!?」

从 ゚∀从「あらあら、粋がっちゃってまぁw
でもま、構いませんことよ。餞別に、教えてあげるザマス!」



166 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:25:26.47 ID:Xotv13Tr0
……事の顛末はこうだ
ヴェネツィアでは、今特別なドラッグが蔓延している
その名も、”ヴェネツィア・ドラッグ”だ


単純な名前だが、その効果は絶大で、使用者の精神を限りなく高める
言わばアッパー系の薬物だ。効果の割に値段は極端に安く
刺激を求める若者を中心として、猛烈な速度で広まっていたのだ


そして、事態を重く見たヴェネツィア警察当局は
情報筋から、この薬物の流通に一枚噛む組織がデルブレンタであること
……そして、カルロ・ドックオの名前に辿り着くことが出来た


しかし、老獪な人物ドクオは、中々薬の製造工場の場所についてボロを出さない
加えて、ドクオは組織を引退して、今日を最後にイタリアから出て行ってしまうというのだ
ドクオが外国に逃げてしまっては、薬の販売元を押さえることが不可能となるだろう―――



168 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:27:14.48 ID:Xotv13Tr0
从 ゚∀从「…っつー訳でよ! このハイン様が直々に場所を聞き出そうってことになった訳!」

从 ゚∀从「ちなみにこの店の客から従業員まで、全員警察ね? あんたの部下も制圧されちゃったようだ!」

从^∀从「アタシってば、凄くね? ドヤ? ドヤ?」

(メ'A`)「……っく……いや、待て、それだけじゃ納得が……」

从# ゚∀从「あ~うざってぇ、観念してとっとと刑務所行けや!」



(メ'A`)「これで最後、あのリストのことだ! あれはどうやって手にした!?
……あれさえなければ、今頃俺とお前は逆の立場だったというのに!」

从 ゚∀从「ハッ、言ってろ……あのリストは上から送られて来たもんさ。アタシャ知らねぇよ」

(;メ'A`)「うぅぅ!……誰であろうと、私の今までの仕事がバレる訳がないんだ!
上だと? 警察上層部ごときが、一体どうやってッ!…………ん……?」


(;メ'A`)「……まさかな、まさかそんな筈は……」



169 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:28:06.20 ID:Xotv13Tr0
  _
( ゚∀゚)「車、用意してきたぜ」

('_L’)「あぁ……ハイン捜査官! 車の準備が出来たようです!」

从 ゚∀从「……ん、分かった連れてってくれ。
おらジジィ、後の話はこのフィレ坊にでも聞かせてやれや」

(;'_L’)「フィレ坊は止して下さいよ」



170 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:28:49.65 ID:Xotv13Tr0
(メ'A`)「……待てよ淫売娘、老練なる私からの最後の忠告を聞け」

('_L’)「それは無理だ、もう連れてゆくぞ」

从 ゚∀从「……待て。どうせ天国、違うか、地獄逝きなんだ。冥土の土産に言わせてやれ」

(メ’∀`)「っは、とびっきりの土産ならまだあるが……良いか、良く覚えとけよ」

(#メ'A`)「”窓の外”には気を付けろ!」

从 ゚∀从「……窓の外? それはどういう……」

(#メ'A`)「おい! 片腕野郎! とっとと俺を連れて行け!」

(;'_L’)「あ? 片腕野郎?」

从 ゚∀从「……バカ。半人前ってこった」

(#'_L’)「……”vaffanculo”!―クソったれめ!―とっととつれてってやるぜ、地獄になぁ!」



171 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:29:09.00 ID:Xotv13Tr0
('A`)「おぉ、片腕で人を連れるのは辛かろう! どうかマリア様! 願わくば、彼にもう一つの腕を!」

(#'_L’)「願うな!」

(‘∀`)「ん? なになに……おぉ、なんということだ!
『片腕であることが、フィレ坊の唯一の才能』だと! こいつぁたまげた、ハッハァ!」

(##'_L’)「あぁぁぁぁ、今ここでてめぇを地獄送りにしてやろうか!」



从 ゚∀从(……男ってやつぁ、ホント不毛だな……)



172 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:29:48.14 ID:Xotv13Tr0
……ドクオは、フィレンクトに連れられ、抵抗もなく堂々と車に乗り込むと
あっという間に道の向こうへと消えていってしまった
……ハインは、現場の状況を指示する為、残ったのだ


从 ゚∀从「……それにしても……窓の外、窓の外ねぇ?」

从 ゚∀从「ここはカフェのオープンテラスだ。窓の外って……そもそも窓なんかありゃしねぇ」

从 ゚∀从「……意味ありげな事言ってビビらそうってか……?
ま、いいか。疲れちまったし……どっこいしょっ」


ハインは、先程までドクオと話していた時の、まさにその机の上にどっしりと腰を据えた
件のカフェには、一仕事を終えた警察が、のんびりと休憩を取っていたり
一連の逮捕劇を見ていた観光客に事情を――中には、若い女性を口説く者もいるが――説明したりしている


从 ゚∀从「あー、それにしても……このコーヒーは上手いなぁ
安月給の身としては、ほいほい飲めねぇよ」


ハインも、他の同僚と同じように、激しく緊迫した一戦を繰り広げた疲れを癒す為
すっかり冷えてしまったコーヒーをゆっくり、またゆっくりと味わう
コーヒーの味など分からぬハインであったが、今はその苦みだけが彼女を労るかのようだった



173 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:31:02.03 ID:Xotv13Tr0
从 ゚∀从「ふぅ……」

コーヒーを飲み終えたハインは、机の上にカップを置き
観光客で賑わうサン・マルコ広場を見遣る
騒がしい熱気、しかし夕方が沈んでゆくこの時間帯、熱は徐々に冷めゆくことだろう
静かで豊かな夜の街を思う感傷が、今のハインの身体にはこの上なく染み入った

从 ゚∀从「夕方……か……」

視線を上げると、そこには相も変わらず大きな時計塔がある
どうも今日は1年に2日しかない、ここの鐘が鳴る日らしく
この日だけ、1時間に1回ずつそれが鳴るというのだ

从 ゚∀从「もうすぐ4時……マジか、あれからもう1時間経ったってのか?」

从 ゚∀从「……あ~あ、”30分で聞き出せる”に、20ユーロ賭けたのに……」



174 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:31:27.65 ID:Xotv13Tr0
そう言って、ハインは机の上でぼんやりとしていた
美女がカフェの軒先で、のんびりと時を過ごす様は絵になる
カフェの前を過ぎてゆく観光客の誰もが彼女を見ては、そう思った

疲れも癒え始めた頃、ハインは、ドクオの置き土産である”窓の外”という言葉をふと考え直した
「もし、カフェの店内から見れば、ここ、オープンテラスは、”窓の外”と言えるのでは?」と
「つまり、『”窓の外”に気を付けろ』とは、ここにいる事が危険であるということではないか?」と
考えがまとまらない内に、ハインは飛び起きて、周囲の人間に緊急避難するよう叫ぼうとした―――


―――そして、まさにその瞬間、4時の鐘の音が鳴り響き
ヴェネツィアの街全体に乾いた音が染み込んでいったかと思うと――――

サン・マルコ広場の一角、ハインの居たまさにそのオープンテラスで、爆発が起きた



175 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:32:04.60 ID:Xotv13Tr0
誰がその瞬間を予測し得たというのか

ハインのいた机のすぐ下に、小型爆弾が埋め込まれていて
ちょうど4時となった瞬間、無慈悲にも作動するようになっていたのだ

すぐ傍の机も窓も―――そして、人体をも巻き込んで、テラスを吹き飛ばす程の爆発は起きた
全てを破壊し尽くすかのような爆音が広場を駆け抜けていった後
大小、種々入り交じり飛び散った肉片が、広場の一角を色濃くリフォームしてしまった


……残忍極まりない今回の爆発事件は
観光客数名と、警察官十数名を死の渦へ巻き込んだことで
ヴェネツィア警察の最大の汚点と称されることとなったという―――



―――以上が、”ヴェネツィア赤染めの夕日事件”の、私の分かり得る限り全てである



177 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:33:04.22 ID:Xotv13Tr0
ちなみにだが、残忍で、狡猾だったが、最後の最後に”ヘマ”を仕出かしたカルロ・ドックオは
護送中、”不可解なトラブル”が発生して、事件当日の内に不可解な死を遂げたという
……きな臭い事に、噂では、上層部が早々と調査を打ち切るように指示したらしいが
今となっては、もう誰にも真相は分からない

……あの爆発事件は、ドクオが仕掛けたものであったのは確かだ
しかし、誰が見ても、警察上層部が今回の事件に絡んでいることは明らかだ
そうでなければ、今回の爆発事件の調査の不徹底振りは説明出来ないし
今思えば、上層部がドクオの犯罪リストを回してきたこと、
いや、ドクオの存在を掴めた事までも、何か裏を感じて仕方ないのだ

……とは言うものの、”片腕野郎の”私では、この事件はまさに手に負えないことも、分かり切っている
小心者な――だからハイン先輩に、坊やなどと呼ばれていたっけ――私には、慎ましい生活が似合っている
今飲んでいるコーヒーが、最後のコーヒーとならぬことを祈るばかりだ

……疲れた。とりあえず今日はこの辺りで終えよう
……いつの日か、この手記が、この事件を調べる者の役に立てば良いのだが


そうそう、この日は奇しくも、キリスト昇天の日であったという
ハイン先輩も浮かばれれば良いのだが

(捜査官、フィレンクトの手記より抜粋)

(次のページ以降、全てのページに渡って何か茶色い染みが一面中に広がり、読めなくなっている)


――――それが最後のコーヒーとなるようです・完――――



181 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/02/12(日) 03:36:25.38 ID:Xotv13Tr0
悪い忘れてた
お題は、一昨日もらった、「コーヒー」「窓の外」「再会」の3つでした


スレの反応

( ^ω^)ブーン系小説&イラスト練習総合案内所のようです http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328962542/l50より

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Filed under: 2012年短編 — 青空ヒート 23:51  Comments (0)
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