2ac ( ^ω^) の最高速度は215キロのようです 2ac


蒸気機関が発明され、大量の輸送が列車により可能となった。

すぐさま工場が乱立し、製品の大量生産が求められ多くの工員が生まれた。

しかし、人々はそれだけでは飽き足らず

もっと軽量でもっとコンパクトでもっと力のある機関を開発していく。

そして、内燃機関が発明された。

内燃機関により人類の悲願であった空を飛ぶ機械が出来上がった。

そしてこれは、庶民の生活にまだ飛行機が浸透するかしないかの頃のお話。





      ( ^ω^) の最高速度は215キロのようです。第一話 青空万歳




航空機メーカーが乱立し、各社が最大限の技術を注ぎ込み性能を高めていく。
けれども、まだ飛行機の方向性が決まっておらず、また性能を表す基準も無かった。

そこで各社が思いついたのが飛行艇によるレース、VIPカップへの参加。
当時はまだ、アマチュア達が自らの技術だけで参加する、いわばお祭りだった。
しかし、VIPカップの優勝者は新聞の一面に載り広く知れ渡り、近隣諸国にまでそれは及ぶ。
自社の航空機技術をアピールするために、各社の精鋭たちが腕を奮ってフラッグシップモデル開発にいそしんだ。


木の根っこのように入り組んだ川を持つニューソクシティ。
その川沿いに建っている無数の家屋の中の一つ。
というよりは、歴史はあるが風格が無いといった倉庫に二人はいた。

( ^ω^)「おいすー、ドクオ。調子はどうだお。」




 ('A`)「んああ?ブーンか。遅いじゃねぇか。
    せっかくエンジンのセッティングができたってのによ。」

( ^ω^)「じゃあ、早速機体に取り付けるお。」

 (:'A`)「一言ぐらい遅くなったことを詫びろよ。そして簡単に言うなよ。」

( ^ω^)「すまんこ、すまんこだお。そんなことより、早く取り付けるお。
      今ならまだVIPカップの下見ができるお。」

少しぽっちゃりした青年はブーンという。
顔色の悪い貧相な体格はドクオだ。



この二人にはお互いに共通していることがある。
それは、彼らの一番古い記憶はVIPカップを間近で見ていたということ。

そのときの年齢ははっきり覚えていないが
赤い飛行艇と青い飛行艇がデッドヒートしていたことをよく覚えている。

 ('A`)「ああそうだな。もう一週間もすると立ち入り禁止になっちゃうからな。」

( ^ω^)「参加する人たちは何回も飛んでるお。
      僕達も一回は飛んどかなくちゃ本番で周回遅れになっちゃうお。」

 ('A`)「周回遅れなんてみっともなくてたまんねぇからな。
    俺らが憧れた青い飛行艇はそんな無様な真似はしないよな。」

(♯^ω^)「なに言ってんだお。僕が憧れたのは赤い飛行艇だお。
       あんな気障ったらしい青なんか憧れないお。」

 (♯'A`)「んだと。あの青色は空の色だぞ。お前、空の色を馬鹿にすんのかよ。
      そっちこそなんだよ。あんな破廉恥な色を自慢げに見せてる奴のどこがいいんだよ。」

(♯^ω^)「うっさいお。大体あのレースで優勝したのは赤い飛行艇だお。」

 (♯'A`)「なに言ってんだよ青い飛行艇に決まってんじゃねぇかよ。」

幼い頃の記憶はとても曖昧で、ほんの一瞬の場面しか覚えていない。
ブーンとドクオはそれぞれの憧れている飛行艇が、相手を抜いてるときのことしか記憶していなかった。




そのせいで、毎度毎度あのレースでは赤が勝った、青が勝ったと言い張っている。
いつも通りお互いを罵り合っているとき、入り口から髭を生やした男が日光と共に入ってきた。
男は鳥打帽を無造作にかぶりオーバーオールを着ている。
  _
( ゚∀゚)「邪魔するよ。お前らまたやってんのかよ。いい加減どっちでもいいじゃないかよ。」

いつも、笑っているような顔をしているのが、今日はいつにもまして頬が緩んで

( ^ω^)「ジョルジュさんこんにちわですお。」

 ('A`)「こんちわジョルジュさん。」



  _
( ゚∀゚)「俺が貸してやったエンジンどうよ。中々調子いいだろ。」

 ('A`)「はい。おかげで今回のレースではいい線いけそうですわ。」

( ^ω^)「マジ感謝だお。ジョルジュさんのおかげでVIPカップ出れるようになったんだお。
      エンジンは高くて買えないから今回は諦めかけてたんだお。
      絶対優勝してトロフィーをこのジョルジュ工場に飾るお。」
  _
( ゚∀゚)「そうかそうか。そいつは頼もしいな。でもな今回のVIPカップはちと厳しいかも知れんぞ。
     ラウンジとか801とかの、名の知られていない中堅どころのメーカーが、会社を上げて参加するって話だからな。
     噂だがラウンジの新型機は250キロでるって話だぜ。」

 (;'A`)「まじっすか?このエンジンだと、どれくらい出ますか。」
  _
( ゚∀゚)「そうだなぁ。これだと上手く機体と合っても220がいいとこかな。
     でも噂だから心配すんなよ。この機体だって中々よくできてるぜ。
     俺が解体した飛行艇の寄せ集めだったとしてもな。うひゃひゃひゃ。」




この三人が出会ったのは今から半年前のことだった。
学校帰りにいつものごとく、どっちの飛行艇が勝ったのかを言い争っていたとき
ジョルジュが話しかけてきたのだった。
そのとき、話の流れから二人はジョルジュにVIPカップへの想いを語った。

( ^ω^)「あそこは、ヒーローの集まりだお。男の夢だお。
      特に僕が見た赤い飛行艇は、最高のヒーローだお。」

 ('A`)「あれを見て興奮しないのは男じゃないですよ。
    俺が見た青い飛行艇は、俺の目標ですよ。」

それを聞いたジョルジュはどんな具合か、二人を気に入りVIPカップに参加することを促した。
訝しがる二人だったが、ジョルジュが営む飛行艇の修理解体工場に案内され言われた。
  _
( ゚∀゚)「この中から何でも、もっていっていいからよ、お前らで飛行艇作って出場してみろよ。
     エンジンは俺が持ってるのを貸してやるからよ。一から作るより簡単だと思うぜ。
     それに場所はここ貸してやっからよ。汚さなければ好きに使っていいぜ。」

そこには、ぼろぼろになった飛行艇が、山のように積んであった。
それをみたブーンとドクオは、その山から可能性を見つけ出した。
知り合ってまだ一時間足らずのことだったが、二人はすぐさまジョルジュに感謝し
VIPカップへの参加を決めた。




それ以来、ジョルジュとの親交ができ、今ではちょくちょくお互いの家を行き来したり
隣にあるもう一つの工場からジョルジュが遊びにきたりする。

 ノパ听)「あんたぁぁー。またこんなとこでサボってんのかぁぁぁ!
      仕事つっかえてんだから早くもどってこぉぉぉい!」

ジョルジュが開けっ放しにしておいた扉から、鼓膜を振動させるの十分な声が聞こえた。
三人が一斉に声の発生源を見つめると逆光でシルエットしか見えないものの、
広い肩幅に、色気を感じさせない大きな乳房を持ち、フライパンが世界で一番似合うであろうと思われる女
ヒートが立っているのがわかった。
  _
(;゚∀゚)「今行くよ。」

 ノパ听)「早くこぉぉぉい。でなきゃアレするぞぉぉ。」
  _
(;゚∀゚)「ひぃ、じゃあなお前ら。絶対優勝しろよ。」

挨拶もそこそこにジョルジュは出て行った、




その場に取り残された二人は首をお互いの方向へ向けた。

(;^ω^)「相変わらずあの奥さん怖いお。」

 (;'A`)「あれは、フライパン一つで軍隊潰せるぞ絶対。」





 ノパ听)「あんたらぁぁ!ここ汚すんじゃないぞぉぉ!」

(;^ω^) (;'A`)「はっはい。」

神経を緩ませていた二人に怒鳴るヒート。
聞こえていたかと心配したが、すぐに戻っていったため安堵のため息を吐いた。




なぜこんなに、ヒートを怖がるのか。それはヒートに関する噂が恐怖を煽り立てていた。
代金を渋る業者の事務所に乗り込んで行き、気の荒い男10人を相手に大立ち回りをしたり
ジョルジュの浮気現場に現れ、無言でジョルジュにアイアンクローをかけて
レンガの壁に後頭部を押し当てたまま50メートル走ったりと
数えればきりが無いほどだ。


(;^ω^)「びっくりしたお。取り敢えずエンジンつけるお。」

 ('A`)「そうだな。そんで下見行こう下見。」

気を取り直して二人は寄せ集めの機体にエンジンを取り付け、燃料やスロットルなどの配線を済ませた。
倉庫の入り口とは正反対の位置にある、シャッターをあげて飛行艇を川に浮かべ
操縦席に乗り込んでエンジンテストをしつつ、会場となる場所まで運んでいった。

早く空に飛ばしたいという気持ちはあったが、この地域での飛行は禁止されている。
はやる気持ちを、ほんの一瞬だけスロットルを目一杯押し上げ、プロペラの回転速度を
わずかな時間だけ早めることでそれを抑えた。




会場は川が集結する場所で、そこは大きな湖といった感じだった。
周りの陸地ではすでに開催に向けて準備がなされており、屋台までもが開店していた。
出場者登録所まで飛行艇を持って行き、その場で審査をしてもらう。

 (,,゚Д゚)「おお、参加希望者かい?じゃあこの紙に名前と所属の会社名書いてくれ。」

( ^ω^)「僕ら会社で出るんじゃなくて、個人で出るんだお。」

 (,,゚Д゚)「そうか、ちょっと困ったな。今年から一応スポンサーの名前を入れるようになったんだ。
      お前らなんか手伝ってもらってる会社とか工場とか無いか?」

 ('A`)「そっすか。じゃあジョルジュ長岡工場でお願いします。」

( ^ω^)「そうするお。じゃ登録よろしくお願いしますお。」

 (,,゚Д゚)「おう、長岡さんとこか。気ぃつけてな。ほい、コース図。」

( ^ω^)「ジョルジュさん知ってるんですかお?」

 (,,゚Д゚)「ああ、よろしく言っといてくれ。わかってると思うが当日は三週だからな。
      それと下見の最高速度は100キロ以下だかんな。」

 ('A`)「了解っす。」




軽い応対の後、受付の男からコース図を受け取る。
それを確認してから、二人の飛行艇は300メートルほど水上を走った後、離水していった。
初フライトだったが、そのスピードからか、さほど興奮はしなかった。

( ^ω^)「うぇっうぇっ、飛んでるお。」

 ('A`)「たりめーだろ、俺が設計したんだから。」

( ^ω^)「スクラップを寄せ集めただけじゃないかお。それで設計ってww」

 (♯'A`)「お前一人で参加したいのか……」

(;^ω^)「正直すまんかった。」

伝声管を通して話す。そして、一分弱で飛行艇はコースに入った。




VIPカップは川に沿って飛んで行くのだが、毎年コースが違う。
はっきりとしたコースがあるわけでは無いのだが、チェックポイントをたどっていくと形式により、おのずと一つの道になる。

空中からは、工場や学校、他にも建設中なのかレンガが規則正しく山になっているのも見える。
赤や褐色といった暖色系の民家と、それと同じぐらいある灰色の工場がこれからの技術に対する期待に応えているようだった。

一週目はそういった景色に目を取られていた。
自分達が生まれて、育った町を空から一望する。
せせこましく建物が乱立し、煙を吐き、荷物を積んだ船が行きかう。
それはとても広いように思えたが、どこか寂しく、そしてどこか遠くに行ってしまうような思いが湧いて出てきた。

何か大切なもの、そう水筒なんかを忘れて遠足に出かけてしまったような不安。
そんな感覚を二人は空で味わっていた。




何回も飛び回り、気を取り直したドクオが、コースの特徴をノートにつけていく。
そして何週目か回ったとき、ある場所が目についた。
川から陸にコースが変わる場所なのだが、船を通すためのトンネルがある。
飛行艇が一機通れるぐらいの狭いトンネルだった。
コースを一周し、またそこにきたときドクオがブーンに伝える。

 ('A`)「おいブーン、ちょっとここで着水してくれ。」

( ^ω^)「おっ、どうしたんだお。」

 ('A`)「いいから、着水してくれ。確かめたいことがある。」

ドクオの言葉を聞き、わけのわからないまま着水する。
少し水しぶきが顔にかかった。


 ('A`)「なあ、ここのトンネルってさ、どこに続いてんだちょっと進んでみようぜ。」

( ^ω^)「了解したお。」

飛行艇を川に浮かべたままトンネルの中へと入っていく。
エンジンの轟音とプロペラの空気を切り裂く音がこだまして、皮膚を刺激する。
明かりの見える方向へと機体を進ませる。




トンネルを出るとそこは、レースのチェックポイントだった。
まさかと思いドクオが慌てて地図を確認すると、大幅にショートカットができる。

それに気付き、少し興奮し早口になりながらもブーンに伝えた。

 ('A`)「おいブーン。ここかなりタイム縮められるぞ。
     川に沿っていくと、大きく回る所だけどここ入っていけばショートカットになるぞ。」

( ^ω^)「マジかお。でもそれだったら、ここに入らなくても上を飛んでけばいいんじゃないかお。」

 (;'A`)「お前大丈夫かよ、ルールブックぐらい読んどけよ。建物の上を飛ぶのは禁止されてるだろ。」

( ^ω^)「そうだったお。忘れてたお。」

本当に忘れていたのか元から知らなかったのか、ドクオには判別の仕様が無かった。
しかし、それよりもこの発見はそれを咎める隙間も無いぐらいにドクオの頭を占めていた。
優勝する気持ちはあるものの、実際は初参加の自分達が可能とは思っていなかった。
だからこそ、優勝への近道であるこの発見は大きかった。




 ('A`)「ここ、通っていけば俺らの飛行艇でも優勝できるんじゃないのか。」

考えを自分から切り離して、より客観的なものにしようとブーンに尋ねる。
だけれども、ブーンの返答はドクオにとって意外なものだった。

(;^ω^)「ドクオこそ大丈夫かお。飛びながらあそこ通るなんて自殺行為だお。
      僕はアクロバティックの操縦者じゃないんだお。」

 (;'A`)「ん、そういやそうだな。いやいやでも物は試しじゃないか。
      どうだブーン。俺見ててやっからお前ちょっと飛んでこいよ。」

(;^ω^)「いやいやいや。そんなこと言うドクオこそ飛んできたらいいお。」

 (;'A`)「いやいやいやいや。出場するのはブーンだろ。」

結局、飛ぶには狭すぎるということでこの案は却下になった。
もう1週ほどして空を見上げると、日が落ちる方には薄く雲が広がっている。
雲は夕暮れ時のオレンジ色した光を受け、それを伝えようとしているかのように
自身がオレンジ色に染まり空の青さと混じっていた。




( ^ω^)「そろそろ帰るお。」

 ('A`)「んだな。もう10分もすれば沈むな。」

飛行艇を川に着水させ、タキシングしながら戻っていく。
青から紫、そしてオレンジに色を変えていく空を見ながらゆるゆると進んでいく。

二人は機体の上から町並みを眺めていた。
大きなフランスパンを袋から覗かせる人。
ボールを持って走り回る子供達。
少しだけ背を丸めながら、バーに入っていく男。


今いる場所と、それを飾る時間に、どこか違う世界へ来てしまいもう戻れない風景を眺めるような
そんな郷愁的な気分になりながら二人は倉庫へと帰っていった。




次の日の学校。ブーンとドクオの教室は違う。
ドクオは休み時間も授業も、ボゥっと窓から空を見ていた。
今度の日曜日にはVIPカップに出れるのだという期待もあったが、何故かいつも話している友達とは話す気になれなかった。


特に学校でこれといった出来事も無く、また何をしたのかもわからないまま下校の時間になった。
鞄にノートや教科書をしまいこんで、のろのろと席を立つ。
開け放しにしてある教室の扉を出て、ブーンを迎えに行こうとしたとき、クラスの女子が話しかけてきた。

 (*゚ー゚)「ねぇドクオ君。昨日さ飛行艇に乗ってたよね。青い奴。」

 (;'A`)「えっ、んああ、はいそうです。」




急に声をかけられ敬語になってしまったドクオ。
こういう場合、次からどんな口調で話せばいいか大いに迷う。
このまま敬語を貫こうか、さっきの返事を無かったことにしようか
少し宙に目を泳がせて思案していると、しぃがドクオに話しかけた。

 (*゚ー゚)「ねぇ、もしかして今度のVIPカップ出るの。」

 ('A`)「ああ、でるよ。何で知ってるの?」

取り敢えずさっきの失態はどこか遠くに追いやって返事をする。
だけれども、しぃはその微妙な違いを逃さなかった。

 (*゚ー゚)「あははは、ねぇさっき敬語になってたよね。
      何で急にぶっきらぼうになっちゃたの?」

 (;'A`)「いや、ほらあれだよ。急に話しかけてきたからさ。そういのってあるじゃん。」

 (*゚ー゚)「またさっきと同じ顔になっちゃった。だけど今度は普通だね。
      ねぇねぇ、それよりもVIPカップに出るの本当?」

わずかな会話だが、ドクオはすでに主導権をしぃに握られた。
これからなにを言っても、しぃには敵わないんだと漠然と感じ情けない自分を少し恥じた。



 ('A`)「出るよ、なんで知ってんの?誰にも言ってないのに。」

 (*゚ー゚)「昨日友達と見たの。日が落ちるぐらいのときに青い飛行艇にドクオ君が乗ってるの。
      それでもしかしたらなと思ったんだけど、やっぱりそうなんだ。ねぇ見せてよ。どこにあるの?」

 ('A`)「ん〜、まぁいいかな。でもちょっと待って。隣のクラスのブーンって奴に一言、言ってくるから。」

一応断っておこうと考え、ブーンの教室に顔を出そうとした。
そのとき丁度ブーンが、ドクオを見つけ廊下に出てきた。

(;^ω^)「ごめんだおドクオ。ちょっと今日は補習で遅れるお。
      悪いけど先にいっておいてくれお。」

それだけ言い、教室に戻っていった。
クラスの中を覗き込んでみると、ブーンを含め何人かの生徒が残っており、黒板には大きく補習という字が書かれている。




 ('A`)「なんか、ブーンの奴補習らしいから先に行こうか。」

 (*゚ー゚)「いいの?置いていって。」

 ('A`)「いいよ、じゃ行こうか。」

二人が、校内を出てガレージへと足を進めていく。
ドクオはよく考えれば女の子と二人っきりというシチュエーションは初めてのことだと気付いた。

横にいるしぃとは教室では何回か話したことはあるけれども
それはお互いクラスメイトという距離があったからこその会話だった。
こんな状況ではどう接すればいいのか見当がつかない。

気まずい空気を一人で漂わせていたドクオだが、しぃを見るとそんな素振りはなかった。
学校のことを小出しに話しながら歩き、ガレージに着いたときは、自分の居場所を見つけたかのよう
ほっとした。




シャッターを開けて、中に入っていく二人。
カーテンを開けると、太陽の光が差し込んできて青い機体の存在を確かめるかのように照らした。

 (*゚ー゚)「すごい。」

太陽の光の演出のおかげか、それだけ呟く。
ドクオはそんなしぃを見てどこか誇らしい感覚を抱いた。
これ俺が作ったんだよと、自慢したい気持ちを押さえつける。

 (*゚ー゚)「ねぇ、ちょっと乗ってみていい?」

 ('A`)「いいけど、乱暴にしないでくれよ。」

 (*゚ー゚)「了解、了解ー。」

しぃは機体に足をかけて前席へと滑り込むように入っていく。
スカートと白く細い太ももの隙間から、下着がドクオの目に映った。
そのとき、外で車が事故を起こした。




別段、珍しいことではないが、後年ドクオはこのときのことをこう語った。

 ('A`)「二人っきりで女の子といるのは初めてでとても緊張しました。
    ましてや、よく知らない子です。ただ、まったくというわけではなく、ほんの少し時間を共有しただけ。
しかし、薄暗いガレージということが、私の陰徳な感情を刺激しました。
思春期ですからふしだらな妄想をよくしましたが、それが目の前にあるのです。
    さらに、スカートの中を見せられて私のボルテージはMAX、そして破裂寸前。
    燃え盛る私の煮えたぎる体を鎮めれるのは、若い女性の曲線しかないと思いました。
    もし、外で車の衝突音が聞こえなければ私はしぃを襲っていたでしょう。」

我に返り、誰から言われたわけでもないが、自分に与えられた痴漢の烙印を甘んじて受けた。




 (*゚ー゚)「ねぇー、操縦間が無いよ。どうやって飛ぶのこれ?」

 ('A`)「操縦席は後ろだよ。前は人が入れるようにしただけ。」

 (*゚ー゚)「じゃあ、後ろ行く。」

今度は機体の上を四つんばいになって、操縦席へと進む。
女豹という単語がちらついたが、そこまで肉感的ではなかった。
ただ、それでもドクオの目には十分刺激的であった。

 (*'A`)(あんなこと〜、こんな〜こと〜あーったでしょ〜)

昔覚えさせられた、歌。
多分今が、あんなことなんだろう。
こんなことは、一体いつやってくるのかなと思った。

 (*゚ー゚)「ねぇ、これ動かしてもいいの?」

 (*'A`)「ん、ああはい。いいよ。」

 (*゚ー゚)「また、敬語になった。ドクオ君っておかしいね。」




しぃが操縦桿をいじくり回し、それに合わせてラダーやエルロンが上下左右に振られる。
そのうち、どう動かせばどこが動くのかがわかったようで、大分満足したように見えた。

 (*゚ー゚)「これさ、飛ばさせてよ。どう動くかわかったし。」

 (;'A`)「駄目。ちょっと触ったくらいで操縦できる筈無い。空中に上がると結構振れるんだから。」

 (*゚ー゚)「いいじゃん。ちょっとだけ。お願い。」

 (;'A`)「駄目、絶対。もし壊れたらVIPカップ出れなくなる。」

 (*゚ー゚)「けち。じゃあさ。せめて前の席でいいから乗らせてよ。
     一度でいいから乗ってみたかったんだ。それならいいでしょ。」

 (;'A`)「えっ。俺が操縦するの?」

 (*゚ー゚)「操縦できないの。自分で作ったものなのに?」

実際、ドクオは操縦できなった。
ブーンは小さい頃に少しだけ操縦したことがあり、それを体が覚えていたからできた。
しかし、ドクオは昨日まで一度も乗ったことがなかった。まして操縦なんてできない。





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