('∀`)「さてさて、まずは様子を窺ってと。」

ドクオは全力疾走にもかかわらず、息一つ切らしていない。
飛行機の墜落と同じように、高ければ高いほど粉々に砕け散る。
そう思って、今か今かと二人が頂点に達するのを待っていた。

扉の窓から覗き見ると、ずぶ濡れのブーンと、同じくずぶ濡れのツンがいた。
そのまま観察を続け、ガレージ内の空気が変わる瞬間を感じ取ろうと五感を集中させた。

 ('∀`)「よし、そろそろだな。」

人外の力を持ってして人にはわからぬ何かを感じとったドクオ。
なるべく自然に、そしてあくまでそ知らぬ顔で行かねばならぬと思い
顔の筋肉をほぐして、普段どおりの顔を作ろうと努力した。



      ( ^ω^) の最高速度は215キロのようです。>第四話 曇り空万歳




 ('A`)「ん、ん。よし。さりげなく。」

ドクオは、中の二人が気付くようにわざと音を立てて扉を開ける。


 ('∀`)「よぉーっす!!いやーすまんすまん。忘れ物しちまってよ。
     あれブーンさん、その女の子は何ですか?隅に置けないですなぁ。
     こんなとこで二人っきりなんて、いやいや自分の口からはそんな卑猥なこと言えませんよ。
     ええ卑猥ですともそうですとも。そんなけしからんこと。ねぇブーンさんどうしたんですかい?
     落ち込んだ顔しちゃって、まるで……いやいやだから自分の口からは言えないでやんすよ。ねぇ。
     だってそうでしょ、やっぱりそういう男女の秘め……おっとっとなに言わすんですかい。まったく。
     上手いですねぇ、そうやって口を開かせるのが。そっちの方の下の口……ややや、またブーンさんの術中に嵌まるとこでしたよ。
     ねぇ、そう思うでしょ。おっとっと、そうそう忘れ物だった。えっ何を忘れたかって?
     決まってるでしょ、思い出を忘れたんですよ。思い出。大事なもん忘れちゃったよ。」




 ('∀`)「あれれー、ずぶ濡れでどうしたんですかい?まるで服着たまま……だからその手には乗りませんよ。」

扉を開けるときの意気込みはどこへやら、といった具合に喋りまくる。
しかし、そんなドクオを一瞥しただけで視線を床に落とす二人。
普段なら、なにかあったかなと疑問に思うだけの頭はしていたのだろうが
今はただフラグクラッシャーの鬼と化していた。

 ('∀`)「あんれぇ、どうしたんですか?元気ないですねぇ。
     ねぇねぇ、どうしたの?どうしたの?教えてよ。今どんな気持ち?」

( ´ω`)「……ごめんだお、ドクオ。」

ξ゚听)ξ「……」




ブーンとツンの顔を見て、ようやくフラグクラッシャーの鬼から戻ったドクオ。
先ほどまでの勢いを若干残しつつ、落ち込んでいるわけを聞こうとした。

 ('A`)「なに?どしたん?なにかあったん?」

重苦しい雰囲気にとうとうドクオの憑き物が落ちた。
口を開きかけてはまた閉じる。そんな動作を4、5回繰り返した後ブーンがようやく声を出した。

( ´ω`)「今度の日曜、追試だお。それに出なかったら留年だってお。」

 ('A`)「えっ?なんとかなんねえのそれ?」

( ´ω`)「多分無理だお。とにかく受けなきゃ留年になっちゃうお。
     僕ん家トーチャンいないし、そんなにお金に余裕無いから留年はできないお。」

 ('A`)「それじゃ……」

( ´ω`)「僕はこれから勉強するお。だからVIPカップにはドクオが出てくれお。
      じゃ、僕はもう帰るお。ほんとにごめんだお。」

濡れた服のまま、水の足跡を残してブーンはガレージを出て行った。
泣いていたようにも見えたが、全身ずぶ濡れで判断のしようがなかった。
ドクオの中のブーンからは想像できないほどに、その背中は寂しげだった。




ξ゚听)ξ「ねぇ、ドクオ君。頑張ってね。あたしはブーンの勉強見るから。じゃ、あたしも帰るね。」

 ('A`)「ああ。」

ツンも濡れた服のまま帰って行った。そのままでいいの?と言おうとしたが、ツンを引き止めることは出来なかった。

重力に逆らうことをやめた様に、入れていた力を解放して椅子に座る。ドン、と音がした。
頭の中が真っ白になり、とりあえず煙草を吸おうとポケットから取り出す。
火を点けて自虐的に思いっきり吸い、目一杯、口の中に煙を溜め込み一気に吸い込んだ。
むせて咳をするが、そのたびに喉が痛み、粘膜がやられているような感触がする。

ドクオは落ち着かなかった。何回もそれを繰り返し、喉が慣れたところで煙草を投げ捨てた。

 ('A`)「クソが……アホか……」

床に罵倒の言葉を吐きかける。けれどもその相手は床でもなければ、ブーンでもない。自分だった。
ブーンが出場できないのは自分の所為だと思った。自分がミルナを呼びとめ、そしてあんなことを言った。だからこんな事態になったと。
別段、ドクオの所為ではなく、ブーンの自業自得だが、さっき自分がブーンに対し思っていたことが重くのしかかった。




もう、日が沈んでどこも真っ暗になっている。ガレージ内に明かりはついていない。
ドクオが投げ捨てた煙草の火が、赤くほんの僅かだけの周囲を照らしていた。

煙草を拾って、灰皿にねじ込み火を消す。
ブーンに対する罪悪感を連れて、ドクオはガレージを出て行った。

その日、ドクオはどうしようか考えているうちに夢の中へと入っていった。
夢の中では自分がVIPカップで優勝しトロフィーを抱えている、そんな夢だった。
自分の思いとは裏腹にそんな夢を見ることに自己嫌悪した。自分はブーンが飛べなくなって喜んでいるのかと自問自答をする。
しかし、いったん寝ると頭の中が整理されていた。ブーンのためにやることがわかった。


学校。先日と同じように授業は全く耳に入らなかった。
そして、ブーンに会わせる顔がなく、行きたいトイレもギリギリまで我慢した。
しぃはというと、ドクオを避けているような雰囲気だった。




放課の時に、ミルナをつかまえて談判をした。
多分だめだろうが、少しでも可能性があるならやっておきたかったからだ。

 ('A`)「ミルナ先生、お願いがあります。今度の日曜にどうしてもブーンをVIPカップに出してやりたいんです。
    だから、お願いします。追試の日程をずらしてもらえませんか。」

 ( ゚д゚ )「それはできんな。無理というものだ。」

きっぱりと言い放つミルナ。それでもドクオは食い下がる。

 ('A`)「お願いします。今までやってきたことが無駄になるんです。
    そんなの教育として間違ってるとは思いませんか?」

 ( ゚д゚ )「なにを言っている。他の者達にも予定や何やらがあるんだ。
       一人だけ特別扱いするわけにはいかん。」

 ('A`)「でも、親の死に目とかには特別に許される場合があるじゃないですか。」

 ( ゚д゚ )「あのな、そういう場合は他人のための都合だ。自分の都合では無理だ。
       それにちゃんと授業を受けてれば追試なんて滅多にならん。
       ブーンには残念だが日曜に追試を受けてもらう。もっとも留年したければ受けなくてもいいがな。」

授業が始まる鐘が鳴り、それ以上は話を続けずミルナとドクオは別れた。
だがこれではっきりもした。ブーンは出れないと。ドクオは次の案に移ろうと決心した。




その日最後の授業が終わり、皆が帰ろうとしている中、ドクオはしぃに近寄り話しかけた。

 ('A`)「あの、しぃ。ちょっといいかな。」

 (*゚ー゚)「な、なに。」

しぃは昨日のことを思い出し、ドクオに今までどおり接すればいいのかどうかわからなかった。
思春期の青年らしい悩み。しかし、ドクオはそんなことは気に留めず、昨日のことがある前の接し方をした。

 ('A`)「あのさ、手伝って欲しいことあるんだけどいいかな。」

しぃにとって予想外に自然体だったドクオ。それを見てしぃは寂しさを覚えつつも安心した。

 (*゚ー゚)「なに?」

 ('A`)「今日さ、暇だったら手伝って欲しいんだ。」

 (*゚ー゚)「なにを?」

 ('A`)「あのさ、ブーンがVIPカップ出れなくなったから俺が変わりに出るんだけど
    はっきり言って自信ないんだわ。それで、なるべく慣れておきたいしコースの曲がるポイントとかを調べたいんだ。
    んで、しぃを前に乗せるから俺が喋ったことノートにとってほしいんだ。」




 (*゚ー゚)「ん〜」

しぃは少し考え

 (*゚ー゚)「昨日みたいに危ないことしないよね。」

 ('A`)「しない。」

 (*゚ー゚)「じゃあいいよ。今日からやるの?」

 ('A`)「そう。明日までしか飛べないから。残りの1日はボートでも出すつもり。」

 (*゚ー゚)「わかった。じゃ、いったん着替えてくるね。昨日のガレージ行けばいい?」

 ('A`)「ありがとう。俺は先に行って準備してるよ。」

ドクオはしぃと別れた後、ガレージに向かう途中に新品のノートとペンを買った。
紙袋に入れてもらい、歩きながら、さらにそれを鞄に入れた。

ガレージの扉を開けて、機体に近寄り軽く点検をしてみる。
特に問題はなかったが、昨日のこともあり増締めだけはやっておいた。
丁度、増締めを全体にやり終わったとき、しぃがやってきた。

 (*゚ー゚)「おじゃましまーす。」

ガレージ内に声が響く。ドクオは振り返りしぃの方を見て、ん、と一言だけ言った。




 ('A`)「じゃあ、これ。」

鞄から紙袋を取り出し、さらに紙袋からノートとペンを取り出し渡す。
しぃはそれを受け取り、飛行艇に振り向こうとするドクオに声をかけた。

 (*゚ー゚)「なんか元気ないね。」

しぃの言葉にどう答えようか迷い、考え、そして回答ができる自然な時間が過ぎた。
このことも、今のドクオには自己嫌悪の対象として、十分すぎるほどの意味を持った。
しぃの独り言として済ませればいいのだが、それもできない。すべてが自分の所為に思える。

そんな自分の性格にうんざりしたが、それでも、とにかくやれることはやろうと思った。

 ('A`)「うん、大丈夫。ちょっと緊張してるだけ。」

 (*゚ー゚)「えっ?」

 ('A`)「いやなんでもない。」

しぃはドクオの独り言だと受け取り、それ以上その言葉に意味を求めなかった。
その日は、日が暮れるまでコースを回り、どこで舵をきるかなどを綿密に調べた。




一般的より少し小さくほこりっぽい家の中で、ブーンとツンは差し向かいに座っている。
ブーンはノートを広げ、教科書を開いているものの頬杖をつき、見かけからはやる気のかけらも見うけられない。

J( 'ー`)し「ごめんねぇ、ツンちゃん。こんな馬鹿チンの勉強見てもらって。はいコーヒーとお菓子。」

ξ゚听)ξ「いえ、いいですよ。私も復習になりますから。」

J( 'ー`)し「えらいねぇ。ほらブーン。もっとシャキっとしなさい、それが教えてもらう態度?」

( ´ω`)「わかったから早く行くお。」

J( 'ー`)し「はいはい。しっかりね。」

カーチャンは軽く叱咤をして、部屋から出て行った。
それから、十分ほどが過ぎたが、ブーンはその間にため息を15回つきその度に窓から空を眺めた。




ξ゚听)ξ「それでね、ここに代入すると……」

( ´ω`)「はあ。」

もう何度目かわからないため息。その、ため息の数はブーンの知らないところで
ツンの怒りとして蓄積されていき、そしてそれが限度に達した。

ξ♯゚听)ξ「あんたねぇ、いい加減にしなさいよ!!」

( ´ω`)「お?」

ξ♯゚听)ξ「なんであたしがここにいると思ってんのよ?!言ってみなさいよ!」

( ´ω`)「僕に勉強を教えるためだお。」

ξ♯゚听)ξ「そうよ、そのためよ。なのに、なんであんたはやろうとしないのよ!?」

( ´ω`)「ごめんだお。やる気はあるお。でもそれがすぐにしぼむんだお。
     今までやってきたことが無駄に終わったと思うと今やってることもそうじゃないかと思うんだお。」

俗に言う燃え尽き症候群。ブーンはこれにかかっていた。ただ、不完全燃焼だったため
まだ燃えるものが残っている。そして、ブーンはその燃え残ったものを手放せずにいた。




ξ♯゚听)ξ「あんたねぇ、あんたがやってきたことが無駄だと思ってんの?!」

( ´ω`)「そうだお。自分の所為だけど、なんか急に色んなことのやる気がなくなったんだお。全部が無駄のような気がするんだお。」

ξ♯゚听)ξ「もぉ!あんたは何がしたかったのよ?飛行艇作って何がしたかったのよ?」

( ´ω`)「僕は、かっこよくなりたかったんだお。昔憧れたヒーローになりたかったんだお。」

ξ♯゚听)ξ「じゃあ、もうそれは終わってるじゃない。もう達成したじゃない。」

( ´ω`)「お?」

ξ♯゚听)ξ「あたしがあんたのことかっこいいと思ったじゃない。それじゃ駄目なの?!」

( ´ω`)「どういうことだお?」

ξ♯゚听)ξ「わかんなかった?あんたに乗せてもらったときね、すごい嬉しかったんだよ。
        小さい頃の約束叶えてくれて。そりゃちょっと違ったけど。でもね、それでもあんなに綺麗なところ連れてってくれて嬉しかったし
        そんなことをしてくれるあんたはものすごくかっこよかったわよ。それじゃ駄目なの?
        今じゃ何よ、ぐじぐじして厭世家気取っちゃって、すごくかっこ悪いわよ!」

( ´ω`)「本当かお?」

猜疑心を丸出しにした上目遣いでツンに尋ねる。
けれどブーンもこの状態を何とかしたかった。だからツンの言葉にすがるように
また、それが本当であって欲しいと思うように、聞きなおした。




ξ♯゚听)ξ「うっさいわね、本当に決まってるでしょ。嘘ついてどうすんのよ。
        嘘だと思うなら目を見てみなさいよ、それから自分の目を鏡で見てみなさいよ。」

ツンの言うとおり、目を見た。目を見て本当か嘘かわからなかったが、信じたくなるような自信を持った目だった。
そして、鏡で自分の顔を見た。目を背けたくなるほどの陰気で鬱屈した表情だった。
どちらを信じるかと言われたら、自分と答えるはずもない程だ。

( ´ω`)「やな顔してるお。こんな顔自分でも見たくないお。」

ξ゚听)ξ「そうよ。わかった。そんな顔されてたんじゃこっちだって嫌よ。」

( ´ω`)「ちょっと待つお。」

ブーンは、手のひらを顔に押し付け、擦り付け、揉み解し、普段の顔にしようとした。
鏡を見ずともまだどこか顔の筋肉がたるんでいるのがわかった。

( ^ω^)「これでいいかお?」

ξ゚ー゚)ξ「それでいいわよ。」

それから、ブーンはため息をつくことをやめた。
ただ、窓から空を見ることはやめなかった。それに対しツンは何も言わずにいた。




日曜日。VIPカップ開催の日。ブーンとドクオは朝早くからガレージにいた。
まだ、陽が上りきってはなく、約束もしていなかったが自然とそこに二人はいた。

( ^ω^)「ドクオ、今日は頼んだお。」

 ('A`)「おう。正直自信ないけどな。お前追試何時終わる?」

( ^ω^)「終わるというより、始まる時間がVIPカップの30分前だお。」

 ('A`)「そうか。まあないとは思うけど間に合うようだったら来てくれよ。
   俺に飛行艇の操縦はあわねぇ。整備したり修理したりの方が俺にはあってる。」

( ^ω^)「努力するお。」

ブーンがそう言うと二人は片頬をあげて、虚ろな笑いを相手に投げかけた。
まだ、早い時間なので二人は椅子に座り飛行艇を眺めた。




素人にしては上出来。玄人にしては荒さが目立つ。そんな機体を、機首から機尾まで眺め
今度は逆の手順でそれを繰り返す。
ブーンは相方を見てみるが、その相方は片手に煙草を持って同じことをしていた。

( ^ω^)「どうかお。慣れたかお?」

 ('A`)「なんとかな。しぃに手伝ってもらってどこで舵をきるかなんかもまとめたし、何とかなるんじゃねぇの。」

( ^ω^)「そうかお。じゃ僕はもう行くお。学校で勉強してるお。」

 ('A`)「おう。頑張れよ。」

( ^ω^)「お互い様だお。」

最後にほんのわずかだけ笑い合い、ブーンはガレージを後にし、ドクオは座ったまま灰皿を満杯にし
ガレージ内に陽の光が差し込んできたところで会場へ向かう準備をし始めた。




校舎のいつもの教室で、一人勉強をしていると他の追試組がやってきた。
あと20分ほどで追試が始まる時間だ。

( ><)「たくっやってらんないんです。」

(=゚ω゚)ノ「そうだょぉ。めんどくさいょぉ」

( ^Д^)「お前ら留年したらプギャーしてやるよ。」

( ><)「ふん。僕はちんぽっぽちゃんに教えてもらったから大丈夫なんです。」

室内が急に騒がしくなった。いつもの活気が戻ったかのように。
ブーン以外の三人はミルナ先生が来るまで不満と冗談を言い合った。




開始の時刻よりも15分早くミルナがやってくる。
やかましい三人を見て、首を左右に振った。

 ( ゚д゚ )「オラお前ら。静かにしろ。ていうか勉強しとけよ。
       おっブーンは真面目にやってるじゃないか。他の奴らも見習えよ。」

(=゚ω゚)ノ「うるさいょぅ。さっさと始めるょぉ」

( ^Д^)「そうだそうだ。早く終わらせようぜ。」

( ><)「今日はちんぽっぽちゃんと一緒にVIPカップ見る約束だったんです。早く終わらすんです。」

(=゚ω゚)ノ「僕もだょぅ。なんでわざわざこの日なんだょぉ。」

( ^Д^)「俺だって見に行く予定だったんだ。早く終わればゴールの瞬間は見れるかも知れないだろ。
     さっさとやっちまおうぜ。」

口々に文句を言う。ブーンもそれに混じりたかったが、その気持ちを抑えて最後の復習をする。
ミルナ先生はそんな生徒達を見て悪戯っぽい眼つきで笑った。

 ( ゚д゚ )「そうか、そんなに見たいか?」




(=゚ω゚)ノ「当たり前だょぉ。」

( ><)「当然なんです。見せろなんです。」

( ^Д^)「プギャー。」

 ( ゚д゚ )「落ち着けお前ら。ブーンは今日出場する予定だったのに来てるんだぞ。」

( ><)「本当なんですか?ブーン君残念なんです。」

( ^Д^)「プギャー。ついてないなブーン。」

 ( ゚д゚ )「そうだ。折角出場できるのに来たんだ。お前らが文句言ってどうする。
       ところでブーン。お前まだ出たいか?」

ミルナがブーンに問いかけた。その問いにブーンは率直ながらもトーンを落として答えた。

( ^ω^)「正直言えば出たいお。でも今まで勉強をサボってきた自分のせいだお。
      だから仕方ないと諦めてるお。」




それを聞くとミルナはさっきの悪戯っぽい眼つきをして話した。

 ( ゚д゚ )「確かに勉強は大事だ。それを否定するのは出来ない奴かやろうとしない奴だ。
       でも、自分のやりたい事をするために努力するのも大切だ。
       そこでだ、ブーン。今からならまだ間に合うだろ、行ってこい。」

( ^ω^)「おっ?」

 ( ゚д゚ )「気にすんな。どうせ来週に延びるだけだ。ほれ。」

驚いた表情をしているブーンにキーを放り投げるミルナ。
チャラという音をたててそれはブーンの手のひらに収まった。

 ( ゚д゚ )「表に俺のモペッドが置いてある。早く行って来い。」




ミルナは顎で教室と廊下を隔てる扉を示した。出て行ってもいいという合図だ。
そして、その意味を理解したブーンは目を大きく開かせ勢いよく立ち上がる。

( ^ω^)「先生ありがとうございますお。」

 ( ゚д゚ )「事故るんじゃないぞ。」

ミルナ先生の言葉を背中に受けて、ブーンは教室から飛び出していった。
そして、傍観者となっていた三人が、また当事者になって戻ってきた。

(=゚ω゚)ノ「ずるいょぉ」

( ^Д^)「そうだそうだ。俺たちも出て行かせろ。」

( ><)「大体来週にするんならブーン君はテストの内容知ってるんです。不公平なんです。」

当然の不満をいい募る三人。だがミルナ先生は片眉を大きく上げておどけた顔をつくった。

 ( ゚д゚ )「あー、最近ストレスたまってな。独り言いいたいんだよな。よし言っちまうか。
    この前ツンとブーンがキスをしそうになったんだよなぁ。俺はびっくりした。」




(♯><)「そ、そんな、不潔なんです。僕だってちんぽっぽちゃんとまだ……」

(♯=゚ω゚)ノ「ふざけてるょぉ!」

(♯^Д^)「本当かよ?あの野郎俺のツンちゃんをたぶらかしやがって。」

不満のベクトルがミルナ先生の言葉によって捻じ曲げられ、教室内の空気が一変した。
プギャーは机を拳骨で何度も叩き、ビロードはわかんないんですわかんないんですと呟き、ぃょぅは窓に向かいブーンの姿を探した。
ぃょぅが窓に乗り出してすぐに、モペッドのエンジン音が聞こえ、必死にこいで貧弱なエンジンを手助けするブーンが見えた。

(♯=゚ω゚)ノ「事故って死んじまえょぉ!!」

その言葉が空気を伝いそして、誰も見たことがない神に通じたのか、言葉が恨みによって意志をもったのか
ブーンの乗るモペッドはカーブを曲がりきれず壁に激突し、派手に転倒した。

(♯><)(♯=゚ω゚)ノ(♯^Д^)「いーーやっほーーーー!!!」

叫びにネガティブな喜びをはきちれんばかりに詰め込んだ。
ミルナ先生は一人本当にネガティブになった。




喜びを三人で分かち合った後、沈んだ顔をしているミルナに詰め寄る。
ミルナ先生はちょっと待てといい、廊下を大げさに覗いた。
見ている者に今から秘密の話をするんだと言わんばかりの行動。

 ( ゚д゚ )「いいか、お前ら。ちょっと集まれ。流石に見てしまったからには教師として邪魔をしなければいけないと思った。
     だが、もう年頃だ。少し可哀相なことをしたと思ってる。そこでだ。お前らに密名を授ける。集合だ早くしろ。」

手招きをして三人を一箇所に集める。誰も聞いてはいないのだがそうしたほうが気分を高めるのには十分な効果を発揮する。
ミルナは三人の顔をゆっくりと滑らかに見て、ある計画を口にした。

(=゚ω゚)ノ「それはいいょぉ。」

( ^Д^)「ミルナ先生やるじゃねぇか。見直したぜ。」

( ><)「賛成なんです。恥をかかせてやるんです。」

 ( ゚д゚ )「タイミングを間違えるなよ。ほれ早く行動を起こせ。」

( ><)ノ(=゚ω゚)ノ( ^Д^) ノ「ハイルミッルナー!!」




威勢のいい掛け声を出し、ミルナが来るまでの陰鬱な表情を、期待という感情で跡形もなく消し飛ばした。
三人は我先にと教室を飛び出し、校舎内に大きな足音を響かせていった。

教室に残ったミルナは窓に寄りブーンがぶつかった壁を見つめる。
ふっと息を漏らし、懐かしい過去を覗くように、振り返るように
ブーンたちの年頃そのものの青い空を見上げた。

 ( ゚д゚ )「やりすぎかもな……ま、いいか。」


         ( ^ω^) の最高速度は215キロのようです 第四話 終わり




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