ヒートはビデオガールのようです

LOVE#1 ひと夏の失敗



僕と親友のモララーは隣町のファミレスで時間を持て余していた。
夏休みといえども、僕やモララーなんかは部活にも所属していないし、バイトもしていないので毎日こんな調子だ。
いつもは僕の家や近所のゲーセンで二人で遊んでるのだが、今日はそれなりの理由があって、僕らはわざわざ隣町まで足を運んだ。




( ^ω^)「ほ、ほんとにこの店に渡辺さんがいるのかお!?」


( ・∀・)「あぁ。昨日ちょっと出かけたときに裏口から出たのを見たんだ。ほんとだよ。ちょっと待ってなって」



僕はモララーの言葉が半信半疑だった。彼はにやけながら冷水の入ったコップを口にあてる。





メニューも開かず僕らはファミレスをきょろきょろと見回していた。
周りから見れば妙な客だろう。なんだか僕は気恥ずかしくなり、メニューに手を伸ばそうとした。
そのとき、モララーが密かに声を挙げる。






( ・∀・)「・・おっ!ほら来たぜ」

( ^ω^)「どっ・・どこだお!!」


モララーが指差した先には、ファミレスの従業員の服装をした渡辺さんの姿があった。



从'ー'从「ご注文は?」



( ・∀・)「うひゃー!!制服姿もいいけど、このコスチュームもいいな!!」

( ^ω^)「コ・・コスチュームって」

( ・∀・)「おっ!振り返った拍子にパンツちょっと見えたぞ!!なあ、パンツ!!」

(;^ω^)「ば、ばかやろう!!渡辺さんをそんな目で見るなお!!!」


(* ^ω^)(水玉・・・www)




渡辺さんは僕らの学年のアイドルで、他校にも名が知れ渡ってるほどの美少女だ。
夏休み中はどこかでバイトをする予定・・・ という渡辺さんと女子たちの会話を休み前に小耳に挟んだが、ここでしていたのか。




从'ー'从「ハンバーグセットおふたつですね・・」


从'ー'从「かしこまりました♪」








( ・∀・)「よしゃ」

モララーは、渡辺さんが前方の客のオーダーを取り終わったことを確認すると、テーブルにあった呼び出しベルを連打した。
渡辺さんをここに呼び出すつもりだ。ちょ、やめ・・・

( ・∀・)(ほら、来たぜ。うまくやれよ)



そう、僕は渡辺さんをデートに誘うためにバイト先まで出向いたのだ。
電話番号もメールアドレスも知らないから、直接誘うしかない。

・・というのはモララーの考えで、僕はちゃんとした段階を踏みたいと主張したのだが、「しゃらくせえ!」と一蹴されてしまったのだ。


僕は渡辺さんと中学校からの付き合いで、何度か同じクラスになって、少しは会話をする仲だった。
好きだという感情は、もういつから持っていたかは思い出せない・・。それなのに僕は渡辺さんにさっぱり接近できずにいた。
渡辺さんはいつも彼氏がいて、アタックする余裕もないし、所詮「少し話す仲」なので、それ以上関係を発展させることができなかった。



そして、7月の下旬。「渡辺さんが別れた」というニュースが教室を駆け巡った。
僕は「どうせまた間髪入れず新しい男作るんだろ」と嫌になっていた。

しかし・・・。モララーは「高二の夏!!彼氏いない!!これはチャンス!!」とかなり盛り上がっていて、俺と渡辺さんを接近させる気満々。
そして今日の行動に至ったわけだ。モララーめ、明らかに楽しんでやがる。








(;^ω^)「やばす・・・緊張するお」

( ・∀・)(来た来た!)



从'ー'从「ご注文は〜・・・」



从'ー'从「あ!」


( ・∀・)「おっす!」

(;^ω^)「・・・」



从'ー'从「内藤くん!えと・・・」


( ・∀・)「3組のモララーだよ!」




从'ー'从「あーモララー君か!ごめんね?」

( ・∀・)「いや、いいよいいよ」

( ^ω^)(あwせd)




从'ー'从「っていうかなんでここでバイトしてるってわかったのー??ww」

( ・∀・)「いやぁ偶然見かけちゃってさ〜。渡辺さん、その格好似合ってるよ!」

( ^ω^)(rftgyふ)




从'ー'从「もー!!お世辞はいいよう」

( ・∀・)「お世辞じゃないよ!なぁ、内藤?」

(;;^ω^)(亜wせdrftgyふじこlp;@:「」)

(;・∀・)「・・・」

从'ー'从「うん?」



( ・∀・)(おい!いつまでも俺に話しをさせるなよ!)

(;;^ω^)「わ・・わ・・」




僕はパニック状態だった。
教室では普通に話せるのに、話す内容を考えてしまうと、駄目だ。体が熱い。頭の中がどんどん白くなっていく。




从'ー'从「内藤くん?どうしたの?」


僕の中の何かが弾けた。それを認識して、勢いよく立ち上がったあとの数秒は覚えていない。



(  ω )




( ^ω^)「わったなっべすわあああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!!」



从'ー'从「!?」

(;・∀・)(声でけぇよ!!)


( ^ω^)「今度の土曜日!!!!」

( ^ω^)「おっおっおデーーーート一緒に行くおーーーーーーーーーー!!!!!!!」



( ^ω^)「ふひひwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


(;・∀・)(誰か除草剤まいてくれ・・。そしてあいつの頭を冷やしてくれ・・・)



________


ふと気がつくと、店内の全ての人が僕を見ている。

渡辺さんとモララー含めて、「ぶっちゃけひいた・・・・」って顔で僕を見ている。

・・あれ?僕そんなやばいことした?




从 ー 从「・・・・・」

(;^ω^)「わ・・渡辺さん」











その瞬間、「ぱん!」という気持ちのいい音と共に、僕の左頬に激痛が走る。
これってもしやビンタってやつ?



从'ー'从「バカ・・・・・」




こんな厳しくて冷ややかな顔の渡辺さんを見たのは初めてだった。目にはうっすら涙を溜めている。
しかし、そんな表情にさせたのは自分だと気づくと、胸に悲壮感が立ち込める。







そして渡辺さんは顔を真っ赤にしながら奥へと去っていった。





僕、おわた。




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