ヒートはビデオガールのようです
LOVE#2 「オレ、ヒート!よろしくな」
帰り道。
僕はずっと下を俯いて歩いていた。モララーがファミレスの出口で呟いた言葉が、脳内で何度もリピートされる。
( ・∀・)「やっぱりなぁ・・・渡辺さんなんて学校一の美少女」
( ・∀・)「おまえにはハードル高すぎるのかもなぁ」
( ・∀・)「すっぱり諦めて」
( ・∀・)「他の子探せよ」
僕は渡辺さんを諦めたくない・・。でも、あんな失態を犯してしまったから、もう二度と話すこともできないかもしれない。
・・・・
やりきれない。
切ない。
悲しい。
憂鬱だ。
駅でモララーと別れ、家まで僕は歩いて帰ることにした。一人になりたかったんだ。
こんな気持ちのときは、黙って色々考えなきゃ頭がパンクしてしまう。
・・しかし打開案なんてもんは勿論浮かばない。
浮かんでくるのは、「あーなんでいつもこうなんだろう!!!」という、自分を叱責する思いだけだ。
前を見ずに歩いていたら、見知らぬ道に出ていた。
いつも電車で移動しているので、この街の道は知らない通りが多い。
( ^ω^)「・・・?」
左のほうからなんだかまばゆい光りが瞬いている。
・・なんだろう?
僕はそっと角から先を覗いてみた。
( ^ω^)「・・・なんだあの建物?」
道の先には、こじんまりとした建物があった。
「特殊レンタルビデオ GOKURAKU」という看板を掲げているだけの、素っ気のない建物だ。
しかし、入り口からは眩しい光が漏れている。なぜだろう。
( ^ω^)「特殊・・ビデオ?」
( ^ω^)「かなり気になるお」
( ^ω^)「行ってみるお」
そして僕は建物に足を踏み入れた。入り口の光りの輪を通り抜けたら、内装は意外と殺風景なものだった。
奥にカウンターがあって、何列も置かれた棚いっぱいにビデオが敷き詰められている。
僕がパッケージを眺めながら店内をうろうろしていると、カウンターの方から人がでてきた。
('A`)「・・ん!」
('A`)「いやぁー久しぶりのお客さんだ!!」
店長さんだろうか?
そりゃそうだろうなあ。こんな僻地に、しかもこんなこじんまりとした個人経営の店だし。
( ^ω^)(しかも置かれているビデオは、パッケージを見る限り、全部アダルトときた)
僕は店長らしき人に質問する。
( ^ω^)「この店にはアダルト以外置いていないんですかお?」
('A`)「アダルトぉ?ノンノン。違うよ、ここにあるのは特殊ビデオだ」
( ^ω^)「とくしゅ・・?も・もしかして」
( ^ω^)「裏ビデオですかお!!!」
('A`)「裏ねぇ・・確かに裏かもね」
('A`)「ただし君の期待しているものではないだろうけど」
( ^ω^)「じゃあ"特殊"ってどういう意味なんですかお!?」
('A`)「まあ借りてみればわかるさ・・」
('A`)「入会費も、レンタル代も、何もいらない」
('A`)「気に入ったのを見つけたら、ここに持ってきてくれ」
・・なんだそれ?
とりあえず僕は、棚に並べてあるビデオのパッケージを一つずつ見ていった。
本当に女の子ばっかりだ・・。
二つ目の棚に移り、一番左上のビデオを手にとる。
( ^ω^)「!!!」
( ^ω^)「こ、これはww」
「なぐさめてあげる」
というタイトルの子に僕は目を奪われた。群を抜いて可愛い。やばい。もろにヒットだ。
( ^ω^)「ヒートちゃんか・・」
( ^ω^)「名前の割りには涼しげな表情でめちゃくちゃ美人だお!!」
( ^ω^)「うん、これなら抜けるお。三回はいける」
( ^ω^)「おまけに巨乳ときた。こんな逸材が潰れかけのビデオ屋にあったなんて」
ここにあるビデオがエッチなものだと僕はまだ信じて疑わなかった。だって、それ以外に何があるんだろうか?
僕は「なぐさめてあげる」を手にカウンターへ急ぐ
( ^ω^)「これ、お願いしますお」
('A`)「おぉ!それか。お客さんお目が高いねえ」
('A`)「この子は清純!可憐!淑やか!の三拍子揃ってる当店のお勧めだ」
('A`)「・・でもその本性はか・な・り情熱的でねえww」
('A`)「そこがたまらないんだ・・。だから名前も"ヒート"なんだよ」
(;^ω^)(やべえ!聞いてるだけでフルボッキだお!!)
店長は僕と話しながら、パッケージを手になにやら作業をしている。
見たこともないような機械だ。一体なにをしているのだろう。
('A`)「今、ちょっと調整してるから待ってなぁ・・」
ぷしゅーという音が店長の手元から聞こえる。ビデオから何やら煙まで出ているようだ。
だ・・大丈夫なのかこれ?
('A`)「ふう、よっしゃ。これでオーケーだ」
('A`)「・・さ、彼女の全てを肌で感じてくれ」
('A`)「きっとお客さんを満足させるよ!」
( ^ω^)(す・・べ・・て・・www)
僕は店長さんからビデオを恐る恐る受け取る。やばい、勃起が止まらない。
ジーパンがテント張ってるのを悟られないよう、ひょこひょこと僕は店を後にした。
('A`)(この店は、心がピュアで、いつも空回りしてばかりや)
('A`)(自分より他人のことを考えて行動してしまうような男の子にしか見えないんだ)
('A`)(あの子・・、結構な傷を負ってるに違いない)
('A`)(でも当店のお勧めならきっと上手くケアしてくれるだろう)
('A`)(頼んだぞ。ヒート)
__
僕は止まらないwktkを抑えながら、僕は自宅へと辿り着いた。
リビングからビデオデッキを急いで部屋へと持ってきて、セッティングを始めた。
そして下準備が全て終わり、僕はもう一度パッケージを眺めてみる。
( ^ω^)「・・ヒートちゃんかぁ」
( ^ω^)「今までモテなかったあなた ふられてばかりだったあなた」
( ^ω^)「そんなあなたに このビデオ」
( ^ω^)「さみしい思いとも今日でお別れ」
( ^ω^)「ヒートがあなたを優しく、やわらかく、それでいて熱くあなたをなぐさめます」
( ^ω^)「息子みwwなwぎwwっwてwきwwたw」
しかし、下の注意書きが僕に疑念を持たせる。
( ^ω^)「再生した"ビデオガール"はもうあなただけのもの」
( ^ω^)「あなただけをなぐさめてくれます」
( ^ω^)「・・ふーん」
( ^ω^)「再生時間は一ヶ月です」
( ^ω^)「・・・・一ヶ月!?なんだおそれ。そんなに見てられるかおww」
( ^ω^)「なんだか意味がわからないお・・」
( ^ω^)「ま、とりあえず見てみるおwwティッシュティッシュww」
そして僕はティッシュを用意して、テレビの電源を入れた。抜く準備万端である。
『今年の秋は、赤いGジャンをダンディーに着こなし・・』
( ^ω^)「さわやか男がかっこいい服を着ているお。不愉快だお」
( ^ω^)「さあヒートちゃん・・・、君のすべてを見せてお・く・れ!!」
『赤色をはずかしがらず、さああなたもチャレンジ!』
そして僕はテープをケースから取り出した。
(;^ω^)「!? な、なんだお!!!!」
シュオオオッという音と共に、テープは勢いよく煙を放った。
(;^ω^)「どどど どうすりゃいいんだお!!」
(;^ω^)「け"煙が出たらすみやかにセットすること"!?」
(;^ω^)「ひぃいい!!入れ!!」
ガチャ!!
僕はテープをデッキの中に急いで差込み、再生ボタンを押した。
(;^ω^)「再生だお!!」
そしてゆっくりデッキから手を離す。しかし、僕は唖然としてしまった。
(;^ω^)「ぎゃん!!!!」
(;^ω^)「ろっ録画ボタンを押してしまったおーー!!!!」
(;^ω^)「録画やめ!!!再生!再生!」
(;^ω^)「・・ちょっ、録画のランプが消えないお!再生も始まってるしどーなってんだお!!」
停止ボタンも押してみたが、テープが止まる気配がない。
(;^ω^)「ばかやろー!!!レンタルビデオって普通、録画できないようになってんじゃないのかお!!」
(;^ω^)「うわあああ!!」
僕は画面に目を向ける。
テレビの中のGジャンを着た男と、ヒートちゃんらしき女の子の映像が重なっている。
(;^ω^)「テレビ番組とビデオの画像が・・・ クロスオーバーしている!?」
テレビは電磁波のような光りを帯び始め、そしてまばゆい光りと、耳を劈くような大きな音、おまけに煙を撒いた。
僕は光りが眩しすぎて、ずっと目を腕で塞いでいた。
そして、光りと煙が収まると、ゆっくり腕を下ろしてみる。
なんと、目の前には女の子がいた。
ノパ听)「ふわあああ」
(;^ω^)「・・・!!??」
女の子はあぐらをかいて、まるで男みたいに背伸びして欠伸をかいている。
着ている服は、テレビに映っていた男の赤いGジャンだ。
(;^ω^)「も・・もしかして、君、ビデオから出てきたの?」
ノパ听)「そうだ!悪いか!」
(;^ω^)「いや・・悪いとか以前に・・」
ノパ听)「あーーーーーっ!!!」
彼女は胸のあたりをさする。人の目の前で何やってんだこいつは!?
(;^ω^)「ど、どうしたんだお??」
ノハ;听)「おっぱいが!オレのおっぱいが無くなっているじゃんか・・・!」
(;^ω^)「お・・おっぱい!?」
ノパ听)「そうだ!ほら、確かめてみろ!!」
そして彼女は僕の手を自分の胸に押し当てた。むにゅっとした感覚が手を包む。
(;^ω^)「やっ、やめろーー!!」
しかし僕はとっさに手を振り解いた。もうなんかチェリーボーイ感が全開である。
ノパ听)「おまえっ!ビデオになんかしたな?」
(;^ω^)「い、いやその・・・」
ノパ听)「ま、いいか」
ノパ听)「おっと、自己紹介が遅れたな!」
そして彼女は立ち上がり、一回ターンして僕の目の前に立つ。
ノパ听)「オレ、ヒート!よろしくな」
(;^ω^)(オレ・・・・・)
こうして、僕とヒートの夏休みは始まったのでした。
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