ガレージ内。すべてが完成した飛行機を前にドクオとショボンがいる。
コンテストに応募し出場資格を取って、あることについて二人が相談している。
議題は誰が乗るか。
(´・ω・`)「そのことで話があるんだけど。」
ショボンが提案しようとする。
だがドクオも考えがあるらしくポケットから何かを探している。
('A`) 「なあここは後腐れのないようこいつで決めようや。」
ドクオが取り出したのはコイン。
これで勝ったほうが決めようというのだ。
文句なしの一回勝負。
これならいいかとショボンは考えた。
結局どちらかの主張を取り入れなければいけない。
なら公平な方法で決めたほうがいい。
ショボンは自分の提案にドクオが乗る自信があったが
ここはコイントスで決めることにした。
('A`) 「じゃあいくぜ。恨みっこなしだ。」
コインを真上にはじき左の手の甲に載せると同時にそれを右手で隠した。
('A`) 「さあどっちだ、ショボンに決めさせてやるよ。」
そういうドクオにはある勝算があった。
日ごろ神様の類を信じないがこの日だけは信じていた。
(´・ω・`)「じゃあ表。」
('∀`) 「じゃあ俺は裏というわけだな。」
なぜか勝利を確信するドクオ。
何度もいいんだなと確認をする。
そんな彼を見てイカサマでもしたかと考えたが実行するとは思えなかった。
ドクオがショボンの不思議そうな顔を見て話し出す。
('∀`) 「なあショボン、ライト兄弟が初めて空を飛んだとき
どっちが先に飛んだか知っているか。
弟なんだよな、コイントスに勝ってさ。」
(´・ω・`)「それぐらい知ってるよ、でもそれがどうかしたの。」
('∀`) 「俺思うんだ。もし神様がいたら絶対ここは裏なんだ。
間違いないんだ。
だって初めて空を飛んだときのコイントスも裏だったんだ。
じゃあ初めて空を飛ぶときの俺らのコイントスももちろん…」
(;´・ω・`)「やっぱやめて、僕が裏に…」
慌てて取り消そうとするショボン。
ドクオはもう遅いと言い右手を開けた。
大会当日。ブーンが飛んだ日のように空を飛ぶにはいい天気だった。
自分たちの順番が来るまで他のチームを観察するドクオとショボン。
例年通りのチームばかりだなと思う。違うのは二人の機体。
ライトフライヤー号を思わせるような旧式のレトロチックなデザイン。
流線型の多い中でそれは見事に浮いていた。
('A`) 「やっぱ神様なんていねぇのな。あそこは裏を出すべきだろう。」
ドクオが搭乗者を決めるコイントスをまだ愚痴愚痴言う。
それでもショボンは腹は立たなかった。
('A`) 「でも俺と同じ考えしてたなんてな。」
そうどちらが勝っても結果は一緒だった。
ショボンがコイントスに勝利したあとすぐさまクーに電話したのだ。
川 ゚ -゚)「いいのか私で?
今ならまだ変更はきくぞ。」
一週間前、クーに電話があった。
ショボンから。飛行機に乗らないかという話だ。
一度断ったものの二人に強引に押されて出場することになった。
('A`) 「いいんですよ。俺らがでるよりそっちのほうが。」
(´・ω・`)「そうですよ。クーさんに出て欲しいんですよ。」
二人が申し訳なさそうにするクーに言葉をかける。
それを聞いてしょうがないなと思いつつ一応言っておく。
川 ゚ -゚)「そうか飛びたくなったらいつでも言ってくれ。」
少し時間がたち何機かが飛んでいった。
予定調和の大会だ。
どの機体が飛ぶかなんて大概わかっている。
そうは思いつつもまじかで見るこのお祭りに三人は興奮していた。
三人がスタートの練習をしていると一人の男が近づいてきた。
( ゚∀゚)「やあ、こんにちわ。俺ジョルジュって言います。」
挨拶をしてきた男。
ジョルジュと名乗る男に三人が適当に返事を返す。
ジョルジュは三人の機体を見ながら言った。
( ゚∀゚)「これ、だいぶ前に新聞に載ったヤツですよね。
いいなあ、俺んとこは大人数だから触らしてもくんねーんだよな。
しょうがないっちゃしょうがないけど、やっぱこういうのいいよな。」
独り言なのか話しかけてるのか曖昧な言葉に
なんて返事をしようか迷っていると、ジョルジュは自分のチームに戻っていった。
ジョルジュのチームのほうを見ると彼はチームは大会記録保持の常連チームだった。
そしてついに出番がきた。
ブーンが夢を叶えたいといっていたこの舞台。
三人はそこに機体を運んでいく。
それを見る、もう飛び終わりギャラリーとなった参加者。
ギャラリーの視線の中には嘲笑と羨望の眼差しがあった。
最終調整に入る三人。ドクオとショボンは念入りに作業を行う。
そうしたなか、お笑い芸人のリポーターがやってきた。
( ^Д^)「これで飛ぶんですか。大丈夫ですか。」
受け取りようによっては失礼にも感じる台詞だ。
三人は心配ではなく自分たちを馬鹿にしていることがすぐにわかる。
芸人はカメラも回っているのでよく口がすべるようだ。
( ^Д^)「めずらしいですね、こんな機体で飛ぼうなんて。
記録出せますかねえ。」
どうやら、三人を馬鹿にするスタンスのようだ。
適当にあしらっていると、もう少し絡めと指示が出たようで
また話しかけてくる。
( ^Д^)「いやぁー、初期のころみたいですね。
あの頃は飛ばずに落ちる機体が多かったですからね。」
なんとか三人と絡もうとするが返事がこない。
少しいらついた芸人が言い出す。
(♯^Д^)「いやぁーたいへんですねぇ。
落ちたらどうしますか?」
三人はいい加減腹が立ってきた。
そんな時、ドクオが黙ってろよと目配せをする。
二人はそれに答える。
ドクオが急に立ち上がり伸びをした。
そしてきわめて自然にタバコを出し火をつけた。
それを見て慌てて芸人が注意する。
(;^Д^)「ちょっとここは禁煙ですよ。
なにやってんですか。」
ドクオはああそうかと言ってタバコを咥えたまんま携帯灰皿を探した。
自分の思い通りにいかない事に不満だった芸人が皮肉を言い始める。
(♯^Д^)「早く消してくださいよ。
常識ないんですか、まったく。
何しにきたんですか?
まあそんな機体で記録出そうとしてるんですから
いい意味で常識はずれなんでしょうね。」
まるで記録を出すことが目的のような口ぶりだった。
というよりもこの芸人はそう思っていた。
飛んで当たり前。この大会は記録を伸ばすための大会だと。
そしてドクオが携帯灰皿にタバコを押し付けながら言った。
('A`) 「サーセン。自分ら空を飛ぶという夢を叶えにきたんで。」
そういうと芸人は言葉につまり何も言わずどこかへ行ってしまった。
余程悔しかったらしく歩き方がそれをあらわしていた。
そのときもカメラは回り続けていた。
そしてついにスタートのとき。
向かい風でちょうどよい速さだった。
クーが機体に写真を貼り付ける。
四人で飛行機の前で撮った写真だ。
一人だけやたらとやつれて見える。
そのときは誰も気づかなかったが今見ると明らかにういている。
写真を貼ってからショボンがスイッチを押す。
スピーカつきのカセットプレイヤーのボタン。
これにはあの曲が入っている。
クーがペダルを回しプロペラを回転させる。
それと同時にアナウンサーの声が聞こえた。
「エントリー番号**番。内藤ホライゾン号です。」
スタートのサイレンが鳴り機体を押す。
自分ができる最大の力を込めてドクオとショボンが押す。
そしてプラットフォームから機体が落ちた。
時間がコマ送りのように流れる。
水面5メートルまで落ちたとき、四人が絶叫した。
('A`(´・ω・`川 ゚ -゚)「あがれーーーー!!」
その声はプラットフォームの上から、機体の上から、そして解説席から聞こえた。
クーが昇降蛇を操作する。
水面まで後2メートル、皆が落ちると思ったとき、機首があがった。
('A`(´・ω・`)「飛んでるよ飛んでるよ。」
二人がはしゃぐ。まるで子供みたいに。
そしてそれと同時に空を飛ぶ飛行機のプレーヤーから音楽がなり始めた。
〜When the night has come
And the land is dark〜
スタンドバイミーだ。
ボートから機体を写している映像が会場で流れる。
まるで映画だった。
古めかしい機体、それを漕ぐ女性、曲の持つムード。
すべてが完璧のように思えた。
飛行機はまだ飛んでいる。
落ちそうのようだがなかなか落ちない。
クーが途中からスピーカにあわせ歌いだす。
川 ゚ -゚)「オァザマウンテイン
ショルダクランボウトゥザシィ」
川 ;-;)「アイウォンクライ
アイウォンクライ
ノォアァイウォンシェアザティア」
川 つ ;)「ジャスタロンァズ
ユスタァンド
スタンバイミー」
割れ気味のスピーカーだったがそれがまたいい味を出していた。
そして2分50秒、曲が終わると同時に着水した。
川 ;-;)「ブーン君、君の夢はやっておいたぞ。
これで感動する人がいるかはわからないがすべてやったぞ。」
機体から降りる前にそう言葉を発する。
大会のボートに乗ったクーが沈む機体をずっと見ている。
機体は湖へと沈んでいった。
その日の夜優勝したチームがホテルで騒いでいた。
ジョルジュの所属するチームだ。
だがジョルジュを入れて二人が浮かない顔をしていた。
そして騒ぎの中、誰かが内藤ホライゾン号を馬鹿にしだした。
「あんなんで飛ぼうなんて馬鹿だよなぁ。」
「そうだよな、何勘違いしてんだか。」
笑い声まで聞こえる。
そんな雰囲気に嫌気が差したジョルジュは
ウィスキービンを持って外にでた。
少し歩き、今日大会のあった湖のほとりで一人ごちている。
( ゚∀゚)「あいつらこそ、なに勘違いしてんだよ。
この大会は空を飛びたいやつらが本気で飛ぼうってもんじゃないのかよ。
そういう馬鹿げたお祭りじゃないのかよ。
俺だって記録なんかどうでもいいから飛びたかったよ。くそ。」
人数が多ければその分空を飛べる確率がへる。
しかしその事実を直視せずチームに所属していたのは自分だった。
ジョルジュはそんな自分が情けなくなった。
もしかしたら飛ばせてくれるかもと淡い期待をいだいて
先輩たちの言うことを頑張って聞いてきた自分が。
( ゚∀゚)「くそ、やめちまおうかな。」
そう言ってウィスキーを飲む。
ジョルジュは後ろから誰かがやってきたのに気づき振り返る。
( ゚∀゚)「なんだお前か松本。聞いてたのかよ?」
松本と呼ばれた男は黙ってジョルジュの隣に座った。
二人は黙って星を見ている。
そして松本が独り言のように喋りだした。
( ・ω・)「俺も辞めようと思うんだチーム。」
黙っているジョルジュにさらに喋りだす。
( ・ω・)「何で俺チームに入ったか考えたら空飛びたかったからなんだよね。
だけど飛べる人少しだけじゃん。そんなの意味ないって言ったら
言いすぎだけど、やっぱり俺空飛びたいんだよね。」
( ・ω・)「今日のさ、あれ見て思ったんだよ。
別にチームじゃなくても空飛んでるやつがいるって。
プラットホームで言ってたじゃん。
空を飛ぶためにきたって。だから俺辞めようと思うんだよね。」
ジョルジュは考えてた。こいつと組もうか。
そしたら飛べるんじゃないかと。
松本も同じ考えだろう。言うことからそう思った
目標ができて喜ぶジョルジュが言う。
( ゚∀゚)「よし、お前俺と組め。
記録じゃなくて記憶を残しにまたここにくんぞ。」
松本はやはりその言葉を待っていたようだ。
ジョルジュにすぐ賛同した。
( ・ω・)「しゃあねえで組んでやんよ。
だけど足ひっぱんなよ。そうなったらぼっこぼこにしてやんよ。」
そう言ってその場でチームを組んだ二人。
その夜はウィスキー片手に話し合った。
くだらない事ばかりだったけど笑いあった。
そして二時間話して決まったのは機体の名前だけ。
それはボッコス長岡号
ブーンが死んで目標を終えた後、皆日常に戻った。
( ・∀・)「やあ、見たよテレビ。かっこよかったじゃないの。
ドクオ君の台詞すごくいかしていたよ。」
モララー教授がドクオに言い去っていった。
ドクオはなんであんな台詞を言ったのだろうと今でも恥ずかしがっていた。
ショボンもかっこよかったと言うけれども、自分ではそうは思えなかった。
校内を歩いているとバンド募集のポスターがある。
文化祭で出場するバンドの募集だ。
('A`) 「文化祭か。つまんねんだよなこれ。」
(´・ω・`)「そうだよね、なんか観客を楽しませることしないんだよね。」
二人は日常に戻っていた。
だが以前と違うのは心構えだった。
('A`) 「俺らが出て笑わせてやっかショボン。」
(´・ω・`)「でも楽器なんてできないよ。」
('A`) 「練習すればいいじゃん。それに目標は笑わせることだぜ。
ちょっとぐらい下手でもいいんじゃね。」
(´・ω・`)「それもそうだね。じゃあまたガレージに集合ね。」
(`・ω・´)「当社を志望した動機は?」
( ><)「はい、僕は自分の夢をかなえるためです。
僕は大勢の人を幸せにしたいんです。
そのために努力したいんです。」
会社の面接試験官になったトーチャン。
さっきやったビロードのことが忘れられない。
昔の自分と似ていると思ったし、ブーンにも似ていた。
周りが反対するなかトーチャンはビロードの面接結果を押した。
周りが少しだけ変わった。
ブーンのせいかもしれないし違うかもしれない。
でも確実に何人かの心は変わっていった。
おいすー、今日もやってまいりましたブーンの日記の時間。
今日は何から書こうかお。いつもはここで迷うブーンですが今日は決まっておりますお。
そう今日は初めて空を飛んだお。イーヤッフゥーーー。
すごい気持ちがよかったお。全部初めて見る景色だったお。
雲も空も人も道路も全部新しかったお。ギャラリーに子供がいたから手を振ったお。
あの子絶対何年経っても忘れないお。ていうか忘れないでおくれお。忘れんなよクソガキだお。
でもなんであんな気持ちになったんだろう。最近は感情の起伏があまりなかったからかお。
明日クーさんに聞いてみるお。
ところで最近よく思うんだお。半年病にならなかったらどうなってたんだって。
半年病になったからこそ自分を見つめることができたし空を飛ぶことができたお。
そう考えるとよかった気もするけど、でもやっぱ生きていたいお。
不思議だお、何もないときはただ生きていればよかったのに
半年病になってから夢を叶えたいと思ったお。
ああそういうことかお。そんな簡単なことかお。やればよかったんだお。
いつもブーンはなにかを言い訳にしてやらなかったお。
自分がわがままになるのが怖かったんだお。
でもドクオとショボンはブーンのわがままに付き合ってくれて楽しそうだったお。
案外そんなもんかもしれないお。ああもっと生きていたいお。
ブーンの夢はどうなるだろうかお。気になるお。
だけど、どうせ結果はわからないお。死ぬからじゃなくて確かめようがないんだお。
ブーンはもうすぐ死ぬお。だけどいつ死ぬかわからないお。
だから毎日こっから先のこと書いてるお。
トーチャンカーチャンクーさんドクオショボンに皆皆ありがとうだお。
じゃあ明日の朝起きられることを祈って睡眠薬飲むお。
みんなみんな、バイブー。
( ^ω^)ブーンが半年病のようです 〜終わり〜
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