その後四日間ブーンは眠り続けた。
買い物から帰ってきたカーチャンが倒れているブーンを見つけ救急車を呼んだのだ。
ブーンが目を覚ます一日前。
ガレージにドクオとショボンがいた。
ドクオは黙々とプロペラを作っていながら、ただブーンが来るのを待っていた。
木を削る音以外何も聞こえない。
先にその空間を壊したのはドクオだった。
('A`) 「ブーンのヤツ連絡もないな。
死んじまったなら親が連絡くれるはずなんだけどな。」
ドクオの言葉に返事はない。
今、ショボンは何もしていない。
ただいつも座るポジションでじっと目をつぶっている。
ショボンはブーンに対して怒りの感情を育てていた。
('A`) 「空を飛んだ日からこないな。」
ドクオが呟く。
その声にはまったくと言っていいほど張りがない。
まるで切れたピアノ線のように。
('A`) 「なあ、そろそろ出場募集の期限がくるんだけどどうする?」
ドクオが話しかけるがショボンは何も言わない。
だが真剣な表情をしている。
自分の信じるものを守るかのような表情を。
また少し時間がたった。
ショボンが急に立ち上がりドクオに向かい宣言した。
(´・ω・`)「僕はもう降りるよ。」
突然だった。
('A`;) 「おま、どうした?」
(´・ω・`)「ドックン、何でこの計画をやろうとしたか覚えている?」
急に降りると言い出したショボンがドクオに尋ねる。
('A`;) 「そらお前、ブーンの夢を叶える為だろ。」
ブーンが計画を持ち出したときのことを思い出す。
あの日のことは二人ともよく覚えている。
急に計画を話したブーン。
それを笑う二人。
そしてその後、笑ったことの後悔。
人生の中で一番後悔したことを聞いたら二人はこのことを言うだろう。
(´・ω・`)「そうだよ。ブーンの夢をかなえるためだよ。
そのために僕は自分の時間を犠牲にしてやってきた。」
('A`♯) 「お前、犠牲って自分から参加したんじゃねぇか。」
ドクオがショボンの言葉に怒る。
ショボンが時間を犠牲にして、なんて恩着せがましい言い方をしたから。
ドクオは一度もそんなことを思わなかった。
そんなことを思わないためにも参加するときブーンに厳しいことを言った。
自分にも厳しくなるために。
(´・ω・`)「僕はブーンが夢を叶えたいって言ったから参加したんだよ。
目標はコンテストに出て感動を取り戻すことだったんじゃないの。
ブーンがそれをしたいって言うから参加したんだよ。
そのため、いろんなルールを決めたしそれを守ってきた。
でもブーンは空を飛んだ日から来ないんだよ。
もう満足したから来ないと僕たちに思われてもしょうがないよ。
それにもし、そうだったらブーンの言った夢はただ空を飛びたいだけじゃんか。
そのために僕らは利用されただけなんだよ。ブーンのわがままに。
やってるときは犠牲だなんて思わなかったよ。
でもそうとしか思えないから言ってるんだよ。」
('A`♯) 「でもあいつだって半年病で苦しんでんだぜ。
ちょっとぐらい許してやろうって思わないのかよ。」
ブーンに言ったことと矛盾しているがそれがドクオの本心だった。
半年病の甘えは見せるなといったが、実際は少しぐらいならいいと思ってた。
(´・ω・`)「思うよ。でもね、僕が参加した理由はブーンの夢をかなえるためだよ。
あの時、僕は別に目標を持っていなかった。少し半年病のブーンが羨ましいと思ったよ。
僕も半年病になれば目標がもてるのかなって。
半年で死んでもそれならいいじゃんって思ったよ。
だけどね、そんな情けない自分が嫌だったよ。
そんな気持ちを抱いたからブーンを手伝おうって思ったよ。
けど、ブーンはもう来ないじゃないか。
僕の目標はブーンの夢を叶えることだったんだ。
ブーンがもう夢を叶えたっていうなら僕はもうやる必要はないよ。」
そう言ってガレージから出て行こうとした。
ドクオはショボンを思いとどませる言葉がなかった。
ショボンの言うことは筋が通っていた。
('A`) 「わかったよ。でも俺はブーンのためと自分のためでもあった。
言っただろ。こんなドラマチックなことやってみたかったって。
俺の目標はまだ終わってないんだ。
だからそれまでこのガレージ貸してくんねぇかな。」
(´・ω・`)「それはいいよ。でも僕は手伝わないからね。」
そう言い外へ出て行くショボン。
ドクオは一人では広いガレージでプロペラを削り始めた。
病室でブーンが起きたときトーチャンとカーチャンが横にいた。
意識は、はっきりしていなかったが、そのことがブーンには疎ましかった。
信じていたクーに裏切られた、だから信じていた親にも裏切られるんじゃないかと。
ブーンの意識がはっきりしないいままトーチャンが怒鳴った。
(`・ω・´)「ふざけるな!!
お前は一秒でも長く生きるんだよ。
それを何だ。自分から死のうとして。
確かにお前はもう長くない。
だからって私たちに黙って死んで言いわけないだろ!!
もういい、いくぞカーサン。」
それだけいい一人で病室から出て行った。
今のブーンにはその言葉もどうでもよかった。
どうせ裏切るんだ。どうせ自分のためだ、と考えていた。
カーチャンはまだ座っていた。
そしてブーンに伝える。
J( 'ー`)し 「ブーン、お父さんはね、四日間ずっとここにいたのよ。」
どれだけ心配しているかを言わず行動だけを伝えるカーチャン。
しかし、もうそんなこともどうでもいい。
( ´ω`)「どうせ自己満足のためだお。」
もうすべてがどうでもよかった。
明日死ぬかもしれない。
なにをしてもどうせ死ぬ。
いっそ早く死んでしまいたいくらいだった。
J( 'ー`)し 「クーさんがこれを渡してくれって言ってわよ。
申し訳ないことしたって。」
カーチャンが封筒を渡そうとするがブーンは見向きもしない。
見る気もない。どうせ自分を弁護するための言葉があるだけだ。
そんなもの見たくもない。
カーチャンが仕方なく封筒を置いていき、最後にこう伝えた。
J( 'ー`)し 「さっきね、クーさんが申し訳ないことしたって言ったけど
それはあなたに対してじゃないわよ。
結果として私たちに迷惑をかけたことを謝ったの。
あなたにはとりあえず読んで欲しいって言ってたわよ。」
そう言ってカーチャンも出て行った。
封筒が机の上においてある。
何時間かして、やることのないブーンは見てみる気になった。
どれだけばかばかしいことが書いてあるのだろう。
ブーンはまだ信じ切れていなかった。自分のクーに対する思いを。
実は、まだもしかしたらとは思っていた。
しかし、あれだけ言った手前そんな感情が起こるのを否定したかった。
もしクーが自分を本当に裏切ったのならどれだけクーを憎めるだろう。
そのほうが楽だ。
ただブーンは勘違いをしていた。裏切られたと思っているが信じたのはブーン自信だ。
自分の感情がはっきりしないいままのブーンは
手紙を見てやっぱり自分を裏切ったんだなと確認したくなった。
ブーン君へ。
私は今のところブーン君に対して謝るつもりはない。
あの時は確かに結論を急いだため誤解を生じさせたと思う。
だが最後まで私の話を聞いてはくれないだろうか。
私は昔、レイプされたことがあるんだ。
数人の男性によって無理矢理体を辱められた。
とても悔しかったよ。なんでこんなことするんだって。
だけども一番辛かったのは自分の気持ちだったんだ。
私は抵抗したよ。嫌だった。知らない男と急に性行為するなんて。
相手のことはその時も今も許せないよ。
そして自分も。
無理矢理、性行為をされているとき私の体は快感を覚えていたよ。
自分では感じたくないのにどうしても感じてしまうんだよ。
人間のメカニズムかもしれない。
でも自分の感情では最低のことをされているのに
自分の尊厳が貶められてるのにどうしても感じてしまうんだ。
どうしようもなかったよ。
自分では本当に嫌がっているのかもわからなくなった。
とても惨めな気持ちにさせられた。
いや、自分から惨めな気持ちになったんだ。
行為が終わったあと私は警察にいけなかったよ。
少しでも快感を覚えていたから。
自分が悪いと思いながらはいけなかったよ。
でもそこで私は考えを変えたんだ。
いやそう思い込もうとした。私はただ男性と性行為をしただけなんだって。
それ以来かな。こんな性格になったのは。
ただ誰にも話せなかったよ。
ブーン君の半年病と似ている。
人にしゃべったらその相手はただ沈黙するだけかなって。
そして私を慰める言葉をかけるだけなんだって。そう思っていた。
でも誰かに理解して欲しかったんだ。
見せ掛けの優しさじゃなく、きちんと私の気持ちを分解してもらいたかったんだ。
だから私はカウンセラーになった。
人の気持ちを分解することで、私のあのときの気持ちも分解できるんじゃないかと。
また少しでも自分の気持ちを理解してもらいたいと。
さっき書いたとおり半年病患者なら私の気持ちと似ているんじゃないかと思ったよ。
特に身に起こったことを伝えるときに発生する印籠的効果が。
だが私は不安だったんだ。
ブーン君に話しても印籠的効果で、ただ私に対して腫れ物に触るように接するかと思うと。
ブーン君が初めて私と話したときと似ているようになるんじゃないかと。
私もブーン君が言ったように誰かに理解されたいんだ。認めて欲しいんだ。
きちんと論理的根拠に基づいて。
私がこのことを誰かに伝えるのは初めてだ。
半年間だがブーン君の論理を重んじる性格はよくわかっているつもりだ。
ブーン君なら私の話を聞いて気持ちを分解してくれると思ったんだよ。
ブーン君と話していて君は論理的に間違っていなかったらちきんと認めてくれた。
だから、私がカウンセラーになった理由を話そうとした。
話す順番が下手でブーン君の怒りをかっただけだったがね。
私はブーン君に理解して欲しいと思っているよ。
ブーン君は私と話して楽しいと言っていたが、私も楽しかったよ。
この手紙を読んで、もしまだ私と話をしてくれるならメールをくれないか。
今すぐ話し合わなくてもいい。
まずブーン君がすることは多分ドクオ君とショボン君のとこに行くことだと思う。
私はブーン君が理解してくれようとする姿勢があるだけで嬉しいんだ。
私を理解したいと思ったらメールをくれないか。
メールは間違いのないようにブーン君の夢である【内藤ホライゾン】と打ってくれないか。
私はブーン君の性格を信じている。
これを読んでそのメールを打ってくれたのなら、ブーン君は私を理解しようとしてくれるんだなと信じるよ。
長くなってすまない、ではさよならだ。
ブーンはその手紙を読み終えすぐさまメールをクーに送った。
クーさんと話がしたいです。
一時間後××公園にきてください。
内藤ホライゾン。
それだけ打ってすぐに病室を飛び出した。
なに、自分は半年病。しかも賞味期限ギリギリだ。
病院を抜け出したって誰も咎められることはないだろう。
そう思いブーンはひたすら家へと走った。
家へと入りすぐさまトーチャンとカーチャンに言う。
( ^ω^)「さっきはごめんだお。
僕はもうすぐ死ぬお。
でもこれだけは言いたいんだお。
産んでくれてありがとう。
トーチャンとカーチャンの息子で本当によかったと思うお。」
びっくりするトーチャンとカーチャン。
なにを言おうか迷っている。
だがブーンにはすることがある。
それをしなければいけない。
使命感に駆られつつトーチャンとカーチャンに別れを告げる。
( ^ω^)「僕はすることがあるから出かけるお。
今まで本当ありがとうだお。」
そう言って出かけていくブーン。
呆然とするトーチャンだったがすぐに自分の息子を見送ろうと玄関まで走った。
ブーンはもうすでに見えないとこまで走っていった。
だがトーチャンは大声で叫んだ。
(`・ω・´)「病院ではひどいこと言ってすまなかった!
こっちこそ、お前が産まれてきて本当によかったぞ。
ありがとうなー!
私たちのことは心配するなお前の好きにやってこーい!」
カーチャンがさらに叫ぶ。
J( 'ー`)し 「ブーーン!産まれてきてありがとー!
自分に正直にねー!」
そう言って二人は家へと戻った。
ブーンに聞こえたかどうかはわからない。
でもどうしても言っておきたかった。
二人はブーンが犯罪行為をするとはまったく思わなかった。
そんなことするはずがないとブーンを信じていた。
ブーンがショボン家のガレージに着く。
明かりがまだ点いている。
中に入るとドクオがプロペラを削っていた。
( ^ω^)「おいすー、久しぶりだお。」
ドクオがブーンに気づき破顔する。
何か理由があったんだ。だからこれないんだ。
そう思っていたがやはり心細かった。
('∀`) 「どうしたブーン。何かあったのか?」
もうすぐ死んでいくといってもどうしても笑顔になってしまう。
それだけ嬉しかった。
( ^ω^)「すまんお。ちょっと半年病のせいで四日意識がなかったんだお。」
ブーンは嘘をつく。
そういった方がドクオに心配をかけなくていい。
('∀`) 「ところでお前まだ忘れてねぇよな。
お前の夢。」
( ^ω^)「もちろんだお。後は頼んだお」
ショボンがいないのに気づきドクオに居場所を尋ねる。
( ^ω^)「ショボンはどこかお?」
ドクオは家にいるとだけ伝えた。
昨日のショボンが降りた話はしなかった。
ブーンは夢を忘れてなかった不可抗力でこれなかったんだ。
わざわざ心配させることはないという配慮だった。
玄関の前まで行きインターホンを鳴らすブーン。
( ^ω^)「ショボーンいるかおー?」
インターホンからショボンの声が出てくる。
(´・ω・`)「なに?」
( ^ω^)「僕の夢頼んだお。
勝手だけどお願いするお。」
それだけいい走って行った。
(;´・ω・`)「えっ、ちょっと待ってすぐでてくから…」
それだけいい走って行った。
ドクオが玄関に来たときにはブーンはいなかった。
ちょうどショボンもでてきたときだった。
('∀`) 「あいつはお前を裏切ってなかったよ、もう聞いたか?」
すぐにショボンは理解した。
ドクオの笑顔と言葉で。
そして二人は一緒に大声で叫んだ。
(´・ω・`('∀`)「まかしとけー!すんげえ感動を与えてやるよー!」
クーにメールを送って一時間を少し回ったときブーンが公園に到着した。
すでにクーはきていた。
クーが何か言おうとする前にブーンがしゃべりだした。
( ^ω^)「クーさん話があるお。
僕はクーさんのことが好きだお。
僕は半年病で明日にも死ぬかもしれないお。
でも伝えたいんだお。
僕はクーさんのことが好きだお。
もっとクーさんのことを知りたいし
理解したいし、理解されたいお。
別に付き合ってくれって行ってるわけじゃないお。
ただ伝えたいんだお。」
そこまで早口に伝えるブーン。
クーはいつもの調子のままで話す。
川 ゚ -゚)「そうか手紙を読んでくれたな。ありがとう。
ところで、どう思う私のことを。」
クーは自分の口からあの単語は発したくないらしく
微妙な質問をする。
それを敏感に読み取りブーンが答えだす。
( ^ω^)「クーさんはそのままでいいお。
レイプされようがなんだろうがクーさんはそこに存在しているお。
クーさんは自分を理解して欲しいって思ってるお
そして僕はクーさんを理解したいと思ってるお。
クーさんも同じだお。
僕に理解されたいと思ってるし
僕を理解したいと思ってるお。
でもお互い、理解したかなんて確認しようがないお。
でもそれでいいお。ふたりで理解しあうお。
その姿勢が大事だお。
僕は、クーさんの話が論理的におかしくない限り絶対拒否しないお。」
傍から聞いたら勝手で無茶な話だと思うだろう。
しかし、手紙を読んだブーンはその答えが一番だと確信していた。
川 ゚ー゚)「そうか、ありがとう。
私もブーン君のことが好きだよ。
私もブーン君のことを理解したいし
理解されたい。でももう時間がない。
だがそれだけで十分だよ。
半年間、君と話しているから、君の考えは少しはわかる。
ブーン君がなにを言いたいかが本当に嬉しいよ。」
お互い相手の考えをよく知っていた。
だから言葉は少なくとも相手の言いたいことがよくわかった。
川 ゚ー゚)「どうだブーン君抱きあってみないか。」
そう言ってクーがブーンに近寄る。
そして二人が力強く抱きしめあう。
幸せな時間だった。
だがここでハプニングが起きた。
川 ゚ー゚)「ブーン君、勃起しているぞ。」
(;^ω^)「すいませんお。つい愚息が。」
川 ゚ー゚)「ブーン君は確かここ数ヶ月、自慰行為をしていなかったな。」
ブーンはもう何を言われてもそれが間違っていなければクーに対しては素直でいれた。
わかっている。
クーは自分のことを笑おうとしているんじゃない。
自分のことを知って理解したいんだと。
だから答えた。
(;^ω^)「はいですお。半年病になってから僕は勃ちませんでしたお。」
クーが勃起しているブーンに問う。
川 ゚ー゚)「ブーン君。君は私としたいか。」
したい。絶対したい。
しかしここでブーンは考えた。
したいと言えば間違いなく自分を受け入れるだろう。
でもここでしたら、もうすぐ死んでいく自分をクーに強く印象付けて
悲しませるだけじゃないだろうか。
でもしたい。クーとしたい。
好きな人としたい。
ブーンがそんな葛藤をしているときクーが話し始める。
川 ゚ー゚)「大丈夫だブーン君。私が君としたいんだ。
君が死んだら私は悲しい。
でもああすればよかったなんて思いたくないんだ。
それに私が君に何かしてあげたいんだ。
この気持ちを理解してくれないか。
ブーン君が死んでも私は君を忘れないだろう。
でも、君にとらわれることはない。
君を思う気持ちは間違いないさ。
君を好きって言ったのに誰かを好きになって
君を思う気持ちが嘘だったなんて思わない。
それで誰かを好きになってはいけないなんて思わないさ。」
クーが自分の気持ちを話す。
ブーンは嬉しかった。
でも心配だった。この先のクーが。
そうは言っても自分にとらわれるんじゃないかと。
自惚れのようだが本当にそう思っていた。
川 ゚ー゚)「なにを迷っている。私としたいんだろ。
もし私がこの先誰かを好きになったらこう言うさ。
私には好きな人がいる。
でも、もうその人は死んでしまった。
私はその人を忘れることはできない。
それでもいいなら私と理解しあおうと。
こう言って理解しようとしないものはこっちから願い下げだ。」
その言葉を聞いてブーンは決心した。
クーとしよう。
二人はそのまま近くのホテルに入っていきそこで交わった。
ブーンは童貞だとカミングアウトしたが
クーはそうかと笑っただけだった。
行為が終わってからブーンが甘えたいと言い出した。
後ろから抱きつかせてくれと。
クーはそれを了承しベッドに座る。
そしてブーンが後ろから抱きつく。
( ^ω^)「もっとこうしていたいお。」
ブーンの声が少し震えている。
その震えた声を聞いたクーはお腹にあるブーンの手を包み言った。
川 ゚ー゚)「いいさ、そのままで。
男性は行為が終わった後眠くなるんだろう。
このまま寝てくれればいいさ。」
ブーンが口元を上げる。
その顔にはこれまでない複雑な表情をしていた。
ただ、喜びの感情だけはクーに伝わった。
( ^ω^)「いや、このままがいいですお。」
そう言ってブーンは抱きついたまま目をつむる。
クーに抱きついた感覚だけをかみ締めるように。
無言の充実した時間の中ブーンはつい眠ってしまった。
穏やかな寝息が聞こえてくる。
川 ゚ー゚)「なあブーン君寝てしまったか?」
寝ているブーンからは返事がない。
クーはブーンを起こさないように抱きつかれたままでいる。
さらに二十分程時間がたった。
クーは自分の背中によりかかっているものに喋りだす。
川 ゚ー゚)「なあ、人間の感情ってなんなんだろうな。
不思議なものだよな。
半年病になったからブーン君は私と出会った。
私はブーン君と出会えて本当に嬉しいよ。
自分を理解してくれるものが現れたんだからな。
もっと君と一緒にいたかった。
でも、もし半年病じゃなかったら君は私と理解しあっただろうか。
死に立ち向かうことで君はなにかを学んだんだろうか。」
返事はない。
クーはそれでも続ける。
目から涙を流して。
川;ー;)「なんとか言ったらどうなんだ。
無茶なことだとはわかっているよ。
でも答えてくれないか。
何で人は涙を流すんだろうな。
また、話し合おうじゃないか。
頼むから答えてくれよ。
なあ、ブーン君。」
クーに返事はない。
もうクーの声の届くところにブーンはいない。
すでに、ねむってしまった。
ブーンはこれからずっと自分で立つことはない。
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