( ^ω^)ブーンが蟲師になったようです
1 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:26:28.79 ID:QW6b7wiz0
おれ はなし かく
おまえらも かけ

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 23:27:00.55 ID:QwrnLf820
だが断る

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 23:27:37.95 ID:mcqKivK50
それ ブーン ちがう
そいつ なまえ にしかわ

4 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:27:36.08 ID:QW6b7wiz0
およそ遠しとされしもの 下等で奇怪 見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達 それら異形の一群をヒトは古くから恐れを含み いつしか総じて「蟲」と呼んだ

『塵に注ぐ光』

1.
山間の道を青年が歩く。
背中には旅の薬師等が背負う大き目の薬籠を背負っており、山林を歩きなれているのだろう、薬籠を背負いつつも、その足取りは軽い。
( ^ω^)「しかし・・・、歩けど歩けど人っ子一人出会わないお。」
呟きながら、青年は道に残った足跡を眺める。
( ^ω^)「山に馴れた人間の足跡だお。ここら辺の土地の者かお・・・?」
思考をまとめつつも、まとまりきらなかった思考が口から漏れているかのように、青年は呟き続ける。
と、そこで青年は道端に落ちているそれを見つけた。
狼の死骸だ。銃で撃たれたのだろう、周囲にはかすかに火薬の匂い。
(;^ω^)「猟師かお・・・!早まったことしなければいいけど・・・。」
青年は呟く労力も惜しいとでもいうかのように、それっきり無言になると静かに歩を進めた。
やがて道の先、山のふもとに木造の家がいくつも見えた。
目的の村だった。



5 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:28:44.32 ID:QW6b7wiz0
2.
青年が村に入ったのは、丁度太陽は南の空に高く上がったころだった。
彼が村に入ると、背中に背負った薬籠等の彼の背格好を目にした年寄り衆が彼を手厚く迎え、村長宅へと案内した。

「あなたが紹介していただいた蟲師の方ですね。」

村長宅へ入り、客間に座るなり村長はそう切り出してきた。

( ^ω^)「どうも、紹介されてきた蟲師の内藤ですお。」

内藤と名乗った青年は、とりあえず自分達蟲師に助けを求めた村の村長に名を名乗る。

( ^ω^)「お話はだいたい伺ってますお。なんでも人食い虎が出たとか。」

内藤はさっさと用件を切り出す。彼ら蟲師の仕事は蟲の相手をすることであって、人間相手にだらだらと喋ることではない。

「いいえ、人食いトラなどとは滅相もない。あれはここいらの猟師の間で山の主と呼ばれている虎です。」
( ^ω^)「人を食えばどんな立派な虎でも人食い虎ですお。しかし、ただのトラではない。だから僕が呼ばれたんでしょう。」
「はあ・・・、しかしその前に訂正が。人食い、人食いと申されますが、人を襲うだけで食われた者はいまだに出ておりません。それに少々、普通の虎、いや、生き物とは事情が違いまして・・・。」
( ^ω^)「・・・・・・・・・。詳しく聞かせてくださいお。」


6 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:31:00.87 ID:QW6b7wiz0
それから村の村長は、自分の息子ほどの年格好の青年でしかない内藤に、すがるような口調と目つきで、滔滔と事情を話し始めた。

「以前からかのトラの事は山の神として村のものたちは崇めてまいりました。川の上流をよく水辺としており、猟師達はとれた獲物の一部を山の神であるその虎にささげておりました。その虎もわれわれを襲うことは無く、
 これまではお互いにそれほど関わらずに共存してきたのですが・・・、ここ数日で急に凶暴化してヒトを襲うようになりまして・・・。」

村長の話はこうだ。
昔からこの地では山の神として崇められてきたその虎とヒトが共存してきたが、ここ最近凶暴化したトラは、ついに人里近くにまで下りてくるようになり、猟師等は山から追い出されてしまったらしい。
それに怒った血気盛んな若い衆が、山狩りをしてそのトラを狩ると言い出したのを見て、山の神を殺すのはまずいと思った村長が近隣の村の村長や猟師達に相談したところ、その中に以前蟲師に村の異変を助けられた事があるという者がいたらしい。
そこから蟲師達に連絡が行き、僕に仕事が回ってきたというわけだ。

( ^ω^)「なるほど。よくわかりましたお。しかし、山の主とされる大きな動物ならあちこちに居ますお。『普通の生き物とは事情が違う』とは?」
「どうも、不思議な力があるようで・・・・・・。」
( ^ω^)「不思議な力、とは」
「虫の大量発生で稲が全滅しかけたときに、あの虎がふらりと山から下りてきて一声ほえたかと思うと田の虫たちが一斉にこの地から出て行ったり、山で遭難した者の道案内をしたりと、とにかく普通の生物ではないのです。」
( ^ω^)「・・・・・・・・・。」
「何を馬鹿な、と思われるかもしれませんが、やはりあれはもう山の神としか・・・。」
( ^ω^)「そうですかお。それじゃあとりあえず行きましょう。」
「は?行くとは、どちらへ?」
( ^ω^)「山ですお。その山の神とやらを見てみないことには、どうにも・・・・・・。」

そう言うと、内藤はさっさと席を立つ。

7 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:31:32.57 ID:QW6b7wiz0
( ^ω^)「誰か、ここの山に詳しい人間をつけてもらえませんかね?」
「おお、では山の神を鎮めることができるのですか?」

内藤に向けて、村長が再びすがるような、少し安心したような声をあげる。

( ^ω^)「できるかどうか、それがわからないからこれから調べに行くんですお。」

内藤は軽い調子でそう答えるだけだった。



3.

「で、あんたか?蟲師とかなんとかって胡散臭い奴は。」

村のはずれ、山道の入り口にここら辺の地理に詳しいという若い猟師の男が待たせておく、という村長の言により、村のはずれへと向かう内藤に、そんなぶしつけな声がかかった。
声のしたほうへと視線をめぐらせれば、話しかけてきたのは12歳程度の少女だった。
少女は、見掛けに似合わずやけに乱暴な口調で内藤に話しかけてくる。。


8 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:32:01.64 ID:QW6b7wiz0

( ^ω^)「胡散臭い、ね。」
「ああ、胡散臭いね。だいたい蟲師ってなんなんだよ。あんたも山狩りして山の主を狩ろうって考えてんじゃないだろうな。」
( ^ω^)「さあね。山の神ってのを見てみないことにはなんともいえないお。必要がなければそんな事する気は無いお。」
「おまえッ!!!じゃあ場合によっちゃあこの山の主を、この山の神を狩るっていうのか!!!!」
( ^ω^)「ああ、狩るね。場合にもよるが人に危害を加えないように退治する必要がある時だってある。」

叫ぶ子供に向けて、それまでの気軽さから一転して、冷酷とも思えるサッパリとした声で断言した。彼の目の前で、子供が息を飲む。

( ^ω^)「まあ、退治しなきゃいけないかどうかをこれから見に行くんだお。けど坊主、山狩りうんぬんはお前等の父親や若衆たちが言い出したことじゃないのかお?子供が口を出す事じゃないお。」
「・・・私は・・・子供じゃない。」

一転して、再び軽い口調に戻った内藤に、やっとの事で少年が返事をした。
先ほど垣間見た内藤の雰囲気と今の口調とのギャップに戸惑っているのだろう。
少年の台詞に内藤は苦笑する。

( ^ω^)「はいはい。じゃあガキじゃないっていう生意気な糞ガキ、山の主ってのについて何か知ってる事はあるかお?」
「だからガキじゃねえって言ってんだろ!!!私にはヒノデって名前があるんだ!!!ガキ扱いすんなよ、オッサン!!!」
( ^ω^)「そうかお。僕にも内藤ホライゾンっていう名前があるお。よろしくな、糞ガキ。あとオッサン言うな。まだそんな年じゃないお。」
「ほらいぞん?変な名前。」
(#^ω^)「・・・・・・・・・。」

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 23:32:26.64 ID:d8XoIdDE0
虫視は空気を楽しむマンガだから活字じゃきついぜ多分

10 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:32:36.01 ID:QW6b7wiz0

多少こめかみを引きつらせながらも、内藤は怒りを押さえ込むと、再びヒノデに質問する。

( ^ω^)「とりあえず、山の主について知りたいから、何か知ってる事があったら教えて欲しいお。」
「は?余所者のあんたに簡単に教えられるかよ、オッサン。」
(#^ω^)ピキピキ「・・・・・・・・・。」
「あんた、山の主をどうにかしようとしてんだろ?だったら余計教えられないね。あの山の主は神だ。山の守り神だ。それを狩ろうなんて、猟師連中は頭がどうかしてる。」

山の主を狩ろうとしている連中への怒りを思い出したのか、ヒノデの声には熱が入る。

( ^ω^)「なんでそんなにおまいは山の主を信仰してるんだお?」
「信仰?山の主が普通の動物じゃないってのは厳然たる事実だぜ?それに・・・」

そこでヒノデは喋っていいものか測りかねる、といった表情で逡巡した後、意を決して続ける。

「私が昔山で遭難した時、山の主が助けてくれたんだ。山の主のやる事に間違いは無い。山の主はいつもこの地に生きる私達を守ってくれている。」
( ^ω^)「でも実際、山の主は人を襲ってるじゃないかお。」
「襲われたって言ってる連中が何か悪い事したに決まってんだろ。寝ぼけてんじゃねーぞオッサン。」
(#^ω^)「オッサンって言うな。まだ僕は21だお。」
「叫ぶなよオッサン。迎えが着てるぜ。」

ヒノデはそう言うと、内藤の背後を指差した。
内藤が振り返ると、確かに猟師と思われる猟銃を背負った男がこちらに向かってきている。
内藤がなかなか来ないため、業を煮やしたのだろう。

11 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:33:17.27 ID:QW6b7wiz0

「蟲師の内藤さんですよね。」
(;^ω^)「すいませんお。遅くなってしまって。」

山の案内を務める事になる猟師に挨拶をする内藤を尻目に、ヒノデはさっさとその場から離れる。

「じゃあな、オッサン。せいぜい山の主に追い返されないように気をつけな。」
(#^ω^)「オッサンってゆーな!!!」

怒鳴り返すも、その頃には駆けていくヒノデの姿は見えなくなっている。
子供だからか、やたらとすばしっこく、足が速い。

「すいません、ヒノデの奴、山の主の事になると何時もあんな感じでして・・・。」
( ^ω^)「いや、気にしてませんお。」
「そう言っていただければ幸いですが、山に入るなら早くした方がいいでしょう。夜に山に入るのは危険ですし。」

見れば、既に日は傾きかけている。

( ^ω^)「そうですね。僕も夜に入って迷うのは御免ですお。」

そう言うと、内藤は山道へと足を踏み入れる。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 23:33:47.69 ID:dImVAZxc0
蟲師HDDに録ってあるけど未だに一話も見てない俺

13 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:33:37.41 ID:QW6b7wiz0

「気をつけてください。途中までは山道を進みますが、山の主がよく現れる川辺に行くには、山道から外れて獣道を行かなければなりませんから。」

内藤を追い越した猟師の男が先を進む。
確かに、人の手が入った山道などに山の主とまで言われるような獣が出没するはずは無い。

( ^ω^)「山は歩きなれてるので大丈夫ですお。そんな事より、山の主の特徴を教えていただけませんかお?」
「特徴?心配しなくても見れば分かりますよ。あの虎、普通の虎と違って緑色なんですよ。」

男の口調にはあからさまな嫌悪と忌避感が篭められている。
どうやら若い世代は、人を襲い始めた山の主を害獣のようなものと思っているらしい。
男の表情から察するに彼等は、山の神に対する畏怖というよりも、むしろ得体の知れない化生の物に対する畏怖を抱いているようだ。

( ^ω^)「緑色・・・ですかお・・・。」
「ええ、丁度この山の木々の様に、濃い緑色をしてます。ところで内藤さん、山の主はどうにかなりそうですか?」

彼の言葉には隠す事のできない不安がにじみ出ている。
彼ら猟師にとって、山は神聖な場所であると共に、大事な狩猟場だ。
山に入れないというのは、彼等にとって致命的な事なのだろう。


14 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:34:11.29 ID:QW6b7wiz0
( ^ω^)「まだなんとも言えませんお。ただ、山の主の正体は、だいたい見当がついていますお。」
「見当?」
( ^ω^)「おそらく、『魑』と呼ばれる類の蟲ですお。」
「魑、ですか?」
( ^ω^)「魑魅魍魎という言葉があるでしょう。魑魅が山林の異気から生ずるという、すだま等の物の怪、魍魎が山川の精、木石の物の怪だと言われていますお。」
「はあ・・・。」
( ^ω^)「一説に寄れば魑魅の魑とは、虎の形をした山神で、魅が猪頭人型の沢神だといわれています。この山の下には光脈筋が流れてるようですし、この山の主はその光脈筋に土地の主として認められた『魑』ですお。」

説明する内藤に対して、猟師の男は先程から曖昧な返事を返すのみだ。
あまり理解できていないのかもしれないし、物の怪だの魑魅魍魎だのと言ったところで信じられないのかもしれない。
蟲は見える人間には見えるが、見えない人間にはとことん見えないので、猟師の男のような反応は仕方の無いものだと言える。
蟲の中にも、動植物に”近い”蟲は人間にも見えるのだが、そういった蟲に出合ったり、「普通の生物とは違う」と気づきつつも遭遇する人間は極々稀だ。
内藤がそもそも蟲というものは何なのかについて語り出したあたりで、彼等は山道から獣道へと足を踏み入れようとしていた。

「内藤さん、そろそろ獣道に入ります。枝や足元に注意してください。」

内藤の長話に辟易していたのか、話題を逸らせて救われたかのような顔で男が言った。
気をつけてください、とは言ったものの、男は彼の後ろを行く内藤という青年が、山歩きの素人ではない事はこれまでの内藤の歩き方等から察していた。
彼のように山で生まれ育ったのか、それとも山道等を歩き馴れているのか。
兎にも角にも、この調子なら日が暮れる前までに山の主を拝んで山を下る事が出来そうだ。
そう考えてさらに歩を進めようとした男に静止の声がかかる。

( ^ω^)「ちょっと待つお。」
「どうかしましたか?」
( ^ω^)「先程言ったようにこの山の下には光脈筋があるみたいだお。蟲がやたらと多いお。」


15 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:35:04.64 ID:QW6b7wiz0

そう言うと内藤は近くを散策し、いくつかの草花を集めてくると背中の薬籠を地面に置いて中から土焼製のすり鉢と、青い光沢をもった奇妙な擂粉木状の石を取り出す。

「何をしているんですか?」

男が怪訝そうに聞くが、内藤はとりあわずに先程集めてきた草花を、取り出したすり鉢と石ですり潰していく。
物珍しそうに眺める男には構わずに、黙々と草花の原型が無くなるまですりつづける。
やがてすり潰された草花は草花自体が含んでいた水分によって、濃い緑色のどろどろとした粘性のある半固体状になっていった。

( ^ω^)「水、持ってますかお?」
「水ですか?飲み水なら・・・。」

男はおずおずと、懐から竹製の水筒に入った水を差し出す。
内藤はその水を半分程と、自分の持っていた水筒の水を全てすり鉢の中に注ぎ、かき混ぜる。
すり鉢の中に、良質の抹茶を思わせる綺麗な草色の液体が出来上がった。
それを眺めて満足そうに頷くと、内藤はまるで茶の湯のように自らの前ですり鉢を三回回すと、両手で恭しく男の前に差し出した。

( ^ω^)「どうぞ。」
「は?」
( ^ω^)「だから、どうぞ。」

男はわけも分からないまま、内藤の差し出したすり鉢の端に口をつけ、舌先を恐る恐る液体に沈め・・・・・・・・・


16 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:35:27.84 ID:QW6b7wiz0
「苦ッ!!!!!!!!!」
( ^ω^)「何やってるんですか。そんなの飲んだらお腹壊しますお。蟲避けの薬だから体に塗ってくださいお。」
「・・・・・・・・・・・・。」

白々しくそう言う内藤に、男は内心で「絶対わざと飲み物と勘違いするように差し出しただろう」と思いつつも、口には出さずに恨めしげな視線を向けるにとどめておく。
内心では毒づきながらも、村長から「山の中ではできるだけこの蟲師の先生の言う事を守るように」と言いつけられている手前、大人しく服から露出している手足、顔にその液体を塗りたくっていく。

「・・・・・・・・・土臭い。」
( ^ω^)「匂いは我慢してくださいお。あと、主と遭遇しても声は出さないようにしてくださいお。その薬は蟲の目を誤魔化しますが、声から感ずかれる恐れがありますお。」

そう言うと、今度は内藤がすり鉢を手にして、その中身を自分に塗りたくっていく。

( ^ω^)「それじゃあ行きますかお。」

さっさと山へと入っていく内藤の後姿を眺めつつも、自分と内藤の体から漂う土と草のむせ返るような濃い匂いに、男は早くも引き返したくなった。




17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 23:37:35.88 ID:d8XoIdDE0
なかなか面白い件

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 23:38:31.84 ID:oMukDdyh0
>そこから蟲師達に連絡が行き、僕に仕事が回ってきたというわけだ。
三人称視点なのにこの一文はおかしいと思うよ無糖先生

19 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:39:33.50 ID:QW6b7wiz0
>>18
何時も一人称視点ばっかりで書いてるから間違えた。
反省はしていない。
脳内変換して読んでください><

もうすぐエンディング書き終わるから待ってて。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 23:40:18.61 ID:dImVAZxc0
このスピードはコピペですな

本物がどんなんか見たくなってきた

21 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:41:57.82 ID:QW6b7wiz0
4.
先にそれの接近に気がついたのは猟師の男の方だった。
流石にこの山を歩き回り、獲物を追う事が生活の一部になっているだけあって、この山の中の事は男の方が詳しいようだ。
だから、問題の川辺で男の表情が強張ったとき、内藤はそれの接近を知ることが出来た。
男はそれの存在を視認できたわけではない。だが、幼い頃から山で育ち、山を仕事場として生きてきた男の勘が、その圧倒的な存在感を放つ生物の接近を感じていた。
それ―――山の主とも山の神とも呼ばれる蟲は、彼等に気づかれる事無く彼等に接近していた。
内藤が気づいたときには、それは既に川辺で川の水を眺めていた彼等の対岸まで来て川の水を啜っていた。
この山は火山で、昔に噴火でもあったのだろう。そこら中に玄武岩等の噴出した溶岩が急冷してできたと思われる火山岩が転がっている。
その火山岩の上から川の水に口先を沈めている山の主は、その巨体とも相まって威風堂々、自然と一体化した芸術性すらも漂わせていた。

(;^ω^)「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・ッ!!!」

手を伸ばせば触れられる程の距離とまではいかないが、川を挟んで一丈(約3.03メートル)程先に緑色の巨体がある。
主の体長もこれまた一丈(約3.03メートル)程だろうか。言われて見れば虎に似ているが、その体に縞の模様は無い。
ならば何に似ているのかと聞かれれば、正直首を傾げざるを得ないのだが・・・。


22 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:42:24.39 ID:QW6b7wiz0

(:^ω^)(やっべ。虎ってこんなでかいのかお。こりゃ主とか神とか関係なしに、襲われたら楽に死ねるお・・・。)

先ほど調合した薬のおかげで、主は彼らに気づいてはいない。
今も対岸で自分を観察する者達がいるなどとは夢にも思わず、川から水をすすり続けている。

(:^ω^)(成る程、気配からして普通の獣じゃないお。見たところ火山岩だらけのこの山がここまで緑で埋まってるのも、光脈筋とこの主のおかげみたいだお。)

内藤は隣の男へと目線で「音を立てないように」と伝えるが、男はそんな内藤の視線など目に入らない様子で震えている。
おそらく、これほどの至近距離でこの山の主を見るのは初めてなのだろう。
青ざめて震えている。
その時、山の主のが川から顔をあげた。
それはただの偶然でだったのだろうし、主もただ水をすするのを一息つけて、なんとなしに対岸を眺めていただけなのかもしれない。
しかし、その主の何気ない行動が男に与えた恐怖は大きかった。

「・・・・・・・・・ッッッッ!!!!!」

男の喉の奥から、「ヒッ」と「ハッ」の中間のようなかすれた音が漏れた。

(:^ω^)(あ、バーロー。声だすなって言ったのに・・・。)

音に敏感に反応して、主が音の発生源へと目を向ける。
そこには先ほどまでは視認できなかった男たちの姿。

23 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:42:46.68 ID:QW6b7wiz0
調合した薬で意識を逸らして自分たちの存在を感知される事を免れてきたが、音から存在を感知されては、もう意識を逸らし続けることはできない。
どこを眺めるでもなく、あちらこちらへ動いていた山の主の視線が固定された。
だが、それからの男の行動は迅速だった。
幼いころから父親の猟についていき、山での生き方を学んできた男の体は、恐怖の中でもしっかりと今まで積み上げてきたそれらを無意識のうちに使っていた。
ほとんど反射とも言える動作で男の手が猟銃を構えて発射。
山の主は銃口が自分にぴたりと据えられた瞬間、その場から飛びのき事なきを得るが、再び男の銃口が動くと、一目散にその場から駆け出した。
しかし、恐怖に囚われた男の手は止まらない。

(:^ω^)「ちょっと待つお!!!」

山の主を殺してはならない。
主の変調や死はそのまま山の変調、死へと繋がる。
内藤が急いで静止するが、男の猟銃からはすでに銃弾が放たれていた。
銃弾は一直線に、背を向けて逃げ去る山の主へ追いつき、食らいついた、が―――

「・・・・・・・・・・・・。はずした・・・・・・?」

確かに銃弾は主の体を捉えたはずだったが、山の奥、主の逃げていった先には死体どころか血一滴たりとも流れていない。
山に変調が見られないことからも、主に以上が無いのは明らかだ。

(:^ω^)(・・・どういう事だお?)


24 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:43:33.60 ID:QW6b7wiz0
内藤は怪訝そうな顔で、弾丸が主に食らいついたと思われる地点まで歩いていく。

( ^ω^)(しかしあの主、弾が当たった瞬間に消えたように見えたお。)

首をひねりつつ周囲を見渡すと、そばに大量の落ち葉が集まっているのが見えた。落ち葉だというのに、つい先ほどまで木についていたかのように、やけにみずみずしい。
落ちていた落ち葉の内、一枚を背負った薬籠に入っていた瓶の中へと入れると、内藤は背後で固まったままの男へと振り返った。
男は山の主とあれほどの至近距離で遭遇したショックからか、銃を構えたまま呆然としていた。
( ^ω^)「そろそろ日が落ちてきたし、さっさと下山するお。」
「え・・・?あっ、はい。」
( ^ω^)「・・・落ち葉・・・・、か。」


5.
村に帰った内藤はさっそく村長に、主と遭遇した事を話した。
しばらくこの村に留まる事になりそうだと告げると、村長は快く自分の家の空いている部屋を貸してくれた。
その夜、村を地震が襲った。
それほど大きな揺れではなかったが、小さくもない。


25 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:44:04.01 ID:QW6b7wiz0

(;^ω^)「・・・・・・・・・なッ!!!」

揺れる地面に仰天した内藤が布団から飛び起きる。
飛び起きた頃にはもう地震は収まっているのだが、周囲の様子を見るためにふすまを開けて部屋から出る。

「内藤先生、ご無事でしたか。」
(;^ω^)「村長さん、地震が・・・」
「ええ、このところどうも多くて。これも山の神様のお怒りなのでしょうか・・・」
(;^ω^)「・・・・・・・・・・・・。」
「とりあえず収まったようですし、今日の疲れをとるためにももうお休みください。」
(;^ω^)「はあ・・・・・・。」

内藤が頷くと、村長は自分の部屋へと戻って行った。
わざわざ内藤を心配して様子を見に来てくれたらしい。
それとも、なにがなんでも内藤に山の主を鎮めてもらうためにも怪我を負ってもらっては困る、といったところか。

( ^ω^)「ん?」

部屋に戻ろうとふすまに手をかけたその時、内藤の視界の隅を何かが横切った。

( ^ω^)「?」

そのまま寝てもよかったが、なんとなく横切った何かを目で追った。

( ^ω^)「子供・・・・・・?」


26 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:44:26.81 ID:QW6b7wiz0

先ほど内藤の視界を横切ったのは、昼に内藤につっかかってきたあのヒノデという子供だった。
こんな夜中に何をするつもりなのか、山へと続く道を歩いていく。

( ^ω^)「・・・・・・・・・。」



6.
ヒノデは夜の山をひたすら歩き続けていた。
夜の山は危険だが、山のとある場所とその周辺に関しては危険は無い。
道に迷う心配はあるかもしれないが、幼い頃から山を駆け回って遊んできた彼が山で迷うなどと言う事はまずありえない事だと思っていたし、獣に襲われる心配も無い。
獣たちは知っているのだ。
その場所に何が居るのか。

「・・・・・・・・・。

やがて、木々の間を抜けると少し開けた場所に出る。
その場所の中心には一本の巨大な木。
まるで木々がその巨木に遠慮しているかのように、巨木の周りはただ落ち葉だけが広がっている。

「なあ神様、なんで―――」
( ^ω^)「へぇ・・・、これがこの山の主かお。」
「−――――ッ!!!!!!」

いつの間にかヒノデの後ろに昼間会った内藤という男が現れていた。


27 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:45:04.99 ID:QW6b7wiz0

( ^ω^)「てっきり魑かと思ってたけど木霊(こだま)かお。はじめて見たお。」

内藤の視線はヒノデのそれと同じく巨木へと注がれている。
いや、ただの巨木ではない。
見るものが見れば、その巨木の幹から人の顔のようなこぶが突き出ている事が分かる。
そう、”見える者”が見れば。
木から生えている顔は、男か女かもわからない。丁度顎の下から先が木とどうかしていて、頭部には髪の毛の代わりに細い枝がびっしりと生えている。
それらのうち、いくつかは先に葉をはやしているが、殆どの先端は木の幹へと同化している。

「な、ちょ、お、おま、なんでここに?」
( ^ω^)「とりあえず落ち着け。」
「な、な、なんで、なにしにこ、こ、ここへ?」
( ^ω^)「いや、どもりすぎだって。」

内藤の出現にそれほど驚いたのか、ヒノデの口からでる声は途切れ途切れだ。

( ^ω^)「一応言っておくと、おまいが山に入ってくのが見えたから、夜の山は危険だしなんか怪しいからこっそり後をつけてきた。」
「な、おまえ勝手に人の後を、っていうかお前、神様が見えてるのか!!?」
( ^ω^)「あの木から突き出てる顔かお?あれは木霊っていう、樹齢何百年もの巨木が蟲になったものだお。」


28 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:45:44.89 ID:QW6b7wiz0
ヒノデの指と、内藤の視線の示す先には幹からでている顔、木霊があるが、その顔の方は内藤たちへと意識を向けている様子は無い。
視線も虚空を眺めるように一点から動かず、口からも鼻からも呼吸をしている様子は無い。
それは一見して、本物の人間の顔が木から突き出しているように見えるが、本当に頭部としての機能があるわけではなく、木の瘤が人間の顔のような形を取っただけだ。

「私以外にあれが見える奴は初めてだよ。皆ただの大きな木にしか見えないって言うんだ。」
( ^ω^)「まあ、蟲が見えない人間にはそう見えるんだお。そんな事より―――――」

ぐしゃり、という地面に広がった落ち葉を踏みしめる音。

( ^ω^)「――――その神様の方は僕のことをあまり歓迎してないようだお。」

ヒノデの振り向いた先、彼の背後に一丈(約3.03メートル)もある緑色の獣の上半身が、土から生えてきていた。



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 23:47:41.67 ID:dImVAZxc0
>>一丈(約3.03メートル)
別にこれ何度も書かなくていいよ?

30 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/12(日) 23:51:29.28 ID:QW6b7wiz0
>>29
その方が読む側が分かりやすいと思った。
後悔はしていない。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:03:18.06 ID:N2TonxIu0
続きマダー?

32 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:03:33.33 ID:UqUBwYH90
7.
その威容をなんと表せばいいのか。
かろうじて虎に近い姿をしているが、それとも微妙に違う。
地面から少しづつ生えて姿を現しているそれの手足は、まるでヒグマのように太く、全体の印象として力強い感じがある。
いや、地面から生えているわけではない。
地面に散らばった落ち葉がその獣の体を少しずつ構成しているのだ。

( ^ω^)「成る程、自分から離れた葉を操れるのかお。」

獣を構成していく葉は、あの川辺で獣が撃たれた後に残ったもの、木霊の樹上から生えているものと同じだ。
今や完全に姿を現した緑色の獣は牙を剥いて内藤を威嚇する。

「な、なあ神様、ちょっと待ってくれよ!なんで―――」

ヒノデが巨木に向けて何か叫んだ瞬間、彼女に緑の獣が飛び掛ってきた。

(;^ω^)「危ない!!!」

咄嗟に内藤が飛び出し、ヒノデを突き飛ばす。
緑の獣は先ほどまでヒノデが立っていた場所に着地。
そのまま横を眺め、顔だけをヒノデを突き飛ばした内藤へと向ける。
両者はそのままにらみ合う。


33 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:03:55.98 ID:UqUBwYH90
(;^ω^)「・・・・・・・・・?」

だが、内藤の顔に浮かんだのは警戒でも恐怖でもなく、疑問の表情だった。
緑の獣は何かに怒って暴れているわけでも、体に異常があって暴れているわけでもない。
緑の獣の目はやけに澄んでいて、知性あるもの特有の輝きを放っていた。
怒りに我を忘れていたり、異常のあるものにこんな目はできない。
にらみ合った一瞬、その事をわずかに、だが確かに内藤は読み取っていた。
だが、両者のにらみ合いは唐突に終わりを告げた。
巨木の周りにさらなる足音が響いてきたからだ。
やがて、木々の間から内藤の前の前にいる獣と寸分たがわぬ姿をした緑色の獣達が現れる。
その数は十や二十ではきかない。

「こ、こんなに居たのか・・・・・・。」

驚きに口を空けて立ちすくむヒノデへ、内藤が声をかける。

(;^ω^)「おい、糞ガキ・・・。逃げるお。」
「え?」


34 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:04:19.15 ID:UqUBwYH90

瞬間、言うが早いが内藤がヒノデを脇に抱えて走り出す。
背後から獣たちの追ってくる気配は無い。
途中の木々をかいくぐり、盛り上がった木の根を飛び越えてがむしゃらに走る。
山のふもと付近まで来たところでようやく足を止めると、内藤はその場に座り込む。

「おい!放せ!何時まで抱えてんだ!」
(;^ω^)「うっせ、人に抱えてもらっといて何言ってんだお。」
「誰も逃げてくれなんて言ってない!!あれは何かの間違いだ!山の神が私達を襲うはずが無い!」
(;^ω^)「多分、おまいの言う事は正しいお。」
「は?」

まさか賛同を得られるとは思っていなかったのだろう、少女は内藤の思わぬ返事に目を丸くする。

(;^ω^)「あの木霊からは人を襲うような敵意は感じなかったお。むしろ、人に何かを伝えようとしていたお。」
「ならなんで逃げたんだよ!!!」
(;^ω^)「よくわからないお。けど、あいつは僕等にあの場所から離れて欲しがっていた。」
「どういうことだよ。」
(;^ω^)「だから、わからないって言ってるお。」
「・・・・・・。役に立たないオッサンだな。」
( ゚ω゚)「オッサンではない。」

オッサンと呼ばれて、怒鳴り返されると思っていた少女は、その内藤の声にびくりとした。
感情をそぎ落としたような平坦な声色と表情だった。

35 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:04:36.94 ID:UqUBwYH90

( ゚ω゚)「オッサンでは、ない。警告する。次は無いぞ。」

聞き分けの無い子供に無理やり言い聞かせるように、もう一度言った。
口調もがらりと変わっている。よほど頭にきたらしい。

「・・・・・・。(ていうか、顔怖ッ!)」

ヒノデは感情を感じさせないが、目だけは本気の内藤に、「大人の癖に子供相手に本気になるなよ」と、大人気なさを感じた。
多少呆れつつも、コクコクと内藤に向けて何度も頷いた。



8.
「昔さ、山で迷った時、山の神が助けてくれたんだ。」

村を目指して山を降りていく途中、ヒノデがぽつりぽつりと話しはじめた。

「迷ってるうちに崖から落ちて足をくじいてさ、動けなくなってる俺をあの緑色のやつが山の神のところまで運んでくれて、私の脚がよくなるまで果物やら木の実やらをとっては持って来てくれたんだ。」
( ^ω^)「それでおまいはそんなに山の主を崇めてるのかお。」
「私だけじゃない。昔は皆山の神を崇めてたさ。けど、十年くらい前から山の神が人里に下りて助けてくれる事が無くなったからしいんだ。」
( ^ω^)「それで若衆連中は年寄り衆と違って山の主に対する敬いが無いのかお。」
「それでも多少の敬意はあったんだ。けど、最近になって地震が増えてきたり、人を襲うようになってからは掌を返したように山狩りをしようなんて言い出した。」
(;^ω^)「いや、そりゃあ襲われれば誰でも怖がると思うお。」
「でも怪我人は一人も出てない!あいつ等、山の神の事を化け物扱いして・・・これまではずっと敬ってきたのに・・・。」

ヒノデがそこで口をつぐんだ。


36 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:05:37.00 ID:UqUBwYH90

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・塵、か。」
「え?」
( ^ω^)「この国からずっと西、清の国がある地からさらに西、遥か西にある南蛮の地では、人は塵からつくられたと信じられているらしいお。今の話を聞いて、それを思い出していたんだお。」
「塵?確かにこれまで守ってきてくれた神を狩ろうなんて、性根の腐った汚い奴等だけど・・・」
( ^ω^)「そういう事じゃあ、ないお。」
「?、それはどういう―――」

そこで、二人は前方から照らされる明かりに気づいた。
夜明けにはまだ早い。
では一体何の明かりなのか。
そう考えて、明かりの発生源を探す二人はそれを見た。
二人の歩く先、村のある山の麓付近から山の上へと向かって広がっていく炎を。

「山が燃えてる・・・。」

二人の視線の先、山の麓、村の側から山に火が放たれていた。油でも使っているのだろうか、ただの山火事にしては火のまわり方が早い。

(;^ω^)「まさか村の連中・・・・ッ!!!」


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:05:44.92 ID:/uWK78uQ0
>>12
うp

38 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:06:07.10 ID:QW6b7wiz0

嫌な予感に突き動かされ、内藤が走りだすとヒノデもそれに続いた。
火のまわり方から見ても、これが人為的なものであることは明らかだ。
そう考えながらも走り続ける彼等の前に、火の着いた松明と油の入った水がめや酒樽を持つ村人たちが見えてきた。
村人たちも彼等に気づいたか、視線が集まる。
内藤は彼等の前に来るなり彼等を問い質した。

(;^ω^)「何やってるんだお!!!」
「あんた・・・確か蟲師の・・・」
(;^ω^)「おまい等、自分たちが何やってるのかわかってるのかお!」
「見てわかんないのか?山狩りだよ。あの化け物を何とかしないと、俺達はもうどうにもならない。」

化け物。確かに男はそう言った。
見れば、山に火をつけている男たちは全員若い者ばかりだ。
確かに村の老人たち以外には山の主を敬う心は無いらしい。
男達の口調に篭められた忌避感や嫌悪感に敏感に反応したヒノデが、食いつくように男へと話しかけた。

「なんで!!お前等なんで山の神を!!!」
「ヒノデ!!?おまえ、無事だったのか!!?」
「え?」
「お前のとこの親父さんもお袋さんも、お前が奴等に食われたと思って悲しんでるぞ!!」
( ^ω^)「奴等?」
「あの緑の化け物共だ。さっき村が奴等の群れに襲われた。もう奴等を方って置くわけには―――」
「おい!!!居たぞ!!!!こっちだ!!!」
「わかった!!!今行く!!!」
(;^ω^)「あ、コラ、ちょっと待つお!!」

39 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:06:44.91 ID:UqUBwYH90
内藤が止めるまもなく、男は別の男からかけられた声に従って山の中を駆けていく。
走り去っていく男の背には猟銃が背負われていた。
山の奥からもいくつもの銃声が響く。
何をやっているのかは明白だ。

(;^ω^)「糞ガキ、奴等を止めたいお!!!一緒に説得を―――」
「・・・のせい・・・・・・たし・・・・・・が・・・」
(;^ω^)「おい!!!糞ガキ!!!もしも山の主が死んだら、光脈筋の流れるこの山は―――」
「私のせいだ!!!私が居なくなってたから!!!私が殺されたと思ったからあいつ等は!!!!」

そこで内藤はハッとなった。
そうだ、あの山の主は人を襲いはしても殺しはしない。
あの木霊の側で、木霊の作り出した獣と視線が工作した一瞬にそれだけは読み取る事はできた。
ならば、村を襲ったとしても誰も被害を受けていないはずだ。
しかし、村を出て山の主に会いに行っていたヒノデの姿は無い。
彼等は思ったはずだ。
「ついに最初の犠牲者が出た」と。

「わたしが!!わたしのせいで―――」
(;^ω^)「違うお!!!おまいのせいじゃないお!!!奴等はいずれ山狩りをするつもりだったお!!!」
「でも私のせいでそれが早まった!!!あんただって分かってんだろ!!!私のせいだって―――」
(;^ω^)「違うお!!!」
「何が違うって言うんだ!!!私のせい―――」

40 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:07:17.18 ID:UqUBwYH90
(;^ω^)「だから―――」

瞬間、世界が揺れた。
此の世を誰かが揺らしているのではないか、そう思えるほどの大地震と共に、轟音が響き渡った。
三度、ヒノデの言葉をさえぎろうとした内藤の台詞が、さらにその轟音でかき消された。

(;^ω^)「な・・・ッ!!!!!」

その場に居合わせた誰もが呆然としていた。
山に火を放って居た男たちも、緑の獣たちを追い回していた男たちも、内藤も、ヒノデも。
全員が全員、口と目を開いてそれを見上げていた。
轟音とともに、頂上付近から溶岩を吐き出す山を。

「噴火だ!!!!山が噴火したぞ!!!」

誰かが言った。
山から溶岩とともに吐き出された岩石は空に炎で赤い弧を描きながら落下していく。
その空に浮かんだ火の雨によって夜の世界がほんのりと照らし出された。
天から火の雨が降ってくるかのようなその光景は、まるでこの世の終わりを見ているようで、地獄の釜の底のようで、
しかし一つ一つが人や家を押し潰すだけの威力を秘めたその赤い雨は、どこか息を止めさせる程に美しくて―――

「逃げろおおおおおおおおおおおッ!!!」

再び誰かの叫び声が響き渡った。


41 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:07:39.13 ID:UqUBwYH90
内藤本人は気づいていなかったが、それは彼自身の喉から発せられたものだった。
内藤の声に、夢から覚めたかのようにその場で固まっていた男たちが走り出した。
その日、その時、確かに彼等の世界は、彼等の山は一度終わったのだった。


9.
あれから、どのようにして山を降りたのか、正確に覚えている者は居ないだろう。
内藤はまだ呆然としていたままのヒノデを拾い上げて抱えて、山の麓まで走ってきた。
村のあったあたりや山の殆どが山頂付近から流れ出した溶岩で埋まっている。

( ^ω^)「なるほど、山にあった岩の種類から火山らしいとは思ってたけど、活火山だとは思わなかったお。火山岩だらけだったのにあんなに木々が生い茂ってたのは光脈筋の影響かお。」

見事に草木の一本一本まで無くなってしまった土地を眺めながら、内藤が言った。
村の者達には奇跡的に被害者は居ない。
山に火を放って居た男たちも、全員山の麓付近に居たためだろう、噴火が始まってからすぐに下山して逃げ出すことができた。

( ^ω^)「で、おまいは何時までそうやってウジウジしてるんだお、糞ガキ。」
「・・・・・・・・・・・・だって、私のせいで山の神様を狩ろうなんて事にって・・・・・・。」
( ^ω^)「山の主は最初から死ぬのを覚悟でおまい等に警告していたんだお。もうすぐ噴火するぞ、って。」


42 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:08:14.23 ID:UqUBwYH90
あの時、山の麓で火を放って居た男たちだけでなく、村に居る者達も素早く逃げ出すことができた。
山の主の緑の獣たちが村を”襲っていた”ためだ。
もし、村人たちが寝たままであったら、被害は村が埋まるだけでは済まなかっただろう。

( ^ω^)「きっとあの主はずっと山の噴火を抑えてきたんだお。だからここ十年は人里に下りてきて村を助ける事ができなかった。」
「・・・・・・・・・・。」
( ^ω^)「それでも何時抑えられなくなるかわから無いから、緑の獣でおまいらを襲って山に近づかないようにしてた。」
「でも、結局山の神は・・・・・・・・・。」
( ^ω^)「完全に居なくなったってわけじゃないみたいだお。」

そう言った彼の指差す先を眺めて、ヒノデがハッとなる。
二人の視線の先、よたよたと歩いてくるものがあった。
あの緑色の獣だ。
緑色の獣は二人の前で倒れこみ、力尽きたのかバラバラと葉へと戻っていった。
その中心につるりとした表面の殻に包まれた大きな木の実があった。

「これは・・・・・・?」

ヒノデがふらふらと近づいていく。

( ^ω^)「あの木霊の巨木の実だと思うお。」
「・・・・・・じゃあ・・・。」

ヒノデは両手を伸ばすと、恭しいともいえる手つきでその大きな木の実を拾い上げた。
壊れ物を扱っているかのように、繊細で優しい手つきで。


43 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:08:46.42 ID:UqUBwYH90
( ^ω^)「うん。この土地の下には光脈筋が流れてるから、草木が育つのも田畑が戻るのも早いと思う。何年、何十年かかるかわからないけど、いずれはその木の実から新しい木霊が育つお。」
「・・・・・・・・・・・・ッ!!!」

ヒノデは両手ですくうように拾い上げた木の実を自分の顔の前に持っていった。
その顔から、手の中の木の実へと涙が流れる。
喉からは押し殺したような泣き声。

( ^ω^)「今度はおまいらが山の主を守ってやればいいと思うお。」

声を押し殺して、尾さえ切れなかった喜びが漏れ出すかのように、静かに涙を流し続ける少女にむけて内藤が言った。
それを聞いてさらに少女の涙は溢れ出す。
その少女の手の中で、涙に濡れた木の実が光に照らされて輝いた。
少女の名前と同じ光、悲しみに塗れた夜の世界を打ち消すように登った太陽の放つ、日の出の光に。





44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:09:11.16 ID:H0ja7Rbh0
蟲師っておもしれーの?

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:10:39.63 ID:vUtINwSM0
終わりかな?
すげー面白かった

>>37
そんな技術俺にはない

46 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:13:31.82 ID:UqUBwYH90
11.

(;^ω^)「・・・これで三つ目かお・・・。」

そう呟く内藤の目の前には、発芽したばかりであろう植物の芽があった。
その植物の周りには、あの山の中で見た木霊の葉がちらばっている。
しかも芽は、まだ発芽したばかりだろうにやたらと大きい。
まず間違いなくあの木霊の芽だろう。

(;^ω^)「あの緑の獣は種子を運ぶのと、運んだ種子の栄養になるためのものなのかお・・・。」

彼がこれと同じ形の新芽を見つけたのはもう三つ目だ。
おそらく、あの噴火の後にあちこちに緑の獣が木の実を運んでいったのだろう。
この広い山々のうちの山道をひとつ歩いただけで三つも見つけたのだ。
この土地の中にどれほどの数の種子が存在しているのか。

(;^ω^)「ここらへんに木霊の森が出来る日も遠くないかもしれないお・・・・・・・・・。」

冗談めかしてそう言いつつも、彼は昨日発った村の事を考える。
あの後、少女と老人連中は嬉しそうに、心底嬉しそうに笑いながらも、あの木の実をどこに植えるか話し合っていた。
だが、山狩りをしていた男達はそれを遠巻きに、すこし苦々しげに眺めるだけだった。


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:13:44.06 ID:N2TonxIu0
面白かったぞwwwwwww

48 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:13:58.58 ID:UqUBwYH90
この国より遙西、大陸の清の国よりもさらに西にある南蛮の地では、神は人を塵から造ったと信じられているのだという。
塵、すなわち風が吹けば容易に吹き飛び、風の吹く方向のままに流されるものたち。
軽い衝撃で揺れ動き、右往左往するものたち。
積みかげても積み上げても、簡単に崩れ去り、散らばってしまうものたち。
そう、あの村の若衆達のように。

人の心は脆い。
感情に、欲望に、恐怖に、あっというまに流され、これまで大切にしていたものも手のひらを返したように捨ててしまう。
これまで恵を与え続けてきた山の主も、その恵みが無くなれば彼等にとってはただの不思議な力を持った得体の知れない化け物でしか無いのだろう。

きっと、しばらくはあの村の若衆と老人達、ヒノデの間にはぎくしゃくとしたふいんき(←何故か変換できない)が続くだろう。
これから先、彼等はあの新芽を、それが木になっても、あの日の事を思い出し、罪の意識にさいなまれなければならないだろう。
だがあの木霊の新芽を彼等の山からどかすことは出来ない。
あの土地で彼等が暮らしていくだけの豊かさを、山が、土地が取り戻すのには、山の主である木霊のあの新芽が必要だからだ。
この土地でとれた作物を口に運ぶたびに、彼等は思い出すだろう。
自分達を救おうとした存在を、駆り立てようとした事を。


49 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:14:24.19 ID:UqUBwYH90

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・。」

だがそれでも人は忘れてしまう。
やがて彼等も、木霊の巨木を眺めても何も感じないようになってしまう。
「時間が全てを癒してくれる」とは陳腐な言葉だが、まさにその通りだ。
人は塵なのだ。簡単に運ばれて、流されてしまう。
深い後悔と、自責の念さえも。

内藤は後ろを振り返った。
木々が一本も無い、溶岩が冷えて固まった火山岩だけが残った、素っ裸の山が見えた。
数年後、数十年後にはきっとあの土地には再び木々が生い茂っている事だろう。
そしてあの日、優しく木霊の木の実を照らし出していた、あの光の名前を持つ少女も、村人全員で木霊の巨木を眺めて笑い合う事のできる日が来るだろう。

空には上ったばかりの太陽があった。
周囲には夕日のように鮮やかで、優しい光。朝焼けだ。
その光は、この地に生きる全ての者達へと注いでいる事だろう。
この地に生きる、塵のもの達に。

明日は雨だな。
その朝焼けを眺めながら、内藤はそう思った。


『塵に注ぐ光』・完


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:16:38.73 ID:q5KE65d10
なにこのクオリティ

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:18:09.22 ID:9kcQITi9O
無糖は若いのに凄いな。乙

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:20:11.33 ID:vUtINwSM0
まだ終わってなかったwwwwwwゴメスwwwwwwwwww

無糖って若いんだ。改めてすげー面白かった

53 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 00:21:58.49 ID:UqUBwYH90
あとがきという名の言い訳を書くと、
なんかよくわからないが、蟲師読んでインスパイヤされて、ストレスがたまってて発散の意味もあって書いた。
書き始めたら面白くて、ついついブログの更新とかもサボって書き続けてしまった。
中盤あたりでモチベーションが下がったけど、後半は何故かいっきに書けた。
蟲師の世界観壊してるかもしれないし、蟲の設定も適当なので、蟲師ファンから叩かれないか心配だが、反省はしていない。
被害者の遺族の方々には大変申し訳ない気持ちで一杯だ。
あとおまいら、読んでくれて、ぉれのオナニーに付き合ってくれてありがとう。
ノシ

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:26:44.50 ID:9kcQITi9O
無視氏好きだが良かったぞ。乙。

無糖の小説好きだからまたそのうち書いてくれよな。

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:38:13.21 ID:A8ykNRWG0
蟲師が好きな人必見
http://blog.livedoor.jp/airwin/

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:50:41.01 ID:uknUQVVGO


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 00:51:10.09 ID:1TOwCaAX0
保守する意味ねーだろ

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 01:04:40.54 ID:uknUQVVGO


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 01:13:34.04 ID:OhNeCvAgO
これ書きたいな。今携帯だから書けないがw
終電逃したから書けねええええ

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 01:21:23.42 ID:uknUQVVGO
>>57
いや、俺が最後まで読みたかった。
携帯だから読んでる途中に落ちるなんてことがたまにあるから。

61 :無糖栄助 ◆HOKURODlk6 :2006/02/13(月) 01:22:13.76 ID:UqUBwYH90
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/d8/6d0c551172b7f0720280c8dad4e10aae.jpg
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/a6/f8aad9bd2481d0e3a050589a8f0b6f0a.jpg

調子に乗って描いてみた。
上、ブーンのイメージ。
下、擬人化。

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 01:22:33.31 ID:1TOwCaAX0
>>60
そうだったのか。そいつぁ悪かった。

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/13(月) 01:34:10.79 ID:OhNeCvAgO
>>61
乙!
すげー書きたくなったよ
うわー携帯のばかー


 戻る