だから、
私は───
件
:
ヒ ッ
(´・ω・`)……見えたわねぇんっ!!
オカマが運転席から身を乗り出すようにして、フロントガラス越しに彼方を見やる。
進行方向100mほど先の空、11時の方角に、まるで天を突く柱のように立ち上がった、黒い竜巻。
周囲の大気が、吸い寄せられるかのごとくに奇妙にゆがんで見える。
ξ゚听)ξっ……。
(´・ω・`)まっずーぃ……早くしないと!
アクセルが強く踏み込まれ、華麗なハンドル捌きで車体が大きく傾き、カーブを曲がった。
さらにその異変の現場に近づこうとした私達の進路はしかし、路上を封鎖する制服の警察官たちの群れに拒まれる。
(´・ω・`)んもうっ! 急いでるのにぃ!
一旦車を停止させ窓を開き、駆け寄ってきた警官にオカマがなにやら身分証のようなものを提示して早口でまくし立てる。
と、警官の顔色が目に見えて変わり、彼は敬礼を一度して踵を返すと、後ろに控えていた同僚たちに手振りで合図を送った。
それを受けてすぐに周囲の封鎖が解かれ、私達を乗せたおんぼろマーチは、敬礼を送る警察官たちの間を赤色の誘導灯に導かれてするすると進んでいった。
国家資格、すげぇ。
辺り一帯は無数のマスコミ車両や警察車両、走り回る警官たちでごった返しており、さながら、B級ハリウッド映画のような様相を呈している。
オカマはそれらの間を縫うようにして少しずつ慎重に車を進めていたが、車一台半ほどの幅しかない小道に入り込み、
ついにその場で立ち往生せざるをならなくなってしまった。
(´・ω・`)……ここまでねん、降りるわよん!
言うが早いがさっさと運転席を飛びだし、車を乗り捨てて人ごみを掻き分け、進んでいくオカマ。
オイ、ちょ、待てよ。
慌てて私もその後を追う。
そのまま結構な速度で駆け続けてしばらく後、
オカマが片手を挙げてまっしぐらに走り寄った先には、あの糞爺と……あれは、丸暴42歳か?
(´・ω・`)……荒巻さん!
/ ,' 3 お、おお、ショボンかえ! ツンちゃんも、早かったの!
ミ,,゚Д゚彡ショボンさん! ご苦労様です!
ξ゚听)ξペコリ
丸暴42歳が私達を振り返り、勢いよく敬礼をしてみせる。つられて私も会釈を返した。
(´・ω・`)あらぁん、フサさんも、一緒だったのねぇん! 助かるわ!
ミ;,,゚Д゚彡いえ、いきなり出動がかかりまして……それより、あれは一体!?
(´・ω・`)ごめんなさいねぇん。詳しく説明してあげてる時間がないのん。
とりあえず、あそこには誰も近づけないで頂戴!
ミ;,,゚Д゚彡は、はいっ! すぐに手配します!
(´・ω・`)おねがいねぇん!
ミ;,,゚Д゚彡了解っ!
丸暴42歳が一度右手を額にかざし、泡を食った様子で駆け出していった。
その後姿を見送って、オカマが糞爺に尋ねる。
(´・ω・`)それで荒巻さん、状況は?
/ ,' 3 いかんの、全くいかん。既に膨張段階は過ぎておる、すぐに収束が始まるぞい!
(´・ω・`)むむぅ……やっぱり、ヒッキー君?
/ ,' 3 それしかあるまい。迂闊じゃった、ここまでとは。
(´・ω・`)私も、見通しが甘かったわぁん。せめて一度……
うぅん! 今は反省しているときではないわねぇん! それで、ブーンちゃんはどこ!?
/;,' 3 分からぬ、だがおそらくまだ中に……むっ!?
突然糞爺が言葉を途切らせて、何かに気がついた様子で遠くを見やった。
その鋭く見開かれた眼が見つめる先には、あの奇妙な暗闇の竜巻。
そしてその中から、
ああ
';,' ああ あ
';,';,'ω゚)あ あ
';,' っ
!!?
ξ;゚听)ξっ!!!?
(;´・ω・`)ブーンちゃんっ!?
/;,' 3 いっ、いかんっ!!
ピザデブと思われる人影が、身も凍るような絶叫をあげながら、よろめき出てきた。
その肥えた体の半身が、黒々とした影のようなものに覆われており、そしてその影が、
まるで体表から立ち上がった炎のように、めらめらと不気味に揺れる。
そのままこちらに向かって十歩ほどふらふらと歩を重ね、そしてとうとう精根尽き果てたといった様子でその場に膝を突くピザデブ。
/#,゚ 3 待っておれっ!! 今行くぞっ!!
糞爺の反応は早かった。一声そう叫びながら、倒れこんだピザデブの元へと駆け出していく。
ズオオオオオオ///////#,゚ 3))))))ふうううううううっ!!!!
続いてオカマと私も、その後を追う。
前を行く糞爺の後姿がずんずんと、雄雄しく膨らんでいく。
,.. --‐'"ヽ、
,.∠´,,.. -‐/ヾ_\
,,..-'" _,,..===,`' ,-、゙ヽ.
/, ,.. -‐<__,{ ,(´ `ヽ、
(´ォi ゙r-‐''"´ ̄ { ,/´' , ', ゙i
'ミーぅ∪' ∨ ヽ. リ リ
`ー'′ 人、,.-、..ヽ,""'ヾ'
/ ,' { r,/#,゚ 3\ ぬおおおおおおおおおっ!!!!
/' !∨/:`ニニ´/ ̄ヽ
i ゙i /`ヽ、_,,. `ヽ´ ヽ
.ハヽ ノ__,.-、 `Y´ `ヽ ',
!. { `,r-{´、 ,..ーヽ ヽ{. ,,..- 、:_ リ
/!ゝ、 ゝ_ヘ‐'_,..-'"ヽ、._/´_,,. _ ゙ヽ_,ハ
/ ハ.(`},、 `ヽ.-‐''',.ハ _ ̄ 、. ヽ、,リ
/', ヽ、゙i、ヽ. },`=彡ヾ、 、. 、 ∨
/ ヽヽ、 } ヽ}゙¨`)ヒニ彡>、 `` 、.ヽィノ
/: ヽ. ヽ. イ /´'''7´ \.ヽ `ヽ、_ノ
膨張しながら一気にピザデブとの距離を詰めた糞爺が、倒れ伏したピザデブの首根っこを捕まえて無理やり立たせると、
その顔面に強烈な平手打ちを叩き込んだ。
/#,゚ 3 フンハッ!!!!!!!
';,'
';,';,' (::;)ω゚)へぶぁっ!!!
バチィン! という威勢の良い音が風にこだまして、ピザデブが堪らず悲鳴を漏らす。
だがその体に纏わりついていた黒い炎は、糞爺の一撃を受けてまるで宙に吸い込まれるかのように、霧散して消えた。
バシュウウウン/////;,' 3))))) 無事かっ!? 内藤っ!!
(;´・ω・`)ブーンちゃん!? しっかりして!
糞爺に支えられるようにしてようやく立ち上がったピザデブが、息も絶え絶えに、それでも必死に言葉をつむぐ。
(::;)ω゚)し、師匠っ、すいま、せん……なっ、なかに、まだ、ヒッキー君が……。
そう言って、背後を振り返り、指差した。
つられて私もそちらに目を向けて、
そしてその時になって初めてまともに、その暗闇と、相対したのだ。
ξ;゚听)ξ……あ?
どこまでも、どこまでも続く、果てのない、闇。
それは私に、底なしの井戸を思わせた。
体を流れる熱が、吸い込まれ、流れ出していき、そしてその代りに、じわじわとしみ込
んでくる、どす黒い、何
か。
心臓に氷 な、身震いするほどの悪寒。
をあてられたよう
ゆっく
りと、ゆっく って
りと、鼓動が、
小さくな いくのが、分
か
る。
思 考
が徐々に濁ってい
き、 全身
から
力が抜
け
て
(´・ω・`)──ちゃん、ツンちゃん。しっかりして。
ξ; )ξ……ぅ……ぁ?
はっと我に返ると、オカマが私の視界を覆い隠すかのように目前に立ちふさがって、心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。
ξ;゚听)ξ……あ、れ……私……?
(´・ω・`)引きずられちゃ駄目よ。しっかりして。
そう言われて、そして先ほど立っていた位置から自分がどれだけ離れていたかに気がついて、愕然とした。
足が、勝手に動いていた。私はあの暗闇に呼ばれたのだ。まるで、吸い寄せられるかのように。
ξ;゚听)ξっ!?
(´・ω・`)大丈夫。あなたは、大丈夫だから。強く在りなさい。
オカマが私の顔に手を寄せる。その指が頬に優しく触って、手の平から、オカマの体温が、じんわりと伝わってくる。
ξ;゚听)ξうっ……。
膝が、笑っていた。オカマの両腕につかまりながら、暗闇から目をそむけて、足元だけに集中する。
(´・ω・`)ちょっと、刺激が強すぎたわねぇん。少し、離れましょう。
コクリξ;゚听)ξ……。
ミ;,,゚Д゚彡……あ! こちらでしたか!
ビル影に身を寄せた私達を見つけて、丸暴42歳が大声を張り上げながら勢いよく駆け寄ってきた。
(´・ω・`)ん、フサさん。
ミ,,゚Д゚彡付近の人払い、完了しました! そいで、あの、渦巻きみたいなもんは一体?
その言葉がきっかけになったのかどうか、それまで放心したように突っ立っていたピザデブがいきなり俯いていた顔を上げて、叫ぶように言った。
(::;)ω゚)ヒ、ヒッキー君がまだなかに! 助けに、……た、助けに……行かない、と……。
しかしその声は震えて尻すぼみになり、言葉尻が宙に吸い込まれて消える。
無理もないだろうと、思った。
私は一目見ただけで意識まで呑み込まれそうになってしまった。一体どこの誰があの中に飛び込んで、平静で居られるのか。
心が折れないほうがどうかしている。
だが、それでも
/ ,' 3 ……わしが、行こう。
糞爺が一度天を仰ぎ難しい表情で腕組みをしながら、そう言った。
(::;)ω゚)師匠っ!!
/ ,' 3 必ず戻れるとは、限らんのじゃ。そういうのは、年寄りの役目じゃよ。
重々しい口調でそう呟いて、押し黙る糞爺。
今思ったけどお前基本発言がテンプレ過ぎるよな。正直グッと来たけど。
(::;)ω;)で、でも……僕が……僕がっ……!
ミ;,,゚Д゚彡お、おい。だ、だいじょうぶか!?
俯いて泣き声をもらすピザデブの肩に、丸暴42歳が手を置き、なだめるように声をかける。
重苦しい雰囲気の中に、ピザデブのすすり泣く声だけが響いて、悲痛な空気がその場を満たした。
その時だった。
(´・ω・`)……ま、何とかなるわよん!
オカマが、まるでサンダルつっかけて買い物にでも行くような気楽な口調で、言った。
その無責任なまでの力の抜けた発言に、張り詰めた緊張が瞬間、ふっと弛緩する。
/ ,' 3 しかし、お前…………大丈夫とは、何か、考えがあるのか?
(´・ω・`)うふふ、ちょっとねぇん。ただ、それにはなるべくフラを溜めたままで、ヒッキー君の元までたどり着きたいの。
荒巻さん、エスコート、お願いできるかしらん?
/ ,' 3 む、それは、構わんが。
(::;)ω;)だっ、だったら僕もっ!
/ ,' 3 それは駄目じゃ。お前にはまだ、荷が重いわ。
(::;)ω;)でっ、でもっ、僕のせいでっ!
ピザデブがなおも食い下がり、ほとんどすがり付くようにして、糞爺に詰め寄る。
(´・ω・`)ブーンちゃんだけの責任じゃないわ。私だって、随分考えが甘かった。
でも、反省会は後にしましょう。今は先にやることがあるはずよ。
(::;)ω;)うっ……。
(´・ω・`)涙を拭きなさい。行けるわよね? ブーンちゃん?
(::;)ω;)っ!!
行ける訳ねーだろ。完璧心折れてるだろ、鬼畜か。
/ ,' 3 おいっ、ショボン!
(´・ω・`)どうなのん?
ゴシゴシ(::;)ω∩)
言われて、ピザデブが一度しゃくりあげ、それから顔をぬぐい、ほとんど怒鳴るように返事をした。
(::;)ω゚)はいっ! 行けます!
ξ゚听)ξ!!
何でだよ。
その体は傍から見ていて痛々しいほどに、ぶるぶると震えていた。無理をしているのがはっきりと分かる。
にも拘らず、それを隠すかのように両の拳をぎゅっと握り締めて、ピザデブがもう一度、言った。
(::;)ω゚)……行けますっ!! ショボンさん!
……何で、だよ。
恐ろしくないはずがない。だが声が、紛れもない意思の力に満ちている。
どうしてこいつはあれほどの目にあってなお、再びあの闇の中に身を投じて行こうと思えるのか。
私にはそれが理解できなかった。
/ ,' 3 しかし……。
糞爺が眉根をよせて、なおも何か言いたそうな様子を見せる。
(´・ω・`)最悪でも、ヒッキー君とブーンちゃんだけなら外に出せるでしょう?
それならいいでしょう、荒巻さん?
おい、さらっと凄いこと言うんじゃないよ、おい。
/ ,' 3 むぅ……ならば、仕方あるまい! そこまで言うなら、差配は全てお前に任せるぞ!
仕方なくないだろ、おい。何普通の顔して言ってんだよ。
お前ら、帰れないってそれって……それって……
消えちゃうかもしれないって、ことだろう?
どうしてそんなことが、出来るの?
(´・ω・`)さって……それじゃ、フサさん! ツンちゃんのこと、お願いねぇん!
ミ;,,゚Д゚彡わ、わかりました! 任せてください!
(´・ω・`)ツンちゃん、これ、持ってて頂戴。TV画面通してなら恐くないでしょう?
ひとつ肯いて、オカマが私にアイポンを手渡す。
ξ;゚听)ξあ、え、はい。
差し出されたアイポンには先ほどと同じく、真っ暗な渦巻きが映し出されていた。
相変わらず何が起きているのか分かりづらく、その映像がどこから撮影されているものかも謎だったが、
確かに直接相対するよりはずっとましだ。
(´・ω・`)……じゃ、そろそろ、始めましょうかしらぁん! 二人とも、おねがいねぇん!
オカマが腕まくりをしながら糞爺とピザデブに号令をかける。
/#,' 3 よぅし! 行くぞ内藤ッ!!!!!11
(#)ω゚)はいッ!! 師匠ッ!!!
それを合図に二人が、勢いよく膨張を始める。
ズオオオオオオ((((((/#,゚ 3))))))ふうううううううっ!!!!
ズオオオ((((#)ω゚))))ああああああああっ!!!!
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
,r‐-、_ ∧_∧
/.:.:.:ヘ7ノ / #,゚ 3)ハ=ー-、 <行くぞッ!!!!
__i´.:.:.:./-' /:.`ニニ´彳`` _,,='"´.: ̄`ヽ
{=ー---‐' } ,r'´ ̄`ヽ‐-=,_ゝY´.:.:.:.:.`゙ー-、,,.:.:}.::`ー、_
`ー---‐'、 ,r='´`ー='"´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'',,.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ'´`ヽゝ、ハ
',.:.:.:.:.:.:.Y.:.:.:.:.:.:.r'´.:>、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノヽ、,,_,,/ハ.:.:.:.:.:`i.:.:`ヽ、
∧ _∧ .',.:.:.:.:ノハ,,='"´.:.:.::i´.:`ーt――"´-'ー--'彡/リ`ー=_ノ、.:.:.:)ヘ
はいッ!!>ノノ(#)゚ω゚) ',.:.:.:.>.:.:.:_,,=-'ゝ、.:.:.:',ニ)_`i´.:_ノ、_)ー'/ /,r'.:.:.,,/.:)
,r=‐'"ノ /ノ >‐个Y´`ー=-‐'゙ `ヽ i、ヽ_ノ´.:.:.`ii´.:.:.ノ リ j'.:./:/.:ノ
, r='´ー-=',,_lゝ `ー‐',=-、{ {o ゚ ..,(⌒) 。゚ } ',ヽヽ_)ー-‐< }ー'ノ ,' /`ヽ、/,,;''/
.{//´ ̄ / `ー-=x'´ ヽ' , o `゙´。 o../ .}、 \}、_ノノ_ノi,/八`ヽ、 .`<
'´Y / ヾ ノゝ, ゚ _,r/.lヽ='../\\l.:.:.:.`.:´.:/_lr='´"`ヽ\ ヽ
`tチ"´`ヽ,, ,ノゝ=='/ { `r/.// ノ7/_ ノハ `ー-=-‐' リ/,r/:.:.ノー='"
`ー='´ /、 てー='<´_,,,,)、,,ノ、 >、..`ー‐'",/´" /l/`Y`ー=‐'´/l、ゝ'_//´
´ ̄Y__ノヘ `7‐、 ヽ ),;/}Y´ `ー==/.:ノ /'´.:/.:.:.', ヽ / /.:.:.:ハ,.:',`
.} \ /ミ {`ー'y´ノ
(´・ω・`)じゃ、いってくるわねぇん!
私に、くるりと背を向けて、オカマが言った。
ξ;゚听)ξぅっ……!!
ちょっと、待てって! まだ、何もっ!
頭の中を色んな思考がめぐって、でも言葉にならない。
そのままどんどんと遠ざかっていく三人の後姿。
何か言わなくちゃいけないのに! まだ何も言えてないのに!
何か、何かっ!!
ξ;゚听)ξ所、所長ッ!!!
(´・ω・`)……うぅん?
私の、精一杯の大声に、肩越しに振り返るオカマ。
ξ;゚听)ξえ、えっと!! えっとっ……がっ、頑張ってください! お二人も!
結局、そんなつまらないことしか、言えなかった。
ξ;゚听)ξ……その……頑張って……くだ、さい……。
それなのに、なのに、三人は、
(´・ω・`)……うふ、ふ。
/#,゚ 3 うむっ!! 任しておけッ!
(#)ω゚)行ってきますッ!!
なのに、オカマは、
(´・ω・`)──大丈夫、必ず戻るわよん♪
こちらに向けて一度手を振り、笑った。
笑ったのだ。
ξ;゚听)ξ……。
三人の後姿を見送って、それからすぐにオカマに託されたアイポンに目をやった。
その小さな画面の中には、暗闇の渦に勇ましく向かっていくオカマ達の映像。
ミ;,,゚Д゚彡……だ、大丈夫だ! なんたって、正式な代行師さんが二人もついてるんだからな! 絶対に大丈夫だ!
ξ;゚听)ξ……はい。
同じくアイポンを覗き込んでいた丸暴42歳が、まるで自分に言い聞かせるかのように、わざとらしく力強い声をだす。
暗闇を掻き分けるようにして前進していくオカマたちの、その周囲を避けるようにして、あたりの影が散っていく。
闇を割って進んでいく三人は、その小さな映像の中で、夜の海に煌々と灯りをともす小船のようにも見えた。
だがそんなオカマたちの勇姿もすぐに闇に飲み込まれ、やがて、消えていった……。
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/#,゚ 3 ……むぅ! 流石に、きついの。
(#)ω゚;)ぐっ。
(´・ω・`)ちょっとの間辛抱してちょうだい。しばらくしたら、少しは楽になるはずだからぁん!
/#,゚ 3 ぬぅ、それは!?
(´・ω・`)万が一に備えて、前から準備してたことがあるのん! ちょっと、反則かもしれないけど……。
/#,゚ 3 そうかっ……いや、この際反則だろうとなんでも構わんわ! ようし、気張れよ、内藤ッ!
(#)ω゚;)はいっ!! 師匠ッ!!
(´・ω・`)先を、急ぎましょう!
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ξ;゚听)ξ……あれっ!?
その直後、突然映像が乱れて、アイポンの画面が青一色に染まる。
ミ;,,゚Д゚彡ど、どうした!?
ξ;゚听)ξ分かりません、急に……。
何かの不具合かと思い、もう一度ワンセグを接続しなおそうとして、そして
ξ;゚听)ξ……えっ!!?
……思い返すも腹立たしい、過去に例をみないほど人をなめきった、あの、ふざけた放送が、始まったのだ。
_
_____ /\/\ / / / ̄'/
/ ̄ ̄ ̄ フ. /二二二/_ /__ __/ r-、 、-、 r-、 、-、 \ / ./ ̄  ̄/ / ./.
 ̄ ̄./ / / __ / /' 7'7./''7 / / ヽ l ヽ_〉 ヽ l ヽ_〉 / / ̄ /  ̄  ̄/ /_/
___ノ /  ̄ __,ノ / _'__,'ノ / | |___ l l/l l l/l | |__ ~/ /二,´ __
/____,./ /____,/ /____,./ \__| ヽ_ノ ヽ_ノ \_____| .i____/ /____./
ヘ(#゚∀゚)ヘ フラッていいとも♪
|∧
/
/
(#゚∀゚)/ ビキビキ♪
/( )
/ >
(#゚∀゚) 三 /
(凸 凸三 ファッキンッ!!
< \ 三
\
(/∀゚)
( /
/ く ハッチポッチハッチポッチ
\ステ〜ショ〜ン♪/
●STUDIO
(ー■∀■)……ハイ、始りましたー。 フラッていいとも! 第一回放送。私実況のモラリと、
(´-@ω@)解説のオカマDXでぇっす♪
(ー■∀■)ええ、はい。そこのお母さん安心してください。別にテレビの故障じゃありませんよ。
これ、政府広報の放送ですからね。チャンネルはそのままで。
(´-@ω@)って言っても全チャンネル、ジャックしてるから、変えても意味ないわよぉん♪
\ドッハハハ/
(´-@ω@)ちなみにオープニングで素敵なダンスを披露してくれたあのイケメンちゃんは、
京王線××駅から徒歩十五分、昔ながらの味にこだわる中華料理屋・長岡軒の跡取り息子、長岡ジョルジュ君でぇっす♪
すっごく美味しいお店だから、皆さんぜひ一度、食べに来てくださいねぇん♪
(ー■∀■)はい、それではジョルジュ君にもう一度盛大な拍手をどうぞー。
\ワーパチパチパチ/
_,._
ξ゚听)ξ……は?
●STUDIO
(ー■∀■)えー、それでは突然のことに驚かれている方も多いと思いますので、
ここで一度当番組の方向性というか趣旨というか。オカマDXさん、解説の方、よろしくお願いいたします。
(´-@ω@)はぁいん♪ この番組は、現代社会に生きる私たちが抱えている様々なフラストレイションに焦点を当てて、
その発散方法を考えていこうっていう、素敵なプログラムでぇっす♪
(ー■∀■)なるほど、フラストレイションと言いますと?
(´-@ω@)はぁいん♪ お仕事でうまくいかなかったり、人間関係に嫌気がさしてしまったり、
あるいはただなんとなく疲れちゃったなんて経験、みんなあるわよねぇん?
理由はたくさんあるけれど、そういったイライラしちゃう気持ちをどうやって解消していけばいいのか。
それをみんなで一緒に考えて生きたいと思いまぁっす♪
\オー/ \ナルホドー/
●STUDIO
(ー■∀■)それで、具体的にはどういった方法で?
(´-@ω@)はぁいん♪ 色んな悩みを抱えながら、それでも毎日頑張って輝いてる人って、いるわよねぇん?
そういう素敵な人たちにスポットライトをあてて、その賢いストレス解消方法を、一緒に学んでいきましょう♪
(ー■∀■)なるほど! 有意義な番組ですね!
\ワーパチパチパチ/
(´-@ω@)はぁいん♪ それじゃぁ早速、いってみましょう♪ モラリさん、VTRお願いねぇん♪
(ー■∀■)……これ、マジで俺が企画したわけじゃないですからね。……俺のせいじゃないですからね!
(´-@ω@)大丈夫よぉん! 気にしない、気にしない!
(ー■∀■)……俺はイヤだって言ったんだ。ちゃんと、イヤだって言たんだからな!
俺を恨むのは筋違いだからな! 苦情とか持ち込まれても困るからな! 不満があれば国へ言えよ!
(´-@ω@)はいはい、さっさと始めましょうねぇん♪
(ー■∀■)……えぇい!! ぽちっとな!
『
('A`) Dさん(28)・会社員 の場合
』
●STUDIO
(ー■∀■)……はい、えーIT企業にお勤めの、Dさんです。
(´-@ω@)トップバッターねぇん!
(ー■∀■)そうですね。では、中継のほう繋いでみましょう。ぽちっとな。
●LIVE
(;'A`)……。
(;'A`)……えっ?
(;'A`)……あれ、俺、TV映って?
(;'A`)えっ、なんだこれ? なんだこれ!?
_,._
ξ;゚听)ξ……。
その小さなディスプレイの中では、妙なグルグル眼鏡をかけたオカマと……、
……おそらく、文化人気取りと思われる男が、これも黒のサングラスをかけてMCを気取り、意味不明の番組を展開していた。
ミ;,,゚Д゚彡……えっ? ……あれ、なんだこりゃ……。
私と一緒にアイポンを覗き込んでいた丸暴42歳が、困惑した表情でたずねてくる。
ξ;゚听)ξいや、私にも、何がなんだか……。
ミ;,,゚Д゚彡……これ、ショボンさん、だよな?
ξ;゚听)ξ……た、ぶん……。
ミ;,,゚Д゚彡えっ、なんか始まってるぞ!?
●STUDIO
(ー■∀■)はい、うまくつながってますかねー?
実は、事前収録したものに、無理やり生中継の映像を差し込んでますので、スタジオからはちょっと分からないんですが……。
実況風な映像をお届けできていれば幸いです。
(´-@ω@)きゃー! ドクオさん、見てるー!?
(ー■∀■)名前伏せてるんだから実名呼ぶのは止めてください。
それではDさんのフラストレイション解消法、学ばせていただきましょう、オカマDXさん?
(´-@ω@)はぁいん、それでは皆さんご一緒にぃん!
(´-@ω@)<フラッて〜?
\いいとも〜!/
●REC
('A`)……あー今日も疲れたなぁ……。
('A`)畜生、安月給でこき使いやがって。
ガチャリ('A`)……ただいまぁ。
<ギシギシアンアン
('A`)……はぁ、またやってんのかよ。どんだけ……。
('A`)……ま、いいや。ふふふ、今日は気分がいいからな。
('A`)……ゴソゴソ
('A`)ふふふ、これこれ、高かったんだ。
('A`)早速、試してみよう──
●LIVE
(;'A`) えっ!? ちょま!? なんだこれっ、録画!?
(;'A`)っ!!!? 待てっ!!? やめっ、やめろっ!!!
●STUDIO
(ー■∀■)……はい、えーと、どうやら仕事帰りのようですね。お疲れ様です。
なにか、買い物袋を提げているようですが。
あれ、おもむろに着替え始めましたね、何ですかねー。気になりますねー。
(´-@ω@)本当ねぇん、いったい何かしら!? 続きを見てみましょう!
(ー■∀■)……なんつーか、その、マジでごめんなさい、ごめんね?
●REC
( A )ふふふ……。後はこれをかぶれば……。
_____________________________________
●LIVE
(;'A`)ああ……それは……っ!!!!?
(;'A`)それはまずいっ!!! 駄目だったら!!! おい!!!
●REC
バア──────川'A`)________ン!!!
川'A`) 完☆璧♪
_____________________________________
●LIVE
(;゚A゚)うわあああああああああっ!!!!
_,._
ξ;゚听)ξ!?
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