( ^ω^)はただ一向に立ち向かうようです  [ログ


( ^ω^)「……」

⊂二二二( ^ω^)二⊃スッ

タタタ…ビターン!


(;メ^ω^)「いてえ……」


( メ^ω^)「……」


⊂二二二(メ^ω^)二⊃スッ


タタタ…ビターン!



ξ゚听)ξ「何してんのよ、あんた」

(メメ^ω^)「いてて…ってツン。
      どうしてこんなとこに?」

ξ゚听)ξ「……いや、フラっと散歩してただけよ。
      っていうかだからあんた、何してんの?」

ブーンを探しに来た私は、彼が何故か鉄道の陸橋下にある
コンクリート製の大きな柱に体当りしているのを見つけた。
全く意味が分からない。

(メメ^ω^)「特訓だお!」

ξ;゚听)ξ「はぁ?相撲部屋のテッポウかだか何かのつもりなの?」

(メメ^ω^)「まあ、そんなもんだおね」

⊂二二二(メメ^ω^)二⊃スッ

タッタッタ……ビッターン!

ξ;゚听)ξ(うわ…痛そ……)

顔面から行ったぞあいつ


腕を大きく広げた、あいつの気色悪い走りのフォーム。
その格好で10m位の助走をつけ、コンクリの柱にぶち当たる。
そのたびに、ブーンはボロボロになっていく。

でも私には彼を止めることができなかった。
どうしてだかは分からない。
ただ、止めてはいけないのだという確信めいたものが私の中にあった。

このお馬鹿な行動には、何かしらあいつなりの意図があるのではないか?

⊂二二二( メメωメメ)二⊃スッ

タタッ…タタッ…ガッ!

ξ;゚听)ξ「……」


足を引きずりながら、あいつはひたすらに柱に立ち向かっていく。
柱に対してなにか抗議すべきことがあるかのように。
ドン・キホーテと風車。武田鉄矢とトラック。

その図式に似たものがあったが、それらとは何かが違う。

ξ;゚听)ξ「ねえ!もうそのくらいにしときなよ!
       死んじゃうよ!」

(;メメ゚ω^)「ううん?いやもう少しだけ……」

そう言って、彼はまた腕を広げようとする。
だが、片方の腕しか今度は上がらなかった。
肩が外れたお、とブーンは寂しそうにこっちを向いた。


*――――――*

ξ゚听)ξ「ったくもう……損傷度診断53%って……。
       交通事故でもいまどきこうはならないわよ?」

(;メ^ω^)「いやあ、もうしわけないお」

仕方なくブーンを家まで引っ張ってきてメンテナンスベンチに乗せたあと、
私は彼の腕を簡易の代替パーツと取り替えてやった。

ξ゚听)ξ「どうでもいいけど、あんた本当に何してたのよ。
       頭バグってんじゃないの?」

( メ^ω^)「おっ?いやいや、この前の定期メンテナンスじゃ正常そのものだったお」

ξ゚听)ξ「じゃあ、なおだめじゃない。エラーのない状態で自殺しようとするなんて。
      『可能な範囲で自分を守る』っていうのが原則じゃないの?」

まあ、もっともあの三原則は人間がいた時代のものであって、
機械生命が地表を覆っている今は何の意味もなさないのだが。


( メ^ω^)「そんなの小学校で習ったきりで忘れちまったお」

( メ^ω^)「……それに、あれは自殺なんかじゃないお」

ξ゚听)ξ「へええ、じゃああの行動について詳しく教えてちょうだいよ。
       あれかしら?あんたのご先祖さまってもしかして衝突ダミーだったり?
       御先祖様マジリスペクトってか?」

( メ^ω^)「……」

私が訥々としか喋らない彼に業を煮やして煽ってみると、
彼はそれきり黙ってしまった。
代替パーツと、ボディのつなぎ目を時たま掻く以外、動きさえしなかった。

ξ;゚听)ξ「……ふん、勝手にしなさいよ」

私はその沈黙に耐えられなくなって、
キッチンに紅茶を淹れに行くことにした。
……でもあいつ紅茶飲めたっけか?

まあ、そんな事はどうでもいい。
無理にでも飲ませてやる。


お茶を入れて、ベンチの脇に戻ると
ブーンは相変わらずぼおっと前を見つめていた。
……これじゃあ、千年くらい前の初期型受付ロボットみたいだ。

ξ゚听)ξ「ほら、とりあえず飲み物よ。
       馬鹿みたいに前向いてるだけじゃつまんないでしょ?」

( ^ω^)「ん、ありがとうだお。
      ……なんかお花みたいな匂いだお」

ξ゚听)ξ「そう?花みたいなものは入ってなかったと思うけど」

( ^ω^)「同じ植物だから似たような匂いがするのかもしれないおね」

ξ゚听)ξ「……そうね」

彼は、何事もなかったかのように平然としている。
さっきまで自殺しようとしていたようにはとても見えない。

ξ゚听)ξ「……さあ、お紅茶で癒されたところで聞かせなさいよ。
      本当はあなた、何してたのよ」

ブーンは、うつむいて紅茶のマグカップに目を落とした。
古い映像データの中に残っていた恋愛映画のワンシーンで、こんな人間を見たことがある。
あれは確か、別れ話か何かの途中のシーンだったっけ。




( ^ω^)「自分でも、うまく説明できないお。
      僕は、二世代も前の労作機だし」

ξ゚听)ξ「なーにオッサンみたいなこと言ってるの。
      次世代・旧世代機格差なんて、もうあって無いようなものじゃない」

(;^ω^)「じゃあ、言えないかもしれないけど」

そうは言いつつも、私は少しく胸がいたんだ。
私はほぼ最新型の事務処理用だから、中央官庁で働いていい暮らしをしているが、
ブーンは、大昔の鉄橋や道路のメンテナンスをしている。

人間たちが言っていた「底辺の職業」という奴である。

( ^ω^)「ツン、僕は最近思うんだお。
      僕達って、あとどのぐらいこんなのが続くんだろうって」

ξ゚听)ξ「こんなのって?」

( ^ω^)「いつまで人間たちの残した遺構を修理して、
      そこで暮らし続ければならないんだろうって」

ξ゚听)ξ「……あんたにしては難しいこと考えるじゃない」




私たちは、人間達の遺産……都市の遺跡や住居を維持管理しながら生きている。
いや、稼動しているというのが正しいのかもしれない。
人間の意図通り、彼らの社会を運営するための機械として。

私の働いている官庁というのも、人間たちが残したものだ。
その官庁も、もはや中央管理コンピューターからの指示に従うのみの施設でしかない。
千年以上前に出された法案や条例を、やれどこの部署にコピーして送れとか、国民に告示しろだとか。

その国民というのが、もうすでに滅んで久しいというのに。

( ^ω^)「僕達に与えられている任務は、
      人間たちが作ったものを修理したり、整理することだけだお」

( ^ω^)「だから改良したり、新しいものを作ることはできないおね?
       ……事実、今も風景は千年前と全く変わらんお」

ξ゚听)ξ「無意味極まりないとは思うけどね……。
       でも、こういうのって人間たちにとっての『幸福の実現』とか、
       『正義の図式の完成』とかと同じで、私たちの至上目的なのよ?」

ξ゚听)ξ「だったら、私たちは私たちでずーっとこうしてればいいじゃない。
       人間たちの目標みたいに実現が難しいわけでもないんだし」


( ^ω^)「……本当にそう思うかお」

ξ゚听)ξ「だってアタシ、社会の歯車だしぃ」

( ^ω^)「歯車かお」

ブーンは無表情にそう言うと、手の中のマグカップをぎゅっと握りしめた。

(  ω )「僕は、永遠に同じところを回り続ける歯車じゃなくて、
       機械の構造から抜け落ちてどっかに転がっていきたいんだお」

ξ゚听)ξ「……歯車としてどうなのよそれって」

(  ω )「僕は、歯車としていままで生きてきたお。
      でも、その歯車としての役割に疲れちまったんだお」

ξ゚听)ξ「だから、自殺しようとしてたわけ?」

( ω )「だから、あれは自殺じゃないって言ってるお」

ブーンはカップをその場に置いて立ち上がった。
そしてそのまま出ていこうとする。

ξ゚听)ξ「どこへいくの?」

( ^ω^)「ツン、聞いてくれお」

ブーンが、家に来てはじめてまともに私と目を合わせた。

( ^ω^)「僕は……あの柱をぶっ壊して、上の電車に乗ってる連中を皆殺しにするお」


   _, ,_
ξ;゚听)ξ「はぁ?」

訳がわからない。
今日で、二度目の予測エラーが出た。
柱を壊して、電車通勤の人たちを皆殺しにする?

ξ;゚听)ξ「あんた、マジでウイルスかなんかに感染したんじゃないの?
       どうせどっかに残ってたエロファイルでもダウンロードして……」

( ^ω^)「真面目な話だお。
      このままじゃ、僕たちはあと千年かそこらで完全に滅ぶお」

ξ;゚听)ξ「だからってなんで!
        あの列車にはこの街の80%の人が乗るのよ!
        その人達が全員死んだら、千年どころか数年でこの街は機能しなくなるわよ!」

( ^ω^)「それで、いいんだお。
       そうじゃなきゃ、僕たちは歩き出せないお。
       人間たちみたいに、僕達も進化していかなくちゃだめなんだお」


( ^ω^)「いまのままじゃ、資源を無駄に食いつぶしてるだけだお。
       過去の人間のエネルギー研究とかを参考にして頑張らなくちゃ……。
       でなきゃ、この星の資源を空にしたあげく無意味に滅ぶだけだお」

ξ;゚听)ξ「……」

ただの作業用のブーンが、どうしてこんな考えに至ったのか、
私にはどうにも見当がつかなかった。
冗談抜きで、頭のネジが外れてるんじゃないだろうか。

( ^ω^)「でも、ツン。
       僕は君を殺したくないお」

( ^ω^)「……だから、あの列車はしばらく使わないで欲しいんだお」

ξ;゚听)ξ「あ、あんたに殺されてたまるもんですか」

( ^ω^)「……そうだおね」

そう言うとブーンは、ポケットから小さな記録メディアを取り出した。

( ^ω^)「僕の性質上、柱に対して何かを使って攻撃はできないお。
      だから、体当たりでぶっ壊すしか無い。そしたら僕も巻き込まれて死んじゃうお」

( ^ω^)「……この記録メディアの中に、僕がこうしなきゃいけないと思った理由があるお。
      ぼくが死んじゃったら、生き残っている人たちに見せてくれお」

ξ;゚听)ξ「あんた、本気なの?体当たりであんな太い柱壊せるわけ無いじゃない」


( ^ω^)「僕は、本気だお」

ξ;゚听)ξ「……」

( ^ω^)「じゃあ、世話になったおね」

ξ;゚听)ξ「あ、ちょっと!!」

ブーンは呼び止める私を無視して、私の家から出て行った。
記録メディアを、ほとんど口をつけていないお茶のカップの脇に置いて。

ξ#゚听)ξ「なによ……」

ξ#゚听)ξ「「死んじゃうって!!!!なによ!!!!!!」」

私は、その記録メディアをブーンが出ていったドアに投げつけた。
粉々に砕け散ってくれたら気も晴れたのに、記録メディアはドアに跳ね返って花瓶にぶつかっただけだった。
あいつも、きっとこれからこんなふうに。

ξ#゚ -゚)ξ「……」

私は、それからしばらく彼が座っていたメンテナンスベンチの脇で放心していた。
……これじゃ、今度は私が古代の受付ロボみたいじゃない。
そう思うと、余計に腹立たしかった。


*――――――*

それからしばらく経って。
私は、ブーンの忠告通りに電車での通勤を避け続けた。
別に、本当にブーンがタックルで柱を倒すとかいうことを信じたわけではなかった。

あいつの真剣さを、無視できなかっただけである。

ξ゚听)ξ「……」

私はその朝、バスにゆられて職場へと向かっていた。
システムとして残っているだけのもので、乗客は私以外にいなかったが、
一人でこの30人乗りのバスを独り占めするのは悪くなかった。

窓の景色に飽きて、私はほとんど情報のない電光掲示板に目を移した。
今日の天気は、雨のち晴れ。
人間たちの研究施設だったところから、貴重なヒトゲノム発見。
――これは、三年も前のニュースだ。
あとは各、交通機関状況。
道路渋滞、無し。
モノレールも通常運行。(路線は1kmも無い、運行は都市中央のみ)



                                  列車は全線運休。


ξ゚听)ξ「……え?」


嫌な想像が、私の脳裏をよぎった。
私は、ズボンから携帯端末を取り出すとニュースを参照する。
探していた記事は、サイトのトップに踊っていた。

『不審な男が、〇〇陸橋の柱に向かって体当たり。
 列車に大きな衝撃、??鉄道は全面的に運休の方針』

ξ;゚听)ξ「ブーン……!」

私はその次の停留所で転がるようにバスから降り、
この間ブーンが体当りしていたあの陸橋へと走った。
どういう因果か、その停留所のそばにあの場所はあった。

……まもなく、私の目に人だかりが飛び込んでくる。

その中心から、黒煙が上がっていた。


その人だかりの整理にあたっていた警官が、
真っ青になっている私を見つけて声をかけてきた。
こういう時、人間なら表情をある程度隠すことができるのに。

私たちは感情がある閾値を超えると、強制的に表情が変化してしまう。
つくづく、面倒なものだ。

( ,,^Д^)「どうされたんですか?」

ξ;゚听)ξ「いや、あの、犯人に心当たりがあって」

( ,,^Д^)「はい、もしかするとご家族の方かな?
      個体識別番号からすると……」

ξ;゚听)ξ「多分、私の兄です」

( ,,^Д^)「……そうでしたか。
      犯人というか……えーお兄さんなんですが。
      いま、炎上していてですね。消火中ですのでもうしばらく……」

ξ;゚听)ξ「炎上?」

( ,,^Д^)「ええ、どうも高出力のエンジンみたいな物を背負ってあの柱に体当りしたみたいで。
      大爆発を起こして、柱が大きく損傷したんですよ。
      いま、私たちも現場になかなか近寄れなくて」

爆発、炎上、柱の損傷。

……あいつ、本当にやっちゃった。


そこに、警官がもう一人やってきて私と話していた警官の方を叩く。
どうやら交代の時間らしかった。

(,,゚Д゚)「おう、お疲れさん」

( ,,^Д^)「あ、どーも。
      あっち、大丈夫でした?」

(,,゚Д゚)「大丈夫も糞もねえ、柱の表面はメタメタだし、
    いろんなとこに火が燃え移っていやがる。
    今日は、徹夜覚悟だぞ」

( ;^Д^)「あー、それでどうです?
      犯人の状態は?」

最初の警官が、私の方をチラッと見た。
……聞いていくといい。ということなのだろう。

(,,゚Д゚)「あ?犯人?
     さっきまで個体識別番号の発信はしてたが、
     それも今は途切れてる。もうオシャカだな、ありゃあ」

ξ゚听)ξ「……」

オシャカ?オシャカってどういう意味だろう?
なんか、昔見たドラマで聞いたことがある気がする。



(,,゚Д゚)「しかし、あいつ何がしたかったんだか。
     何の意味があんだ?爆弾抱えて柱につっこむなんざ……」

警官は、呆れてものも言えないとばかりに頬を掻いた。

(,,゚Д゚)「バグってテロ起こしたにしても、
     事前に本当に柱を吹っ飛ばせるか計算してくるだろ?普通。
     結局、柱は表面のコンクリが吹っ飛んだだけでほぼ無傷だし」

(,,゚Д゚)「もしかして、ド派手な自殺だったのかねぇ?
    ったく、死ぬにしても人の手をわずらわせねぇでやって欲しいよ」


ブーンが、死んだ?


(,,゚Д゚)「もしそうならテロ起こしたってより深刻なバグだな。
     自殺とか、百年くらい前の報告書でしか……」

ξ )ξ「自殺じゃ、ありません」

(,,゚Д゚)「……はい?」

警官がぽかんとした顔で、私の顔を見る。
馬鹿面しやがって。
……ブーンをバカにしやがって……。


私は、それだけ言ってその場をあとにした。
最初の警官が呼び止める声が聞こえたが、無視した。
どうせ個体識別番号は知っているのだから、家に連絡が来るだろう。

なにより、あのバカ面警官の声を一秒たりとも聞いていたくなかった。

ξ゚听)ξ

時刻は、九時半をまわっていた。
もう、とうに遅刻だ。
遅刻するくらいなら、休んじゃおうかな。

私の足はブーンの頭と同じくバグを起こしたのか、
自然と私の家へ向いていた。
私も、これからどこかに体当りするのかな。

……自分でも、全く笑えない冗談だった。


タクシーを拾って、家に帰った。
ブーンが死んだ。あっけなく、無意味に死んだ。
私がもし人間だったら、地団駄踏んで悔しがって泣いただろう。

だが、涙を流す機能は人間が自ら手がけた最初期型にしか搭載されていない。
50年程前に作られた私に、そんな面倒で非効率な機能など付いているわけもない。

ξ )ξ「……ブーン」

だけど、私の基幹システムは「悲しい」という感情を私の全身に満たしていた。
私たちを生み出した人間たちの持っていた、感情という機能。
……なんと無駄で、不合理なものなのだろう。

そしてなぜこんな物を彼らは私たちに植えつけたのか?
いっその事、ただの機械であったほうがどんなに幸せだったことか。

ξ )ξ「どうして……」

玄関にたどり着いて、私はそこにうずくまった。
「悲しみ」で動けなくなるというのは初めてのことだった。

ただ人間とは違いその感情の激流の中でも、
理性を保っていられるのが唯一の救いだった。

いや、これは本当に救いなのか?


ξ )ξ「本当に、馬鹿みたい。
       結局カッコつけといて失敗してるじゃない。
       ……兄貴らしいところを見せてやろうとでも思ってたの?」

ξ )ξ「ホントに馬鹿ね。
       やっぱあんた、ダミーと一緒で頭んなか空っぽだったんじゃないの?
       ……バカ兄貴」

兄と言っても彼とは同じ工場で作られたわけでも、
ましてや、血のつながりがあったわけではない。

個体識別番号が近かった者が助けあう制度があって、
その中で兄、妹という役割を演じさせられていたに過ぎない。
人間たちの「家族」というシステムの模倣だ。

だけどあのバカは、当時見ていたドラマの影響で、
私を人間が妹を可愛がるみたいに可愛がった。

まったく、バカな兄だった。


いつまでもこうしているわけにもいかなかった。
職場にはとりあえず連絡しなくてはいけなかったし、
警察からいつ呼び出しがかかるか分からなかった。

私は、側にあった靴箱に手をかけて立ち上がる。
お茶でも飲めば、少しは落ち着くだろう。

―――そのとき、指先になにか硬いものが当たった。

ξ゚听)ξ「……あ」

ブーンが押し付けてきた記録メディアだった。
私はこれをブーンの背中に投げつけたまま、放ったらかしにしていた。
二週間も前の事だったから、すっかり記憶から抜け落ちていた。

それに触れると、中のファイルがおぼろげに知覚できた。
……どうやら、中に入っているのは映像ファイルのようだ。

ブーンをあそこまで駆り立て、ついに殺した映像がこの中にある。


ξ゚听)ξ「見なきゃ、いけないよね」

ブーンの言っていた条件とまったく現状は違ったが、
私はこれをどうしても見なくてはならない。
そんな直感が私を突き動かした。

大昔のアニメで主役のサイボーグがこんな直感のことを、
ゴーストがどうのこうのと言っていたっけ。

でも今は、ゴーストはゴーストでもブーンのゴーストが私に囁いている。
……そんな気がした。

ξ゚ -゚)ξ「……なんかうまく再生できないな」

でも、メディアを握りしめたが中の映像がうまく再生されない。
ふと私は遠い昔、ブーンと映像の入った記録媒体を見つけて、
似たようなことがあったのを思い出す。

まさか、とファイルの詳細を見て驚いた。
これは、flvじゃないか。

子供の頃、教科書で見た「ゆうちゅうぶ」や「にこにこ」
とかいう「動画サイト」で使われていた動画形式だ。
私たちは、この動画形式を直で再生することができない。

結局、私はこういう古代のファイルを再生できる端末を持ってきて再生するしかなかった。


戻る [次へ