── ( ^ω^)僕らは別れを告げるようです ──
  ── 3月23日 ──




頭上に広がる満天の星空。

風にそよぐ緑の大地。

傍らで空を見上げる君の横顔。

あの時の見た景色は、きっと僕の心に一生残るのだろう。

あの町から持ち帰ったもの、想い出。
僕はそれを胸に抱え、お互いが選んだ道を歩いて行くのだ。


( -ω-)「お……」

(,,゚Д゚)「おお、起きたか」

(;^ω^)「すみません、寝ちゃってて……」

(,,゚Д゚)「何言ってんだ、別に構わねーよ」

そう言って、トラックの運転手、ギコさんは豪快に笑う。




もう数時間で着くから、着いたら起こそうと思ってたと言ってくれたが、助手席に座る身としては、運転手が眠く
ならないように話し相手は務めるべきだろう。

僕は目を擦り、窓の方へ顔を向ける。
いつの間にかどこかで見た景色に帰り着いていた。

(,,゚Д゚)「この辺はもう馴染みの場所か?」

( ^ω^)「ええ、そうですお」

山と田んぼしか見えない味気ない景色。
さして広くもない幅の道。
これでも国道というのだから驚きだ。

(,,゚Д゚)「身体は大丈夫か?」

( ^ω^)「え? あ、はい、大丈夫ですお」

ギコさんは僕の疲れを心配してくれたようだが、一応大学での4年間、サイクリングサークルで鍛えた身だ。
このくらいは問題ない。




(,,゚Д゚)「別に手伝ってくれなくても良かったんだが、何か悪かったな」

( ^ω^)「いえ、大丈夫ですお。身体を動かすのは好きですし」

このトラックは3件分の引越しの荷物を積んでいた。
僕は引越しのトラックに便乗し、最後の自分の荷降ろしだけ手伝う約束ではあったが、その前の2件の荷降しも自発的に
手伝った。

受け取り側の人間もいるにはいたのだが、何もせず、1人だけ助手席に座ってただ眺めているのも居心地の悪いものだ。
お前はお人好し過ぎると、ドクオに揶揄されそうだが、ただ待っているのも暇だったから僕としては丁度良かった。

(,,゚Д゚)「しかしお前、中々筋がいいな。行くとこなくなったら俺の所に来いよ」

( ^ω^)「ありがたいお言葉ですお。覚えておきますお」

ギコさんは笑って言う。
僕も笑って返した。

半分冗談だとは思うけど、こういう仕事も中々いいものだと思えた。
実際にやってみると大変な仕事なのだろうとは思うけど、こういう風に何も考えずに身体を動かす仕事の方が僕向きだと思う。
それに、いろんな場所に行けるのもいい。




( ^ω^)「……」

僕はそっと右手で胸ポケットを押さえる。

うん、わかってる。

そう思うのはきっと捨て切れなかった想い出のせいだと。

僕は再び窓の外を眺める。
代り映えのしない田園風景が続く。

結局僕は写真を捨てられなかった。
胸ポケットに入れたまま、取り出すことも出来なかったけども。

僕は右手に少しだけ力を込めた。

(,,゚Д゚)「なあ、胸ポケットに何が入ってるんだ?」

(;^ω^)「お!? な、何の話ですかお?」

突然かけられたギコさんからの言葉に、とぼけてみるもどうやら遅かったようだ。
ニヤニヤとした笑い顔を見せ、ギコさんは隠すなよと楽しげに言う。
事あるごとに胸ポケットを押さえる僕の姿は何度も見られていたらしい。




僕は観念して胸ポケットから写真を取り出す。

別に突っぱねてもよかったはずなのだが、ただ僕がこれを取り出したかっただけかもしれない。

ギコさんは写真を受け取り、片手にハンドル握ったまま写真をちらちらと確認する。

(;^ω^)「いや、ちらちら見すぎじゃないですかお?」

ギコさんは何故か何度も写真をちら見しては時折目を擦ったりする。
しばらくしてよっぽど信じられないものでも見たかのような顔で僕に写真を返して来た。

(;,,゚Д゚)「……盗撮?」

(;^ω^)「いや、こんな堂々と並んで映ってんのにそれはないですお」

言いたいことは何となくわかるが、ちと失礼すぎる反応だろう。
不釣合いなのは僕が一番良く理解している。

(,,-Д-)「ふーむ……世の中信じられないこともあるもんだな……」

だから失礼すぎだろうと思うが、僕はその言葉を飲み込み、もう別れましたと軽く述べた。
努めて平坦な口調で、ただ事実だけを。




(,,゚Д゚)「何だそりゃ? 何でだ?」

( ^ω^)「いや、それは諸般の事情でとしか……」

ふられたかと言うギコさんに、僕は無言で首を振る。
僕らはお互いの進む道のために別れたのだと、また事実だけを伝える。

(,,゚Д゚)「お互いのねえ……」

( ^ω^)「はいですお」

ギコさんは何か言いたげに僕の方へ視線を向ける。
安定した運転の腕ではあるが、もう少し前方に注意を向けて運転した方がいいのではと思わなくもない。

( ^ω^)「何ですかお?」

(,,゚Д゚)「……いや、何でもないよ。それがお前らの決めたことなんだろ」

僕はまた無言で頷く。
ならば部外者が言うべき話じゃないとギコさんは正面を向いてただそれだけを言った。

( ^ω^)「……」




ギコさんから返してもらった写真に目を落とす。

僕とツン、2人で決めた答えは正しかったのだろうか?
僕はそれが未だによくわからずにいる。

でもきっと、お互いの道のためにはそれが一番良かったはずだ。

( ^ω^)(僕が歩み寄れれば……)

答えは変わったのかもしれない。
ツンに内緒でツンの行く大学の近辺の企業も受けてはみたのだがことごとく落ちた。
不況の折もあり、ようやく手に入れた就職を手放すことが僕には出来なかった。

ツンは学問という夢を追い、僕は仕事という現実に囚われた。

僕もツンも、お互いの道を譲れという言葉を言うはずがなかった。
自分から譲っても、きっと相手に重荷を背負わせることになるだろうから。

( ^ω^)(もう、終わったんだお……)

僕はそっと写真を折りたたむ。
捨てられなかった想い出を、また胸ポケットに仕舞い込んだ。

僕と僕の想い出を積んだトラックは、国道201号線を軽快に走る。
もうすぐ僕は帰り着く。

あの町に別れを告げ、故郷の町に帰り着くのだ。



・・・・
・・・

( ^ω^)「おー……」

トラックは国道を抜け、細い道を行く。
見覚えのある景色に囲まれ、時折見つかる変化に驚く。
普段帰る道とは違う道だが、気付かぬ内にこの町も色々と変わっているものだ。

そんな行程を繰り返し、トラックはやがて止まった。

(,,゚Д゚)「よし、この辺で良いか?」

( ^ω^)「はいですお」

道は狭いがスペースは広くていいとギコさんが言う。
隣の家まで間に田んぼをいくつか挟むので、ここにトラックをしばらく止めて置いても大丈夫だろう。

( ^ω^)「んじゃ、ちょっと人手を連れて来ますお」

(,,゚Д゚)「おう。俺は降ろす準備をしてるよ」

助手席のドアを開け、故郷の地に降り立つ。
正月に帰ったばかりなので、さほど感慨はないが、やはりどこか今までの帰郷とは違う気持ちに満ちている。




( ^ω^)「お?」

( ΦωΦ)从'ー'从(´∀` )J( 'ー`)し(゚、゚トソン

呼ぶまでもなく、トラックの音を聞きつけたこちらに向かってくるのに気付いた。
祖父母に父母、妹と家族総出だ。

大体の時間は伝えてたし、大型のトラックが通ることは滅多にない道なので気付いてもおかしくないはないが、
全員に手伝ってくれるよう頼んだ覚えはない。

( ^ω^)「ただいまだお」

僕は挨拶もそこそこ、荷降ろしの作業に向かう。

家族皆で来てくれたのは嬉しいが、爺ちゃんや婆ちゃんにまで手伝わせるのはどうかと思い、断ろうとしたが皆さっさと
荷物を運んでいく。
やれやれ、元気なことだと思う。

僕はギコさんと家族の間に立ち、ギコさんが降ろした荷物を皆に手渡す作業に就いた。




    オッ    ウム
( ^ω^)つ□⊂(ΦωΦ )


  ハイハイ    オッ
从'ー'从つ品⊂(^ω^ )


    オッ    モナ
( ^ω^)つ回⊂(´∀` )


   エエ    オッ
J( 'ー`)しつ品⊂(^ω^ )


    オッ    ハイ
( ^ω^)つ○⊂(゚、゚トソン


  ヨイショット  オッ
ξ゚听)ξっ□⊂(^ω^ )



!!!



えっ




( ^ω^)「……」

( ΦωΦ)「おい、次はどうしたんじゃ?」

(;^ω^)「お……」


    オッ    ウム
( ^ω^)つ□⊂(ΦωΦ )


  ハイハイ    オッ
从'ー'从つ品⊂(^ω^ )


    オッ    モナ
( ^ω^)つ回⊂(´∀` )


   エエ    オッ
J( 'ー`)しつ品⊂(^ω^ )


    オッ    ハイ
( ^ω^)つ○⊂(゚、゚トソン



 ドッコイショット  オッ
ξ゚听)ξっ□⊂(^ω^ )


( ^ω^)「……」

...ξ゚听)ξっ□ スタスタ

(;^ω^)「いや、ちょ、ちょっと待てお!!!」

......ξ゚听)ξっ□ ピタゥ

ξ゚听)ξヽ

(;^ω^)「そうだお、お前だお」

┐ξ゚听)ξ┌ 「?」

(;^ω^)「いや、そんな意味がわからない風なジェスチャーされても、こっちが意味わからんお」

僕は手にあった荷物を放り投げるように父に渡し、ツンの元へ向かう。
何故ここにツンがいるのか。
ツンは今頃、大学院の入学手続きをしているはずなのに。




ξ゚听)ξ「進学は止めたわ」

ツンは進学を取り止め、昨日の内にここに来たと言う。
以前、住所を教えた覚えはあるが、いくらなんでも急で、そして滅茶苦茶な話だ。

(;^ω^)「何で……勉強は、天文学は夢じゃなかったのかお!?」

気付けば僕は叫んでいた。
彼女がここにいるのが、夢を捨てたのが僕のせいなら、僕は……

ξ--)ξ「……別に進学は止めたけど、夢は諦めたわけじゃないわよ?」

(;^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「勉強は、あの大学院じゃなくても出来るわ。ううん、働きながらでも出来る」

ツンは穏やかな口調で語る。
自分が夢を捨てたわけではないことを。
自分の見る夢が変わっていないことを。




ξ゚听)ξ「そりゃあね、だいぶ遠回りだと思うし、大変だとは思う」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「でも、思い出したの」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「私がこの夢を見始めた理由」

( ^ω^)「……」

ξ゚ー゚)ξ「あの日一緒に見た、星空を思い出したの」

( ^ω^)「ツン……」

ξ゚ー゚)ξ「私は私がどこで夢を見たかったのか、思い出したのよ」

ツンの手が僕の手を握る。
まだ肌寒い春の午後に、冷ややかで暖かい感触が僕を刺す。




僕はツンの目をまっすぐに見詰めた。
ツンは僕の目をまっすぐに見詰め返した。

それがツンの本当の答えだと、僕はやっと理解出来た。

そして僕の本当の答えは……

( ^ω^)「ツン……ごめんお……」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「本当は僕がそうするべきだったんだお」

僕はツンを1人で悩ませ、1人で大きな決断をさせてしまった。
ツンの気持ちに気付いて、そして僕の本当の気持ちに気付いて、僕がツンのために、ツンのそばに向かうべきだった。

それが僕の本当の答えだったのだから。

ξ゚ー゚)ξ「鈍いあんたにそこまで期待してないわよ」

( ^ω^)「でも……」

ξ゚听)ξ「私は、夢への遠回りという重荷を背負うわ」

( ^ω^)「うん……ごめん──」




ξ゚听)ξ「あんたは、自分がちゃんと答えを出せなかったことを重荷として背負いなさいよ」

( ^ω^)「お……」

ξ--)ξ「それでおあいこよ」

( ^ω^)「……ツン」

ξ゚ー゚)ξ「ま、そんなもの、一緒に背負えば軽いもんでしょ?」

( ^ω^)「そうだおね……ありがとだお、ツン」

僕らは再び見詰め合う。
随分情けない僕だったけど、ツンはそこまでわかってくれて、僕の元へ来てくれた。

僕はもう迷わない。

僕の本当の答えは、ツン、君と一緒にいたい。

僕はツンの方へ足を踏み出す。
もう1歩、足を踏み出そうとしたところで僕はこの場所がどこかに気付いた。


(,,゚Д゚)+( ΦωΦ)+ 从'ー'从+ +(´∀` ) +J( 'ー`)し +(゚、゚トソン




(;^ω^)「……お」

僕は家族+1の生暖かい視線を避けるようにツンの横に並ぶ。

ξ--)ξ「情けないわね……」

(;^ω^)「おー……」

ξ゚听)ξ「でもまあ……」

ξ゚ー゚)ξ「その方があんたらしいわ」

( ^ω^)「おっおっお」

僕らは笑う。
あの写真のように2人並んで。

あの日とは別の空の下で。
あの日と同じ気持ちで。

間違った答えに別れを告げて。
本当の答えを胸に僕らは笑う。


 ( ^ω^)ξ゚ー゚)ξ



 ── ( ^ω^)僕らは別れを告げるようです 終 ──


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