【えぴろーぐ】


 それから、長い長い時間が流れ――

 世界のどこかに、大きな大きな森がありました。
 季節は、夏。
 木漏れ日が降り注ぐ広場一面に広がる、ヒマワリの花。
 その真ん中、真っ白なトナカイが眠るその上に――

ミ,,゚Д゚彡「デカすぎるだろ」

 大きな大きな木が、立っていました。
 まるで、広場の端にある大きな木に対抗する様に、自分の根元を背もたれにして、そう言うように、それは、そこに立っていました。

ミ,,゚Д゚彡「もういいよシュシュ。これ以上デカくなったら森がヤバい。お前のデカさで森がヤバい」

 それは、真っ白なトナカイが願った、奇跡でしょうか?

 神様のいたずらでしょうか?

 それとも、落ちこぼれサンタの袋の力でしょうか?

 それは、誰にもわかりません。

 落ちこぼれサンタは、ずっと一人です。
 新しいトナカイは、いません。





ミ,,゚Д゚彡「やべぇシュシュの奴、マジで森一面をヒマワリだらけにする気だ。死ぬ。森が広すぎてさすがのサンタも精神面がえげつないことになって死ぬ」

 袋に手を入れる度、出てくるヒマワリがあったから。
 落ちこぼれサンタは、どこにも行けません。
 ずっとずっと、大きな大きな木の傍にいて。

 とある少女に対抗するそれは、あまりにも多過ぎて。

ミ,,゚Д゚彡「久しぶりに空の風を感じたい。ワカッテマスに頼んでトナカイ一匹――」

 疲れた落ちこぼれサンタがそう言うと

ミ,,゚Д゚彡「えっごめん嘘行かない行かないどこにも行かない俺はシュシュが大好きだからぎゃああああああ!!」

 米とか、米とか、炊飯器とか。
 色々、降ってくるのです。

ミ,,゜Д゜彡「……まだヤキモチ妬いてんの?」





 ざぁっと、大きな大きな木の枝が揺れます。

ミ,,゚Д゚彡「まぁいいや」

 そう言って、その木の根元に腰を下ろして

ミ,,゚Д゚彡「今日も木の実が美味いよシュシュ」

 木の実を食べる、落ちこぼれサンタの姿。

 その頭上に――

ミ,,゚Д゚彡「しかしお前これ以上デカくなったら体重的なアレがヤバいだろ前に背負った時の重さといったらもう大変なえっあれ痛い痛いごめんやめシュシュごめ――」

 炊きたての米や炊飯器を降らす、ヤキモチ妬きの大きな大きな木の姿がありました。

 どこかの誰かが起こしたその奇跡は、悲劇を悲劇で終わらせない、ほんの少しだけ、卑怯なもので――





 かつて、世界のどこかの大きな大きな森に、体の小さな真っ白なトナカイがいました。
 首に大きな赤い鈴。
 薄茶色の、先が枝分かれした二つの角に、真っ白な毛のとても綺麗な体。
 そこから伸びる細く長い四本足は、それはそれは美しいものでした。

lw´‐ _‐ノv

 しゃんしゃん、しゃんしゃん。
 首の鈴を鳴らし、空を翔けた真っ白なトナカイ。
 いつも眠そうな目をした、真っ白なトナカイ。

 そのトナカイは――
 お米が好きで。
 お星様が好きで。
 お月様も好きで。
 流れ星と競争をするのが好きな、ほんのり、ちょっぴり、かなり頭の悪い可愛い可愛いトナカイでした。





 いつもそのトナカイの隣には、体の大きな落ちこぼれサンタがいて。
 一緒に食べる木の実が好きで。
 一緒にお昼寝するのが好きで。
 一緒に空を散歩するのが好きで。

 少しだけ素直じゃなかったそのトナカイは、やけに眠たくなってからやっと、隣にいる落ちこぼれサンタに甘え出しました。

 そして、自分の終わりを知った時、初めて落ちこぼれサンタの名を、呼びました。

 少しだけ素直じゃない、ヤキモチ妬きのそのトナカイ。
 その想いはきっと、落ちこぼれサンタに届いていて――





 のしのし、のしのし。
 とことこ、とことこ。
 もう二度と響かない、二つの足音。

 そんな懐かしい音達は――

 少し卑怯な奇跡が生んだ、ヤキモチ妬きの大きな大きな木の根元、ぐっすり眠る落ちこぼれサンタが見る夢の中で――

 のしのし、とことこ。
 のしのし、とことこ。

 ようやく一つに重なって――
 綺麗に並んだ、二つの足跡。

 夢の中、その重なる音を生む場所に――

ミ,,゚Д゚彡「もぐもぐ」

lw´‐ _‐ノv「もぐもぐ」

 仲良く木の実を食べる、一人と一匹の姿がありましたとさ――






 ミ,,゚Д゚彡落ちこぼれサンタはずっとずっと、真っ白なトナカイの傍にいるようです



    【おしまい】



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