【最後話】
ざくっ。ばしゃ。
ざくっ。ばしゃ。
ミ,, Д 彡「……」
大きな大きな森の広場の真ん中で、フサギコは一人、土を掘ります。
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ミ,, Д 彡「……ここがいいよな? 広いし、ずっと一緒だったし」
もう二度と動かないトナカイを、埋めるために。
しゃんしゃん、しゃんしゃん。
そこに舞い降りる、二つの影。
( <●><●>)「こんにちは。遊びに来まし――」
( ><)「……え?」
ざくっ。ばしゃ。
ざくっ。ばしゃ。
ミ,, Д 彡「……よう」
土を掘るフサギコの姿を見て、声を失う一人と一匹。
ざくっ。ばしゃ。
ざくっ。ばしゃ。
ただその音が響くだけ。
ざくっ。ばしゃ。
ざくっ。ばしゃ。
何度も何度もそれを繰り返した頃。
ようやく――
( <●><●>)「私の……せいですね」
ミ,, Д 彡「……あ?」
ワカッテマスが口を開きます。
( <●><●>)「私があの時、シューの鈴を外さなければ」
ミ,, Д 彡「……どうしてそう思う?」
( <●><●>)「確かにトナカイはサンタと違って寿命があり、いつか死にます。しかしそれは長いもので、歳を数えてもシューはまだ寿命の半分にも――」
はっ、と笑って、言葉を遮るフサギコ。
ミ,, Д 彡「しっかり年数記憶してんじゃねぇか。ほんとねちっこいよお前」
( <●><●>)「……」
ミ,, Д 彡「そうだとしたら、俺はお前を許さない。俺がこの世界からいなくなるまで許さない。ずっと死なないなら、ずっとずっと許さない」
( <●><●>)「……」
だけど、な。と一言。
ミ,, Д 彡「あの時のお前がいなければ、俺はシュシュと出会ってない。沢山のトナカイの命を犠牲に、俺とシュシュは出会ったんだ」
( ><)「……」
ビロードはちらりと、ワカッテマスの顔を見ます。
ミ,, Д 彡「だから、俺の勝手なエゴだけど、俺はお前に感謝してる。許さないけど、感謝してる」
( <●><●>)「……ちぐはぐですね」
ミ,, Д 彡「俺は落ちこぼれサンタ、だからな。何でもありだ」
( <●><●>)「アナタは、どうして私の知らない感情ばかりを……。本当は、馬鹿じゃないんですか?」
ミ,, Д 彡「長く生きてりゃ自然とわかるさ。わからないお前がおかしいんだよ」
( <●><●>)「……もしも今、アナタが袋に手を入れて、もしも今、私が「シューが生き返って欲しい」と願ったら? どうなりますか?」
ミ,, Д 彡「さぁてね」
( <●><●>)「だったらやってみ――」
ダメだっ! と、強い声。
フサギコはやっと、やっとシューやワカッテマスが言った言葉の意味が理解できたのです。
ミ,, Д 彡「失って、やっとわかった。そんな奇跡は、卑怯なんだよな」
( <●><●>)「……だったら私も手伝いま――」
ミ,, Д 彡「いい。帰ってくれ。今すぐ、帰ってくれ」
( <●><●>)「え?」
ミ,, Д 彡「憎いとかじゃない。今はただ、シュシュと二人でいたいから――」
( <●><●>)「……ッ!」
ワカッテマスはやっと気づきました。
自分と会話をしている時、フサギコは土を掘る手を止めていた、と。
それはまるで、邪魔するな、と言うかのように。
( <●><●>)「配慮が足らず、すみません」
ミ,, Д 彡「悪いな。また、な?」
( <●><●>)「はい、ではまた」
( ><)「……また、なんです」
しゃんしゃん、しゃんしゃん。
そんな音を聞きもせず、ただ黙ってフサギコは、土を掘るばかりでした。
ざくっ。ばしゃ。
ざくっ。ばしゃ。
ざくっ。ばしゃ。
ざくっ。ばしゃ。
※
ミ,,゚Д゚彡「ふーっ」
汗を拭くフサギコ。
目線の先には、他より少し色の変わった土。
土の中に、真っ白な小さな体のトナカイがいます。
ミ,,゚Д゚彡「さて、と」
スコップを置いて、フサギコは色の変わった土の上。
ミ,,゚Д゚彡「シュシュを踏めるなんて最初で最後だ、堪能しないとな」
ぱんぱんと、足で踏んで。
ミ,,゚Д゚彡「なぁシュシュ?」
ミ,,゚Д゚彡「お前はどこから雪崩を呼んだんだ?」
ミ,,゚Д゚彡「お前はどこから米や炊飯器を出したんだ?」
ミ,,゚Д゚彡「一緒に食べた木の実、美味かったぜ」
ミ,,゚Д゚彡「昼寝は、気持ち良かったし」
ミ,,゚Д゚彡「空の散歩は、楽しかった」
ミ,,゚Д゚彡「流れ星に勝てたらよかったのにな」
ミ,,゚Д゚彡「ほんとに星を食べたのか? 月をかじったのか?」
ミ,,゚Д゚彡「……聞きたい事が、いっぱいあるな」
ミ,,゚Д゚彡「なぁシュシュ?」
ミ,,゚Д゚彡「俺はこれから、どうなるんだろうな。一人で、どうやって生きるんだろうな」
ミ,,゚Д゚彡「いつになったら俺は、俺はシュシュのところに行けるかな」
ミ,,゚Д゚彡「なんも、なんもわからねぇ」
ミ,, Д 彡「あ、やべぇ。せっかく固めたのに」
ミ,, Д 彡「ほんとに俺は、落ちこぼれのサンタだから、一滴だけ、許してくれ。な?」
ミ,, Д 彡「なぁシュシュ?」
ミ,, Д 彡「なんでもう、過去にしかお前はいないんだろうな?」
ミ,, Д 彡「もっと、もっと、俺はお前と――」
ぴちょん、と一滴。
土に降りた、涙がありました。
【最終話:いつもわたしの隣には落ちこぼれサンタの姿があって、だからわたしは幸せだったよ】
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