夏に恋するようです4

─ ζ(゚ー゚*ζ ─



 優しく差し伸べられた大きな手のひら。
 そこに重なった私の手。

 ああ、一晩経っても、手のひらが熱い。

 彼の声を聞きながら、彼の手を思い出す。
 身体中を撫でられている様な錯覚に、私はベッドでか細い悲鳴をあげていた。


ζ(゚ー゚*ζ「でねキューちゃん、起きたらパジャマ着てなかったんです」

o川; )o.'。.゚,

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたんですか?」

o川;゚ー゚)o「……学校で、そんな事、言うない」

ζ(゚ー゚*ζ「ぬぁ?」

o川;゚ー゚)o「何やねんその微妙に可愛くない鳴き声……」




ζ(゚ー゚*ζ「あ、そうだキューちゃん」

o川*゚ー゚)o「ん?」

ζ(゚ー゚*ζ「私、流石くんが好きです」

o川*゚ー゚)o「うん知ってる」

ζ(゚ー゚*ζ「声だけでなく、彼自身が」

o川*゚ー゚)o「うん知ってる」

ζ(゚ー゚*ζ「彼を思い出して一人でするくらい」

o川*゚ー゚)o「うん知ってる、でも学校とかで言うの止めよな」
   ,_
ζ(゚- ゚*ζ「何で知ってるんですかぁ……」

o川*゚ー゚)o「自分ほんまにアホやな」
   ,_
ζ(>△<*ζ「アホくないですっ!」

o川*゚ー゚)o「いーやアホや、どう見てもアホや、そんなデレちゃんが好きやねんけど」

ζ(゚ー゚*ζ「デレるの早いですね」

o川*゚ー゚)o「常にデレとる子が何を言う」




ζ(゚ー゚*ζ「でね、だからねキューちゃん」

o川*゚ー゚)o「うん?」

ζ(゚ー゚*ζ「私は、流石くんのものになりたいんです」

o川*゚ー゚)o「うん」

ζ(゚ー゚*ζ「流石くんを、私のものにしたいんです」

o川*゚ー゚)o「うん」

ζ(゚ー゚*ζ「だから、」

o川*゚ー゚)o「大丈夫」

ζ(゚−゚*ζ

o川*゚ー゚)o「うち、他に好きな人おるから」

ζ(゚−゚*ζ!

o川*゚ー゚)o「でも、デレちゃんが告白するまで、あんま関わらん様にする」

ζ( − *ζ




o川*゚ー゚)o「嫉妬すんの、別におかしい事やないんやから」

ζ( − *ζ

o川*゚ー゚)o「寧ろ、嫉妬すんのが普通やねん」

ζ( − *ζ

o川*゚ー゚)o「特定の人を好きになるて、そう言う事やと思うねん」

ζ( − *ζ

o川*゚ー゚)o「せやからデレちゃん、そんな、泣きそうな顔、せんといて」

ζ( − *ζ

o川*゚ー゚)o「うちも、泣きそうになるから」

ζ( − *ζ「…………ごめんなさい」

o川*゚ー゚)o「うちこそごめん、無神経で」

ζ( − *ζ「……キューちゃん、……大好き……です」

o川*゚ー゚)o「うちもデレちゃん大好きよ、女の子の中では、いっとう好きよ」




 キューちゃんが、困った様に、はにかむ様に笑顔をくれた。
 私はそれに笑顔を返せなくて、俯いてしまう。

 キューちゃんを見ていると、涙が溢れそうになる。
 なぜだか分からないけど、涙が、


o川*゚ー゚)o「ね」

ζ( − *ζ「う、?」

o川*゚ー゚)o「告白は、すんの?」

ζ( − *ζ「……はい」

o川*゚ー゚)o「そっか……」

ζ( − *ζ「…………大丈夫……かな」

o川*゚ー゚)o「は?」

ζ( − *ζ「こ……断られたら……どうしよう……」

o川;゚ー゚)o(ねーよ)



ζ( − *ζ「断られたら私……私……っ」

o川;゚ -゚)o

o川;゚ -゚)o「う……うじうじしとったら流石くん奪うでー」

ζ(゚△゚;ζ「ダメぇっ! ダメ絶対ダメあげないっ!!」

o川;゚ー゚)o(所有物か)

o川*゚ー゚)o「……ま、その元気あるなら大丈夫やて、つかいま敬語ちゃうかったな」

ζ(゚△゚;ζ

o川*゚ー゚)o?

ζ(゚△゚;ζ「本当だ……最近、敬語使ってない……」

o川;゚ー゚)o「口に出しとる時は基本的に敬語やから気にしぃな」

ζ(゚−゚*ζ「……今日、放課後……します」

o川*゚ー゚)o「…………頑張れよ」

ζ(^ー^*ζ「はいっ!」

(´<_` )「何を頑張るんだ?」

ζ( △ ;ζ「ぱしへろんだすっ!!?」



o川*゚ー゚)o「帰れ」

(´<_` )「断る。で、何を頑張るんだ?」

ζ(゚ー゚;ζ「や、あの、その、あの」

(´<_` )「ところで、放課後に予定は」

ζ(゚ー゚;ζ「あります」

o川#゚ー゚)o「帰れ」

(´<_` )「断る」

o川#゚ー゚)o「千枚通しでたこ焼きみたいにめんたまグリグリ回すぞボケ」

(´<_` )「何それこわい」

o川#゚ー゚)o「ええから帰れやド変態」

(´<_` )「何で知ってるんだお前」

o川#゚ー゚)o「死ね」

(´<_` )「うっふん」




 流石くんの弟さんとキューちゃんがじゃれあってます。
 私はそれから逃れる様に、そっと席を立って
 こっそり、流石くんの席まで足を運びました。

 あ、なんか、気持ちが落ち着いてて気持ち良い。


ζ(゚ー゚*ζ「……流石くん」

(; _ゝ )そ

ζ(゚−゚*ζ「? 流石、くん?」

(; _ゝ )))「な、な……何、だ、」

ζ(゚−゚*ζ))「あの、今日、」

(; _ゝ )三そ ズザッ


 あれ。




 流石くんが、いつもに増して目を合わせてくれません。
 私から逃げよう逃げようと、椅子から立ち上がって後退りをする始末。

 あれ、あれ。
 私、変な事したんでしょうか?

 いえその変な事はしましたけど、その、
 それとはちょっと、違う、感じ。


ζ(゚−゚*ζ「……流石くん?」

(; _ゝ ),,「なんっ、だ、?」

(´<_` )「何してんだお前」

o川*゚ー゚)o「邪魔しぃな糸目」

(´<_` )「直野、この世には白目と同じくらい糸目がいるんだ」

o川*゚ー゚)o「わけ分からんわ死ね」

(´<_` )「断る」



ζ(゚−゚*ζ「ね、ねぇ……流石くん……」

(; _ゝ )三 ザッ

ζ(゚−゚*ζ「…………」

o川*゚−゚)o(……これは流石に、ちょっと)

(´<_` )(ああ、オナニーでもしたのかこいつ)

o川;゚−゚)o「(ちょ、ちょっと弟、何とかしぃな)」

(´<_` )「(何で俺が河合と兄者の間を取り持たなきゃいけないの?)」

o川#゚ー゚)o「(間を取り持つか、この場で死ぬか、どちらか選べ)」

(´<_` )「(分かったからコンパスで目ぇ狙うの止めて)」

o川#゚ー゚)o「(軟弱者は消え失せろ)」

(´<_` )「兄者」

(; _ゝ )?

(´<_` )「男に後退の二文字はねぇ」

(; _ゝ )!?

o川;゚听)o「(そのネタをそっちまで持ってくなああああ!!)」



(;´_ゝ`)「な……なん、だよ……」

(´<_` )「うるせぇ変態」

(; _ゝ )そ

o川;゚ー゚)o「寧ろ変態は自分やろが」

(´<_` )「トータルで見ればそうだが今は兄者のが問題だ」

o川;゚ー゚)o「自覚あるんかこの変態、つーか何で流石くんのが」

:(; _ゝ ): ガクブル

o川;゚听)o「何でダメージ受けとんねんッ!?」

(´<_` )「まあ無理もない、健全な証拠なのにな」

o川;゚听)o

o川///)o「…………あぁ……」

(´<_` )「うわ理解しちゃったよこいつ、ニュータイプか」

o川;゚ー゚)o「……流石くん……あんまり、気にしぃなね……」

(;´_ゝ`)!?




o川*゚ー゚)o「若い子には……よくある事やから……」

(;´_ゝ`)「ぇ……あ……え……?」

o川*゚ー゚)o「好きな子オカズは、若さの特権やで……」

(;´_ゝ`)「り……理解されたくない事を理解された……」

o川*゚ー゚)o「大丈夫……放課後なったら、その苦しみから解き放たれるから……
      な、デレちゃ」

ζ( − ζ「弟者さん」

(´<_` )「あ、はい」

ζ( − ζ「放課後のお誘い、お受けします」

o川;゚听)o「デレちゃあんッ!?」

o川;゚听)o


  ( o川*゚ー゚)o「でも、デレちゃんが告白するまで、あんま関わらん様にする」 )


o川; )o(やってもうたああああああああああああ!!!!)




o川; )o(うわああああああああかんあかんあかん言った側から)

(;´_ゝ`)「……直野?」

o川; )o(つかめんどくせぇなあもう恋する乙女ってやつぁああああああ)

(;´_ゝ`)「お、おい、直野、」

o川; )o(でも初恋+やっと自覚したデレちゃん相手やったら無理もないかでも)

(;´_ゝ`)「な……直野ー……?」

o川; )o(うわうわうわどうしよ舌の根ぇ乾かん内にデレちゃん裏切っとる)

(;´_ゝ`)「おーい……」

o川#゚听)o「じゃかぁしゃボケぇッ!! ちったあ危機感もたんかい童貞がッ!!」

(;´_ゝ`)「ひぃっ!?」

o川#゚听)o「空気読めや糸目ッ! お前が気にすんのはうちやなくてあっちやろがぁッ!!」

ζ( − ζ「……仲、良いですね…………直野さん」
  _,、_
o川 ;;)o「びゃあああああ!! ごめんなざいデレぢゃああああああんッ!!」




ζ( − ζ「じゃあ、放課後に」

(´<_`*)「ああ、またな河合」

  _,
o川 ;;)o

(;´_ゝ`)?

  _,
o川 ;;)o(めんどぐざいよう……)

ζ( − ζ
  _,
o川 ;;)o(でもそんなめんどくさいデレちゃんが好き……)

(´<_`*)〜♪
  _,
o川 ;;)o(弟死ねよぉ……)

(;´_ゝ`)???
  _,
o川 ;;)o(こいつはもっと死ねよぉ……)
  _,
o川 ;;)o
  _,
o川 ;;)o(うぢが一番死にだい……場引っ掻き回しスキル消したい……)




 キューちゃんに悪気がないの、分かってる。
 これがめんどくさくて醜い嫉妬だとも、分かってる。

 でも、苦しい。
 私の分からない話、私が入れない話題。

 彼に避けられ、彼に近付けない。
 でもキューちゃんは、彼の側に居られる。

 どうして、分からない。
 もう、何が分からないのかも分からない。

 ただ彼の側に行きたかった、話したかった、それだけよ。
 それだけなの、それだけなのよ。

 なのにそれが出来なかったから、悔しくて、悔しくて、寂しくて。


 誰か教えて、叩き付けて。

 私が今、どれだけ醜いのかを。




 好きな人が遠くて、寂しい。
 お友だちが遠くて、寂しい。

 側に居る人が居ないと、寂しい。
 私は、とても、とても、嫌な女だ。


 昼休みが終わって、授業が終わって、私はきっとひどい顔。
 自分でも分かる、涙が出るくらい醜いと。


 泣きそうな顔をするキューちゃんから、
 困った顔をする流石くんから、顔を背けて席を立つ。

 鞄を持って、何か言いたそうな二人に背を向け、歩き出した。
 二人の視線が、いやと言うほど背中に突き刺さる。

 ああ、ああ、嫌な女。
 大事な大事なお友達を、自分が押し付けた約束を振り払って。

 嫌な、人間。




 二つに結い上げた髪、髪をまとめるゴムに手を伸ばして、そっと引いた。
 はらりと流れる様に、長い髪が落ちる。

 色素の薄い薄茶の髪、痛みやすくて大嫌い。
 くにゃくにゃと頼りなくくねった癖っ毛、まとまらなくて大嫌い。


 二つのゴムを乗せた手を見下ろす。

 小さい手、肉体労働を知らない、傷のない手。
 何も掴めないし、何も掬えない、嫌い。


 階段の踊り場、大きな鏡に映る私の姿。

 太い手足、小さすぎる背、生っ白い肌、邪魔な脂肪、ひどい顔。

 みんなみんな、嫌い。


 真っ直ぐな髪が欲しかった。
 細い手足が欲しかった。
 もっと高い背が欲しかった。

 もっともっと、可愛いげのある人間に生まれたかった。

 みんなは可愛いと言ってくれる、でも本当は、全然可愛くなんかないんだ。




 自分を見ていると、涙が出そうになった。
 だから私は鏡から顔を背けて、階段を駆け降りる。

 軽い髪がふわふわと跳ねて、邪魔でしょうがない。
 でもお母さんやお姉ちゃんが似合うと言ってくれるから、切れない。
 重い体に太い手足、ダイエットをしようと何度も思った。
 けどお母さんやお姉ちゃんが必要ないと怒るから、出来ない。

 ああ私がない、私がいない、私はどこ。
 私の声を聞いて、ねぇ、名前を呼んでよ。

 低い声で私を呼んで。
 こもった声で私を呼んで。
 聞き取りづらいあの声で私を呼んで。

 河合って、呼んで、私を呼んで。
 前髪に隠れた目で、ちらりと私を見て。
 その大きな手のひらで私を支えて。
 長い腕で私を抱いて。
 広い胸に額を押し付けさせて。

 お願い呼んで、私を呼んで下さい。



 「河合、?」




 低い声に、私は勢い良く顔をあげた。

 そこにあったのは、切れ長の目に通った鼻筋、整った顔立ち。

 持ち上げられた、前髪。


ζ(゚−゚ ζ「ぁ…………流石、くん……」

(´<_` )「どうしたんだ? ずっと、俯いてたぞ」

ζ(゚−゚ ζ「い、え……何でも……ありません…………」

(´<_` )「……そう、か」


 低いけど、不思議とよく通る声。
 私を呼ぶ声は、あの声によく似ている筈なのに、違う。

 そっと、大きな手が私の髪を掬い上げた。
 手のひらでその感触を楽しむ様に軽く握ってから、くしゃくじゃ、と頭を撫でる。

 少し固くて大きな手のひらを頭に感じて、私は瞼を下ろす。

 少し、嬉しい。
 なのに何で、少し、寂しいのだろう。




(´<_` )「髪を下ろしてるのも、似合うな、河合」

ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとう、ございます……弟者さん」

(´<_` )「ああ……手触りも、柔らかくて良い」

ζ(゚ー゚*ζ「ぅあ、こそばいです、弟者さん」

(´<_` )「あ、悪い」


 私の頭をくしゃくしゃにして、弟者さんは笑った。
 よく似た顔は、毎日見ていても、笑ったところは


ζ( -  ζ

(´<_` )「……河合?」


 ざわ、と玄関から吹き込む風が私の髪やスカートを揺らした。
 長い髪が顔にかかって、見えなくなる。

 少し鬱陶しいけれど、私は風に感謝した。

 目の前に立つ弟者さんに、私のひどい顔を見られずに済んだから。




 下駄箱の影で、私と弟者さんは向かい合って立っている。
 開け放たれた玄関の扉、夕日を透けさせるガラス。

 うっすら赤く染まった私たち。
 頭を撫でる手が、後頭部へと優しく降りる。

 そして突然、後ろから頭を押す様に力がこめられて


ζ( △ ;ζ「わぶっ!?」

(´<_` )「河合ゲットだぜ」

ζ( △ ;ζ「へ、ぅえ? わ、私はポケモンですか?」

(´<_` )「ポケモンだったらどんなに楽か」

ζ( △ ;ζ?


 ぽふ、と顔が弟者さんのお腹の辺りに当たる。
 後頭部と背中に回された手に、まるで私を抱き締める様に力がこめられた。

 背の高い弟者さん、その顔を見上げようと顔を上へ向けた。

 けど弟者さんの顔は思ったよりも近くにあって、私は目を丸くしてしまった。




ζ(゚△゚;ζ「わっ、びっくりした」

(´<_` )「すまん」

ζ(゚△゚;ζ「…………どうしたん、ですか?」

(´<_` )「さて」


 くっつくと、こんなに近くに顔がくるのか。

 私がそう驚いて、目を丸くしたまま弟者さんを見上げていると
 弟者さんは少しだけ困った様に笑ってから、少し腰を屈めた。


 近付く整った顔。
 髪が、額に触れる。

 私が今どんな状況におかれているか、私は分からずにいて。

 顔を傾けた弟者さんの息が、唇にかかった。



 ヒュ  ゴッ



( <_(#(o三「うべしっ!?」

ζ(゚△゚;ζ「うぇっ?」
  _,,
o川#゚听)「おいたはそこまでじゃボケこらァアッ!!」

ζ(゚△゚;ζ「うひょわあっ!?」
  _,,
o川#゚听)「デレちゃん大丈夫ッ!? 口汚れてないかッ!?」

ζ(゚△゚;ζ「き……キューちゃん……?」
  _,,
o川#゚听)「おうさ!! さっきはごめんな大丈夫ッ!?」

ζ(゚△゚;ζ「あ、は、はい、あの、こちらこそ……」
  _,,
o川#゚听)「なら良かった! おいこらツラぁ上げんかい変態がァッ!!」

(´<_(# )「マジ痛い」
  _,,
o川#゚听)「当たり前じゃボケェッ!!」

(´<_(# )「物凄い邪魔をするな直野、物凄い邪魔」
  _,,
o川#゚听)「黙れ」




 肩を上下させたキューちゃんが、ずかずかとこちらへと歩いて来ます。
 その焦げ茶の髪には、髪飾りがひとつしか存在しません。

 ふと足元を見たら、ピンクのポンポンがついた髪飾りが転がっていて
 ひょいとそれを拾い上げ、すぐそばまでやって来たキューちゃんに差し出しました。


ζ(゚ー゚*ζ「は、はい、これ……」

o川*゚ー゚)「お、ありがと……っしょと」

o川*゚ー゚)o +

ζ(゚ー゚*ζ「ところでキューちゃん……何でここに?」

o川*゚ー゚)o「物凄い邪魔しにきた」

ζ(゚ー゚*ζ「なんの邪魔?」

o川*゚ー゚)o「そこのド変態の邪魔」




o川*゚ー゚)o ζ*゚ー゚)ζ    (´<_(# )


ζ(゚ー゚*ζ「どへんたい?」

o川*゚ー゚)o「ド変態」

(´<_(# )「ド変態」

o川*゚ー゚)o「微塵に砕けろ」

ζ(゚ー゚*ζ「……なんで、邪魔?」

o川*゚ー゚)o「デレちゃんの純潔を、お節介にも守るため」

ζ(゚ー゚*ζ「純潔? 危なかったんですか?」

o川*゚ー゚)o「すごおく」

(´<_(# )〜♪


o川*゚ー゚)=o)<_(# )




o川*゚ー゚)o「それよりデレちゃん、色々やらなあかん事、あるんちゃう?」

ζ(゚- ゚*ζ「あ……」

o川*゚ー゚)o「ほら、はよやっといで」

ζ(-△-;ζ「…………キューちゃん、さっきはひどい事して本当にごめんなさいっ!!」

o川;゚听)o「別にそれは今や無くてもええがなっ!?」

ζ(-△-;ζ「弟者さんもごめんなさいっ!
      お誘いお受けしたけど、やっぱり無理ですっ!!」

(メ#<_(# )「気にするな、予想はしてた」

ζ(-△-;ζ「本当にごめんなさいっ!! 私、すごく嫌な女で」
  _,,
o川;--)o「ええからはよ教室いかんかいッ!!」

ζ(゚△゚*ζ「教室?」
  _,,
o川#゚听)o「あんたの好きな人が待っとるからはよ行けぇいッ!!」

ζ(゚△゚;ζ「なんとぉっ!?」
  _,,
o川#゚听)o(さすがにイラッとしてもーたぞゴルァ)




ζ(゚△゚;ζ「わっ、わかりました! 行ってきますっ!!」
  _,
o川;--)o「おー行ってこい行ってこい」

(´<_` )
  _,
o川;- -)o=3

(´<_` )「…………はぁ」
  _,,
o川;-听)o「何やねん」

(´<_` )「……結構、真剣に好きだったんだがなぁ……」
  _,,
o川;゚听)o「あ、アレで?」

(´<_` )「…………文句あるのかよ」
  _,,
o川;-Д-)o「無いけどやぁ……」

(´<_` )「まあ、兄者に譲るさ…………今はな」
  _,
o川 ゚−゚)o「…………真面目にしとったらイケメン寄りやのになぁ……」

(´<_` )「何だ、ラブホ行きたいのか?」
  _,,
o川#゚皿゚)o「誰が行くか童貞」




 キューちゃんに怒鳴られるがままに、私は階段を駆け上っていた。

 さっきまでずっと抱えていた、ぐろぐろした嫌な気持ちは
 顔を赤くして怒るキューちゃんを見たら、どこかへ飛んで行ってしまった。

 ああごめんなさい、あんなに大好きな人に嫉妬をして。
 こんなに汚い気持ちを抱いた私を、守ってくれて。

 どうして、キューちゃんを一瞬、嫌いになれたのだろう。

 数分前の私の事すら、私にはもう分からない。
 なんて頭が悪いんだろう。

 今はただ、ひたすらに走る。
 汗ばんだ肌に張り付く長い髪を流しながら、太くて短い手足を必死に動かして。

 ああもう、体が重い!
 思うように動けない!

 やっぱり、ダイエットしよう。


 そんな事を考えながら、私は教室の扉を蹴飛ばすように開いた。




ζ(゚△゚;ζ「流石くんっ!!」

(;´ ゝ`)「もごがっ!?」

ζ( △ ;ζ「なんか縛られてるうっ!?」

(;´ ゝ`)「もがが、むぐががっ!?」


 ばあんと扉を開け放った私の目に飛び込んできたのは、薄暗い教室。

 そして、椅子に縛り付けられ、猿ぐつわを噛まされた流石くんの姿。

 私の姿に、流石くんがもごもごと何かを言います。
 けれど何を言っているのかは流石に分からなくて、慌てて流石くんに駆け寄る。

 がっちりと椅子に結びつけられた紐を、もたもたほどいて流石くんの背中を見上げた。
 広くて大きな背中、白いシャツにはシワが寄り、汗が染みている。

 少し長い髪が襟の辺りにかかっていて、私は少しだけ、安堵した。


 ああ、流石くんだ。




 手足と胴体を縛っていた紐、縄跳びの紐をほどいて、立ち上がる。
 流石くんは自由になった手で猿ぐつわを外し、深々とため息を吐いた。


(;´_ゝ`)「い……いてぇ……」

ζ(゚ー゚;ζ「だ、大丈夫ですかっ?」

(;´_ゝ`)「あ……ああ……」

ζ(゚ー゚;ζ「でも、何で縛られて……?」

(;´_ゝ`)「帰ろうとしたら……直野が、じっと……待ってろって……」

ζ( △ ;ζ「うびゃお」


 ああう、それ、きっと私の所為です。

 赤い跡のついた手首を撫でながら、流石くんがちらりと私を見ます。
 私はそれが何だか、恥ずかしくて、視線を外した。




 ああ逃げないで、言わなきゃ。
 やっとやっと自覚したの、キューちゃんが導いてくれたの、言わなきゃ。


 前髪に隠されたあなたの顔が整っている事を知ってました。

 こつんと出た喉仏の形も、鎖骨の形も知ってました。

 背が高いけれど体は細くて、すじばった手をしている事を知ってました。

 得意科目も苦手科目も、お弁当によく入ってるおかずも知ってました。


 本当は広い大きな背中を見てました。
 いつのまにか前髪で隠れた横顔を見てました。
 自覚はなかったけれど、私はきっと、
 あなたの低くてこもった声を、本当はずっと聞きたかった。

 気にしていないと思っていたあなたを、気にしていました。
 どうでも良い筈のあなたの姿を、目で追っていました。

 嫉妬なんかじゃないと言い聞かしていた
 でも私は、あなたと話す一番の友達に嫉妬するくらい

 ああ好きです、あなたが好きです
 声だけじゃない、私を欲情させる声だけじゃない

 あなたが好きなんです、いっとうあなたが好きなんです。



ζ(゚−゚*ζ「……っ流石くん、私っ」

( ´_ゝ`)「すまん……河合」

ζ(゚−゚;ζ「ぇ……?」

( ´_ゝ`)「俺、河合の事、考えなくて……」

ζ(゚−゚;ζ「へ、へ?」

( ´_ゝ`)「……本当に、ごめん……俺、」


 やっと言おうと顔をあげた私を待っていたのは、
 妙に深刻そうな顔をした流石くんの、謝罪。

 わけがわからなくて、私は首を傾げて目をまんまるにしてしまう。

 椅子に座ったままの流石くん、その前に立つ私。

 蒸し暑い夕方の空気が、教室いっぱいに溢れて私たちを包む。
 カーテンの埃っぽさが、蒸し暑さに際立たされる。




 ぽつりと頬に汗が伝う。
 けれどそれを拭う余裕はなくて、ただ流石くんを見つめるだけ。

 ええと、ええと、何を、言ってるの?


( ´_ゝ`)「……俺、河合で……あの…………そ、の……」

ζ(゚−゚;ζ「流石……くん?」

( ´_ゝ`)「あ……の…………」

ζ(゚−゚;ζ「…………」

( ´_ゝ`)「…………」


 何かを言おうとしては、金魚みたいに口をぱくぱくさせて空気を吐くだけ。

 思い詰めた彼の口から、なかなか言葉が吐き出されない。


 もう、待つの、いや。
 暑いし、もう胸がいたいくらい、はじけてしまいそうなんです。




 胸の辺りが爆発しちゃいそう、と邪魔っけな胸をどかす様に手を押し付けた。

 そして、ひとつ息を吐いてから、大きく吸って


ζ(゚−゚;ζ「流石くん」

(;´_ゝ`)「なっ……何、だ?」

ζ(゚−゚;ζ「好きです」

(; _ゝ )三´  `

(;∩_ゝ )「ぇ……あ、あぁ……こ……こここ、声、か、? でも俺、声、変わって、」

ζ(゚−゚;ζ「声、も、です」

(;´_ゝ`)「え、?」

ζ(゚−゚;ζ「私は、流石くんが好きです、あなたが好きです、声が変わっても、」

(;   )三´_ゝ`




(;∩  )「ちょ、ぇ、ぁ、え? え、えぉ?」

ζ(゚−゚*ζ「……ごめんなさい、今日」

(;´∩ )「ぉあっ?」

ζ(- -`*ζ「私から無理やりした約束……破って、ごめんなさい」

(;´_ ∩)「あ、い、いや……気に、するな……?」

ζ(゚−゚*ζ「ありがとう、ございます……」

(;´_ゝ`)「…………」

ζ(゚−゚*ζ「……嫌、ですよね……」

(;´_ゝ`)「はいっ!?」

ζ(。 。`*ζ「…………こんな、変で嫌な女……」

(;´_ゝ`)「やっ、いや、あ、あの、ぜぜぜ、ぜんっ、ぜっ!?」

ζ(_ _`*ζ「こんなはしたない……いやらしい女……」

(;´_ゝ`)「ホワッツ!?」




ζ(-△-`*ζ「ごめんなさい……わ、わす、忘れて下さい……」

(;´_ゝ`)「ぇ、あ……いや、その…………こ、断る」

ζ(゚△゚`;ζ「えぇっ!?」

(;´_ゝ`)「いや、だっ、そ、あの…………お、俺も……す、すす、す」

ζ(゚△゚*ζ?

(;´_ゝ`)「す……す、……き」

ζ(゚△゚*ζ「すすきの?」

(;´_ゝ`)「違っ! 好きですよっ!?」

ζ(゚△゚*ζ「へ……?」

(;´_ゝ`)「あ゙」




ζ(゚□゚*ζ

(;´_ゝ`)

ζ(゚◇゚*ζ

(;´_ゝ`)

ζ(゚q゚*ζ

(;´_ゝ`)

ζ(゚々。*ζ

(;´_ゝ`)(顔芸……)

ζ(^ヮ^*ζ

(*´_ゝ`)




ζ(>△<*ζ「えりゃーっ!!」

(;´_ゝ`)「ぬわスっ!?」


 よくわからないぐるぐるドキドキした何かが、私の中で跳ね回る。
 それを押さえきれなくて、私は椅子に腰掛けたままの流石くんに、飛び付いた。

 流石くんの脚を跨いで腰掛け、背中に腕をいっぱい伸ばして回す。
 広い胸に頬を押し付ければ、私はダッコちゃんみたいに、流石くんにしがみつく。


(;´_ゝ`)「かっ、かかかかかかっか、かわ、いっ!?」

ζ(^ヮ^*ζ「うへー」

(* _ゝ )そ


 何だろう、何だろうこれ。

 私は流石くんが好きで、それで、流石くん、私を好きって、好きって。
 ああ顔がゆるんで、しょうがない。

 うわあ、あ、うわああ、何、これ、何これ、嬉しい、嬉しい。


 お腹の奥が、ぎゅう、と熱を持つ。



ζ(- -*ζ「…………あ゚ー……」

(;´_ゝ`)「か、河合……あの、あ、の」

ζ(゚ー゚*ζ「はい?」

(*´_ゝ`)「ぁ……ぇ……その…………す……好き、……です」

ζ(^ー^*ζ「私もですっ」

(* _ゝ )

(  _ゝ )そ

(; _ゝ )

ζ(゚−゚*ζ?

ζ(゚△゚*ζ「……う?」

(; _ゝ )

ζ(゚△゚*ζ「何か、ある……う? これ、何ですか?」

(; _ゝ )「気、気に、す、すす、する、な」

ζ(゚△゚*ζ???




 何かがお腹の下に当たって、私は首を傾げた。
 けれど、ぽんぽん頭を叩く様に撫でられてしまえば、顔がゆるんでしまう。

 長い髪に、筋っぽい指が絡む。
 流石くんの胸に頬擦りすると、髪の毛ごと抱き締められて。

 胸いっぱいの嬉しさや照れ臭さ、耳元で名前を呼ばれる気持ち良さ。
 ああ、録音した声じゃない、本当に耳元で囁かれてる。

 熱い息と一緒に吹き掛けられる声は、私をどんどん溶かしてゆく。
 気持ち良くて、とろ、と流石くんにしなだれかかってしまいます。


 そっと、大きな手のひらが私の顔を上へ向けさせる。
 少し震える、ぎこちない動き。

 ゆっくり近付いてくる顔。
 私はこれから何をされるか分かって、瞼を下ろした。


 あなたが好き。
 気持ち良い声をくれる口も、指先も、心も。

 だからどうか、私を飲み込んで、飲み込まれて、ああ、気持ち良いを共有したいから。

 重なろうとする唇も、そっとそっとスカートに忍び込む手も、受け入れる。



  _,
o川;//-/)o「…………何しとんねん……」

ζ( △ ;ζ「おぎゃあっ!?」

(; _ゝ )「うぼぁっ!?」

(´<_` )「学校で淫交か、ちょっと教師呼んでくるわ」

ζ(/□//;ζ「びゃああっ! ごめんなさいやめてくださいっ!?」

(; _ゝ )
  _,
o川;//-/)o「……お、お家でしよな、それは……」

ζ(/□//;ζ「はひっ! ごめんなひゃひっ!!」

(´<_` )「おい兄者、おっきさせたまま死ぬな、腹上死か」

(;´_ゝ`)「そこまで行ってないっ!!」

(´<_` )「当たり前だボケナス、ほら河合を離せ、奪って逃げるから」

(;´_ゝ`)「だ……断固、拒否する……」



  _,
o川;//-/)o「…………取り敢えず……今日はもう、帰り?」

ζ(/□//;ζ「ひゃひっ」
  _,
o川;//-/)o「あ、あとの事は、まあ……ふ、二人の自由やから……」

ζ(/□//;ζ

ζ(゚□゚*;ζ

ζ(゚△゚*;ζ「……あの、うち、今日は私しか……」

(;´_ゝ`)「ホワイッ!?」
  _,
o川;゚听)o「お誘いはえぇッ!!」

(´<_` )「俺も行って良いか?」
  _,
o川#゚听)o「死ぬか消えるか土下座してでも生き延びるか」

(´<_` )「心からすまんと思ってはいる、反省は今後もしない」
  _,
o川# 皿 )o

(´<_` )「すまん、顔怖いから、すまんってごめん本当ごめん」



 (; _ゝ )  ζ(゚△゚;ζ

  ( ´_ゝ`) ζ(゚ー゚*ζ

  (*´_ゝ`)ζ(^ヮ^*ζ


 ちょっぴり変わってるけれど、大好きでたまらない人たち。

 大好きなお友達、大好きなあの人。


 耳元で囁く、低くて、こもってて、少し聞き取りづらい声。
 私が愛してやまない、あの人、声。


 暑い夏の夕方に、語ったのはまだまだ青臭い愛。

 自分の思いや人の思いに振り回されながら、私たちはそっと声を交わした。



  大好きです。

  俺も、大好きだ。



おわり。



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