夏に恋するようです3


─ ζ(゚ー゚*ζ ─



(´<_` )「河合、辞書を貸してもらえるか?」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、はい、どうぞ!」

(´<_` )「ありがとう、兄者も忘れたみたいでな」

ζ(゚ー゚*ζ「いえいえ」


(´<_` )「河合、明日の合同授業に使うのは何だったっけ」

ζ(゚ー゚*ζ「えっと……体操着だけだったと思います」

(´<_` )「ああ、ありがとう」


(´<_` )「河合、購買に行くが何かいるか?」

ζ(゚ー゚*ζ「んー……いえ、特にないです、ありがとうございます」




(´<_` )「河合、」
  _,,
o川;゚听)o「こっちのクラスに来すぎや」

(´<_` )「気にするな、で、河合」
  _,,
o川#゚听)o(何やこいつストーカーか)

ζ(゚ー゚*ζ「は、はい、何ですか?」

(´<_` )「放課後、予定は空いてるか?」

  _,,
o川;゚−゚)o!

(;´_ゝ`)!


(´<_` )「空いてたら、一緒に行きたいところがあるんだ、河合」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、予定があるので無理です、ごめんなさい」

(´<_` )「そう、か……予定って?」

ζ(゚ー゚*ζ「言えません」
  _,,
o川;゚听)o(ずんばらばっさり……)



  _,,
o川;゚听)o「……何や、流石くんの弟が倍プッシュしてくんなぁ」

ζ(゚ー゚*ζ「ですねー、どうしたんでしょうね」
  _,,
o川;゚听)o

ζ(゚ー゚*ζ「キューちゃん?」
  _,,
o川;゚听)o「え、あ、うん、何でも」

ζ(゚ー゚*ζ「お友達いっぱい居るみたいなのに……どうしたんでしょ?」
  _,,
o川;゚听)o「知らん、知らんがな、ところで予定って何なん?」

ζ(>ヮ<*ζ「もうっ、言わせないで下さいっ!」
  _,,
o川;゚听)o(……流石兄、大変やなぁ……責任感じるわぁ)
  _,,
o川;゚听)o
  _,,
o川;゚听)o「楽しい?」

ζ(^ー^*ζ「はい、幸せです」




o川*゚ー゚)o

,,o川*゚ー゚)o コソッ

o川*゚ー゚)o「(デレちゃん……流石くんの声聞いて、何しとるん?)」

ζ(゚ー゚*ζ「(? 聞きながら宿題とか……)」

o川*゚ー゚)o「(……流石くんの声、聞いてたら……どんな感じ?)」

ζ(゚ー゚*ζ「(んー……お腹の奥が熱くなって、ぞわぞわします)」
   _,
o川;*゚听)o

ζ(゚ー゚*ζ「(それで、耳のとがこそばくって、背中が撫でられたみたいになって)」
   _,,
o川;*゚听)o

ζ(゚ー゚*ζ「(何だかすごく、気持ち良いんです、身体中が)」
   _,,
o川;///)o

ζ(゚ー゚*ζ「(キューちゃん?)」
   _,,
o川;///)o(……何や、聞いとる方が恥ずかしいわぁ……)




o川;゚ー゚)o「(と、取り敢えず……気持ち良いんやね……)」

ζ(^ー^*ζ「(はい、すっごく)」

o川;゚ー゚)o(何やこの友達から性癖を暴露されたみたいな気分)


 キューちゃんが、またがっくりと肩を落としています。

 何かあったのかと聞いてみたら、ちらりと私を見てから
 訛りの強い口調で「何でも無いよ」と、遠くを見る様にへれっと笑っていました。

 何でも無いようには見えないんですが、ここはキューちゃんの言葉を信じます。
 お友達を信用するのは大事だよねと言うと、また疲れた顔で笑われたのですが。


 最近、流石くんの声を聞いていると、不思議な気分になります。

 最初はただぞわぞわが訪れるだけだったのですが、
 日を重ねるにつれて、流石くんの顔が浮かぶ様になって来たんです。

 細い目とか、しゅっとした鼻筋とか、表情のない、あの顔。
 ボイスレコーダーに向かってぽつぽつと話しかける顔。




 私は流石くんが好きです。

 でも私が好きなのは、流石くんの声です。
 あの気持ち良くてしょうがない、あの声。

 流石くん本人には、お友達以上の感情はありません。

 ないはず、なんですが、



o川*゚ー゚)o「流石くんやぁ、最近疲れてるやんね」

(;´_ゝ`)「え……あ……そ、そう、か……?」

o川*゚ー゚)o「うん、死相が出とんで死相が」

(;´_ゝ`)「な……なんと……」

o川*゚ー゚)o「あとアレやな」

(;´_ゝ`)?

o川*゚ー゚)o「雰囲気変わったし、話すの、何か慣れてきとるね」

(;´_ゝ`)!




o川*゚ー゚)o「なんでかなー? 何かあったんかなー?」

(;´_ゝ`)「あ、い、え、や、あ、あの、その……」

o川*゚ー゚)o「もしかしてー……」

(;´_ゝ`)

o川*゚ー゚)o「(デレちゃんのお陰?)」

(; _ゝ )そ

o川*゚ー゚)o「まあ流石くん、イケメン寄りやし」

(;´_ゝ`)「よ……寄り、なのか……?」

o川*゚ー゚)o「何や、イケメンって言ってほしい?」

(;´_ゝ`)「い、いや……そう言う、つもりでは……」

o川*゚ー゚)o「冗談やがな、真に受けんと突っ込み」

(;´_ゝ`)「…………すまん……」




 ……流石くんが誰かと話してるのを見ると、何だか、もやもやします。

 別に流石くんが誰と話そうと、なんら問題はありません。
 でも何となく、もやもやしてしまいます。


 流石くんの声を聞くのは、お話するのは、私の、


ζ(゚−゚ ζ


 私の、?

  ,、_
ζ(- - ζ?


 私の、何なんでしょう。

 私、なんか、変だ。




 好きなのは声。
 たまらない快感をくれる声。
 私を気持ち良くしてくれる声。

 あの声に身震いする人は、他にはいない。
 あの声をここまで愛するのは、私だけ。

 それだけは断言出来る。
 あの声は私の

 私の、私の、



o川*゚ー゚)o「流石くんも前髪あげーな、その方がイケメンやで」

(;´_ゝ`)「うおっ、!?」


 白い手が、流石くんに触れた。

 額を撫でる様に、細い指が、彼の、眉に、触れてる。




o川*゚ー゚)o「おーイケメンイケメン、弟くんみたいやん」

(;´_ゝ`)「ふ……双子、だからな……」

o川*゚ー゚)o「双子やけどなんか見分けつくなぁ、やっぱ一人の人間やねんな」

( ´_ゝ`)「……双子をなんだと、思ってたんだ」

o川*゚ー゚)o「ほら、双子ってすごい繋がり濃そうやから」

( ´_ゝ`)「…………まあ」

o川*゚ー゚)o「お、今ちょっと笑ったな。双子てあくまでそっくりさんなだけやのなぁ」

( ´_ゝ`)「いつまで、やってるんだ……前髪」

o川*゚ー゚)o「おっと失礼」


 お友達とお友達が、話してるだけ。
 じゃれあってるだけ。

 変な事じゃない、よくある、普通の、事。

 普通の事。
 普通の事、なのに。

 どうしてそれが流石くんとキューちゃんだったら、胸が、気持ち悪いの。



 私に何が起きたの。
 昨日までは普通だった、昨日までは平気だった。

 突然、私の中の普通が音を立てて崩れた。

 恋愛感情なんて持ってない、持ってないわ。
 だって私が好きなのは彼の声であって彼じゃない。

 違う、違うのよ、違うの。
 これは違う、キューちゃんに抱いてるこれは、嫉妬じゃないの。


ζ( -  ζ「……キューちゃん…………お手洗い、行ってきます」

o川*゚ー゚)o「ん? あ、うん、いってらっしゃーい」

o川*゚ー゚)o「(……なあなあ、やっぱし触られるのはデレちゃんやないと嫌ー?)」

(;´_ゝ`)「(そ、そう言うのは、止めろ)」

o川*゚ー゚)o「(ういやつういやつ、デレちゃん泣かせたらぶっとばすでぇ?)」

(;´_ゝ`)「(だから直野……)」

o川*゚ー゚)o「(恋ってな、自分では案外気付かんもんやねんで? 恋は人を変えるでぇ?)」

(;´_ゝ`)「(…………止めんか)」




 ふらふらと、俯いてお手洗いに向かった。
 一番奥の個室に入り、便座に腰を降ろす。

 ぎゅう、と身を抱いて、体を小さくした。


 楽しそうに話していた、流石くんとキューちゃん。
 楽しそうに、楽しそうに。

 私と話す時は、いつも困った顔をするのに。
 私と話す時は、目なんて見てくれないのに。
 私と話す時は、あんな顔してくれないのに。

 どうして、少しだけ、笑ったの。
 私には、声しか、くれないのに。

   ,_
ζ( -  ζ


 私がほしいと言わないから、くれないの?
 キューちゃんには、言われなくても、あげたのに?

 ねぇ、どうして、どうしてよ、




 ポケットから、イヤホンとボイスレコーダーを取り出した。
 耳にピンクのイヤホンをつけて、ボイスレコーダーを操作する。

 すると耳から流れ込むのは、彼の声。

 ぞわぞわぞわ、粟立つ肌に、身を抱く腕に力がこもる。


 こんにちはだの、おはようだの、それはごくありふれた言葉たち。
 けれどそのありふれた言葉は、私をどうしようもなく壊して行く。

 身を抱くのを止めて、足を上げて三角座りの状態になる。
 きゅうと切なく熱をお腹を、そっと手のひらで撫でてみた。

 ぞくぞく。
 足の付け根から、甘い何かが駆け巡る。


 私は流石くんの声に翻弄される様に、そっとそっと、スカートの中に手を入れる。

 今まで触れた事もない様な場所に、人差し指を押し付けた。


 びくん。
 体が、跳ねる。




 白い下着越しに触れたそこは、熱を持って少しだけ湿っている。
 ぐ、と指を強く押し付けると、体がさっきよりも強く跳ねた。

 お腹の奥が、更に切なさを増す。

 それは経験した事のない感覚で、私はぼやりとした恐怖を抱く。
 けれど指は、私の恐怖に気付きもしない様に、勝手に動いてしまっていた。

 ぐ、ぐ、と何度も下着を押す。
 一本しか感じていなかったそこの柔らかさを、いつの間にか他の指でも感じていた。

 何度も何度も、そこを押した。
 どうすれば良いのか分からなくて。

 押せば押すほど、私の中の甘ったるい何かが加速して行く。
 呼吸は荒くなるし、顔や身体中が熱くなる。


 どうしよう、どうしよう、これ、どうしよう。

 まだるっこしいぞわぞわに襲われて、私の体から力が抜けて行く。




 あ、ああ、


  『「……なあ…………かわ、い」』


 あああ、ああ、あ


  『「…………かわい……」』


 あ、ぅ、ああ、あ、あ


  『「かわい…………なあ、……」』


 あ、ああ、あああ、あ、あ、


  『「……………………かわい……」』


 あ、ん、




 くち、と下着が音を立てた。

 違う、正しくは下着がじゃなくて、じゃなくて、


ζ( ヮ *ζ「は…………ぁは……あははぁ……」


 お父さん、お母さん、お姉ちゃん

 私は、いやらしい子です。


 力が抜けて、だらしなく開いた足の間。
 下着の横から、指を滑り込ませた。

 めくれ上がったスカートを見ながら、私は指を動かした。

 耳を嘗める様な彼の声に、吐息に欲情して。
 私はただ、気持ち良いを貪った。

 それはもう浅ましくていやらしい、下品な女となりながら。
 くちくち、ぐちぐちと水っぽい音をさせながら。


 私は彼の声で、





o川*゚ー゚)o「あ、お帰りデレちゃん」

ζ(^ー^*ζ「ただいま、キューちゃん」

o川*゚ー゚)o「ん? どしたん、顔あっかいで?」

ζ(゚ー゚*ζ「そう、ですか?」

o川*゚ー゚)o「うん、熱ある?」


 キューちゃんの手は、少し汗ばんでいたけど気持ちよかった。
 だから私は笑って、何でもないよと返す。

 大事なお友達。
 彼女を悲しませたくないから、私は全部飲み込む。

 絶対に吐き出さない。
 醜い物は、見せたくない。

 浅ましい女でごめんなさい、キューちゃん。


 腹部に残る熱を撫でて、私は放課後を待った。
 この気持ち、確かめたい。





 目の前には流石くん。
 俯いて、机に置かれたボイスレコーダーに話しかけている。

 私はそれを真っ直ぐに見つめながら、ぼんやりとしていた。


 整った顔立ち。
 前髪に隠されて、誰も気付かない。

 けれど私は知っていた。
 彼の声を知るよりも早く、知っていた。

 どうして知っていたのだろう。
 どうして気付いていたのだろう。

 彼の外見に興味はない、愛しているのはその声だけ。

 声だけ。


ζ(゚−゚*ζ「……」


 本当に?




 ぼんやりしながら、私は流石くんの声を聞く。

 低くて、こもってて、ぼそぼそ喋る暗い声。
 そのまとわりつく様な声が、


( ´_ゝ`)「おはよう……河合、今日も良い、天気だな」


 あ、れ?


ζ(゚−゚*ζ?


 あれ、何か、違う。

 流石くんの声はいつもと同じ筈なのに、なんだか違って聞こえた。

 どうしてだろう、なぜだろう。
 何がどう違うのか自分でも分からなくて、首をかしげた。




─ ( ´_ゝ`) ─



 何だか、河合の様子がおかしかった。

 いつもはにこにこ笑いながら俺を見て、聞いているのに
 今日は、なぜか心ここにあらずと言った感じで、表情がない。

 どうしたんだろう。

 しかも、無表情な河合はいつもは感じない、妙な、甘ったるい物を感じる。

 汗ばんだ首筋や、癖っ毛が張り付いた薄いピンクの頬。
 スカートからすらりとのびる白い太股は妙に、妙に、触れたくなる。


 どうしたんだ俺は。
 熱に、浮かされているのか。

 こんな事は考えちゃ、いけない。
 いけないんだ。




 汗を吸って濡れた髪に触れたい。
 手触りの良さそうな、肉付きの良い太股に触れたい。
 白い肌に朱がさした頬に、小さな唇に、長い睫毛が飾る目元に。

 ああもう、どうしたんだ。
 こんな事を考えるのは俺じゃなくて、そう、弟者のがキャラ的に。


 ああ、ああもう

 何で、そんな顔で見つめてくるんだ。

 無表情なのに妙に艶っぽい、そんな顔で。

 なんなんだよ、なんなん、だよ、なあ。


 俺は深く俯いて、悶々した何かを隠す様に言葉を吐き出す。

 紙に書かれた文字を追って、ぼそぼそと喋る。

 ちらちら、目が勝手に河合を見ようとする。

 河合って、なんか、可愛いんだ、な。
 うがあ。




 とにかく、変な気分を振り払うために、言葉をひねり出した。


( ´_ゝ`)「おはよう……河合、今日も良い、天気だな」


 が、河合は、

  ,、_ ?
ζ(゚- ゚*ζ


 河合は、やっと無表情を崩して、首を傾げた。

 首を傾げながら難しい顔をする河合に、俺は戸惑う。

 どうしたのだろう、何か、いけなかったのだろうか。

 首をひねる河合に声をかけようとした瞬間、河合の方から声をかけてきた。




ζ(゚- ゚*ζ「……流石くん……声、変わりました?」

( ´_ゝ`)「え……?」

ζ(゚- ゚*ζ「なんか……雰囲、違うんです……」

(;´_ゝ`)「ぇ、ぇ?」

ζ(゚- ゚*ζ「なんだろう……この感じ……?」


 河合がまた、首を傾げる。


 声が変わった?

 いや、声変わりは中学の時に済ませたし、喉の調子も悪くはない。

 他に声が変わる様な要因は思い当たらなくて、
 どうしたんだろう、と俺も首を傾げた時。

 ふと、直野の言葉が頭に浮かんだ。




   ( o川*゚ー゚)o「雰囲気変わったし、話すの、何か慣れてきとるね」 )


 話し慣れた、雰囲気が変わった。
 それは、河合の友人である直野の言葉。

 慣れたのはあるかも知れないが、雰囲気は、


   ( o川*゚ー゚)o「恋ってな、自分では案外気付かんもんやねんで?」 )


 あ、

 や、で、でも、
 そんな事で、そんな、俺が、変わるとか、



   ( 恋は 人を変えるでぇ? )


(  _ゝ )


 分かったから、俺の負けだから、勘弁してくれ、直野。

 死にそうだ。



 どうしよう。


 俺、か、かか、河合が、好き、なのか?

 この、目の前で子犬みたいに多い髪の毛を揺らして考え込む、河合、が?


 ど、どうしよう、どうしよう、どうしよう。


 俺、か、河合、好きなら、

 俺の声が、変わった、ら


 もう、河合に好かれなくなってしまう。


 どう、しよう。




ζ(゚- ゚*ζ「……今日は、これくらいにしておきましょうか」


 びく、と河合の言葉に肩が跳ねる。
 ど、どうしよう、おお、俺の声が、声、


ζ(゚- ゚*ζ「ありがとうございました…………また明日、流石くん」


 河合が、どこか不機嫌そうな顔で席を立つ。
 鞄を持って、椅子を戻して教室から出て行こうとする。

 俺はただただ狼狽えて、間抜け面を晒しながら、席を立った。

 何か、何か、声を、かけなきゃ。


(;´_ゝ`)「ぁ…………か……河合っ!」

ζ(゚△゚;ζ「っ!? あ、きゃっ!!」

(;´_ゝ`)「待っ、あ、うおぉっ!?」




 小さな後ろ姿を、声を大きくして呼び止めた。
 それを聞いた河合は驚いた様に飛び跳ねて、俺を振り返

 ろうとして、転んだ。


ζ(>△<;ζ「あぎゃっ!」

(;´_ゝ`)「か、河合っ! 悪い、大丈夫、かっ?」

ζ(-△-;ζ「いてて……ご、ごめんなさい……」

(;´_ゝ`)「いや、あ、その、俺、が……っ!」


 見事に背中から転んだ河合に駆け寄って、
 痛そうに後ろ頭を撫でる河合の前へと回り込み、しゃがむ。

 そして立ち上がらせようと手を差し伸べた俺は、はっと息を飲んだ。


 白い太股、めくれたスカート。
 ちらりと覗くのは、白のレース。




 視線をずらして、俺はそこを見なかったフリをする。
 凝視はするな、絶対するな、て言うか見るな。

 白のレース、微かに食い込んだそこ、小さなリボン、河合の、かわ、あ、


 うわああああああああああああああああああああああ


ζ(゚- ゚*ζ「どうしたんですか? 流石くん……固まってますよ?」

(;´_ゝ`)「あ、ああっ、やっ、いえっ、あのっ…………大丈夫……か?」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい、ありがとうございます」


 やっと見れた河合の笑顔に、俺はほっとした。

 ほっとした後で、なんとも言えない気分になった。

 俺、もうダメかも知れんね。




 俺が狼狽えながら手を差し伸べていると、
 河合は一瞬だけ戸惑いを見せてから、すぐに笑って、俺の手に小さな手を重ねた。

 手のひらにかけられた体重、小さくて柔らかくて、少し汗ばんだ細い手。
 強く握ったら、小魚みたいに壊れそうな手だった。

 俺の手がでかすぎるのだろうか。
 河合の手は、とんでもなく小さく感じる。

 そっと河合を立ち上がらせると、河合は俺を見上げて、にっこり。


ζ(^ー^*ζ「流石くんの手、大きくて落ち着きます」

(;´_ゝ`)「っ!」

ζ(^ー^*ζ「おっきくて、気持ち良い手、です」


 きゅうと握られた指が、なぜだか、熱くて熱くて、たまらなかった。






(´<_` )「はぁ……河合……」

(;´_ゝ`)「ただい……弟者、気持ち悪いぞ……」

(´<_` )「んだとこら鷲鼻がお帰り死ね」

(;´_ゝ`)「いや、だって……なぁ……」

(´<_` )「河合、今日はピンクのブラか……」

(;´_ゝ`)「何で知ってるんだよ…………下は白かったぞ」

(´<_` )

(;´_ゝ`)

(´<_` )「おい、面貸せ」

(;´_ゝ`)「鏡見た方が早いぞ……」

(´<_`#)「黙れ待て何で河合のパンツの色知ってんだお前ちょマジふざけんなっておいどう言う事だよてめぇ」

(;´_ゝ`)「弟者、壊れてるから……色々と……」




(´<_`#)「だからお前はおまあああああああああああああああああああああああ」

(;´_ゝ`)

(´<_` )「柄は?」

(;´_ゝ`)「…………レース……ぽかった」

(´<_` )「リボンは?」

(;´_ゝ`)「前に、小さい……ピンクの……」

(´<_` )「…………ふっ……ふふふっ……」

(;´_ゝ`)(うわあ……こえぇ……つか、きめぇ……)

(´<_` )「……取り敢えず、見た経緯を」

(;´_ゝ`)「…………河合が、目の前で……転んだ……」



(´<_` )「助け起こしたのか?」

(;´_ゝ`)「まあ……そこは、人として……」

(´<_` )「手は柔らかかったか?」

(;´_ゝ`)「……ああ……それに、細かったし……小さかった」

(´<_` )「ほう……河合はどんな反応を?」

(;´_ゝ`)「え……」


  ( ζ(^ー^*ζ「流石くんの手、大きくて落ち着きます」 )


( ´_ゝ`)

(*  _ゝ )

(´<_` )「分かった、俺は今から兄者を殺す」

(;´_ゝ`)「え、ぇぇ……」




(´<_`#)「何を頬っぺた赤くしてんだ気持ち悪いマジふざけんなふざけんなって
      河合の、か、河合の手、かわ、あ、あああああああああああああああ!!!!」

(;´_ゝ`)「……弟者、これ以上……犯罪は、止めとけよ……」

(´<_` )「良かろう、ならば兄者を殺して終わりにする」

(;´_ゝ`)「勘弁してくれ……」

(´<_` )「頼むから、河合と触れあわないでくれよ……
      兄者個人に恨みはないが、河合と何かあったら凄い殺したくなるんだ……」

(;´_ゝ`)(どう見ても……恨みあるだろ、それ……)

(´<_` )「なぁ……放課後に河合と会うの止めてくれよ……俺の河合と……」

(;´_ゝ`)「弟者のじゃないし……俺は、呼ばれてるだけだぞ……」

(´<_`#)「まじむかつく、何で俺は呼ばれないんだよ」

(;´_ゝ`)「…………だから、声、だろ……?」



(´<_` )「何? 兄者の声と俺の声がどう違うの? 何なの? お前何なの?
      今までモテなかった癖にモテメンの俺を差し置いて何なの? リア充気取りたいの?」

(;´_ゝ`)「お前、イケメン滲み出したモテボイスだろ……」

(´<_` )「そう考えたらお前は非モテボイスだな」

(;´_ゝ`)

(´<_` )

(´<_` )「え、何?非モテボイスじゃなきゃ駄目なの?」

(;´_ゝ`)「知らんがな……」

(´<_`#)「もうそれお前非モテボイスじゃないだろふざけんなよおおおお!!!!」

(;´_ゝ`)「だから、知らんがな……」

(´<_` )「声質一緒だろ……なのに何で兄者なんだよ……やだもう……死にたい……」

(;´_ゝ`)「……」

(´<_` )「何か言えや」

(;´_ゝ`)「…………キャラ、崩壊してるな……」

(´<_` )「凄い黙れ」



(´<_` )

(´<_` )「ところで兄者」

(;´_ゝ`)「う、うん?」

(´<_` )「河合でオナニーした事あるか?」

(;  ゝ ).'。.゚,「ぶべらぼっ!!?」

(´<_` )「うわきたねっ」

(;´_ゝ`)「な、ぇ、なっ? えぉあっ!?」

(´<_` )「日本語でおk、で、した事あるのか?」

(;´_ゝ`)「ね……ねぇよ……弟者と一緒にするなよ……」

(´<_` )「殺すぞお前、俺もねぇよ」

(;´_ゝ`)「…………はぁ……」



(´<_` )

(;´_ゝ`)

(´<_` )「河合のさ」

(;´_ゝ`)

(´<_` )「胸も良いが、太股、たまらんよな」


 兄弟だなあ。


(´<_` )「全体的に肉付き良いけど太ってるわけではなく、しかし細くもなく」

(;´_ゝ`)

(´<_` )「あのむっちりした脚とか、たまらんよな」

(;´_ゝ`)

(´<_` )「……撫で回して嘗めて挟まれてぇなあ……河合の太股に……」


 本当に、兄弟だなあ。

 死にてぇ。



(´<_` )「でな、兄者」

(;´_ゝ`)「何なんだよ……お前は……」

(´<_` )「もし兄者と河合が付き合った場合な」

(;´_ゝ`)「ね……ねぇよ…………」

(´<_` )「俺は、躊躇いなく河合を寝取る」

(; _ゝ )そ

(´<_` )「覚悟しておけ兄者、同じ部屋にお前が居ても俺は河合を襲う」

(; _ゝ )「……ぇ…………ちょ……」

(´<_` )「寧ろヤらせてくれって土下座する」

(;´_ゝ`)「ぅおい……」

(´<_` )「…………俺もそろそろ本気を出す…………忘れるなよ、兄者」

(;´_ゝ`)「……」

(´<_` )「俺は河合が兄嫁になっても襲う気満々だし、寧ろ燃えたぎるからな」


 この駄目人間め。


(´<_` )「つか、結局好きなのか? 河合の事」

(;´_ゝ`)「……らしい」

(´<_` )「らしいってお前」

(;´_ゝ`)「そう、らしいんだが……いまいち……実感が」

(´<_` )「河合と居るの楽しい? つい目で追う? 可愛いとか思っちゃう?」

(;´_ゝ`)「…………まあ」

(´<_` )「死ね」

(;´_ゝ`)「えぇ……」

(´<_` )「だいたい何だ、俺にはあんな事を言っておいて実は好きでしたって」

(;´_ゝ`)「いや、だから……実感が……」

(´<_` )「言い訳は聞きたくない、抜け駆けした上に両思いか? あ?」

(;´_ゝ`)「……ないない」

(´<_` )「もう良い、俺は河合の夢を見るために寝る! おやすみ!」

(;´_ゝ`)「…………おやすみ」




 弟者が部屋に戻って行く。
 俺もそれに続いて、歯磨きをしてから自室に戻り、寝巻きに着替えた。

 電気を消すと、もそもそベッドに潜り込む。


( ´_ゝ`)「…………」


 なんか、悶々するな。


(  -_ゝ-)「…………」


  ( (´<_` )「河合でオナニーした事あるか?」 )


(;  ゝ ).'。.゚,

(;  ゝ )

(  _ゝ ))"




 河合の手、指、脚
 河合の目、頬、口
 河合の髪、声、


 思い出すのは容易で、それらを自分の思う姿にさせるのも容易。

 髪を下ろすだの、笑わせるだの、服を脱がすだの。
 頭の中でなら、いとも容易い事。

 ネクタイを緩めて、ボタンを外して、髪をほどいて、スカートを


  ( ζ(^ー^*ζ「おっきくて、気持ち良い手、です」 )


(  _ゝ )"

(  _ゝ )

(  _ゝ )「…………ティッシュ……」


 何、この罪悪感。

 死にたい。






前のページへ] 戻る [次のページへ