(-@∀@)とある眼鏡の蔵書目録のようです・SF(すこしふしぎ)版 1話 戻る [次のページへ]
327:いやあ名無しってほんとにいいもんですね: 2011/11/12(土)20:31:36.37発信元:111.89.140.2
以下の作品を原作としました
(-@A@)司書アサピーのようです
( ^ω^)司書ブーンの憂鬱だそうです
尚、禁書は読んですらいないのであしからず。
***
振り返ってみれば、なんてことはなかった。
例を上げるのはきりがないし意味も無く、ただ純然とした事実を示せばそれですむ。
どんなに偉大な人物でも、どんなに強大な組織であろうとも、世代交代せざるをえないのは生物として…いや機械をも含めて、避けようがないのだ。
避けようがないと分かっているからこそ何かしら準備が必要である。
( ^ω^)…と、君が昨日言っていたお
(-@∀@)そうでしたか。なにぶん酔っていたものですから
朝、仕事先であるブーン系小説シベリア図書館に出向いたアサピーに、館長ブーンはそう告げた。
カウンター前で毎朝行う朝礼でアサピーに、新しい特集コーナーを任せると言ったブーンに何故かと問うた、アサピーに対する説明であり他の職員(ツンやドクオ)は既に真面目な姿勢で仕事に励んでいる。
( ^ω^)読書スペースの、一番向こうの机でやるといいお
普段新作が並ぶカウンターから最も離れた机には何も無く、新作達は逆にカウンターの脇、アンティークな柱時計に近い机に並んでいた。
( ^ω^)向こうの読書机なら、邪魔にもならないし良く目立つ。特集にはもってこいだお
(-@∀@)確かにそうですね。ですが
( ^ω^)お?
(-@∀@)何を特集すればいいのでしょうか
( ^ω^)おーん…飲み過ぎでそれも忘れたかお
(-@∀@)それはもう、新雪降り積もる平原の如くです
( ^ω^)やれやれ。昨日言ってたのは「次世代に伝えるべきブーン系小説作品」特集だお
(-@∀@)そうでしたか、すみません
( ^ω^)やり方はまかせるから、よろしく頼むお
(-@∀@)はい
とは言ったものの、いまひとつ気乗りしなかったアサピーだが、視線の先にドクオを認めた途端アサピー生来の生真面目さとやる気が噛み合った。
ドクオが目録片手に蔵書を整えていたからであり、決して男色ではない。
(-@∀@)(そうだ、まず目録を作り次に紹介文や感想を載せていけば…)よし、いけるな
ξ゚听)ξやだ、アサピーさんたら熱い視線を注いじゃって…そんなにドクオの事を…
(-@∀@)失敬な、私は男に自分のエクスカリバーを突き立てる趣味はありません
ξ゚听)ξわかってますよ、ほんの冗談です
無邪気に微笑むツンは実年齢よりも遙かに若く見えた。
(-@∀@)(上品なんだか俗物なんだかよくわからん女性だ)
ブーンに言わせるとそれもまた魅力であるらしいのだが、アサピー自身はあまり惹かれない。ただ、理解はできた。
(-@∀@)まったく、あなたはブーン系の魅力を体現しているな
ξ゚听)ξえ?
(-@∀@)いや、なんでもありません
相容れない物の混在を許容してしまう器量こそが彼女の魅力なのだろう、とアサピーは考える。
('A`)おや珍しい、ツンさんが口説かれてる
ξ゚听)ξちょっと、珍しいってどういう事よ
( ^ω^)おーいアサピー口説くのは帰りにしてくれお
ξ#゚听)ξふうん、帰りなら私が口説かれても良いんだ?
(;^ω^)や、それはちがうお、そういう意味じゃないお
('A`)ペロッ…これは痴話喧嘩フラグ!
(-@∀@)だから口説いてないってば…
ともあれ、これと決めたアサピーの仕事は早い。
異常なまでの集中力から来る処理能力は他の追随を許さず、図書館どころかシベリア全体で見てもそうは居ない。
ただし彼の偏執狂的な性格も同時に遺憾なく発揮されるため、仕事場の環境にもよるのだが。
(-@∀@)カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
資料作成などに使われる一室に籠もった彼は今回、原稿を手書きで書くことを選んだ。
パソコンを使うことも多々あるが、やはり手書きの方が馴染むと本人は思っている。
(-@∀@)カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
ξ゚听)ξあの、カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリお茶をカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリお持ちしましたよ〜カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
(-@∀@)ああ、すみません。カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリそこにおいてもらえカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリますかカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリξ゚听)ξわかりましたカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリでは頑張ってくださいカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
(-@∀@)ありがとうございますカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
(*@∀@)…ふう。そういえばシベリアのお茶って、どこの特産品なのだろう…
Σ(;@∀@)はっ!いけない手が止まっている
(;-@∀@)カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
(-@∀@)カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
(-@∀@)…私も、年を取ってきたのかな…
(-@∀@)…カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ(-@∀@)カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
彼は、自分の納得ゆくまで仕事に集中できる環境をなかなか見つけることができないでいた。
ある日酒場で館長ブーンと出会い、ブーン系小説シベリア図書館に来るまでは。
不思議な縁だと、アサピーは自分の事ながら思う。
数字ばかりを扱う職場ほど数字に嘘をつけと言われた。
帳尻を無理矢理あわせて数字を冒涜しろと言われた。
それが嫌で炭坑を辞め、官製の安いウォッカを煽っていたらブーンと出会ったのだ。
いくら面白いと言われている書籍だろうと、読むよりも先に分類したくなる自分が、図書館へと。
(-@∀@)ん?まてよ、なんだろうこれは
目録を作成するにあたって、アサピーは自身が作成してきた目録や資料を駆使し、客観的に、次世代へ伝えるべきであろうと思われる作品をピックアップした。
(-@∀@)選考はなるべく公正、数もなんとか適正域まで絞った。編集やレイアウトはこれからだから気にする必要が無い
では、この違和感は何だろう?書いている内容を再三確認しても正体は掴めない。
(-@∀@)…やむをえん、時間がない
これが数式ならば、あるいは何日費やしてでも解明しようとするのだが、アサピーは頭を切り替え違和感の正体がはっきりするまで作成を続けることにした。
(-@∀@)(屈辱だな)
アサピーの筆はしかし、目録が完成するまで順調に踊り続けたのだった。
***
( ^ω^)違和感?
(-@∀@)そうなんです
目録が完成した日、行きつけのBARのカウンター席でブーンと飲んでいるアサピーは、正直に話すことにした。
(-@∀@)今回作成した目録も完璧です。なのですが、どうしても違和感が拭えない
( ^ω^)納得がいかないとか
(-@∀@)そんなはずはありません。私は私なりに、熱意を込めて目録を作り上げました。読みやすさだって…とにかく、完成度の問題ではありません
( ^ω^)じゃ、なんだお
(-@∀@)だからそれが分からないんですってば
( ^ω^)うーん、しょうがないお。出来に問題ないなら、その違和感は忘れるお。綺麗さっぱりとね
(-@∀@)しかし…
(,,゚Д゚)おうおう、なに悩んでやがる
釈然としないアサピーの隣に、どっかと腰を下ろした中年の男性。
くたびれたコートが何故だか良く似合う彼はこのBARの常連だ。
図書館黎明期から良く顔をあわせるため、いつしかブーンだけでなくアサピーとも世間話で盛り上がる仲になっていた。
(-@∀@)こんばんわ
( ^ω^)こんばんわ。今日は早いですね
(,,゚Д゚)ま、たまにはな。それよりアサピーさんよ、何悩んでんのか知らねえがシケた面になる前に、こいつをやりな
そういって彼が差し出したショットグラスには、琥珀色の液体が並々と注がれていた。
(-@∀@)これは?
(,,゚Д゚)奢りだ、グイッとやりな
(-@∀@)…たまには良いかな。ありがたくいただきます
(;^ω^)(あれ、その酒なんかデジャビュ)
そうして、アサピーは90度の官製ウォッカ『スターリン』を迷わず一気に飲んでしまった。
*
「自分の手で、頭で、数を数えて計算する。そこに純粋な喜びがあるはずなんです。概念をこねくり回して一体何があるというんですか」
*
(;-∀-)う゛あ゛ー…頭痛い…
( ^ω^)おっ、起きたおね。ツ―ン
ξ゚听)ξはいアサピーさん、スポーツドリンクですよ
(-@∀@)スチャッ
(-@∀@)館長、ツンさん…
日付が変わる直前に目を覚ましたアサピーは、私服姿のツンから渡されたスポーツドリンクを流し込むと周囲を見渡す。
(-@∀@)ここは…図書館ですか?
ξ゚听)ξ休憩室よ
遮光カーテンが閉められた小窓がひとつ、壁時計がひとつ、小さなテーブルもひとつ、テレビは無く幾つかのベッドが詰め込まれた殺風景でせせこましい。だが眠るには十分な部屋だ。
(-@∀@)ああ…初めて使いました
ξ^竸)ξあなたってば、いつも作業場で仮眠とるものね
そういって柔和に微笑んだツンを見ていると、不思議なことに頭痛が和らいだ気がする。
(-@∀@)あれ、館長は?
ξ゚听)ξ給湯室に行っているわ
(-@∀@)そうですか
ξ゚听)ξ…
(-@∀@)…
ξ゚听)ξ…
(-@∀@)…
ξ;゚听)ξ…
(-@∀@)…
ξ;゚听)ξちょっと。何か喋りなさいよ
(-@∀@)あ、はい。ツンさん
ξ゚听)ξなに?
(-@∀@)どうしてここに居るんですか。BARで館長と飲んでいた時は、確かいなかったと思いますが
ξ゚听)ξ呼び出されたのよ。ブーンの家にある図書館の鍵を持ってきてくれってね
(-@∀@)え?ツンさん一番遠くに住んでますよね…
ξ*゚听)ξあー…まあその、ね。泊まってたから
(-@∀@)なるほど…それは良かった
ξ゚听)ξえ、なにが?
(-@∀@)館長とは順調みたいで安心したんですよ
ツンにとっては不意打ちだったようで、ぐげぇ、などと淑女らしからぬ声をもらした。
ξ;゚听)ξし、ししし知ってたの!?
(-@∀@)むしろ、なんで気づかれないと思ってたのか逆に質問したいですよ
ξ;゚听)ξうあーまじかー
(-@∀@)…おもしろい方だ、ツンさんも。貴女といい、館長といい、ドクオさんといい…
言ってアサピーは薄く笑った。
ξ゚听)ξ?…あなた最近変よ。どうしたの、なにかあったの?
不意に、ツンがアサピーの顔をのぞき込む。並外れに整った顔の接近と同時にアサピーの心臓が跳ねた。
それはツンにどきりとしたわけではなく、仮眠室に戻ってきたブーンがミネラルウォーターの入ったペットボトルと薬を落とした音によるもので。
ξ;゚听)ξブ、ブーンか
(;-@∀@)おどかさないでくださいよ
( ^ω^)…が
ξ゚听)ξなんていったの?聞こえな( ;ω;)ツンが浮気したああああああ!
(-@∀@)ん…ああ、そうか。ツンさんと顔の距離が近すぎてξ;゚听)ξはああああああ!?
この後、叫んだ直後に全力疾走したブーンを追いかけたツンが偶然の連続により運搬用の荷台で暴走してしまい、ブーンが力ずくでツン(を乗せて暴走する荷台)を止めたことにより2人は無事仲直りする。
そして一部始終を見届けたアサピーは、緊急に呼び出され息を切らしながらマンドクセと愚痴るドクオの隣に立ち、寒さで鼻を赤く染めながら思うのだった。
(-@∀@)(この人達と過ごす事が、BARのカウンターに振りまいた塩粒を数える以上に楽しいからこそ、私は安定しているのだな)
もはや、違和感などすっかり忘れている。
ふと隣から笑い声がして視線をやればきつく抱き締め合うブーンとツンを眺めるドクオが穏やかに、けれど、とても楽しそうに笑っていた。
(-@∀@)なんだ、あなたそんな風に笑えるじゃないですか
('A`)うるせー
釣られてアサピーも笑った。なぜ笑うのかは分からない。
('A`)なんで笑ってんの
(-@∀@)わかりませんよ、でも
(-@∀@)笑うしか、ないじゃありませんか
('A`)ちげえねえ
笑うことが少なかったアサピーも、普段は暗い表情しか見せないドクオも破顔一笑した夜が、明け始める頃。
疲れた体を引きずって、あたかも強制労働に向かわされているかのような行進の果てに、ブーン以下図書館員は職場へと帰り着くと全員一致で休憩室へと行き、ほぼ徹夜したのと休館日なのを理由に眠ることにした。
なりふりかまわず各々ベッドに倒れ込むと、暖房の暖かさもあいまって、冷え切ったブーン達は深い眠りに意識をゆだねる。
昼過ぎ、ドクオが皆を叩き起こすまでは。
***1話終***
戻る [2話へ]