(-@∀@)とある眼鏡の蔵書目録のようです・SF(すこしふしぎ)版 2話  [前のページへ]  戻る  [次のページへ

ドクオが慌てた様子で声を荒げる。

('A`)おい大変だ、みんな起きろ!

(#゚ω゚)うるせええええこちとら眠いんだよおおおお!

(#゚A゚)俺だってアンタに呼び出されたせいで眠いわああああ!

( ^ω^)それについては本当にすまないと思っている

ξ;゚听)ξあの、ごめんなさい私のせいで…

(-@∀@)それはもう良いじゃないですか。それより、どうしたんですか?ドクオさん

('A`)質の悪い悪戯さ

ドクオに連れられ、アサピーが担当の特集コーナーへと赴くと。

(-@∀@)…どういう事だ

アサピーが、勲章もののがんばりで作り上げた目録の製本数冊。
それが全て、何本もの工業用の樹脂製結束バンド(タイラップ)で封じられ机にビニルテープで拘束されていた。

('A`)皆より先に目が覚めて、暇だったから掃除でもしようかと思ってきたらこの有様で…



さらに、特集コーナーは置かれた手書きの紹介文や、テーブルクロスに至るまで滅茶苦茶である。

ξ゚听)ξ…ひどいじゃないブーン

( ^ω^)え、なに、俺が犯人なの?

('A`)え、違うの?

( ^ω^)ちげーし、俺ぜんぜん犯人じゃねーし

('A`)まあ冗談はともかく…館長

( ^ω^)なんだし


('A`)図書館の入り口、鍵開いてましたよ?

( ^ω^)いやほら、ピッキングとか

('A`)できるような鍵じゃないんですが

ξ゚听)ξ閉め忘れたのね

( ^ω^)つまり?

(-@∀@)あなたのせい…と、言えなくもない

(;^ω^)…うそーん

('A`)まあ普段から防犯意識薄いですし

言いながら、ドクオはポケットから取り出したナイフで全ての目録を解放する。

('A`)よし開いた

(-@∀@)ありがとう


(-@∀@)ま、悪戯されたのは仕方ありません。目録の中身自体は無事で…あれ?

ξ゚听)ξどうしたの

(-@∀@)全部…白紙です、目録…すり替えられてますね

(#-@∀@)ブチッ

(;^ω^)ア、アサピーごめんだお

(#-@∀@)あなたみたいな防犯意識の低い館長…修正してやるっ!!

(#-@∀@) 
   と彡☆)゚ω゚)ビダンッ!

ξ゚听)ξ痛そーね

('A`)痛恨の一撃、か

大の字に倒れたブーンに背中を向けたアサピーは、懐から万年筆を取り出し白紙の目録を鷲掴むと、怒りにまかせて怒鳴っているとしか思えない声量をツンとドクオに向ける。

(#-@∀@)ツンさん!

ξ゚听)ξはい

(#-@∀@)私は今すぐ作業にかかります!ここで今すぐにです!1人になりたいのでドクオさんと一緒に館長を連れて行ってください!その後に第1資料室の分類Cの棚の上から3段目、向かって左から2冊目のファイルに原稿がありますから増版をお願いします!

ξ゚听)ξわかりました

(#-@∀@)ドクオさん!

('A`)はい

(#-@∀@)館長を連れて行った後、元シベリア特殊部隊の経験を活かし防犯体制をさらに強化してもらいたいっ!

('A`)万が一、犯人があらわれたら?

(#-@∀@)撃鉄を起こせ!

('A`)了解…ナガン・リボルバーでよければ

(#-@∀@)撃てて当たればそれでいい!

ξ゚听)ξさ、行きましょ

('A`)ああ。ほら館長、立たないなら引きずりますよ

ヒリヒリ(☆;ω;)おーん…

三人が出て行くのを待たずに、アサピーは近くの机に目録を一冊広げ、椅子にどっかり座り込むと万年筆を走らせ始める。傷つけられた矜持が彼を動かす。

(#-@∀@)まずは前付けからだっ!

いかなアサピーとて、デザインされた図柄や文字の位置などを完璧に再現することはできない。彼も所詮は人間だ。


(#-@∀@)この…私を…


―――が、しかし―――


(#-@∀@)ブーン系小説シベリア図書館の一員を…


―――『どの頁』に―――


(#-@∀@)纏めてきた経験を…


―――『どんな文字が表記』されているのかを再現することは(自分で編纂した限りにおいて)―――




(#-@∀@)なめるなあああっ!!!


―――『 可 能 』 で あ る !!―――


ババァ---(#-@∀@)-----ン!!



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


(#-@∀@)この私がっ!生み出した目録の内容ならばっ!!


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


(#-@∀@)私自らの手でっ!指でペンでインクで記憶で再現…っ!修正…っっ!!


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


(#-@∀@)してみせる…ッ!完璧のすぐ足下に寄る程度…ッ!!やってみせる…ッッ!!!


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリガリッ!!!






歩く計算機と呼ばれた彼の真骨頂は、記憶である。物事を正確に覚え整然と思い出すことができる。だからこそ、混迷を極める道筋のような計算式であっても混乱することなく確実に、解を導き出せるのだ。
その能力を持ってすれば同じ文章を同じ文字数で同じ枚数に再現することが、できる。



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


(#-@∀@)


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



―――己が限界に挑むと言わんばかりに筆を走らせ続ける今の彼は真に―――


    ィ'ト―-イ、
ババァ---以`@益@以-----ン!!


―――『 鬼 』 と 化 し た !! ―――




lw´#‐_‐ノv暑っ苦しいんじゃボケ!!

Σ(;-@∀@)

lw´#‐_‐ノv パシーン
     と彡☆)-@∀@)!?

lw´#‐_‐ノv さっきから黙って聞いていれば魚沼産コシヒカリ、魚沼産コシヒカリと…お前の食卓はブランド米だけか!ローカル米はどうした!たまにはインディカ米も炊いてやれよ!!

(;-@∀@)

lw´#‐_‐ノv ハアハア

(-@∀@)…

lw´*‐_‐ノv ハアハア

(-@∀@)(なんでだろう、今わたし物凄く恥ずかしい)

(´<_` )あ、遅かった

川;゚-゚)うわあああごめんなさいごめんなさい!大丈夫ですか?

(-@∀@)大丈夫です…あの、どちら様ですか?

川 ゚ -゚)あ、私達はですねlw´‐_‐ノvふはははは!我々の正体が知りたくばこの私、最強の米使いであるAKITAKOMACHI・シューを倒してみせるがいい!

(-@∀@)あ…あきたこまちだと…?

コソーリ(´lw´‐_‐ノvのんのん、アキタクォムァーチあるよ

(-@∀@)あきた…えっ?

…(´<_lw´‐_‐ノvだからちがうって、アキt

おっと、そこまでだ(´<_`lw´‐×‐ノvむぐっ

シュールの口を背後から片手でふさいだ弟者は、そのまま左腕を腰に絡めた。

川 ゚ -゚)よくやった弟者君!家に来てミルクティーを飲んでいい

(´<_` )はい閣下、光栄であります

lw´‐×‐ノvむぐむぐ

川 ゚ -゚)君の手柄だ、君にやらせてやろう。あっちに連行して、擽れ

(´<_`*)はい閣下、光栄であります

lw´;‐×‐ノvむ、むぐうーっ!むぐーっ!

川 ゚ -゚)よし…すみません、大変失礼いたしました

弟者がシュールを死角に引きずっていったことを確認したクールは、アサピーに向き直り頭を下げた。

(-@∀@)いえ、べつに大丈夫、頭を上げてください…それであなたがたは?

<ゴメンナサイ、ハンセイシテマス、チョットマッテ、クスグラナイデ

川 ゚ -゚)信じてもらえないでしょうが…私達は、ブーン系小説シベリア図書館の職員です

<チョッオマ、マテマテ、ワキハ…ヒャアッ!マッテ、ダメェ!

(-@∀@)……シベリアに図書館は2ヶ所だけだと思っていたのだが

<アァン!ンアッアッアッ!

川 ゚ -゚)この、あなた方の住んでいるシベリアではありません。もうひとつのシベリアにあります

<オネガイ、モウユルシテェ!アッ、ヤッ、クウゥッ!

(-@∀@)それはどういう意味ですか?

(´<_` )別の世界、という意味です

lw´;_ ノv…

(-@∀@)あ、終わったんですか…別の世界?

川 ゚ -゚)平行世界、パラレルワールド、枝状分岐宇端末点…言い方は色々ありますが、とにかく私達はそういった世界から来ました。あなたからみれば

(-@∀@)つまり…不審者って事ですか?

川 ゚ -゚)…やっぱりそうなりますよね…

(-@∀@)なるでしょ、そりゃあ

そう言ってアサピーは、突然に、出入り口へと駆け出す。
きっと初めて、本当に全力を振り絞ったスタートダッシュ。
恐怖ゆえに長く感じる数秒間、あまりに遠く思える扉にぶつかるような格好でたどり着き、開いた瞬間。

(-@∀@)なっ

アサピーは自分が正気かを疑った。
扉の向こうには、また同じ扉があったのだ。

(-@∀@)…廊下がない

(´<_` )その先は

背後からおってくる声は、穏やかだ。

(´<_` )多分、やめたほうが良いと思いますよ

ゆっくりと扉を閉めたアサピーは、全身に走った怖気に震える。

(;-@∀@)…なんの悪戯だ?

川 ゚ -゚)なにもしていません

アサピーは弱々しい足取りで引き返すと、元いた椅子に座り、白紙の目録を見つめる。

(;-@∀@)そうだ、作業…作業して忘れよう…

ペンを握りしめた手に、クールの両手が被さる。

(-@∀@)何をしている

川 ゚ -゚)私達の話を聞いてもらうまで書かせるわけにはいきません

(-@∀@)何故

川 ゚ -゚)あなたの目録には、重大なミスがあるからです。同じく図書館に関わる者として、その目録を書かせるわけにはいかない

固く握られた手に目を落とすアサピーは、瞬時に思索を巡らせる。
重大なミスとは何か?構成か?表紙か?記述方法?選出した作品の量?まさか、ふさわしくない作品があったとでも言うのか?
そして気付く。
そもそも、あれはまだ図書館員にしか公開していない。何故、重大なミスをしていると気付けるのか?

(-@∀@)迂闊…私の特集コーナーを荒らしたのはお前達だな

川 ゚ -゚)そうです

lw´‐_‐ノvいやー持ってて良かった、タイラップ

(´<_` )俺はつっこまんぞ

いつのまにやら、アサピーの背後には弟者とシュールが立っている。逃げ場を失ったアサピーはそれでも力を弛めない。

(-@∀@)教えてくれ、お前達はブーン系が嫌いなのか

川 ゚ -゚)ありえません、嫌いだなんて。愛しています、表現しきれぬほどに

(-@∀@)ならば、どうして

川 ゚ -゚)わかりませんか?あなたはその目録を書いていて、何も思わなかったの?

(-@∀@)いや…何かは思った。違和感は確かに感じたとも。それが何だと言うのだ

川 ゚ -゚)その目録のテーマは、ブーン系小説シベリア図書館の存在意義にそぐわない、私達はそう判断しました

(-@∀@)…

川 ゚ -゚)あなたは、客観的に、数を絞って、選出した。次世代に伝えるべき、遺すべき作品を

川 ゚ -゚)逆にいえば膨大な蔵書のほとんどは、もう二度と読み継がれ、語り継がれなくても良い作品だと、判断したのだあなたは

(-@∀@)…そんなこと…

アサピーの指は無意識に、弛緩していった。

川 ゚ -゚)図書館でなくとも保存してくれる所はある。発表の場も無数に。だがそれらはまるで川、新しい物が運ばれ、流されていく。でもいくら運ばれて来ても、風景として残るのは一部。対して…

(-@∀@)ここは海、か

川 ゚ -゚)はい

全ての流れがたどり着く所。
作品だけではない、ブーン系に抱く想いそのものが雨の様に染み込み、凍土の様に強く固まり。
春が来れば大河となり、色とりどりの物を運び、時には岩をも削り時には町を呑み込みながら、生きとし生けるものを潤す大河の全てを、受け入れ育む海。

であるならば。

lw´‐_‐ノv某アニメ映画の空賊は言いました。仲間外れをつくっちゃ可哀想だろ、と

朝焼けに染まる海が好きな人がいる、月の照らす海が好きな人もいる。優美な浜辺で独り贅沢を楽しむ人もいれば、狭くゴミだらけの浜辺で家族と花火を楽しむ人もいる。
海のどこが好きかは千差万別、けれどもみんな海が好き。

そんな人々が訪れる場所、ましてや排他的になることを良しとしないシベリアで。

こんな主旨の特集、一杯のバケツにいろんな場所で海水を汲み、これこそ後世に伝えるべき海のありさまだと謳うようなものである。

(-@∀@)…そうだな

アサピーは筆を置く。クールは手を放す。

(-@∀@)では君達は軽蔑したろう、私の事をを
(´<_`;)違うそんなことはない!

弟者が叫んだ。

(´<_`;)目録に目を通した私達はその内容に、むしろ感服したんです!本当に好きでなければ『全ての蔵書から厳選した』目録なんて作れやしないからだ!あなただけじゃない、膨大な蔵書を誇るこの図書館に携わる人々に。心の底から、真に

(-@∀@)ありがとう。でも私の動機は図書館の誰よりも不純だよ。本を目前にしても読みたくなる以前に数えて分類して整理したくなるのが私だ

lw´‐_‐ノv誰も不純とは思わないよ。それにあなたが居なければ、私達の世界は生まれなかったかもしれないの




(-@∀@)え?


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2話終

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