(*゚∀゚)「おーかえりー。ゼミどーだったんだ?楽しかったか?」
lw;‐ _‐ノv 「ただいまー…。なんかもう……僕は駄目かもしれない」
黒地に鮮やかな藍色の桔梗をあしらった浴衣に紅色の帯。夏を連想させる華やかな衣装を身に纏った恋人は僕の瞳を心配そうに覗き込む。
布切れやら、粘土で作られた小さな手足やら、描きかけのイラストやらが散乱した僕の部屋で、彼女の周りだけ神聖な空気が漂っていた。
僕の恋人には空気を清浄化させる特技がある。彼女は狭苦しい僕の部屋のオアシスだった。
(;*゚∀゚)「どうした!?大丈夫かシュー!?疲れてるなら今日はもうゆっくり休んだ方がいいぞ!」
ふらふらと帰宅した僕に労わりの言葉をかけるツーちゃん。自分のために語気を荒げて心配してくれる恋人の存在にひしひしと幸せを感じる。
だけど今はそれに甘えている場合じゃないだろう。
何せ僕は、眠りたくないのだ。
lw;‐ _‐ノv 「駄目だ……寝られない!今日から僕は本気になろう!いっぱい服を作るんだ!生地なら余ってるし!」
(;*゚∀゚)「む、無理しなくていいんだぞ!俺なら今持ってる服全部気に入ってるから大丈夫だし!」
lw´‐ _‐ノv 「駄目。次のイベントまでに30着は作らないと。30分ごとにお着替えさせてお客を呼ぶんだ。写真もたくさん撮って新作のROMと冊子の内容も充実させないと…。ああ、そうだスタジオ借りての撮影もあったんだ。折角一眼レフ買ったんだし構図も研究しないと…」
(;*゚∀゚)「お、お、落ち着けって!!そんな頑張らなくてもいいだろ!シューお前倒れちゃうって!」
lw;‐ _‐ノv 「倒れないように気合入れる!」
(;*゚∀゚)「あ、あひゃー…」
lw´‐ _‐ノv 「おk。み、な、ぎ、ってきた」
(;*゚∀゚)「お願いだから身体壊さないでくれ。な?」
僕は作業に夢中になると部屋の片づけをしなくなる。
既に僕の部屋はツーちゃんの写真を撮るためのスペースを除いてほとんど足の踏み場のない状態にまで達していた。
当然散らかるものは作業に関連のあるものがほとんどなので、腐ったり匂ったりの心配はいらないが、恋人と共に暮らすにはいささか趣に欠ける部屋になっている。
さて、これ以上部屋が酷い状態になるのは久々だ。
生活出来る範囲なら良いのだが。
(;´・_ゝ・`)「シューちゃん…。なんか疲れてるね。顔色悪いよ?」
某日。レンタルのスタジオに足を踏み入れた瞬間、挨拶もそこそこにデミタスさんが心配するように声をかけてきた。
今までも何度か僕の可愛い子たちの写真を撮るためにスタジオを借りる事があり、写真が趣味のデミタスさんにはそれを手伝ってもらっていた。
lw´‐ _‐ノv 「あー…デミタスさんお久しぶりっす。今日はよろしくお願いしまーす…」
(;´・_ゝ・`)「うわ、隈出来てるじゃないか!駄目だよ女の子が疲れた顔してちゃ」
lw´‐ _‐ノv 「ちょっと作業が立て込んでて…。今回のROMは全部オリジナルで行くんでがっつり衣装作ろうと思いまして…」
(´・_ゝ・`)「衣装も自作か!相変わらず懲るねぇ。毎度写真撮らせて貰って光栄だ」
lw´‐ _‐ノv 「いえいえこちらこそデミタスさんみたいな上手な方に撮って頂いて助かります。
前回は好意に甘えさせて頂きましたけど、今回はちゃんとROMと冊子の売り上げ何割かお渡ししますんで後で相談しましょう」
(´・_ゝ・`)「ああ、それは心配しなくてもいいよ。俺は印刷代もROM作りも手出してないんで。それに前回、名前載せて貰って大分宣伝になったから」
lw´‐ _‐ノv 「うーん…。しかしそう言うわけには。レタッチも手伝って貰いましたし…」
(´・_ゝ・`)「俺は俺でコスプレCGのROM出してるし気にしないでね。それに学生さんと違って本業あるから」
lw´‐ _‐ノv 「むぅ。本当にいいんですか…?正直、今回相当布代に突っ込んじゃって結構厳しかったんです。あと、念願の一眼レフも買っちゃいましたし……」
(´・_ゝ・`)「おぉ。それは楽しみだ。わからない事があれば何でも聞いて。カメラの事なら力になれると思うから」
lw´‐ _‐ノv 「助かります。それで、今回はこの子なんですけど…」
(*゚∀゚)「………」
(*´・_ゝ・`)「おぉ!可愛い〜!名前は何ですか?」
デミタスさんはツーちゃんの姿を見るなり破顔した。僕もその反応が嬉しくて、思わず顔がにやけてくる。
やはり、恋人を人に褒めて貰うというのは、とても良い事だ。
(*゚∀゚)「………」
lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃんですよ。ふふふ。今日が始めてのスタジオ撮りなんですよ。緊張してるみたいですね」
(´・_ゝ・`)「ツーちゃんかぁ。可愛いなぁ。前の子よりも可愛いんじゃない?この服も全部自作?」
ツーちゃんは僕とお揃いのゴスロリ服を身に纏っていた。黒を基調にした比較的オーソドックスなものだが、僕が着るよりもツーちゃんが着た方が断然映えるに決まっている。
僕はと言うと、ジーンズに無地のカッターシャツと言う普段仕様の地味な服を着ていた。女神以外の人間と会うのに着飾っても無意味だ。
lw´‐ _‐ノv 「おふこーすですよ。あと、お着替えは両手の指でも足りないくらいさせる予定なんで、今日は覚悟して下さい」
(;´・_ゝ・`)「あー…。それで隈作ってるんだね。全く若い娘っ子が美容を捨ててまで頑張っちゃ駄目だよ」
lw´‐ _‐ノv 「僕よりもこの子を可愛くしたいもんで」
(´・_ゝ・`)「いやはや……。シューさんも裏方ばっかりじゃなくて表に出れば良いのに。そうだ!俺が作るコスプレCGROMにモデルとして参加してよ。衣装はこっちで用意してもいいし、自分で作ってもいい。折角可愛いんだから記念と思ってどうだろう?」
lw´‐ _‐ノv 「で、み、た、す、さん。冗談も大概にしないと、うちの子が嫉妬で良い写真撮らせてくれませんよ?」
(;´・_ゝ・`)「ああ、それは困るね。ごめんねツーちゃん。」
(*゚∀゚)「………」
lw´‐ _‐ノv 「気をつけて下さいね。この子、結構気分屋さんですから」
(;´・_ゝ・`)「ふぅむ。参ったなぁ…」
その日の撮影は順調に進んだ。デミタスさんはカメラを構えると途端に真剣な表情になり、空間を慈しむようにシャッターを切る。
僕は彼の指示に従ってツーちゃんを着替えさせたり、ポーズをとらせたりする事に忙しく、買ったばかりの一眼レフでツーちゃんを覗く事はほとんど叶わなかった。
折角のスタジオ撮影でそれを許すのは、僕がデミタスさんの腕を信用しているからに他ならない。データを見るのが今から楽しみだ。
(´・_ゝ・`)「ふぅ……お疲れ様。これで、衣装一通り撮り終わったかな?」
lw´‐ _‐ノv 「お疲れ様です。有難う御座いましたデミタスさん」
(*゚∀゚)「………」
(´・_ゝ・`)「ああ、ツーちゃんもお疲れ様。スタジオ結構熱くなってたけど大丈夫かい?」
lw´‐ _‐ノv 「大丈夫だと思います。温度よりも湿気がの方がヤバイですね。梅雨の時期なんか今から憂鬱です」
(*゚∀゚)「………」
(´・_ゝ・`)「そうだねぇ。カメラもその時期は手入れに気を使わないといけないしね」
lw´‐ _‐ノv 「その点、衣装なんかは保存が楽ですね。レイヤーの方が羨ましい」
(*゚∀゚)「………」
(´・_ゝ・`)「ん?レイヤーが羨ましいならモデルやろうよ!絶対綺麗に撮るからさ!」
lw´‐ _‐ノv 「お断りさせて頂きます。あ、ノートパソコン持って来たんで後でデータ頂けますか?ここ出たらファミレス行きましょう。コンセント付いてる店知ってますんで」
(*゚∀゚)「………」
(´・_ゝ・`)「ああ、もちろん。しかし勿体無いなぁ」
lw´‐ _‐ノv 「僕は全てをこの子と、女神に捧げてますから」
(´・_ゝ・`)「女神?」
(*゚∀゚)「………」
lw´‐ _‐ノv 「ええ。僕の唯一神です。ああ、新興宗教じゃないですよ。押し付けるつもりはないんで安心するがいいです」
(;´・_ゝ・`)「そうなんだ。シューちゃんは変わってるなぁ。まあ、モデルの話は気が変わったらいつでも言ってよ」
lw´‐ _‐ノv 「はい。気が変わったら」
その後、ファミレスで撮りたての写真を眺めながら話していると、知らず知らずのうちにたくさんの時間が零れ落ちていった。
解散する時にはすっかり終電間近となっており、僕はノートパソコンなどの重い荷物を抱え疲れた身体を引き摺るように帰路についた。
だから部屋に辿り着くと、ほぼ無意識にベッドに倒れこむように眠ってしまった。
夢の中で僕は、それに気が付いた。
そこは電車のホームだった。
僕の最寄り駅の殺風景なロケーション。空は群青色に染まっており夜を予感させている。
人の気配のないその場所で僕は改札へと出る階段に向かい走っている。
女神を探すためだった。
自分の胸が上下するのを鬱陶しく思いながら階段を駆け下りる。エスカレーターは止まっていた。
僕は視線を右へ左へ巡らせて愛しい女神の姿を探す。
彼女は必ずここにいる、と何故か僕は確信していた。
そもそも女神がこの駅を利用していると知ったから、僕は近くに越してきたのだ。
きっと女神と僕は同じ夢を見ているのだろう。
女神を探すために走り出した自分を感じた時、僕の中でその仮説が確定事項となった。
もし、そうでないのなら、
あまりも僕に、救いがないじゃないか。
(*゚∀゚)「………」
lw´‐ _‐ノv 「やっぱり、いらっしゃった…」
女神は自動改札機にぼんやりと腰掛けて天井を見上げていた。
僕に気づくと、気だるげに右手を上げる。挨拶のつもりだろうか。
(*゚∀゚)「なあ、弟者見なかったか?」
lw´‐ _‐ノv 「いえ。見ておりません」
(*゚∀゚)「ずぅっと、探してるんだけど、いないんだ。おかしいだろ?」
lw´‐ _‐ノv 「ここに、弟者はおりませんよ。女神」
(*゚∀゚)「煩い黙れ」
女神は自動改札機から飛び降りる。
そして何処までも何処までも落ちていっていつしか見えなくなってしまった。
次に僕が立つのはゼミ室だった。
自動改札機から華麗に着地を決めた女神は、ホワイトボードの後ろを確かめたり机の下を覗き込んだりして必死に弟者を探している。
僕はそんな女神が愛おしくてたまらなくて、思わず彼女を抱きしめようとしたのだけれど。
女神の泣き声が、それを許してくれなかった。
(*;∀;)「うわぁあああああああああん!弟者ぁああああああああああ!」
十数人が座ると満杯になってしまう狭い狭いゼミ室の何処にも弟者が居ないと分かると、女神は白いリノリウムの床に座り込んで幼子のように泣き始めた。
(*;∀;)「いるんだろ弟者ぁあああああ!俺を置いていくなよぉおおおお!なあ、愛してるんだろぉおお!」
女神の泣き顔もそれはそれは可愛らしく、その大粒の涙は真珠ごときじゃ表現出来ない高貴さを纏っていた。
それを拭い去ってしまうのは世界的な喪失かと思われたが、僕は女神の下僕として彼女をお慰めしなくてはならない。
lw´‐ _‐ノv 「落ち着かれてください。僕は貴女に言いたい事があるのです。女神」
僕は跪き、床に崩れ落ちてしまいそうな女神の顔を両手で包み込む。
柔らかな涙が僕の手をも伝い、女神の召し物を濡らした。
(*;∀;)「触るな……あばずれ……どっか……行け……」
lw´‐ _‐ノv 「あなたは、そのような事を僕に言わなかった」
(*;∀;)「煩い…消えろ…肉便器……」
吸い付くような女神の両頬を、僕は無理やりこちらに向ける。
ぶつぶつと汚い言葉を仰られる女神の目が涙に潤んでおり、その可憐さに思わず口付けしたくなる衝動を必死で押さえながら言葉を紡ぐ。
lw´‐ _‐ノv 「女神。これは夢です。僕も夢で、僕の醜い嫉妬心と対峙しました」
(*;∀;)「なんだよ…うるさいな…俺の、弟者に触ったくせに…」
lw´‐ _‐ノv 「貴女は夢で間違った愛に我を失い、僕の身体に穴を開けられた。僕は貴女の僕(しもべ)ですから、あのような事でも純然たる恵みに違いありません」
(*;∀;)「う……ひっく……」
lw´‐ _‐ノv 「だけど、目が覚めた時、現実の貴女は僕を気遣われる言葉を下さった」
涙を隠そうとせずに、女神はじっと僕の事を見つめる。
長い睫を震わせながら、儚げに瞬きをする。
(*;∀;)「だって…シューは…友達なんだ…」
それは消え入るような声だった。
暴走する愛に隠されていた、女神の本当の慈悲から零れた言葉に僕には思えた。
そしてその慈悲は、僕を酷くうろたえさせた。
lw;‐ _‐ノv 「有難う御座います…女神…。貴女は……優しい」
(*;∀;)「ぅ……うわぁあああああん!」
しかし彼女はその言葉を聞くと、尚更に涙で顔を濡らした。
喉元から溢れる嗚咽に抗うことなく、痛々しい泣き声を僕に聞かせる。
僕はそんな彼女を手放しはしないと、片手を彼女の頬から離し、代わりに腰を支える。
その腰の細さに驚きつつも、今にも崩壊せんとする危ういバランスの彼女を支えようと踏ん張った。
この尊さを、誰かに分かって貰えるだろうか。
しっかりと見詰め合った僕らは、互いの涙に視界を濁らせて、今手探りで真実を探り合っている。
(*;∀;)「違うそうじゃない!俺は、優しくない……。だって、シューになんかしたら、弟者に、こんどこそ、嫌われ……。
俺…弟者に、弟者のお兄ちゃんに、あんな事したのに、許してもらって……。
だから、ちゃんとしようと、ちゃんと、普通に、友達としてでも…って思ったのに…思ったから……」
lw;‐ _‐ノv 「ああ……」
そこで僕は、今僕の手の中にあるのは、高貴な女神などではないと、気付く。気付かされる。
否、それは元々分かっていた、知っていた事だ。見ない振りをしていたのは、他でもない僕だ。
顔をぐちゃぐちゃにしながら、必死になって自分を表現する言葉を捜す彼女は、紛れもなく生身の人間だ。
僕と同じように、愛によく似た狂気を抱えた、弱くも脆い、女の子だ。
彼女と僕は同じモノだ。
彼女と弟者の間に何があったのか分からないが、それが彼女の狂気だろう。
同性を好きになってしまった辻褄合わせに、僕が彼女を神聖化するのと、きっと同じ狂気だろう。
いや、違う。
彼女と僕は違うモノだ。
今、彼女は自らの狂気に真っ向から立ち向かおうとしている。戦う涙で僕の手を濡らしている。
同性を好きになってしまった辻褄合わせに、スケープゴートを作り出した僕とはまるで違う潔さだ。
lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃん」
僕は、彼女の名前を呼ぶ。
愛しくて可愛くて、大好きな彼女の名前を。
lw´‐ _‐ノv 「愛してます」
(*;∀;)「う…るさい…」
lw´‐ _‐ノv 「どうか、貴女の愛が、貴女を蝕みませんように」
ああ、神様。心の底から願います。
願わくば、彼女が僕のようにならないように。
ああ、神様。心の底から感謝致します。
夢の中で、彼女の事をこんな風に抱きしめさせて頂いて。
目が覚めた時、外はもう茜色に染まっていた。
どうやらほぼ丸一日眠っていたらしい。ぎしぎしと痛む身体を無理やり伸ばして起き上がる。
カーテンを開けようと、窓へと近付いた時、いつもの恋人の声が聞こえない事に気が付いた。
lw;‐ _‐ノv 「ごめんツーちゃん!僕、鞄の中入れっぱなしで…」
僕は慌てて鞄の中から恋人を掬い上げる。
(*゚∀゚)「………」
ツーちゃんはいつもと同じ笑みを浮かべたまま、僕を見つめていた。
lw;‐ _‐ノv 「………ツーちゃん」
ツーちゃんは何も言わない。
まるで人形のように、どこか焦点の合わない瞳で僕を見つめている。
lw;‐ _‐ノv 「ツーちゃん…?スタジオでは人形の振りしてねって言った事、怒ってる?もう、おうちだから話しかけてもいいんだよ?ツーちゃん?ツーちゃん?」
(*゚∀゚)「………」
lw;‐ _‐ノv 「ああ…そうか」
(*゚∀゚)「………」
lw;‐ _‐ノv 「君は、喋らないんだったね…」
(*゚∀゚)「………」
好きな人を模して作った人形の顔を見つめながら、僕はここ数日間で壊滅的に散らかった部屋を片付ける事を考えていた。
('A`)「あの……新作のROMと冊子、一部ずつ下さい」
時刻は既に午後4時を回っていた。
人気のサークルは既に撤収作業に入り、売り上げを纏め、ダンボールを整理している。
そうでないサークルも販売の方は見切りをつけ始め、他のドール仲間とお喋りに興じたり、互いのスペースでドールの撮影をしているところも珍しくない。
そんな時間に彼は、そんな事を言いながら僕のスペースにやって来た。
lw´‐ _‐ノv 「すいません。そこに書いてあるとおり今日は完売……不細工?」
僕もご多分に漏れずスペースの片付けをしており、荷物がまとまったら他のドール仲間のところへ挨拶に伺おうと思っていたところだった。
だからしゃがみ込んで作業しているところへかけられた言葉を鬱陶しく思いながら顔を上げたのだが、そこには予想だにしなかった顔があった。
('A`)「あ、すいません。じゃあいいです……」
lw´‐ _‐ノv 「………ちょっと」
僕はちょいちょいと手招きをする。
彼が僕の嫉妬心の塊でなかった事に驚きながら、あるいは彼のような不細工がこの世に存在した奇跡を思いながら。
(;'A`)「な、なんですか……」
lw´‐ _‐ノv 「ちょっと、そこの机の下くぐって中まで入ってきなさい。上にツーちゃん乗ってるから揺らさないように気をつけて。」
(*゚∀゚)「………」
僕のスペースの長机の上にはドールサイズの椅子にちょこんと座ったツーちゃんが居た。
今回新作として出したROMと冊子の中身は丸ごとこのツーちゃんの写真であり、おかげさまで完売させて頂いた。
これでどうにか布代も回収出来そうだ。
(;'A`)「いや、え、だって……」
lw´‐ _‐ノv 「い、い、か、ら」
(;'A`)「じゃあ、お邪魔します」
押し切られた不細工は小柄な身体をますます小さく丸め、長机の下をくぐる。
lw´‐ _‐ノv 「はい。これ。あげよう」
僕は新作のROMと冊子を渡す。
彼は受け取らずに驚いた顔でそれを見つめていた。
(;'A`)「え。だってさっき完売って…」
lw´‐ _‐ノv 「仲の良いドール仲間さんにあげる分とか、HPでどうしても欲しいってメールしてくる人のために全部売らないでいくらか残しておくのだよ不細工。君は特別だから両方あげよう」
(;'A`)「いいんですか?そんな、俺、初対面なのに……」
lw´‐ _‐ノv 「初、対、面……?」
(;'A`)「ひぃぃ……」
lw´‐ _‐ノv 「うん。まあ初対面でもいい。君はちょっと珍しいくらいの不細工だから、それくらい受け取りたまえ」
(;'A`)「ひでぇ……」
不細工は僕の言葉に傷ついたように顔を崩したが、それでもやっと納得したようで恐る恐る僕の手から新作のROMと冊子を受け取った。
中身が気になるようで冊子をパラパラとめくっている。その顔はヲタらしく大変気持ちが悪かった。
lw´‐ _‐ノv 「うん。いくらなんでもこんな不細工が僕の嫉妬心の塊のわけないよな……。僕の勘違いだった」
(*゚∀゚)「ただいまシュー!なんかお前の本買った人から俺写真撮られまくったぞー!楽しかったー!」
lw*´‐ _‐ノv 「おかえり。楽しかったなら良かった。なんかこの不細工が留守番してくれるみたいだから、お人形のツーちゃんも連れて他のサークルさんのところ回ってこようか。ツーちゃんと一緒ならきっと楽しい事になると思うんだ」
(*゚∀゚)「お、人形ツーと一緒にお出かけしていいのか?実は一緒に歩いてみたかったんだよ!楽しみだなー!」
(;'A`)「嘘ぉ!?」
不細工はスペースに戻ってきたツーちゃんを信じられないように見つめている。
不細工が益々不細工になっていっそ愉快ですらあった。
lw´‐ _‐ノv 「じゃあ、よろしく頼むな不細工」
(*゚∀゚)「ん……?お前……」
lw´‐ _‐ノv 「不細工の事は気にしなくていいよツーちゃん。ほら、行こう行こう」
僕は長机の下を潜り抜け、お人形のツーちゃんをそっと抱きかかえる。
ツーちゃんは本当に嬉しそうな笑顔で興奮気味に僕に語りかけてきた。
(*゚∀゚)「おう!それにしても誘ってくれてありがとなシュー!お人形いっぱいで楽しいぞ!」
lw´‐ _‐ノv 「うん。そう言ってくれたなら僕も誘った甲斐があったよ。帰りに美味しいレストラン知ってるからご飯食べていこうね。売り子してくれた御礼に奢るから」
(*゚∀゚)「おー。酒も飲もうなー」
lw´‐ _‐ノv 「勿論」
(;'A`)「あ、あの……」
僕は振り返らない。
抱きかかえた人形ツーちゃんがとろけるような笑顔を浮かべている。
隣には楽しげに僕に話しかけるツーちゃん。
両手に花とは、まさにこの事だろう。
嗚呼。
これこそが幸せ。
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