('A`)ドクオが夢を紡ぐようです
数日前にやっと恋人が出来た。
冗談抜きに体力を削りながら情熱を注ぎ込み試行錯誤を繰り返した末にやっと出来た恋人だった。
だから、彼女のためにたくさんの服を作ってあげようと思って、たくさんの布を買いに出かけた。
いくつかの手芸屋を渡り歩き、イメージに合致する布を買い漁る。
部屋に残してきた恋人のことを思いながら布を選ぶのはくすぐったくなるような幸いの時間だった。手に取った布で作った服を着た恋人の
笑顔を頭に思い浮かべるだけで、じわじわと喜びが込み上げる。
買い物を終えて電車に乗り込む頃には外はすっかり暗くなっていた。
丸められた色とりどりの布たちが紙袋から顔を出していて、それが花束のように見えたから、重みで肩の間接がぎしぎしと悲鳴をあげてい
ても足取りは軽かった。
lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃんのたーめなーらえーんやこーら♪」
早く部屋に帰ってツーちゃんの服を作りたい。
出来上がったら綺麗に着せてあげて写真も撮ろう。そうだ。デジタルの一眼レフを買おう。ウェブページにあげるためにも最高の写真を撮
らないと。
ツーちゃんの魅力を余すことなく万人に伝えなくては。それが僕の指名なのだから。
lw´‐ _‐ノv 「しまった…。靴はどうしようかな。既製品は嫌だ。合皮で作れるかな…。僕のミシンなら固めの皮も縫えるし、どうにかなるかも…。早速勉強しないと…。」
ツーちゃんの事をあれこれと考えているうちに電車はあっという間に最寄り駅へと到着していた。
駅から僕の部屋までは5分もかからない。僕は意気揚々とホームへと降り立った。
そこで、女神に遭遇した。
(*゚∀゚)「あ、シューじゃん。シューも今帰りか?」
lw;‐ _‐ノv 「ツーちゃん!?」
(*゚∀゚)「ん?何だその大荷物。布?なんか作るのか?」
lw;‐ _‐ノv 「これは…」
(*゚∀゚)「あーわかった!お前、ごすろりだろ!」
lw;‐ _‐ノv 「は?」
(*゚∀゚)「違うのか?服を作るのはこすぷれかごすろりだって前に兄者から聞いたんだ!」
lw;‐ _‐ノv 「いや…、えっと…」
(*゚∀゚)「ごすろりってあれだろ?たまに見かけるスカートがぶわーってなってるフランス人形みたいな服だろ?シューが着るのか?楽しみだなー」
lw;‐ _‐ノv「え、あ、そうじゃなくて…」
(*゚∀゚)「出来たら見せてくれよな!じゃあ、またなー!」
女神はそう言って颯爽と駅の階段を降りていった。
僕は鳴り止まぬ心臓の音を聞きながら、荷物の重みも忘れて呆然とホームに立ち尽くすしか出来なきない。
どうしよう。やっぱりツーちゃんは美しすぎる。心の準備が出来てないと折角会えても上手く話が出来ない。
しまった。忘れないうちに会話を全部メモしておかなければ。普段ならレコーダーを使ってツーちゃんの声を全て記録しておくんだが、出かける時にツーちゃんと会話する事を想定していなかったからレコーダーを持っていなかった。
いや、それよりも、彼女は何を言った?ゴスロリ?僕が?スカート一枚持ってないのに?作るのか?いや、作るのは全然余裕だけど、着るのか?
(*゚∀゚)「可愛いシューの可愛いゴスロリ姿、楽しみにしてるからな!絶対出来たら見せろよ!」
僕は女神の宣託を思い出す。
lw´‐ _‐ノv 「…作ろう」
そうだ。どうせだったら、ツーちゃんとお揃いで作ろう。それで、イベントの日は一緒にお出かけするんだ。
幸いにも、布はどれも多めに買ったからきっと間に合うだろう。
lw´‐ _‐ノv 「ふふ……」
メモ帳に先ほどの会話を書き写しながら、お揃いの服を着てイベントにお出かけする僕らの姿を想像する。
嗚呼。
これこそが幸せ。
lw´‐ _‐ノv 「ただいまー」
(*゚∀゚)「お帰り。遅かったなー待ちくたびれたぞー」
僕の恋人は手作りのベッドの上でリラックスしながら僕を待っていてくれた。僕が出かけた時と同じ寝巻きを着ている。
この寝巻きは僕が家にあった布で簡単にあつらえたモノで出来があんまり良くない。
なので本当はツーちゃんに着せたくないのだが、優しいツーちゃんは他でもない僕が作ったものだから、と嬉しそうに袖を通してくれた。
lw´‐ _‐ノv 「ごめんねツーちゃん。つい買い物に夢中になっちゃって」
(*゚∀゚)「おお。たくさん買ったなー」
lw´‐ _‐ノv 「うん。ツーちゃんの服だからね。いくらでもイメージが沸いてきて、布もどんどん欲しくなっちゃって……」
(*゚∀゚)「楽しみだなー。でも、このパジャマも好きだぞー。なんてったって、シューが始めて俺に作ってくれた服だからなー」
lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃん……」
僕はなんて幸せなんだろう。
目の前にいる恋人がとてつもなく愛しく思えて思わず手を伸ばしたが、僕の汚い手でツーちゃんを汚してしまったら大変だと理性が告げて、なんとか思い留まる。
代わりに買ってきたばかりの布をツーちゃんの目の前に一枚ずつ広げて見せてやる。やはり服を作るなら彼女の希望も聞かないとならない。
(*゚∀゚)「あ、この色いいな。綺麗な夕日色。うーん…でもこれを服にするとなると、少し派手かな」
lw´‐ _‐ノv 「そんな事ないさ。ツーちゃんは色が白いから、よく似合う」
(*゚∀゚)「えへへ。照れるんだぜ」
lw´‐ _‐ノv 「しばらくは寝る暇ないな。ミシンフル稼働で頑張るから、ね?」
(*゚∀゚)「愛してるんだぜシュー」
lw´‐ _‐ノv 「ぼ、く、も」
ツーちゃんのとろけるような笑顔を原動力に、僕は早速型紙を作り始める。少なくとも今日は、眠る気はなかった。
大好きな恋人、そして愛する女神。
僕は、こんなに満たされた世界に生きていていいんだろうか。
('A`)「あんた……狂ってるよ」
lw´‐ _‐ノv 「さっき僕の分のゴスロリ服が出来たんだ。これでやっとツーちゃんの服にとりかかれる。もちろん、合間にツーちゃんの服を下着含めて3着ほど仕上たけど」
('A`)「俺、あんたのHPをブクマしてるよ。あんたがラマたんの写真をうpった時にはラマたんがこの世に降り立ったかと思った。感動したんだ」
lw´‐ _‐ノv 「それよりも模造紙が足りないんだ。布は足りなくならないように大量に買ったのに。全く持って盲点だった。代わりになるような紙なかったかな。また買い物に出ないと。あ、一眼レフは注文していたのがそろそろ届いたはず」
('A`)「あんた、あの世界では神だよね。俺は何も作れないから、本当に尊敬してる」
lw´‐ _‐ノv 「眠ってる場合じゃないんだよ。本当、眠らない体になればいいのに。やりたいことが多すぎる」
('A`)「だけどあんたはおかしいよ」
心地よい浮遊感に意識が戻るのを感じると、酷く不細工な男が僕の目の前に立っていた。こんな不細工な男がこの世に存在するはずはないから、これが夢だと気付いた。
男はしきりに、気持ちの悪い声で淡々と僕が狂っていると糾弾する。
lw´‐ _‐ノv 「おかしいのはお前の顔だ不細工」
(;'A`)「は…?」
lw#‐ _‐ノv 「あああああっ糞っ。睡眠は一日二時間でいいのに。今日の分の睡眠はもうとったんだ。たまにこうやって意識が落ちるのが我慢ならない。僕の時間をとるな。僕とツーちゃんの時間をとるな!」
僕は地団駄を踏みながら目の前の不細工に怒りをぶつける。
作ったばかりの黒いひらひらのゴスロリ服を躍らせながらこの世の理不尽を吐き出していく。
lw#‐ _‐ノv 「そもそもなんでお前みたいな不細工の顔を見なくちゃいけないんだよ!僕は美しいものに囲まれていたいのに!これだから男は嫌いなんだよ!美しくない!分かるか?あの男性器の間抜けなこと!精子を作れるからって偉そうな顔しやがって!」
(;'A`)「ひぃいい!すいません」
lw#‐ _‐ノv 「それなのにツーちゃんはあの弟者とか言う糞ちんこに心奪われる始末だ!あんな糸目のどこがいいんだ!しかもこの前ゼミを二人で休んでからますます仲良さげにしやがって!」
(;'A`)「え!?もしかしてあの後仲良くなったのかあいつら!ありえねぇ…」
lw#‐ _‐ノv「は?不細工お前何か知ってるのか!?」
(;'A`)「はひぃいいい何でもないっす!すいません!」
lw´‐ _‐ノv 「いや…、ツーちゃんが何をしようといいんだ…。僕は、ツーちゃんの意思を尊重するから…うん…そうだ」
(;'A`)「もうやだ…。何この人…」
lw´‐ _‐ノv 「そうか…。この不細工は僕の醜い嫉妬心の塊なんだな。わざわざ夢に出てきて僕に警告をくれるんだ。つまり僕はこの不細工を抱きしめて、そして殺さなくてはならないんだ。わかった。わかったぞ。」
(;'A`)「もう、お願いだから日本語通じて下さい…」
lw´‐ _‐ノv 「よし来い不細工。抱きしめて僕のこの豊満な胸で圧死させてやろう。醜い嫉妬心もその身に受け入れて、僕はより高みへと行くんだ。ツーちゃんを幸せにするために」
僕は両手を広げて不細工に慈悲を見せてやる。
今まで僕の無意識の中で育てられた愛を知らぬ不細工に光を与えようと思った。
しかし不細工は初めて触れる優しさが信じられぬようで不安げに僕を見つめている。
(;'A`)「なんかもう……ギブです」
瞬間。世界が変わった。
心地よい眩暈に目を瞑ると、塩素の臭いが漂っているのを確認出来た。瞼を押し上げると、そこは温水プールのようだった。
25メートルだろうか。長方形の極一般的なプールの水面が、壁の高い位置に取り付けられた窓から差し込む光を受けてゆらゆらと輝いている。
僕は今までの人生で、この青で統一された空間が人で溢れていないのを見た事がなかったので、その静寂さに思わずうっとりと息を吐いた。
ツーちゃんも連れて来たかった。是非スクール水着を着せて良いカメラで撮影したい。そうだ。スクール水着も作ってあげよう。生地は僕が昔使ってた水着を使えばどうにかなるだろう。
lw´‐ _‐ノv 「あれ……そういえば不細工は?」
僕はぐるりと見回す。見通しの良いこの空間に不細工はもう見当たらないようだった。やはり醜い嫉妬心を受け入れるのには一筋縄じゃいかないようだ。
それはそれとして、今はプールを独り占め出来るようだし、折角だから水の中に入ろうと思った瞬間に。
目の前に女神が落ちてきた。
(*゚∀゚)「きゃっほーーーーーい!!」
女神の可愛らしい叫びが轟く水音に変わる。
誰もいないプールに飛び込む女神の姿は奇跡のように危うく美しかった。とびちる水しぶきさえ、女神の美しさを写し取るかの如くキラキラと輝く。
(*゚∀゚)「っぷは!」
女神が水面に頭を出してぷるぷると首を振る。濡れて頭に張り付いた髪が黒く艶めいて僕を誘う。ああ、今カメラを持ち合わせていたならば!
(*゚∀゚)「あひゃひゃひゃひゃひゃ!きもちー!」
女神は笑う。僕には祝福の鐘の音に聞こえた。否、確かに女神の笑い声は祝福の鐘の音だ。その声を聞けるのは僕にとってこの上ない祝福なのだから。
(*゚∀゚)「ん?シューなんだよいたのか。約束通りごすろり着てくれたんだなー」
屈託のない笑顔をこちらに向ける女神。僕はそこで女神が何も身に着けていない事に気がついた。肌色の肢体が水の中で揺らめいている!
lw;‐ _‐ノv「ツーちゃん! 服は…!」
(*゚∀゚)「あひゃー?シューしかいないんだったら別にいらないだろー!それよりもその服可愛いなー」
水の中をゆらゆらと歩きながら一糸纏わぬツーちゃんがこちらに近付いてくる。何度彼女の体を夢想したろう。何度フォトショを使って服を脱がせようとして思いとどまった事だろう。
lw;‐ _‐ノv 「あ、ありがとう。ツーちゃんも、可愛いよ。凄く…。綺麗だ」
もう、僕とツーちゃんの距離は5メートルを切っていて、プールサイドの僕には水の衣でぼかされているツーちゃんの乳首の色まで確認出来た。ちょっと濃い目の桃色。下の毛は茶色がかっていて少し薄めかな…。
(*゚∀゚)「あひゃ?なんだか女の子にそんな事言われると照れるなー。ありがとー。俺はシューの大きい胸が羨ましいぞー」
lw;‐ _‐ノv 「そ、そそ、そんな…。こんなの…、何するにも、邪魔な、だけ…」
距離が2メートル切った。ツーちゃんはプールのへりに両手をついて、今まさにプールから上がろうとしている。水の中で何度かジャンプをして勢いをつけ、ついに……。
(*'A`*)「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
瞬間。全ての光がなくなった。
(*゚∀゚)「ん?起きたかシュー。おはようなんだぜー」
lw;‐ _‐ノv 「す、凄い夢を見てしまった……」
僕はミシンの前に突っ伏して眠っていたらしい。
左頬がじんじんと痛むと思ったらミシンのボビンが深々と刺さっていた。鏡で確認するとくっきりと跡がついている。これは、跡がとれるまで時間がかかりそうだ。
(*゚∀゚)「頑張るのもいいけど、倒れるまでやっちゃ駄目だぞ。シューは頑張り屋さんすぎて俺は心配なんだぞー」
lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃん…」
恋人の優しい言葉に何か暖かいものが込み上げてくる。
lw´‐ _‐ノv 「ごめんねツーちゃん。心配させちゃったね。ツーちゃんのためだと思うと、つい頑張りすぎちゃうのは僕の悪い癖だね」
(*゚∀゚)「俺はシューが一番大事なんだからなー。いくら服やお友達があってもシューがいなかったら意味なんてないんだからな!」
lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃん……ありがとう。僕、もう少し休むよ。睡眠はこれから三時間にするし、ご飯も面倒くさくてもちゃんと一日一回は食べる!」
(*゚∀゚)「あひゃー。嬉しいんだぜー」
lw´‐ _‐ノv 「ああ、恋人がいると、健康まで良くなるんだね。ツーちゃんは本当、僕の天使だよ」
(*゚∀゚)「あひゃー。照れるんだぜ。シューはいつも大げさだなぁ。まあ、そこが可愛いけどなー」
lw´‐ _‐ノv 「そんな…ツーちゃんの方が一万倍可愛いよ」
(*゚∀゚)「あひゃひゃ。恥ずかしがりやさんめー」
lw´‐ _‐ノv 「よし。そうと決まったら服を作ろう。いい子にして待ってるが良かろう。ツーちゃんの分のゴスロリ服をこしらえるからね」
(*゚∀゚)「楽しみにしてるんだぜー」
軽く顔を洗い再び衣装作りに励もうとミシンに向かう。散乱している布切れの中から裁断済みの生地を手に取る。事前に自分の分を製作していたため、イメージは完璧に出来ていた。
lw´‐ _‐ノv 「おk。みなぎってまいりました」
(*゚∀゚)「ちゃんとご飯も食べるんだぞー」
僕の意識は目の前のミシンの針に集中する。自分が鍛え抜かれた一振りの刀のように研ぎ澄まされるのが分かった。このまま6時間は休憩なしで作業が出来るだろう。
(*゚∀゚)「なあなあ、ところで今日は大学に行かなくていいのかー」
lw´‐ _‐ノv 「大丈夫。僕大学は6年スパンで通ってるから」
(*゚∀゚)「あひゃー。シューは別に医学部じゃないよなー。のんびり屋さんめー」
lw´‐ _‐ノv 「いいんだ。僕は将来フリーでやっていく予定だから、脛を齧れるうちは大学でゆっくりやろうと思って」
(*゚∀゚)「へぇー。流石俺の恋人だなー。人生設計が将来BLで食っていけると思ってるピコサークルの腐女子の考えより甘いんだぜ」
lw´‐ _‐ノv 「て、れ、る……」
ツーちゃんと会話しながらも僕の手が止まることがない。
不思議な事に集中すればするほど、ツーちゃんの声がクリアに聞こえるような気がする。可愛いツーちゃんの声を聞きながらだと余計に作業がはかどる。それが僕が作業にのめり込む理由でもあった。
lw´‐ _‐ノv 「でも明日のゼミは絶対行かなきゃなぁ……」
大学にゴスロリ服を着て行くのは少し恥ずかしいが、女神のためなら仕方ない。僕はきっと彼女ためならどんな辱めでも受けられるだろう。
(´<_` )「シューちゃん。今日は随分可愛い格好してるな。どうしたの?」
lw´‐ _‐ノv 「そこはかとなくイメチェン…」
(´<_` )「思い切ったイメチェンだな」
lw´‐ _‐ノv 「諸行無常だからね…」
(´<_`;)「そう……」
ゼミが始まる15分前。女神をお出迎えしようと早めにゼミ室へ向かうと、そこには女神をたぶらかした糞弟者が一人で漫画を読んでいた。
(´<_` )「ところで、そーゆー服ってどこで買うの?普通の服屋に売ってないよな?」」
lw´‐ _‐ノv 「作った」
(´<_`;)「作ったって?自分で?」
lw´‐ _‐ノv 「おふこーす」
(´<_`;)「はー。シューちゃんには凄い特技があったんだなぁ。前から只者ではないと思ってたけど」
lw´‐ _‐ノv 「多、趣、味、ですから」
(´<_`;)「なんで強調するの?アピールポイントなの?多趣味」
lw´‐ _‐ノv 「まぁね」
(´<_`;)「シューちゃんは相変わらず不思議だなぁ」
(*゚∀゚)「お。なんだ二人とも来てたのかー」
(´<_` )「や。ツーちゃん」
lw´‐ _‐ノv 「おはようツーちゃん。ご機嫌如何?」
女神が現れても今日の僕はうろたえない。
何故なら今日はイメージトレーニングがばっちりだから。
(*゚∀゚)「あれ…?それ、約束のごすろりだよな…?」
lw;‐ _‐ノv 「そうだけど」
女神は不思議そうな顔でこちらを見つめている。
しまった。最低限引かれないように平均的なゴスロリよりは控えめに作ったつもりだったが気に食わなかったか?もっと気合入れてふりふりさせるべきだったのかもしれない。
(*゚∀゚)「あひゃー…。俺、超能力に目覚めたかもしれないぞ」
しかし、女神は意外なことを口走った。
(´<_` )「超能力?」
(*゚∀゚)「シューがその格好してるの、俺、夢でも見た」
lw;‐ _‐ノv 「もしかして…プール?」
(*゚∀゚)「あひゃ!?シューも超能力か!?」
(´<_`;)(あれ…?なんか俺この現象に心当たりがある気がするぞ…)
lw;‐ _‐ノv「う、運命かもしれない……」
大変です。どうやら僕の女神への想いが強すぎて、新たな世界が開けたようです。あれ?てことはあの夢で見た美しくしなやかな肢体も実際の女神の…。
lw´‐ _‐ノv 「………」
(*゚∀゚)「ん?どうした?シュー?シュー?」
(´<_`;)「うわ!シューちゃん顔赤いぞ!大丈夫か!?」
(*゚∀゚)「あひゃ!?風邪か!?ちょっとごめんなーおでこ借りるぞ」
女神は僕の頭に手を回して顔を近づける。そしてそのまま白い額をそっと僕の額に押し当てた。
lw;‐ _‐ノv 「………っ!!!」
(*゚∀゚)「んー…ちょっと熱いかもなぁ。具合悪くないか?大丈夫か?ちょっと休むか?」
lw;‐ _‐ノv 「だだだ、大丈夫……」
(´<_` )「なんだ体調悪いのかシューちゃん。無理はよくないぞ」
(*゚∀゚)「ゼミ出られるのか?大丈夫か?」
lw;‐ _‐ノv 「なんでもない。大丈夫、大丈夫だから……」
これは想定外だった。イメージトレーニングには入っていないパターンだ。
心配そうに僕の顔を覗き込む女神の白い裸が頭にちらつく。血液が体中を駆け巡るの音がハイテンポになって僕を急かした。焦燥感と罪悪感が僕を貫いて、なけなしの思考能力を奪っていく。
ツーちゃんのおでこ…すべすべだなぁ。
lw´‐ _‐ノv 「ご、ち、そ、う、さ、ま、です……」
瞼の裏で白い光が点滅するのが見えた。
ああ、女神の清らかな後光に違いない……。
(;*゚∀゚)「どうした!?」
(´<_`;)「あー。駄目そうだな。さっきまで何でもないように見えたんだが。俺が医務室運ぶわ」
(*゚∀゚)「お、俺もついて行くんだぞ!」
(´<_` )「そうしてくれ。女の子に居て貰えると助かる。さて、ちょっとごめんな。シューちゃん」
lw;‐ _‐ノv 「ふあ?」
唐突に重力から開放された。
ついに僕は女神の加護を受けて浮遊能力を手に入れたようだ。
(;*゚∀゚)「あ、あひゃ……。弟者、力持ちさんだなー」
(´<_`;)「シューちゃん軽っ!俺が力持ちじゃなくて、シューちゃんが軽いんだ。ちゃんと食ってるのかこれ」
(*゚∀゚)「おっぱい大きいのになー」
(´<_`;)「ツーちゃん、思っててもそーゆー事は言わないようにしような」
女神の声が聞こえるような気がするが、今の僕にはそれを言葉として認識する事が出来ないで居た。
浮いた体が何かにふわふわと揺り動かされるのが気持ち良い。白い光が頭の中に広がって、それに押されるように意識が散っていくのを感じた。
駄目だ。ゼミは出ないと……。女神…が……。
lw;‐ _‐ノv 「……ゼミ、ゼミ行かなきゃ……」
(*゚∀゚)「お、大丈夫か!?シュー」
清冽なる白い光を振り切って瞼を上げると、そこには女神が居た。
僕は慌てて寝かされていたベッドから上半身を起こす。あまりにも急に動くものだから、少し眩暈がした。
(*゚∀゚)「ゼミならもういいぞー。弟者が教授に事情話してくれるって言ってたから心配せずに休めー」
lw;‐ _‐ノv 「め…、ツーちゃん……?あれ?ここは…?」
(*゚∀゚)「医務室なんだぜ。今先生いないみたいだから、勝手にベッド借りたんだ。弟者はシューの事運んだ後ゼミに戻ったけど俺は残ったんだ。気がついたとき誰もいないと寂しいからな」
慈悲溢れる僕の女神はゼミを棒に振ってまで僕に付き添ってくださった!
なんという寵愛!なんという幸い!僕の頭には祝いの賛美歌が鳴り響く。
lw´‐ _‐ノv 「ありがとう…ツーちゃん…僕…」
(*゚∀゚)「でもなー。俺なー。シューの事ちょっと恨んじゃうかもしれないぞ」
lw;‐ _‐ノv 「え?」
(*゚∀゚)「弟者にさ。お姫様抱っこされてたんだ。シュー」
lw;‐ _‐ノv 「なんと…」
(*゚∀゚)「ずるいよなー羨ましいんだぜ」
僕は女神があの糞弟者にご執心なのを思い出す。全く余計な事しやがって糞弟者め。
lw;‐ _‐ノv 「全然覚えてないから…後でお礼言わないとだね」
(*゚∀゚)「ずるいよなーずるいよなーずるいよなー。弟者は優しいから誰にでもそうやって優しくするんだけど、たまにその弟者の優しさに付け込むあばずれがいるんだ」
lw;‐ _‐ノv 「つーちゃん……?」
(*゚∀゚)「わざわざ弟者の居るところで倒れるなんてシューちゃんはずるいな。いくら弟者が優しいからってそこまでして男に媚びたいのか?」
僕の女神は、僕を心配してくれたのと同じ表情で、同じトーンで、僕を呪う。
(*゚∀゚)「その服も弟者に見せるためにわざわざ今日着てきたんだろ?そんでわざわざ弟者と二人きりになるために早めに来たんだろう?楽しそうに話してたもんな」
lw;‐ _‐ノv 「違う…これは、ツーちゃんに、見せるために……」
ベッドの傍の丸椅子に腰掛けていた女神は、こらえ切れないように静かに立ち上がった。
今まで同じ視線だったのが、自然、僕が見下される形になる。
そして今までベッドの陰になって見えなかった女神のその白魚のような美しい指にはしっかりと、
白銀に煌く、可愛らしい果物包丁が握られていた。
(*゚∀゚)「嘘吐き」
女神の腕はその聖剣に光を集めるように振り上げられる。
その可愛らしく曲げられた肘には僕を破壊せんとする力が蓄積されている。
lw;‐ _‐ノv「え……?」
彼女は振り下ろす。その右手に確実な悪意を携えて。
鋭い剣先は僕の脇腹に喰らいついた。
作ったばかりのゴスロリ服の防御力は勇者の初期装備にも劣るらしい。
可愛らしい果物包丁は易々と僕の皮膚を捕らえ僕の肉を捕らえ僕の内臓を捕らえ僕の血を啜った。
lw;‐ _‐ノv「いた…い…?」
(*゚∀゚)「嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐きあばずれ」
lw;‐ _‐ノv 「あ………」
女神は僕の身体に穴が開いたことなど気にも止めない。
彼女はまるでそれが当然と言わんばかりに、右手を自身の身体に引き寄せた。
水っぽい音と共に僕の身体は尖った金属から開放される。
どくん、どくんと僕の鼓動に合わせて脇腹から血液が流れ出る。
ああ、僕の服が汚れる。
折角、僕、女神のために……。
(*゚∀゚)「あひゃ。このあばずれ!売女!牛みたいなだらしない乳をぶら下げて男を誘ってるんだろう淫売!穴としてしか男にアピール出来ない哀れな牝牛の癖に!弟者に近付くな肉便器!!」
鈴を転がすような可愛らしい声でおぞましい言葉を吐き出される女神。
宇宙の最高傑作である儚くも美しいかんばせで下世話な台詞を仰られる女神。
創造主が与えたもうた透き通るような至高の身体で悪意をぶちまけられる女神。
lw;‐ _‐ノv 「女神は……気性が荒くていらっしゃる」
刹那、女神の甲高い叫び声と共に僕らごと医務室は溶けた。
次の瞬間、そこはコンクリートで囲まれただだっ広い倉庫のような空間だった。
lw´‐ _‐ノv 「なるほど…」
ここはかの有名なイベントが毎年開催される会場だろう。倉庫中に折りたたみの簡素な長机とパイプ椅子が並べられていた。
しかし、そこに居るはずの人間は今は居ない。
僕と、女神以外には。
(*゚∀゚)「弟者はな。俺の事が好きなんだ。だってあんな事があっても俺の事許してくれるって、今まで通りにって、言ったんだぞ?」
lw´‐ _‐ノv 「そう」
(*゚∀゚)「弟者はな!俺の事を愛してるんだ!だけど弟者は恥ずかしがりやで優柔不断だから、お前みたいなあばずれにも構っちゃうんだ!全く弟者はどうしようもないなぁ!」
lw´‐ _‐ノv 「そう」
(*゚∀゚)「俺は弟者を愛してるんだ!弟者も俺を愛してるんだ!弟者も俺を愛してるんだ!弟者も俺を愛してるんだ!」
lw´‐ _‐ノv 「恐れ多くも女神」
僕は膝をつく。
今までのような友達としてではなく、
高貴なる女神の僕(しもべ)たる哀れな愚民として、
女神に申し上げなくてはならない事がある、と感じた。
(;*゚∀゚)「な、なんだよ」
女神は跪いた僕を不気味に思ったらしく言葉を詰まらせる。
全く、可愛くていらっしゃる。
lw´‐ _‐ノv 「女神は、勘違いをしていらっしゃいます。」
(;*゚∀゚)「な、なんだ!?言い訳しても無駄だぞ!?わかってるからな!!」
女神の声がこの無駄に広い空間に響き渡る。
女神がいらっしゃるのなら、飾り気のない殺風景なイベント会場でさえ、荘厳な教会に変わる。
lw´‐ _‐ノv 「そう簡単に、愛を、語られてはいけません」
(*゚∀゚)「うるさい!お前に言われる事じゃない!」
lw´‐ _‐ノv 「愛を語るのは、本当に愛するよりも、簡単な事ですから」
(;*゚∀゚)「……な」
ぐらりと、地面が揺れる。
そこは、黄色く変色した畳と、それを仕切る襖によって形成された空間だった。
100畳はあるだろうか。開けられた襖の向こうにも無限に続くかのような畳が見える。
lw´‐ _‐ノv 「ああ、いいロケーションだ……。本当、夢で撮影が出来たらいいのに」
(;*゚∀゚)「は?」
lw´‐ _‐ノv 「女神、僕は申し上げます。愛は口に出すには、あまりにも汚くて、不安定なものです」
(;*゚∀゚)「違う!違う!愛は、俺と弟者の愛は、綺麗で、強くて、完璧で、凄いんだ!」
lw´‐ _‐ノv 「女神、僕は申し上げます。そのような幻想を打ち捨てて、利己的な妄想を取り払って、やっとの事で、想いは愛へと昇華するのですよ」
(;*゚∀゚)「い、意味わかんねーぞ!!」
lw´‐ _‐ノv 「つ、ま、り」
すとん、涼やかな音がこの場に響き当たる。
今まで開かれていた四方の襖たちが見えない手に導かれるように閉じていった音だった。
12畳の部屋に閉じ込められた僕らは対峙する。互いの愛を武器にして。
lw´‐ _‐ノv 「僕には、貴女の憎悪すら愛おしい」
(;*゚∀゚)「あひゃ……」
lw´‐ _‐ノv 「恐れてくれるな僕の女神。愛はここにある」
僕は女神の足にキスをしようと跪く。彼女の幼い柄の靴下を脱がそうと手を伸ばした。
(;*゚∀゚)「ちか、近づくなぁぁあ!」
瞬間、世界が虚無へと落下する。
lw´‐ _‐ノv 「ん………」
(*-∀-)「ん………?」
目を開くとそこは大学の医務室のベッドだった。僕の傍らには丸椅子に腰掛けた女神が僕のベッドに突っ伏していた。
どうやら、僕と一緒に眠っていたらしい。
lw´‐ _‐ノv 「………」
僕は夢の余韻もさることながら、その大層可愛らしい寝顔に心奪われる。
是非とも形として残そうと懐のポケットに手を入れた。そこにはデジカメが収まっている。
(;*゚∀゚)「あひゃ……?起きたかー?具合はどうだ?熱は?」
しかし、それは叶わなかった。目の覚めたらしい女神が僕の顔を覗き込む。
そして、その右手をおずおずと僕の額に合わせるべく僕の顔と同じ位置まで持ち上げた。
当然、彼女の手の中には何も存在しなかった。
そして女神は壊れ物でも扱うように、遠慮がちに僕の額に手を合わせる。
それは冷たくて、酷く気持ちがよかった。
(;*゚∀゚)「あひゃ。もう熱はないみたいだな。大丈夫だ」
lw;‐ _‐ノv 「ごめん…僕…」
(;*゚∀゚)「ん?何がだ?ゼミなら大丈夫だぞ。弟者に事情話してもらったからなー。俺は目が覚めたときシュー一人だと心細いかと思ってついてたんだ!い、一緒に寝ちゃったけどな!」
lw;‐ _‐ノv 「あ、ありがとう……」
(;*゚∀゚)「じゃ、じゃあ俺行くからな。ゆっくり休んでろよ!」
lw;‐ _‐ノv 「ありがとう。弟者にも、ありがとうって伝えといて貰えると嬉しい」
(;*゚∀゚)「わかったんだぜー!じゃあな!」
女神は傍らの鞄を手に取ると足早に医務室を後にした。
残された僕は、自分の夢を、額に合わせられた冷たい掌を思い出して、
一人赤面した。
恋人が出来てからと言うものの僕の無意識は少し暴走し過ぎかもしれない。
心なしか女神も何かぎこちない感じだった気がする。いやそんな女神ももちろん可愛いのだが。
しかしそこでふと、女神の今日の言葉を思い出す。
『俺、超能力に目覚めたかもしれないぞ』
lw;‐ _‐ノv 「まさか……」
最近の僕の心臓の稼働率は本当に異常だ。
そのうち、死ぬかもしれない。
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