川 ゚ -゚)「ドクオか、懐かしい名前を出すじゃないか」

( ^ω^)「思い出でしかないとでも言いたいのかお、今も会っているんだお?」

川 ゚ -゚)「……さぁね、覚えはないが?」

のらりくらりとかわされてしまい、ブーンは眉をひそめる。
それに気付いたマリアンヌは、『にい』と顔を嫌らしく歪ませた。

川 ゚ -゚)「これでも、そう暇な訳じゃあないんだよ。 恋人も待たせてしまっているしね。
     理解出来ないような事を言うつもりなら、申し訳ないが、帰って欲しい」

( ^ω^)「理解出来てない訳がないお!」

川 ゚ -゚)「何故だ? 私とドクオが会っているという証拠でもあるのか?」

ブーンは、何も返せなかった。

情報を得るというのは、相手の協力があって初めて成り立つものである。
知らぬ存ぜぬの一点張りをされてしまうと、情報を聞こうとしている側はどうする事も出来ない。
ブーンはドクオとマリアンヌが協力者であるのを確信している。
しかし、それ故にマリアンヌから情報を聞き出すのは難しい。

協力者が情報を流すというのは、つまり、『裏切り』になるのだから。






( ^ω^)「それでも、クーはドクオと会っている筈だお」

当然、この展開をブーンが予測していなかった訳ではない。
むしろここまでは思った通りに進んでいた。

川 ゚ -゚)「……どうやら色々と知ってしまったようだな」
     ならば私もはぐらかすのを止めよう、確かに、私は今もドクオと関係を持っているよ」

( ^ω^)「知ってるお」

川 ゚ -゚)「という事はつまり、私がドクオの居場所を教える筈がないという訳だ。
     ……ふふ、無理矢理聞き出そうとでも言うのか?」

( ^ω^)「その必要はないお」

川 ゚ -゚)「何故だ?」

( ^ω^)「君が、ドクオを裏切るからだお」

言い切られた言葉に、初めてマリアンヌが動揺を表情に示す。

ブーンの瞳に、一切の迷いはなかった。
つまり『裏切り』を第一前提に置いて、話をしに来たという事になる。
その冷やかな異常さに、マリアンヌは僅かな身震いを覚えた。






川 ゚ -゚)「面白い、面白いなぁ、昔とは随分変わってしまったようだ」

( ^ω^)「クーは昔から何一つ変わってないお」

川 ゚ -゚)「……ならば聞かせて貰おうじゃないか、ブーンが私の元に来た理由。
     そして、私がドクオを裏切るという、その理由をな」

( ^ω^)「分かったお」

ブーンは記憶を振り返る。
小さな頃の記憶から、つい先日に至るまで、一切の取り逃がしもなく、全てを。
マリアンヌに話す言葉を纏める為、そしてもうじき会えるドクオに想いを馳せる為だった。

( ^ω^)「よくよく考えれば初めから分かり切っていたんだお。
       僕がドクオに不死のルールを教えられ、不死の実験台にされた日から」

川 ゚ -゚)「ほう?」

( ^ω^)「あの日教えられたルールの中に『不死の口付け、能力の受け渡しは異性間でのみ行える』
       ……というものがあった。 ならば、僕を不死に変えた人物は一体誰だったのか?」

川 ゚ -゚)「それが私という訳か?」






( ^ω^)「そうだお、ドクオが故郷に戻ったのは、僕を被験者にする為だけではなかった。
       引っ越して居場所が分からなくなったクーの連絡先を見つける為だったんだお」

川 ゚ -゚)「そして連絡をとった私と共に、ブーンを不死にした……成程な」

マリアンヌはどこか楽しそうで、ブーンは懐かしくも、謎解きが好きだった少女の姿を思い出していた。

( ^ω^)「フッサールの件もそうだお、この街で不死になっているのはアーラシのレッドチームだけだと聞いた。
       それなのにフッサールは不死になっていた……君という特別な恋人がいたから」

川 ゚ -゚)「折角不死に出来るんだ、恋人くらい不死にしたいものなぁ」

( ^ω^)「それに君自身、自分がドクオの協力者だというのを仄めかしていたお」

川 ゚ -゚)「そうだったか?」

( ^ω^)「僕達がカフェで出会った時、僕はそれが偶然だったと思っていた。
       でもあれは君の意志だった、 謎かけという形でヒントを渡しに来たんだお」

川 ゚ -゚)「『何かを知りたいのなら、まず自分が何であるのかを考え直すことが必要』か」






( ^ω^)「自分を考え直した時、僕は過去を振り返った。
       その時、ドクオとクーと……そしてヒートと遊んだ日々が一番に浮かんだお」

コーヒーを一口飲み、マリアンウは『へえ』と漏らした。
その仕草は、まるで僅かに揺れてしまった心を、一度元に戻そうとしているかのようだった。

( ^ω^)「それにヒントを態々僕にくれたという事は、クーはもう止めたかったんだお。
       ……自分がしている事が不毛であると気付いたから、だから」


川 ゚ -゚)「つまり、もう君は分かっているのだな、私の本心を」

その問いかけにブーンは言葉を躊躇い、無言で頷いた。
軽く微笑むようにして、マリアンヌが続ける。

川 ゚ -゚)「……ならば突きつけてもらおう、私の本心、君の話で唯一抜けている部分を」

川 ゚ -゚)「根本的な部分が無いんだよ、何故私がドクオに協力したのか。
     そして裏切った理由、君の話は断片的なものばかりだからね」

川 ゚ -゚)「私の行動の中には、そうさせている一本の筋がある。
     その筋があるからこそ私は矛盾しないし、真っ直ぐに進めるんだ。
     ……さぁ、答えを示してくれ、ブーン=マストレイ」






今まで、ブーンがマリアンヌの謎かけに即答出来たこと等なかった。
もし答えられたとしても、それは時間をかけたものばかりで、悩まされたブーンの負けには変わりない。


( ^ω^)「……ドクオが母親を殺した日を、僕は忘れないお。
       きっと、それは君も同じ、いやクーは僕以上に強く、記憶に刻んでいる筈だお」

( ^ω^)「クーは窓を叩いていた。 涙を流しながら何度も何度も。
       大きな音を立てて、泣き喚いて、ドクオに気付いて欲しくて、振り向いて欲しくて」

( ^ω^)「あの時からきっと、クーの気持ちは変わらなかった。
       だからドクオに協力したし……もう無理なんだと悟って、誰かに止めてほしくなった」


そして、今ようやく、すぐに答えを返す事が出来た。
しかし同時にそれは、これまでで一番難解な問題であったに違いなかった。


( ^ω^)「今も昔も変わらないその気持ち、君の中の一本の筋。
       それは……マリアンヌ=クークルゥがドクオ=サンライズを愛していること、だお」







マリアンヌは、その時、自分の中にあった何かが崩れ落ちる音を聞いた。
耳鳴りが起きそうな音に、他の一切が見聞き出来なくなる。
築いてきた過去、望んでいた未来。
それらは全て幻だったかのように、一瞬で崩壊してしまった。

川 ∀ )「はは、あははははははははははははははははははははははははははは……。
     はははははは、あははははははははっ、ははっ、ははははははははははは」

笑うことしか出来なかった。
楽しい訳でもないし、愉快なはずもない。
ただ無性に、腹の底から笑いたくなったので、本能のまま大声を上げて笑った。

川 ゚∀゚)「その通りだよ、ブーン=マストレイ!
     私は好きだったんだよ、ドクオ=サンライズが!
     愛していたんだ。 小さな頃からずっと、ずっとだ!!」

( ^ω^)「……でも、ドクオは君を愛さなかった」

川 ゚∀゚)「ああ、しかし、いつかきっと目を覚ましてくれると信じていた。
     その時に一番身近な存在であれば、彼が愛するのは私だと思った!」

ポーカーフェイスは見る影もなく、思いのままに叫ぶマリアンヌの姿は、
人間が所詮動物であるという事を端的に示していた。






川 ∀ )「それでもドクオの頭からヒートが消えることはなかった!
     私の事になんて一切目もくれず、ただ死人に愛を捧げているんだ!」

( ^ω^)「だから、終わりにしなきゃいけないんだお。
       ドクオのやっている事は誰一人として幸せになんかしないから」


川  - )「……そうだな、もうゲームは終わりだな」


マリアンヌは手帳に筆を走らせ、そのページを切り取った。
ブーンに手渡されたその紙には、住所と思われる文字列と、簡単な地図が書かれていた。

川  - )「ドクオはここにいるよ、恐らくな」

( ^ω^)「恐らく?」

川  - )「……私は、ここ暫くドクオに会っていないんだ」

その表情は憂いを帯びていて、それ以上の追及を許さなかった。
俯くマリアンヌを置いて立ち去ろうとすると、背中に声をかけられる。







川  - )「ドクオの道が間違っていたとしても、私は彼が幸せだと言いたい。
     愛する人の為に全てを懸けられるというのは、きっと、幸せなんだと。
     ……じゃないと、彼も、私も救われないじゃないか」


( ^ω^)「……僕には君たちが幸せとは言えそうにないお」


残された言葉と、去りゆく背中を、マリアンヌは静かに見送った。


酷く疲れている気がする。
自らの心も定まらないまま、ふと天井を見上げる。


『あの時』と同じように、得体の知れない黒いものに包まれる感覚。

頬を、涙が伝っていた。







古びた研究所には、いつものように彼と私の二人だけ。
埃っぽい大量の書物を漁る私と、人体の構造を自分の体を以て調べている彼。
不死の体はこれ以上ない程の人体サンプルとなり、右手で左手を切り裂くのに夢中になっている。
横目でそれを覗きながら、私はページを一つ捲った。


('A`)「……どうした、何か参考になるものでも見つけたのか?」


そんな私の様子は気付かれてしまったらしく、ドクオが尋ねる。
視線は一切動かされていないというのに、どうして分かったのだろうか。

川 ゚ -゚)「いや、特には目新しい発見はないよ」

('A`)「そうか、まぁそこら辺は百回以上見直したからな……」

その言葉の通り、どの本も皺くちゃになっていて、使い古された感が漂っていた。
命を懸けた研究であるというのを改めて思い知る。

川 ゚ -゚)「……少しくらい休んだ方が良いんじゃないか?」

('A`)「まだまだ休む気にはならないさ」






川 ゚ -゚)「そうは言っても、ここ最近は徹夜も続いている」

('A`)「過労死は四度程体験したが、中々面白い体験だぞ」

態度こそ悠悠としているが、頬はこけ、目の下は隈で黒く染まっている。
一心不乱に研究に打ち込む姿は、もはや病的であり、他者の意見など受け入れようはずもなかった。

川 ゚ -゚)「肉体的じゃない、精神的な問題を指摘しているんだ。
     睡眠もとらず、自分の体を傷つけるばかりでは気が狂ってしまう」

('A`)「人の精神が壊れる瞬間か、それもまた一度は体験してみたいな。
    脳の異常がそうさせるのか、それともまた別の、理論を超えた現象なのか……。
    口付けで治るのかどうか、もし壊れたら試してくれよ」

川 ゚ -゚)「……いい加減にしてくれ、少しはこっちの話も」


('A`)「いい加減にするのはそっちの方じゃないか?」


私の言葉に被せるように、ドクオは言い放った。
いつの間にかに研究は中断されていて、視線は私に向けられていた。






('A`)「俺は確かにクーに感謝もしている、ここまで来れたのはクーのおかげた。
    だが今となってはそうでもない、俺に協力してくれる人はクー以外にも山ほどいる。
    そこをどうしてもと言うから、一緒に研究させてやっているんじゃないか」

('A`)「それをなんだ、最近は休めだの、研究以外にも何かしろだの、邪魔をするような事ばかり。
    黙って研究に打ち込めないというのなら、今すぐ出て行って貰えないか?」

つらつらと語られる言葉に、胸が締め付けられる。
想い人にこうまで言われるだなんて。 私は少しの心配をしただけなのに。
しかし、思えば、最近はこのような文句をつけられるのが多くなったのも、確かだった。

川 ゚ -゚)「すまない、気を悪くさせたなら謝る」

('A`)「また一言謝って終わりか、いつもそれだな。
    態度を改める気が無いなら謝罪する意味なんて無い」

しかし今日のドクオは幾分、機嫌が良くないらしく、苦情は続いた。

('A`)「俺にとってこの研究は生き甲斐であり、全てだ。
    それを邪魔されるのがどういう事か分かるか?
    生きるのを否定されるのと同じだ、俺に死ねというのか?」






彼の苛立ちが、一過性のヒステリックである事は十分に承知しているつもりだった。
現に今までも、こうして怒りをぶつけられた後、彼は何倍も優しく私に接してくる。
その時の申し訳なさそうな表情が可愛くて、愛おしくて、私はいつまでも傍に居たいと思っていた。

しかし、今回は勝手が違った。

('A`)「……この研究はヒートに出会う唯一の手段なんだ。
    彼女こそが俺の全てなんだ、俺にはヒートがいないと駄目なんだ。
    ……居てもいなくても変わらない、お前とは存在価値が全く違うんだ」

川 ゚ -゚)「……っ」

私はどうしても冷静でいられなかった。

研究がヒートの為だと聞いたからではない。
存在をどうでもいいと言われたからでもない。
私と死人とを比べて、一切の迷いもなく、死人が選ばれた事が不服だった。

小さい頃から感じていた嫉妬。
妹という、本来選択肢に成りえない存在に私は負けてきた。

それが、妹から死人になっても、私は敵わないというのか?

ふざけるな。






ドクオに駆け寄り、首に手を回し、唇を奪った。
強引に舌をねじ込み、唾液を流し込み、舌と舌とを執拗に嬲らせ合う。
不死の力とはまるで関係のない『性』を感じる口付け。
その瞬間だけは、ヒートへ捧げられていたドクオの愛が、私のものだった。

数十秒に及ぶ口付けは、ドクオが私の唇を噛むことで終わった。
ロマンチックさの欠片もなく、痛みと鉄の匂いが、物悲しく心に沁み入った。

('A`)「……何をする」

川 ゚ -゚)「女の私を引き剥がせないなんて、やはり力が弱いな」

(#'A`)「何をする、と聞いたんだ!!」

川 ゚∀゚)「ははは、精神が壊れたなら口付けをしろと言ったのは君の方だろう?
     しっかり効くように念入りにしてやったんだ、むしろ礼を言って欲しいね」

(#'A`)「貴様……!!」

もう自分の暴走を止められる気はしなかった。

口を動かしている自分と、冷静に自分を見つめている自分とに、私は分離していた。
これで終わりだな、と後者の私は悲しむ訳でもなく達観する。

きっと、いつかこんな日が来るだろうと予期していたのだ。






(#'A`)「出て行け、そして二度と俺の前に姿を現すな!!」

川 ゚∀゚)「そうか、じゃあ最後に言わせて貰うよ、ドクオ。 
     私は君が大好きだ、愛している、こんな研究は絶対に上手くいかない」

(#'A`)「不愉快だ、早く出て行け……!!」

川 ゚∀゚)「狂ってる、お前は狂っているよ。
     私の愛を素直に受け入れれば良いものを、ああ勿体ない!!」

(#'A`)「狂ってても良い!! 俺は、俺はヒートともう一度会えるならば、それで……!!」


彼と会ったのは、この日が最後だった。
それからは手紙で連絡を取り合う程度。

こんな事があってもまだ、彼の言う通りに従う私も狂っているのだろう。







ミ,,゚Д゚彡「……マリアンヌー、お客さんは帰ったー?」

そろそろと家の扉を開け、忍び込むかのように帰宅するフッサール。
家の中はしんとしていた為、ああ客は帰ったのだな、とほっと一息ついた。

ミ,,゚Д゚彡「マリアンヌー、フッサールが帰ったよー?」

返事はなかった。
普段は優しく迎え入れてくれる声が聞こえてこない。
心が寒くなったフッサールは、急ぎ足で家中を探索する。

風呂場やトイレや台所を見回ったところで、リビングが一番可能性が高い事に気付き、
自画自賛しながら、勢いよく扉を開いた。

すると、

ミ,,;゚Д゚彡「ま、マリアンヌ!?」

マリアンヌが、部屋の中央に横たわっていた。
良からぬ事態が起きたのかと、慌てて抱き上げる。






川 ゚ -゚)「……ん、フッサール?」

ミ,,゚Д゚彡「あ、起きた、なんだぁ、お昼寝してただけかぁ!」

『ふー』と汗を拭くような仕草をして、微笑む。
ここでマリアンヌが頭を撫でてくれよう事を期待したが、それは訪れなかった。


川  - )「フッサール……私な、私はな……」

ミ,,゚Д゚彡「どうしたの、元気ないね?」


川  - )「私は……君の事を、愛してなかった」

ミ,,゚Д゚彡「……え?」


落雷が、体を劈いた。

静かに呟かれた筈だったのに、その言葉はけたたましい音を響かせ、
何度も何度も自分の中で木霊する。

鼓動が不規則に乱れ、加速し、煩わざるを得なかった。






ミ,,゚Д゚彡「えと……どういう事なの?」

川  - )「……私には元々、好きな人がいたんだ。
     小さな頃から、ずっとずっと、大好きな人が」

ミ,,゚Д゚彡「うん」


川  - )「でも、その人には私以外に好きな人がいた。
     私のことなんか見てくれなくて、私の名前も呼んでくれなくて……」

川  - )「そしてそんな境遇に満足できなくなった私は、愛を別の形で補う事にした。 
     つまり別の人から愛してもらう、つまりフッサール、君からの愛だ。
     私は彼から愛してもらえないから、君から愛される事で代えようとしたんだ!!」


フッサールは、これが何かの冗談であればと願った。
しかし悲痛に言葉を紡ぐマリアンヌの姿は、至って真剣であり、本当の想いだった。

だからこそ、聞き届けなければならないと思った。

例え悲しくても、心が張り裂けそうでも、ここで逃げてはならない。

何故なら、フッサールは―――。






ミ,,゚Д゚彡「そっか……マリアンヌは僕が好きではなかったんだね」

川  - )「……すまない、本当にすまない」

ミ,,゚Д゚彡「よく考えたら、マリアンヌみたいな人がいきなり僕を好きになってくれる訳もないしね」

実際、マリアンヌがフッサールを相手に選んだのも、
警戒心が薄く、騙しやすそうな人間であったからだった。
本人にそれを指摘され、自業自得ながらにマリアンヌの胸はずきりと痛んだ。

ミ,,゚Д゚彡「でさ、今日でその人とは決着がついたの?」

川  - )「ああ、絶対に叶わないと知ってしまったから。
     ……もう、全部終わりにしないといけないんだ」


『君との関係も』とマリアンヌは続けようとした。
仮初の愛にも、今日限りで決着をつけなければならないと感じていたのだ。

しかし、ここで思いもよらない事態が起きた。

フッサールが、飛びつくように、抱きついてきたのだ。





ミ,,*゚Д゚彡「良かった! なら僕がマリアンヌを好きでいるのに問題はないんだね!」

川;゚ -゚)「な……!」

ミ,,*゚Д゚彡「あ、でも今は恋人じゃないから抱きつくのはNG、NG?
       でも嬉しいから我慢してね! 温もりを感じたいから我慢してね!」

脳内の回線がパンクする程、マリアンヌは混乱していた。
今まで騙され続けた女を、まだ好きでいるとフッサールは言うのだ。
なんの邪念もなく、屈託のない笑みを向けてくる。

何も分からなくなった。
どこか夢心地で、体がふわふわと浮いている気さえしていた。

全ての考えが吹き飛んだ時、残されていたものは、フッサールの温かさだけだった。

川 ゚ -゚)「良いのか……私は君を騙していたんだぞ……?」

ミ,,*゚Д゚彡「女は騙すくらいが丁度いいんだよ! 小悪魔テクってやつ?」

川 ゚ -゚)「また君を裏切ってしまうかもしれない」

ミ,,*゚Д゚彡「裏切りたくないくらいの男に僕は成長するよ!」





川 ゚ -゚)「どうしてそうまで言ってくれるの……?」

ミ,,*゚Д゚彡「決まってるさ、だって僕は―――」

フッサールは、何度この言葉を言ったのかは分からない。
マリアンヌは、何度この言葉を聞かされたのかは分からない。

だがそれでも、両者は胸を高鳴らせるのだ。
永遠に色褪せない記憶として、その胸に刻むのだ。


ミ,,*゚Д゚彡「マリアンヌの事を、愛しているから!!」


その瞬間、得体の知れない黒いものが、空に浮かんで消え去った。
小さな頃からの呪縛から解き放たれたマリアンヌに、世界はより鮮明に映った。

愛は、その時をもって真実に変わった。
数えきれないくらいに繰り返された先にようやく起きたそれは、奇跡と呼んでいいのだろう。
世界の中心で微笑むフッサールに対して、マリアンヌ微笑み返し、言った。







川*゚ -゚)「私は、絶対に君を好きになるんだろうね」





ミ,,*゚Д゚彡「君は、絶対に僕を好きになるんだからね」






絶望に効く特効薬は、一つの純粋な愛だった。





―――The story might continue







オーサム=レッドフィールドは棺桶が大きすぎてアラマキの屋敷に入りにくい
ロマネスク=ローレールはへっぴり腰なのに勇敢
フッサール=ストーンナビットはマリアンヌ=クークルゥという世界の中心で愛を叫んだケモノ

お疲れ様です。
ありがとうございます。
第六話のサブタイトルの意味が変わってくるかなと
今日は終わりです。
それでは。
また。



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