( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです
サイドストーリー──八頭身の決意
「でっけー!!お前何cmだ!?」
「あ、いや・・・190っす。」
"でかいから"という理由で誘われたバスケット部
中学で既に190ある僕は、先輩達からも注目されていた。
バスケットは少し知っているだけだった。
ドリブルも上手くつけない僕だったが、初心者組みには入れてもらえず
2,3年と一緒の練習だった。
元々体力のない僕は、途中何度も休みながら練習していた。
「おい!ちゃんとドリブルぐらいつけ八頭身!」
ドリブルを失敗した僕をしかる3年生
「す、すいませ─
「コラァ!!一年いびりをするんじゃない!」
突如現れたその人は、髪が黄色の変わった人だった。
「おお!マネージャー乱入か!」
髪が黄色い人はどうやらマネージャーらしい。
「あーもう。一年には一年の練習をさせないと・・・」
「だってコイツ一年って感じしないし・・・」
「うるさい!」
黄色の髪の人は3年生を怒鳴りつけると僕の方に歩いてきた
「大丈夫、ドリブルなんて練習すればできるから。」
満面の笑みで話しかけたその人は、そのままどこかに行った。
これが、僕と1さんの出会いだった─
それから僕は毎日ちゃんと練習した。
黄色の髪のマネージャー。1さんに認めてもらうために。
身長が高い事をいかすようなプレイ。これだけを必死に練習した。
体力はあまりないけど、少なくともプレイ中だけは走れるようにした。
中体連。ついにこの大会がやってきた。
3年生は負けた時点で引退である。
まだ一年の僕だったが、元々少ない人数の部活だったのでユニフォームを手にすることが出来た。
初戦は、VIP北中。バスケでは有名な学校だ。
勝てるはずが無い。みんなそう思っていた。
僕も、そう思っていた。こんな弱小チームじゃ勝てない。と
そして、ついに試合は始まった
前半はあっけないものだった。
相手にカットされ、そのまま速攻をだされる。
こっちが特に何かできるわけではない。
完全にVIP北中のペースだった。
やはり、こんなものか・・・。
ベンチも既に盛り下がり、プレイヤー達でさえ、既に気力をなくしていた。
前半終了、残るは2つのQだけとなった。
休憩の間、特に誰もしゃべるわけでもなく時間が過ぎた
そして、ついに後半が始まった。
後半開始5秒。
あっという間にVIP北中は点を入れた
僕たちの戦意をなくすのには十分な攻撃だった。
だけど、たった一人大きな声を上げている人がいた
「あきらめちゃだめだ!絶対にあきらめちゃだめだ!」
1さんだ。
こんな状況でも1さんはプレイヤーの事を信じている
信じてくれている
僕は決心した。
「先生、僕を出してください」
先生は驚いたような表情を僕に見せた
「この試合、どうしても勝ちたいんです。」
「勝ちたいって…・お前……」
僕は黙って先生を見つめた
この試合どうしても負けるわけには行かない─
「選手交代です!」
オフィシャルが大きな声で告げる
僕はコートに足を踏み入れた
「先輩!あきらめちゃダメです!最後まで戦いましょう!」
自信なんてないけれど、僕はにこやかに笑った
僕の背中を押してくれる人が居る。僕を支えてくれる人がいる。
「……そうだな、そうだよな!」
「あやうくあきらめるとこだったぜ!」
「サンキュー八頭身!おっし!追い上げだ!」
先輩達の顔に、笑顔が戻った
「先輩!コッチです!」
ハイポストを取った僕はボールを要求した
中学で既に190ある僕が腕を伸ばせば、相手は届くわけもなかった。
ボールをもらってすぐに、振り向いてシュート。
練習で、いつもやってきた事だ
このシュートは・・・はずせない!
パスッ
ボールはリングに吸い込まれた。
「おし!お前らしかけるぞ!」
オールコートプレス。
相手がボールをだすところからディフェンスをしかける
ボールを持った相手には、2人がかりでボールを奪う
ウチの中学が最も得意とするディフェンスだ。
パァァン!
「ナイスカットです!先輩!」
「おっしゃ!いくぜ!」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
後半残り1分、ついに僕たちは試合を振り出しに戻した
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
「大丈夫か八頭身・・・」
「大丈夫です・・・あと、一分で・・・」
「きたぞっ!」
パスッ
VIP北中がシュートを決める
残り40秒、2点差──
Gのキャプテンがボールを運ぶ
「どうする・・・時間をかけてせめても、まだ逆転されるには時間がある・・・」
残り30秒──
「延長に行ったら・・・間違いなく負けだ」
残り28秒──
「どうする・・・どうする・・・」
「先輩!!シュートです!!」
僕は思わず叫んだ
たとえ外れても、僕が必ずリバウンドを取る、取ってやる──
キャプテンは、大きくヒザをまげボールを放った
ボールは大きな弧を描いた
大きく、きれいな弧を。
パシュ
3Pラインの外側から放たれたそのシュートは
ネットを揺らした
残り時間25秒
49対48
僕らがこの試合、初めてのリードを奪った
「守れ!守れ!この一点は絶対に守れ!」
キャプテンが叫ぶ
「後20秒です!勝ちましょう!」
僕も叫ぶ
その時、VIP北中の4番がペネトプレイをしかけてきた。
「くっ」
抜かれる先輩。残るディフェンスはゴール下の僕だけとなった。
止まるか──それとも抜いてくるか──…
キュッ
4番は急にストップし、高く飛び上がった
このタイミングなら・・・・ブロックできる!!
※ペネトプレイ・・・選手が一人でつっこむ。
その時だった。
4番は急にバランスをくずした
抜かれた先輩が、4番を後ろから押したのだ
「なっ・・・」
バランスを崩したせいか、僕もブロックのタイミングをはずしてしまった。
4番は必死に空中でシュートを放つ
バランスを崩したまま・・・シュートを放つ
パスッ
シュートは決まった
残り時間4秒
49対50、さらにVIP北中のフリースロー一本
「す、すまん八頭身。完璧ブロックできていたのに・・・」
ファウルをした先輩が僕に謝る
「はぁ・・・はぁ・・・大丈夫です・・・これはずしたら、速攻だしますよ」
「お、おう。頼むぜ八頭身」
VIP北の4番がシュートを構える
一瞬の沈黙──そしてはなたれた
ガコンッ
シュートは外れ、ボールは八頭身と逆の方向に飛んでいく
「先輩!頼みます!」
完全にボールは先輩の頭上
これで速攻を出せる──
バチッ
ボールを手にしたのはVIP北中だった
ボールを手にしたVIP北の5番はシュートをはなつ
残り時間4秒・・・あとワンゴール
「ブロック・・・・」
ガクッ
八頭身は足元をくずした
ビーーー
試合終了のブザーが鳴る
僕は必死に顔を上げた
1さんが・・・・泣いている
あの元気な1さんが──
1 先 輩 ・ ・ ・ あ な た の 光 を な く す 事 が
一 番 怖 か っ た ん で す ──
先輩達がブロックの邪魔をしなければ、勝てた
先輩の頭上に来たボールを取っていれば、勝てた
アンタらがもう少し頑張っていたらこの試合には勝てた
アンタらのせいで1さんの光をなくしてしまった
アンタラノセイデマケテシマッタ
バスケットは・・・チーム競技じゃない
一人でもできる。
仲間なんて信用した時点で負けだ
だから僕は・・・一人でも勝つ
終わり
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