私の人生は…いつから狂い始めたのだろうか……








  
( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです

Side Story〜the teacher〜






私は…何故教師になったんだっけな…?
あぁ…思い出した…。確かあれは私が高校1年の夏休み頃のことだ…


『ねーねーミキー、見てよー、ちっちゃい子がいるーww』
『ホントだ、カワイーwwぼくー、お姉さんと遊ぼっかー♪(性的な意味でない)』
『あー…無視されちゃったぁ…』
『あ、ユウジくーん!』
『どうしたの?2人でしゃがみこんで?』
『あそこにちっちゃい子いるじゃーん?遊ぼうとしたのに無視されちゃって…』
『ユウジ君って小学校の教師目指してるんでしょ?ちょっとお手本見せてよww』
『えーwまだ大学行ってもいないのに無理だってww』
『いいからとりあえずやってみてよww』
『うーん…しょうがないなぁ…僕、こっちおいで…。お兄さんたちと遊ぼう?』






――とてててて…

『あ、こっち来てくれたーー!!』
『ユウジ君すごーい!!きっと才能あるよ!!』
『やっぱ結婚するなら子供に好かれる人だよねーww』
『だよねーwユウジ君みたいにねww』
『え?wwやめてくれよそういうのはーーww』


(   [壁]「…………」


『ね…ねぇねえ…あそこの物陰から太郎君がこっち見てる…』
『えー?どこに………うそ…いつからいたんだろう…?』
『気付いてない振りしてどこかに逃げようか…』
『うん…そうだね…僕、また遊ぼうね!気を付けて帰るんだよ!』
『だぁーーーーww』
『かわいいーーーーww』

――とてててて…




そうだ……私の名前は太郎…。高校時代、女子だけでなく男子からも避けられていた…。
「男友達よりも女友達の方が多いプレイボーイ」を演じたくて…男子との関わりを
拒んでたんだ…実際は拒まれてただけに過ぎなかったんだが…。
女子からも拒まれ続け、私はそれを照れ隠しだと思って…
気付いたらクラスで…学年で…いや、もしかしたら学校全体でさえ孤立していた
存在だったのかもしれない。
それでも当時はそんな事気付くこともなくひたすら「女の子と仲良くなる方法」を
模索していて…。たどり着いた結論は「女の子は可愛いものが好き」。
私が3年近く必死に考えた結果がこれだ。モテるイケメンはそんなことは本能的に
知っているのだと気付いたのは何年後だっけかな…。
そして女の子と仲良くなるには可愛いものを共有すること。
さっきのユウジを見たか?イケメンでスポーツ万能。全国的にもかなりハイレベルな
大学の教育学部を志望していて他の奴らからの信頼も厚い。
彼女がいる期間が途切れたことがないという、まさに俺の求めるものだ。
今しがた、ユウジは子供という存在を媒介に女の子と喋っていた。そして…
 

子 供 を 媒 介 に 女 の 子 に 結 婚 す ら 意 識 さ せ た 。




…ならば私も…小学校教師を目指してやろうではないか!!!
…そう思ったのがきっかけだった…。

しかし高1の冬休み、何気なく立ち寄ったコンビニで立ち読みしていた官能小説に
描かれていた、高校教師と女子生徒が卒業してから10年以上も後に愛し合うシーン…。
これは私の脳に雷を落とした。
信じられるか?高校卒業後10年以上も処女を守り、密かに想い続けていた恩師に
その貞操を捧げる…。そして私は高校教師になることを決めたのだ。

友達がいなかった分、余分な誘惑もなく、高2になる前から受験勉強を開始した。
休み時間も、昼休みも、トイレにいる時ですら勉強、勉強。
高1の頃は平均的だった成績も2年になってからは急上昇し、それから卒業まで
トップの座を奪われることはなかった。
そして有名大学の教育学部に進学し、母校であるVIP高校で教育実習を行うことになったんだ…

私はエリートなんだ。




『新しい実習生男の人だってーw』
『そうなんだー。かっこいい人だと良いよねw』
『男からしても爽やかで話しやすい人がいいな』


廊下で壁に耳を押し当てながら教室内の生徒の会話を盗み聞きする。
どうやら相当私に期待しているようだ。安心したまえ。君達が何年かけてでもその
貞操を捧げたいと思える男が今……

『それでは教育実習生の太郎先生です。太郎先生、どうぞ』

いよいよだ。教室の扉を開ける。

……………………………。


…沈黙…か。まぁ当然の反応だろう。人間は自分の想像をはるかに超えるものを
目にすると言葉が出なくなるものだからな…。


『……きめぇwww』


突然浴びせられる罵声。そしてそれを皮切りに、まるで堰を切ったかのように
私への罵声が次々と飛び出す。




『きめぇwwwwwww』
『ハゲてんじゃんwwwww若ハゲwwww』
『油ギッシュ(死後)バロスwwwwww』
『こいつ学生時代いじめられてました的な顔してるぞwwww』
『オリラジのあっちゃんじゃない方みたいな顔だwwwww』
『断言しよう。彼は教師には向いていない。なんつってーww』
『うひゃひゃひゃwwwwwマジウケるwwww』


なんだ…?なんなんだこいつら…?私はエリートなんだぞ…?
こいつら…勝ち組に僻むのもほどほどにしておけ…
私は絶対に教師になって…こういう馬鹿どもに勝ち組と負け組みってものを
教えてやる…。教育の場に捌きの鉄槌を下してやる…。




そして私は教員採用試験を突破してVIP高に配属された…。
底辺のDQN高だったVIP高を進学校と呼ばれるまでに建て直した私は
どんどん出世して教頭の座を勝ち取った。家族も増えた。娘が産まれた。
高校生の頃夢見た展開は一度たりともなかったがそんな事忘れるくらいに幸せだった。
教頭なんて大した仕事もなく、式の司会やらなんやらやってるだけで1000万近い年収だ。
笑いが止まらんよ。
だけど私はそこで金を浪費するなどと愚かなことはせず、人並みの質素な生活を送り、
しっかりと貯蓄…。
娘は将来医者にしてやりたい。どうせなら全国トップクラスの私立の医大に入れてやりたい。
そのためにも莫大な金が必要だ。しかし私は早くから金を蓄えておいたお陰で
私立の医大すら余裕で卒業させてやれるくらいの金を手に入れた。
幸せの絶頂だった。そう…あの、悪魔が現れるまでは…。


(´・ω・`)「新任のショボンです。右も左もわからない未熟者ですが、どうかよろしくお願いします」




ふふっ新任か。見るからに負け組の顔だな。負のオーラが漂いまくってやがる。
こいつはきっと一生負け組のまま終わるんだろうな…。

違った…私はコイツを見誤っていた…。こいつは…人の皮を被った悪魔だ……!!


(*´・ω・)「きょ〜と〜うせ〜んせ♪」


幼女のような笑顔で擦り寄って…油断した所を…あの悪魔の槍で…


「アッーーー!!!!!!」

(´・ω・`)「ふふ…また…肉奴隷の完成だ…」


なぜなんだ…こんなのただの苦痛でしかないのに…娘のための財産が
吸い取られていくのに…。またあの悪魔の槍を望んでしまう…。




私はまるで…堕天使のようだ…。
あいつの槍は…。まさに悪魔の媚薬…。人を…狂わせる。
何をされても…全く苦痛にならない。むしろ快感を感じるようになってくる。

そんなある日だった。財産の半分近くが食い荒らされたある日…。


「太郎…。私たちもう…離婚した方が良いと思うわ。娘のためにも…」


普通の夫なら必死に止めるだろう。しかし私は…。


教頭「慰謝料なら払う。それじゃあ用事があるから」


泣き崩れる妻子を残し、今日も職員室へ向かう。
陰口をたたきはしているものの…私はアイツが好きなのかもしれない。
その日はアイツはいなかった。
ガッカリしながら家へ帰る。灯りはともっていない。
家に入るともうそこには誰もいなかった。リビングのテーブルに置手紙。
ただ一言…『さようなら』と書いてあった。




庭付きの大きな一戸建て。
一人ではあまりに広すぎる庭付きの大きな一戸建て。
あぁ、ここにアイツを呼んだら…少しは楽しくなるのだろうか。
こんな時すらアイツの事を考えてしまう…。
絶望が希望に変わっていく…。
アイツのためなら私はどんな犠牲も厭わない。私にはもう、失うものは何もない。



(*´・ω・)「きょ〜と〜うせ〜んせ♪♪」



あぁ…今日も来た。私を秘密の花園へ導く人の皮を被った悪魔…
いや、悪魔の皮を被った天使が…今日も私を禁断の宴へと……。

あぁ…私の人生は狂ってなどいなかったんだ…これから揺ぎ無い幸福を手に入れるのだから…。

Side Story〜the teacher〜 完


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