第三部

第一章「ニュー速県立VIP高校」





(;><)「はわわ、もうとっくに始まっちゃってるんです!!」


走行中のタクシーの後部座席で、数秒おきに腕時計に目を落としながら慌てる、若い青年。


( ・∀・)「誰のせいだい、誰の…」


君が寝坊するからじゃないか、とタクシーの助手席に乗った男性がぼやく。


从'ー'从「そうですよぉ〜。ビロードさんが待ち合わせ時間に遅刻したからですよぉ〜?」


後部座席の青年の隣に座る、これまた若い女性。




( ><)「渡辺さんだって待ち合わせに30分も遅れてたんじゃないんですか!?」

(#・∀・)「君は待ち合わせに1時間も遅刻したけどね」

(;><)「うっ……」

从'ー'从「えへへぇ〜、ビロードさん怒られてるぅ〜」

(#・∀・)「君もだよ、渡辺。30分遅刻など、新入社員の自覚はあるのかい?」

从;'ー'从「うっ……」


渡辺と呼ばれた若い女性も、タクシーの助手席に座る上司風の男性に、待ち合わせへの遅刻を

咎められ、言葉を詰まらせる。


( ・∀・)「ビロード君、君もだ。いくら新入社員が入って部下ができたとはいえ、君はまだまだ
      新米なはずだろう」

(;><)「は…はいなんです……」


ビロードと呼ばれた若い青年も、部下以上に大幅な遅刻を上司風の男性から咎められ、しょぼくれる。





( ・∀・)「…と、お説教はここまでかな。到着だ」


タクシーが目的地に着いたらしく、とある場所の前で停車する。助手席に座っていた男性は手早く料金を支払う。



( ・∀・)「あ、領収証お願いできますか」

運転手「かしこまりました。お名前はいかがいたしましょうか」


( ・∀・)「『晴れ時々バスケットボール編集部』、で」



彼らは『晴れ時々バスケットボール』という、なんとも奇怪な名称の雑誌の編集・取材に携わっている。

この雑誌はその名の通り、バスケットボールをメインテーマとした雑誌で、その中でも高校バスケの特集が

他のバスケットボールの雑誌よりも高い人気を誇っている。その理由は、各県の地区大会の上位のリポートまで

されているという点にある。詳細で、それでいて読みやすく、臨場感に溢れたその記事は、さまざまな年齢層の

読者から幅広い支持を得ている。





そして…


( ・∀・)「さぁ、仕事の時間だ」

( ><)「わかんないんです!」

( ・∀・)「渡辺くん、このアホに裁きの鉄槌を」

从'ー'从「りょうかぁいでぇ〜す、モララーさん」


――ドゴッ!


(;><)「グーは痛いんです!!!!!!!」

从'ー'从「天誅ですぅ〜」


彼らはその高校バスケの取材を主として活動している記者たちである。





( ・∀・)

落ち着いた風貌の、上司風の男性は、モララー。

( ><)

どこか幼さの残る青年の名はビロード。

从'ー'从

全体的にほんわかしていて、抜けた感じの女性は渡辺。

ちなみにこの渡辺という女性は、今春に入社したばかりの新入社員で、

「わかんないです!」を連呼するビロードと並んでモララーを困らせる部下二人組である。

それでも、なんだかんだと言いながらそれなりには仕事をこなせているので驚きだ。

さて、今日の彼らの目的はこの市民体育館で行われているニュー速県の高校バスケの県大会・決勝リーグの取材。

地区予選を通過し、県大会を勝ち進み、ベスト4まで勝ち残ったチームによる総当たり戦が、決勝リーグである。






( ・∀・)「決勝リーグの初日…。VIP高校対阿凡高校と、ラウンジ学園対今北高校…か」




今年は一体どうなることやら…。



モララーの呟きは、ビロード、渡辺のどちらの耳に届くこともなく、空へと消えていった。




会場内。大勢の観客に見守られ、決勝リーグの第1戦は行われていた。

ベンチ入りに及ばず、観客席から応援に徹する部員たち、既にトーナメント戦で破れたチームの選手や、バスケ部に所

属する友人の応援。

さらには試合中のチームのバスケ部のために設立された応援団のメンバーたち…などである。

会場内へ入ったモララーたちの目は、そんな大勢の観客に囲まれる形で、観客席より1フロア下にあるコートで

行われている試合へと向けられた。


( ・∀・)「お…やってるやってる」


記者であることを証明する腕章をつけ、ビロード、渡辺とともに、他の観客よりも若干試合の観やすいプレス席へと

移動する。そして改めて、現在行われている試合を確認する。


( ・∀・)「ふむ」


            VIP高校 86−39 阿凡高校


試合は第3クォーター残り2分。既にVIP高校が47もの大きな点差をつけている。





( ・∀・)「…どれどれ…」


モララーは、シャープペンシルを手に持ったままコート上の選手たちへと目を見やった。



――ダムッ…


('A`)「一本!油断せずとろう!!」


VIP高校のポイントガード、Cドクオ。チームの司令塔であるこのポジションは、VIP高校のキャプテンである

この選手が務めている。中学時代に県で準優勝という成績を残したチームのキャプテンでもあった彼はこのVIP高校

というチームでも、その中心となってその実力を十二分に発揮している。






('A`)「……っ!モナーっ!」


――ビュッ!


( ´∀`)「モナっ!」


――ばしっ


( ´∀`)「シュートだ、とうっ!」


――バスッ


ローポストでディフェンスの一瞬の隙を突いて相手の裏を取り、ドクオから繰り出された矢のようなパスを

受け取り、そのまま無人のゴール下で楽々とシュートを沈めたのは、Fモナー。

恵まれた体格をフルに活用し、ペイントエリアでのポストプレーやリバウンドなど、試合の軸となるプレーにおいて

一役買っている。




モナーがシュートを決めたことにより、攻守が交替する。VIP高校の対戦相手である阿凡高校の選手は、取り返しよう

のない

大きな点差をつけられたことに焦っているのか、それとももはや試合を放棄したのかはわからないが、強引で不安定な

ボール運びから、無理矢理にスリーポイントを放つ。


――ガツッ


当然のごとくそのシュートは外れ、リングに弾かれ空中に舞い上がる。


( ゚∀゚)「うおりゃあああぁぁぁ!!」


――ばしっ!


そのボールに、誰よりも早く、誰よりも高く飛びつき、リバウンドを成功させたのはGジョルジュ長岡。


( ゚∀゚)「っしゃぁ!」


その風貌は、まさに筋骨隆々。漫画に出てきそうなほど肥大した筋肉を持つ彼の身体能力は、もはや超人並といって



過言ではないかもしれない。180cmに満たない身長で、彼のジャンプによる最高到達点はリングを楽々と越えるからだ








( ゚∀゚)「ドクオっ!」


――ビッ……ばしっ


リバウンドしたボールを、素早くドクオへ送り、VIP高校の速攻が始まる。そしてジョルジュ自身も、速攻が失敗したとき

のための

二次速攻に備え、走り出す。


('A`)「イヨウっ!」


――ビッ……ばしっ


(=゚ω゚)ノ「任せるヨウ!」


ドクオからパスを受けたのは速攻の先陣を駆けるEイヨウ。小柄な体躯の彼にとって、バスケットボールというスポーツ



結果を出すのは難しく見えてしまいがちだが、彼にいたっては全くそんなことはない。なぜなら――




――ダダダムッ、ダムッ


阿凡D「くそっ!」


ストリートバスケ仕込みのボールハンドリングスキルとクイックネスをフル活用し、自分より大きな相手をスピードと

テクニックで圧倒してしまうからだ。まるで彼の手にボールが吸い付いたかのように変幻自在にその方向を変える

そのドリブルに、対戦相手は、ついていくことすらできない。


――ダダムッ!


一際鋭くドリブルをし、ディフェンスを突破する。そのクイックネスにマッチアップの阿凡Dはついていくことができず

その場でバランスを崩し、無様に尻餅をつく。


(=゚ω゚)ノ「イヨっと」


――パスッ




速攻からディフェンスをかわし、ノーマークの状態で楽々とレイアップシュートを沈めるイヨウ。

だが、彼の魅力はこの華麗なドリブルテクニック・突破力だけにとどまらない。アウトサイドからのシュートも

彼の得意技の一つである。不規則なドリブルでディフェンスを揺さぶり、隙のできたところでロングシュートを放ち、

そして沈める。

幾度となくチームを救った彼のスリーポイントは、VIP高校の得点源でもある。


そして――


――ばちっ!


('A`)「とった!!」


ドクオの激しいディフェンスにひるんだ阿凡高校のポイントガードは、思わずボールをファンブルする。

容赦なくそのルーズボールをむしり取り、再びVIP高校ボールとしたドクオは、攻撃権を得た瞬間に前方に

目をやり、プレーの展開を頭の中で瞬時に組み立てる。






――ここから('A`)


('A`)(今、フロントコートに一番近いのは俺…。ディフェンスはゴールと俺の間にいる…)

('A`)(こいつを抜いて速攻に行く分には全く問題はない。抜ける、けど……)

('A`)(そろそろ第三クォーターも終わり…。ラウンジと今北と戦うためには余力も残しておきたいな。1,2年のやつらも
    この試合を経験させてやりたいし…)

('A`)(…ま、そろそろとどめ刺すか)


――ここまで一瞬だぜ☆('A`)





('A`)「おらぁっ!走れ、ブーン!!」


そういってドクオは無人のフロントコートに若干山なりのパスを放る。


その時。



コート上に。






一陣の風が吹く。







          /⌒ヽ
   ⊂二二二( ^ω^)二⊃
        |    /       ブーン
         ( ヽノ
         ノ>ノ
     三  レレ






たった今ドクオの出した、滅茶苦茶なタイミングのパスに唯一反応できるのが、この男。

D内藤ホライゾン。通称ブーン。

尋常でない速度でコートを駆け(両手を広げて)、誰よりも早く無人のフロントコートへ到達し、ドクオのパスをキャッチ。

そしてそのままレイアップを沈めた。


('A`)「よっしゃ!」

( ^ω^)「おまwwwwあんな無茶苦茶なパス出すなおwwww」

('A`)「ブーンだからこそ取れる、って俺は信じてたんだぜ」

( ^ω^)「なんか俺たちwwwwwww」

('A`)「いい感じwwwwww」


その後もVIP高校は攻撃の手も守りの手も緩めることなく、容赦なく点差を広げていく。




――ビーーーーーッ!!


審判「第3クォーター終了!2分間の休憩に入ります!」


審判が第3クォーターの終了を告げる頃には、47だった点差は、60近くにまで広がっていた。



―VIP高校ベンチ―


(´・ω・`)「よーし。いいよみんな。集中力を切らすこともなかったし、いい試合展開だった」


彼はブーンたちがVIP高校に入学するのと同じ時期に、新人教師としてVIP高校に赴任してきて、

廃部寸前だったバスケ部を部員とともに復興させ、時に厳しく、時に優しく、彼らを部活でも、部活以外のことでも

成長させてきた。ksms好きだが、そこには彼自身の辛い過去が見え隠れしているが、ここでは割愛させてもらおう。



(´・ω・`)「さて…と」




ショボンは、得点が表示されている電光掲示板と、ベンチに座る1,2年生を交互に見やる。


(´・ω・`)「第4クォーターは…君たちに任せようかな」


ベンチに座る控え選手たちに向けて、ショボンがそう言うと、小さく、わぁっと歓声が上がる。

県ベスト4以上という、大舞台での出場機会を与えられたことに対して喜ぶ者。その中でも一際目立っているのが…


<_プー゚)フ「いよーーっしゃあ!!!!ショボン先生!俺、マジで!!マ・ジ・で、出たいっす!!!」


妙にテンションの高い、背番号15をつけた選手であった。






第一章  おしまい



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