第12章 その2



('A`;)「みんな、悪い…」


(;^ω^)「大丈夫だお、まだ時間はあるお!」


(;=゚ω゚)ノ「2点差か…同点に追いつくべきか、逆転を狙うか…」


(´・ω・`)「大丈夫、慌てなくていいからね」


(´・ω・`)「残り時間は40秒とちょっと。たっぷり時間を使って確実に一本だ」


(´・ω・`)「セットオフェンスから、2点を狙おう」

  _
( ゚∀゚)「同点狙いですか?3点を狙って逆転しても…」


(´・ω・`)「残り時間に注目。うちが24秒フルに使って攻めたとしても、今北には約15秒の攻撃時間が残る。
     15秒もあれば、しっかりとオフェンスを組み立てることなど容易い」


(´・ω・`)「2点をとっても3点をとっても、当然だが今北に残される攻撃時間は変わらない」


(´・ω・`)「そして、今北に一本取られてしまえば、2点を取っていようが3点を取っていようが逆転される」


(´・ω・`)「どうせ同じならば、確実性の高い2点を狙いにいったほうがいいだろう」


( ´∀`)「だけど、もし今北の次のオフェンスで点を取られたら僕たちは負k…」


( ^ω^)「…ディフェンス、ですかお?」


(´・ω・`)「その通り。まずは2点を取って同点に持ち込む。そこからは死ぬ気でディフェンス。15秒間、食い止めるんだ」


(´・ω・`)「もちろん、ターンオーバーを奪えたら、少々強引だろうが速攻に持ち込んで構わない。そのときに厳しいディフェンスに
      あうようであればファウルをもらいにいく」



――ビーーーーーーーッ!



('A`;)(な…もう終わりかよ!?)


(´・ω・`)「どれだけ状況が緊迫していようと、基本的にやるべきことはいつだって一緒さ。セットオフェンスは5番でいこう。
     さあ、いっておいで」


VIP高一同「はいっ!!!!」


( ^ω^)(セット5番…)


('A`)「ブーン、落ち着いてな」


( ^ω^)「…おっ」


ξ゚听)ξ「ブーン…」


( ^ω^)「大丈夫だお、ツン。こういう場面でこそ、特訓の成果を見せるべきときだお!」



――ピッ!



再開を告げるホイッスルが、短く吹き鳴らされる。
タイムアウト明けであるため、VIP高ボールにて、サイドライン沿いからの再開となる。

コートの外でボール出しを行うのがイヨウ。
そのボールを受け取るために、より激しくなったギコのディナイディフェンスを振り切ろうとしているのがドクオ。
逆サイドの45度付近にはブーン。
ブーンと同じサイドのローポスト付近にはジョルジュ。
そして、ボールサイドのハイポスト付近にモナー。
各々がそれぞれの役割を果たすため、それぞれのポジションにつく。



――キュキュっ!



('A`)「振り切ったぞ!」


(,,゚Д゚)「ちぃっ!」


(=゚ω゚)ノ「ドクオ、一本だヨウ!」



――ビュッ…ばしっ



ドクオにボールが渡り、ゲーム再開。



――ダムッ…ダダムッ…


…が、すぐには攻め込まない。リズムを整え、相手の出方を窺う。



('A`)(プレッシャーこそきつくなってはいるものの…マンツーのままか…?
   プレスをかけてくる気配もない)


('A`)(…となりゃ、まずは時間を稼ぐ!)


(=゚ω゚),,゚Д゚)


川 ゚ -゚)「ギコ、スクリーンいったぞ!」


(,,゚Д゚)「問題ねぇ、ファイトオーバーでいける!」



(´・ω・`)(4番、ギコ…ハードな展開の試合の終盤だというのに…本当に脚が良く動く…。タフな選手だ)


('A`)「しぶてぇなくそっ!」


(,,゚Д゚)「易々と行かせるわけねーだろうがゴルァ!」


('A`)「モナーっ!」



イヨウのスクリーンを使い、突破を試みるドクオ。
しかしギコを振り切ることはできず、その流れのままハイポストやや外よりのモナーへ。




――ばしっ



( ´∀`)「モナっ!」


<ヽ`∀´>(仕掛けてくるニダか…?)


<ヽ`∀´>(いや、こいつのプレーできるエリアはこんなに広くないはずニダ…)


( ´∀`)「ブーン君!」


( ^ω^)「おっ!」キュキュッ



すかさず、素早いステップでトップ付近に上がってきたブーンへパスを送る。
空いたスペース、すなわち、、ブーン自身がはじめにポジションを取っていた左サイドへのドライブを試みるも、
今北Gの好守に阻まれ、不発に終わる。



今北G(俺が一番警戒しなくちゃいけないのはこいつからのワンオンワン…そう簡単には行かせん!)



( ^ω^)(まあ…この段階ではやっぱきついかお…)


( ^ω^)「ドクオっ!」



再びトップのドクオにボールを戻す。


――ばしっ



('A`)(ショットクロックは残り15秒…もう少しだけ回して、セットオフェンスに移るか)



――ダムッ



(,,゚Д゚)(レッグスルーをしながら…後ろに下がった…?)


(,,゚Д゚)「時間稼ぎのつもりk…」


('A`)「おらっ!」



――ダムッ



(,,゚Д゚)(チェンジオブペース…!?)


(,,゚Д゚)「ぬおおっ!」



――キュキュッ!



('A`)「ちっ…そう簡単にゃ行かせてくれないよな…」


(,,゚Д゚)「ったりめーだゴルァ!」




そのまま数秒、ボールをキープする。



('A`)(ショットクロック残り9秒!…ここだ!)


('A`)「いくぞっ!」

      _
(=゚ω゚)ノ( ゚∀゚)( ´∀`)「おおっ!!!」


( ^ω^)「…おっ!」


( ^ω^)ダッシュ!!



ショットクロックが10秒をきったことを皮切りに、VIP高のメンバーたちは一斉に動き始める。
左サイドからトップ付近のドクオに駆け寄るブーン。



('A`)「ほいさっ!」


ドクオは、自身をスクリーンとしながら、ブーンに手渡しパスを送る。



今北G「ちっ…スライドでいく!」



今北Gの対応が若干遅れる。



( ^ω^)(完全には振り切れてない…!)


( ^ω^)「イヨウっ!」



ボールを受け取ったブーンは、そのまま右サイドのイヨウにパスを送る。



ガシッ( ´∀`川 ゚ -゚)



モナーがクーにスクリーンをかけていたため、比較的容易にイヨウへのパスは通る。

 

( ^ω^)(ここだお!)



その瞬間、ブーンは180度、まったく逆の方向、つまり自分が一番最初にいたポジションへと走り出す。


今北G(な…なんっつー瞬発力してやがる…!だけどまだ追いつけるはz…)


('A`)「はい毎度、もういっちょーっ」



――がしっ



今北G「ぐおっ…!?(ま…また4番…!?)」



再度、ドクオのスクリーン。虚を突かれた今北Gは、一度目よりも対応が遅れてしまう。



(=゚ω゚)ノ「いくヨウっ、ブーンっ!」



――びゅっ



右サイドから左サイドへの、大きな横断パス。



( ^ω^)「おおっ!」



――ばしっ



それをノーマークで受け取るブーン。



今北G「やらせるかよ…!」



遅れてマッチアップに戻ってきた今北G。
だが。



( ^ω^)「おおおっ!」



――ダムッ!



勢いに乗ってボールをキャッチしたブーンは、その勢いをそのままドライブのスピードへ上乗せする。
対して、今北Gはなんとか追いついてきた、という状況。
止められるはずが、なかった。



「ブチ抜いたぁ!」

「はっ…速ぇーーっ!!」

「だけどどうするんだ!?そっちのローポストにはデカブツの14番が…!」

「いや、見ろ!」

「あ、ああっ!?VIP高の8番が右サイドに移動してる…!」

「それにつられて今北の14番も右サイドに移動してるぞ…!」

「ってことは…」

「左サイドには誰もいねえ!今北のインサイド陣もヘルプに出るには距離がある!加えて、VIP高5番のあのスピード!」

「完っ全!どフリーだ!」


( ^ω^)「おっ!」



一歩、二歩とステップを踏む。
ステップを踏みながら、ボールを持った左手を左肩の上に。
そのままリングへと向かいそうになる勢いを、柔らかくステップすることで完全に殺し、真上に跳ぶ。

左手を肩の高さより下げることなく、そのまま、すっ、とリングへ伸ばす。


ブーンは空中で考える。
ボールはボードに当てて入れるべきか。
いや。
我ながら、こうも完璧なレイアップが打てるとは。
体のバランスも、指先の感覚も、完璧だ。

「こんなにも余裕を持って打つことができたのだぞ」ということを示そう。

少しでも、ほんの少しでも今北の選手たちに動揺を与えたい。
それによって次の今北の攻撃、自分たちが少しでも、守りやすくなるかもしれない。



――パスッ…



今北産大附今北 82 - 82 VIP高校



.


「同点だーーー!」

「残り時間は20秒をきってる!」

「どうなるんだ!?どうなるんd…」



――ビーーーーーーーッ!



審判「タイムアウト、白!」



「今北のタイムアウトだ!」

「すかさず流れを切る…!さすがだな…!」



从'ー'从「今のは…」


( ・∀・)「どうも、アイソレーションくさいね」


( ><)「アイソレーションって、あれなんですよね!?」


( ・∀・)「そう、よく聞くあれだ」


( ・∀・)「ああ、ちなみに」


( ・∀・)「ビロード君ね、あんまり喋りかけないでくれるかな。いらいらするんだ」


( ><)「……」


( ・∀・)「アイソレーションってのはあれだね、片方のサイドに一人、もう片方のサイドに残りの四人が
       ポジションを取る」


从'ー'从「そしてその四人につられ、ディフェンス側の四人も移動する」


( ・∀・)「そして意図的に片方のサイドでワンオンワンの形を展開する、というやつだ」


从'ー'从「バスケの漫画や、NBAなんかでもよく聞く言葉なので、有名っちゃ有名かもしれませんね」


( ・∀・)「ああ、だが通常のアイソレーションは、最初から『アイソレーションで来たな』、とわかりやすいものが多い」


从'ー'从「そうですね、トップの選手から、仕掛ける選手にボールが渡ったら、仕掛ける選手以外の全員が反対サイドに
     寄る、ってのがよくある形ですもんね」


( ・∀・)「だが今のVIP高のオフェンスは…」


从'ー'从「セットプレーでしたね、流れの中でアイソレーションの状況を作り出すプレー、といったところでしょうか」


( ・∀・)「今北に『アイソレーションで来る』と悟らせない、いいプレーだったね、特に…」


从'ー'从「VIP高の8番が逆サイドに移るタイミング、ですよね。5番と同じサイドにいた…」


( ・∀・)「まさしくその通りだよ。彼―8番までもがはじめから5番と逆サイドにいたら、アイソレーションだと
       勘付かれていたかもしれない」


( ・∀・)「そうなると、今北の14番もゴール下へのヘルプに出やすくなるし、他のメンバーもそれに対応することが
       易しくなる」


( ・∀・)「だから、8番は5番にパスが出るまでは何食わぬ顔で5番と同じサイドにいる必要があった。…普通のセットプレーで
       攻めるのだと思い込ませるために」


从'ー'从「得点やアシストなど…記録には残りませんが、隠れた好プレーですね」


( ・∀・)「ああ。見かけによらず…というのは失礼だが、なかなかにクレバーな選手だね、VIP高の8番は」


――VIP高ベンチ



('A`)「ブーン、ナイスだ!」


(=゚ω゚)ノ「完全にぶっちぎってたヨウ!」

  _
( ゚∀゚)「きれーなドライブだったな!特訓の成果出てっぞ間違いなく!」


( ´∀`)「同点モナ!あとはディフェンスモナね…」



(´・ω・`)「よく決めてくれたね、内藤くん。いいレイアップだった」


( ^ω^)「おっ!」


(´・ω・`)「さて、スコアは同点、残りは17秒」


('A`)(さっきのタイムアウトのときに先生が言ってた通りの展開になってきた…!)


(´・ω・`)「やることは、もう言わなくてもわかってるね?」


VIP高一同「ディッフェンス!!!」


(´・ω・`)「その通り」


(´・ω・`)「点を取られないように、激しく守る。――プレスをかけるよ。じゃあ、具体的に――」


――今北産大附今北高校ベンチ



(■_■)「いいか、慌てる必要はない。まさかここまで競った試合になるとは思わなかったが…同点であっても、まだ
     うちの優位は変わらん」


(■_■)「残り17秒。タイムアウトを取ったからサイドラインからの再開だ。ボール運びの数秒を短縮できた。今までと
     何も変わらない、ただ普通に攻めればいいだけだ」


(,,゚Д゚)「オフェンスのプランは…どうすればいいですか?」


(■_■)「そうだな、私が思うに、十中八九、プレスをかけてくるだろう。具体的に言うとだな…」


川 ゚ -゚)「私に、考えがある」


(■_■)「…?言ってみろ、クー」


――ビーーーーーーーッ!!



審判「タイムアウト終了です!」



('A`)「っし、行こう」


(=゚ω゚)ノ「ほかに言いようがないくらいに勝負どころだな、っと」


( ^ω^)「ドキドキが止まらんおwww」

  _
( ゚∀゚)「ちょ待てよ、逆にワクワクしてこないか?ww」


( ´∀`)「それは長岡君だけモナwww胃が痛いモナ…」




(,,゚Д゚)「行くぞ」


<ヽ`∀´>「打ちのめす、それだけニダ」


川 ゚ ー゚)「日本に来て、一番楽しい試合だ。楽しむだけじゃない…勝たせてもらう」


/ ゚、。 /「退場せずに終わりたいです…」




――ピッ!



審判が笛を短く吹き、再開を告げる。
サイドラインからコート内にボールを入れるのはクーだ。



川 ゚ -゚)(私の前にディフェンスがいない…?)


キュッ('A`)(;,,゚Д゚)(゚ω゚=)キュキュッ



「VIP高は4番にダブルチームだぁー!」

「プレスか!勝負かけにきやがったー!」



川 ゚ -゚)(ギコには意地でもボールを入れさせないつもりか…だが、ボールマンへのプレッシャーをなくしてまですることか?)


川 ゚ -゚)(君たちがギコにダブルチームをかけるという…、それは逆に言えば、私は悠々とパスを出す相手を探せるということなのだぞ?)


/ ゚、。 /(ギコさんがもらうのはきつそうだな…)


/ ゚、。 /「クーさん!」ダダッ

  _
( ゚∀゚)「あーっと、簡単に行かすと思うなよ!?パワーじゃ負けねえんだ!」


/ ゚、。 /(あなたのパワーは確かに認めざるを得ませんよ、だけどね…)


/ ゚、。 /「スキルなら負けませんよ」



スリーポイントラインの少々内側のエリアまでダイオードが飛び出してくる。
ジョルジュもそれを追うが、ダイオードはそのエリアでポストアップの構えを取る。



川 ゚ -゚)「でかした、ダイオード!」



――ひゅっ



ダイオードが構えている場所よりもやや外側へクーがパスを送る。
ジョルジュを体で抑えながら、ダイオードはそのパスへミートする。



――ばしっ


  _
( ゚∀゚)「な…スリーポイントラインよりも外だと!?」


/ ゚、。 /「パスを繋ぐだけですから」



そう言うと、ダイオードはすぐさま、コート内に入ったクーへとパスを送る。



――キュキュッ!


(=゚ω゚)ノ「ボールおk!」('A`)


川 ゚ -゚)(私にもダブルチーム!?)


川 ゚ -゚)(ギコは…)


( ^ω^)「ディナイ!ディナイ!おっ!」


川 ゚ -゚)(5番がギコに…。では、5番がマークしていた今北Gは?)


( ´∀`)「三線おkモナ!安心してプレッシャーかけるモナ!」


川 ゚ -゚)(7番がエラ張りと今北Gをフォロー…?)


川 ゚ -゚)(ふむ、悪くないポジショニングだ。エラ張りと今北G…どちらにパスが出ても対応できる位置に…。
     常に動きながら、視線を絶えず動かしながらベストなポジションを…)



( ・∀・)「ハーフコートでのゾーンプレスかな?面白い…」


从'ー'从「今北はどう攻めてくるでしょうか」


( ・∀・)「時間を目一杯使って一本取ることができれば、勝利がほぼ確定する。となると、インサイド陣に
       任せることになると思うんだが…」


从'ー'从「あそこまで激しく当たられるとそれも難儀ですかね?」


( ・∀・)「そうだね…どう転ぶのか、まったくもって読めないね」


( ><)ウズウズ←会話に入りたくて仕方がない



――ピィッ!


審判「ファウル、緑6番!」


(=゚ω゚)ノ「悪い、つい手が出ちまったヨウ」


('A`)「気にすんな、あと12秒だ」


('A`)(ボールが取れない…!)


('A`)(今のイヨウのファウルで、うちのチームファウルは4つめ…次からは、シュートモーション中のファウルでなくても
   フリースローになる)


('A`)(ファウルゲームを仕掛けるべきか…?)


(=゚ω゚)ノ「ドクオ、早く!ギコにダブルチームだヨウ!」


('A`)「あ、ああ!(くそっ、どうすれば…!? )」



再びクーがボールを入れる。
ギコにはやはりパスを通せない。そのため、先ほどと同じくダイオードがミートしてパスを受け取り、再度、クーにボールを戻す。


川 ゚ -゚)(またダブルチームか…だが、ファウルで止めに来る気配はない…か)


川 ゚ -゚)(賭けに出る勇気はないということか…腰抜けめ)



残り時間、10秒。



――ダムッ!

 

('A`)(ダブルチーム相手に…)


(=゚ω゚)ノ(勝負してくるつもりかヨウ!?)


川 ゚ -゚)「ダイオード!」



――ビュッ



(=゚ω゚)ノ(パスかヨウ…!)


('A`)「ジョルジュ!14番だ、止めろぉーーーーー!」

  _
( ゚∀゚)「言われなくたって…!んっ?」

  _
( ゚∀゚)(こんのデカブツ…またアウトサイドに出やがった…?何するつもりなんだ…?)


/ ゚、。 /(ほんとにやるつもりですかクーさん…!)



――タイムアウト時、今北ベンチ



(■_■)『…?言ってみろ、クー』


川 ゚ -゚)『時間もない、結論から言おう』


川 ゚ -゚)『私が外から3点を狙う』


(,,゚Д゚)『んなっ…!』


/ ゚、。 /『VIP高がプレスをかけてきても、ですか?』


/ ゚、。 /『彼らの脚は全然止まっていませんよ、タイトなディフェンス相手じゃさすがに…』


川 ゚ -゚)『正直に言おう、私は疲れている』


<ヽ`∀´>『ちょww』


川 ゚ -゚)『確かに、プレスを受けながらスリーを決めることは、今の私には難しいだろう』


川 ゚ -゚)『だが、ノーマークであればきっちり決められる自身はある』


(,,゚Д゚)『だから、そうやってノーマークを作れるかどうかが…!やつらが本当にプレスをかけてくるとしたら余計に…!』


川 ゚ -゚)『大丈夫だ、問題ない』


川 ゚ -゚)『外から打つのだから』


(,,゚Д-)『だぁっから…!(アスペかこいつは?)』



/ ゚、。 /(こんなプレー…前代未聞ですよ!)



――ひょいっ


  _
( ゚∀゚)「んあ?こいつ何を…?」



「ボールを…!?」

「コートの外に放り投げた!?」

「な…なんだ!?どういうことだよ!?VIP高ボールになるじゃねーか!」



川 ゚ -゚)(やはり、私がボールを持っていない今、ボールを持っているときと比べたらダブルチームの圧力は弱い)


川 ゚ -゚)(ならば、それをかいくぐることなど容易い)


川 ゚ -゚)(ただでさえ、ダイオードのプレーに虚を突かれているのだろうし、な)


川 ゚ ー゚)「上出来だダイオード!」


('A`)(しまった、抜けられた…!)


(;=゚ω゚)ノ(ちょっと待て、クーあいつ…まさか!?)



――ダッ…



(;´・ω・`)「コートの外に…跳んだ!?」




バスケットというスポーツでのボールの生死判定をうまく活かしたプレーの一つとしては、コート外に出かかっている
ボールに飛びつき、コート内に戻す、というものがある。
そのまま味方へパスを出したり、相手チームの体にぶつけ、再びコート外に出させてマイボールにするプレーがよく知られている。

バスケットにおいては、『ボールがコート外の床や壁に接触するまで』は、ボールは『生きている』ということになる。
たとえ空中であっても、ボールがラインよりも外に出たら相手ボールとなるサッカーとは異なる点である。

ゆえに、バスケットにおいてはボールが完全に『死ぬ』までは最後の最後まで油断をすることができない。
そして、それは、ボールが完全に『死ぬ』までは、プレイヤーがボールの生死に関与することができる、ということと同義だ。

ところで、ボールの生死と同じように考えると、プレイヤーにも『生死』に近い概念がある。

ボールがコート外に接触する前にプレイヤーがボールをコート内に戻すことができれば、プレーは続行される。
ただし、それはプレイヤーが『生きている』場合に限られる。

極端に言えば、ボールがコート外に接触していなかったとしても、それ以前にコート外に触れたプレイヤーが
まだ生きているボールに触れてしまえば、ボールは『死ぬ』。
プレイヤーが先にコート外に接触してしまっていたら、そのプレイヤーはいわば『死んだ』状態とされるからだ。

ただし、コート内から踏み切って跳びつき、コート外に接触する前にボールをコート内に戻すことができれば、その後、
そのプレイヤーがコート外に接触しようと、ボールは『生きている』と判定される。




――(,,゚Д゚)『だから、そうやってノーマークを作れるかどうかが…!やつらが本当にプレスをかけてくるとしたら余計に…!』


――川 ゚ -゚)『大丈夫だ、問題ない』


――川 ゚ -゚)『外から打つのだから』


――(,,゚Д-)『だぁっから…!(アスペかこいつは?)』


――川 ゚ -゚)『だから、問題ないといっているだろう』



『コートの外から、打つのだから』



――ばしっ



しっかりとサイドラインから数歩分の余裕をもってコート外へ跳ぶ。
そして、ダイオードがふわりと放ったパスをキャッチする。



川 ゚ -゚)(これは、我々にとっても大きな賭けだ)


川 ゚ -゚)(私とて、こんなプレーは初めてだ、だが、私がより高い確率でノーマークでスリーポイントを打つとしたら、
     ほかに思いつかなかった)


川 ゚ -゚)(いや、ほかにも候補はいくつかあった。だが…体力的な面で却下せざるを得なかった)


川 ゚ -゚)(こうまで消耗させられるとは、本当に予想外だった)


川 ゚ -゚)(先ほどファウルをされたとき…ファウルゲームに持ち込まれていたら、この作戦は潰されていた)


川 ゚ -゚)(だがそれが勝負を分けることになるのさ)


川 ゚ -゚)(冷静にゲームを運ぶことをひたすらに心がけていたが…つい、血が騒いだ)


川 ゚ -゚)(私は、賭ける。このプレーに)


川 ゚ -゚)(そして君たちは、賭け損ねた。ファウルゲームという、最後のカードに)



空中で、リングに対して正中するように体をひねり、体勢を修正する。
膝のバネには一切期待できそうにない。
ボールの飛距離を稼ぐために、シュートを放つ位置は腹の辺りに変更する。
そして――放つ。



「う…打ったぁ!スリーだ!?」

「い、いやでもコートの外…って、遠っ!」



残り、8秒。



('A`)…ハッ!


('A`)「リバウンドだ!」

  _
( ゚∀゚)「わ…わかってら!」


( ´∀`)「スクリーンアウト、モナっ!」


('A`)チラッ


( ^ω^)ピクッ


('A`)(入ろうが外れようが、速攻かますしかねぇ、タイミング見計らって、突っ走れ!)


( ^ω^)(もろちんこ!)



――ぱしゅっ



今北産大附今北 85 - 82 VIP高校



「――――!!!」

「は、入ったぁぁぁ!?」



残り、5秒。



('A`;)(だーーーーっ!入んのかよあんなデタラメなのが!)


( ^ω^)(全力ダッシュ!!!!だお!)

  _
( ゚∀゚)「ドクオ、仕掛けろ!」



動転しつつもジョルジュがすぐさまボールを拾い、ドクオにパスを出す。



――キュキュキュッ!



(,,゚Д゚)「おおおおおおおおおっ!」


川 ゚ -゚)「守りきるぞ!!!」


(;=゚ω゚)ノ(プレス!?)


    セマイセマイ
川 ゚ -゚)'A`(゚Д゚,,)



「今北もプレスかけてきた――!」

「4番と7番に…VIP高の4番が捕まるぞ!?」



('A`)「悪いけどプレスは大好物なんだよ!するのもされるのもな!」



――ダムッ!



(■_■;)「馬鹿な!ギコとクーのダブルチームを一発で…!?」



ξ゚听)ξ「突破した!!」


(*゚ー゚)「いけーっ、ドクオ君!」



――ダムッ!



('A`)「おおおりゃっ!」


('A`)(このままブーンに…!ってあれ、なんか引っかかる…)



('A`)(……)


('A`;)(…!!)


('A`;)(そうだ、バカか俺は!?さっき素直クールが決めたのはスリーポイント…!つまり点差は3!)


('A`;)(最低でもスリーポイントシュートかスリーポイントプレーを決めないと…同点にすらできない!)


(;^ω^)(あれっ、いま気づいたけど…この速攻で2点取っても追いつけなくね?)


( ^ω^)(最低3点が必要…!どどどどドクオおおおおおどどどどどどうすればいいんだお!?)


(=゚ω゚)ノ「ドクオよこせええぇ!」


('A`)「!!イヨウ!頼むっ…!」



――ばしっ




既にハーフラインを越えていたイヨウへ、ドクオからの縦パスが通る。
残り、3秒。




(,,゚Д゚)「しまtt…」



――キュキュっ!!



川;゚ -゚)「問題…ないっ!」ゼェゼェ


(;=゚ω゚)ノ(だからなんなんだヨウ、こいつのこの戻りの早さはヨウ!?!?!?)


(=゚ω゚)ノ(だけどやっぱりクーも尋常でなくヘバってる…)


(=゚ω゚)ノ(兎にも角にも、ここでスリーを沈めるほかには…!)



多少強引でも、打たざるを得ない。
マークを外しきれていない状況ではあるが、イヨウはスリーポイントライン上でシュートを構える。
クーも、それをチェックするために、ブロックに跳ぶ。



川 ゚ -゚)(ここでスリーを打つ意外に手はない!チェックでなく…ブロックで、確実にはたき落とす!)




――ドクンッ



(;=゚ω゚)ノ(――――!?)



突如、フラッシュバック。
昨年のインターハイ予選、決勝トーナメント。
そのときも今北と一勝一敗同士、インターハイ出場最後の椅子を賭けて戦った。

その試合のラストは――


(;=゚ω゚)ノ(そうだ、残り時間数秒、点差は3…そして…)


(;=゚ω゚)ノ(最後の最後で俺がスリーを外して…負けた)


(;=゚ω゚)ノ(去年のインターハイ出場のチャンスは…俺が潰した…)


(;=゚ω゚)ノ(あの時とまったくといっていいほど同じ状況…!)


(;=゚ω゚)ノ(俺はあの時とは違う…違うんだヨウ!なんとしてでもスリーを…!)


(;=゚ω゚)ノ「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」



――ダムッ!



川;゚ -゚)「なにっ!?」


('A`;)(い…イヨウ!?)



残り2秒。
イヨウのとった行動は、ドライブ。
途中までは、完全にスリーポイントを打つつもりだった。
だからこそ、クーもブロックに跳んだ。

だが、昨年の光景―彼自身のミスで試合に負けたこと―が一瞬で頭の中を覆い尽くし、パニックを起こしてしまったのだ。

勢いに乗ったドライブ。
結果的にそれはシュートフェイクとなり、クーを抜き去った。



(;=゚ω゚)ノ(しまった…)



勢いに乗った体は簡単には止められない。今からスリーポイントラインの外に戻って打ち直そうにも、おそらく時間が足りない。
よしんばスリーポイントラインの外側に戻ったところで、戻ってきた今北ディフェンス達とかち合わせになるだけだ。



(;=゚ω゚)ノ(どどどどどどどうすれば……)



また、自分のミスで負ける。
今北を、昨年よりも遥かにレベルアップしてきたあの今北を、ここまで追い詰めているというのに。

昨年のシュートミスはまだ仕方がない。『勝ちに行った』がゆえのミスだからだ。
だが、今回は?

勝ちに行く姿勢など微塵も感じさせない、ただただミスを恐れてのミス。
弁解のしようがない。



(= ω )ノ(終わっt…)



諦めかけたそのとき。



「イヨウーーーーーっ!」






(= ω )ノ(…?)





(⊃ ⊂^ω^)ヘイパス! (※(⊃*⊂^ω^)このアナルAAとは違います!パスキャッチの構えをしているだけです!)






(=゚ω゚)ノ「!!!」



なぜそこに?
考えるよりも前に、体が動いていた。咄嗟に、パスを出していた。


…左コーナーのスリーポイントエリアで待ち構えていた、内藤ホライゾンへ。



( ^ω^)(攻守が切り替わって、ドクオがプレスを突破した瞬間…僕は走ったお)


( ^ω^)(だけど僕もドクオもすぐ気づいた…いや、思い出したお。2点じゃ届かない、ってことに)


( ^ω^)(それで、そのまま左サイドに抜けていってたけど…結果オーライかおw)


( ^ω^)(決めれば延長にもつれ込み…外せば、負け)


( ^ω^)(それなのに…なんでだお?)


( ^ω^)(まだボールをキャッチすらしていないのに…)


( ^ω^)(外す気が、しないお…)



――ばしっ



残り、1秒。
ボールをミートし、膝を深く曲げる。



川 ゚ -゚)「…………っ!」


(#,,゚Д゚)「打たせるかよおおおおっ!」



必死の走りで戻り、鬼のような形相でブーンに飛びかかるギコ。



(#,,゚Д゚)(こいつがシューターをして開花してしようが…クーが言ってたみてぇに左コーナーからのスリーを
     重点的に練習してきたぱちもんシューターだろうが関係ねぇ!!)


(#,,゚Д゚)(ただ一つ、こいつが前者の場合であろうと後者の場合であろうと…左コーナーからノーマークで打たせるわけには…)


(#,,゚Д゚)「いかねえんだよゴルァァァァ!」


(#,,゚Д゚)(ノーマークで3点を決められたら延長…ここで、決める!)


(#,,゚Д゚)(ファウルして、スリースローを打たせる!)


(#,,゚Д゚)(試合でフリースロー3本を打つ機会は…ワンスロー、ツースローの場合と比べたら、格段に少ねえ!)


(#,,゚Д゚)(加えて、まさしく勝敗を分かつフリースローになる!スリースローの実践経験の乏しさ、プレッシャー…。
      それを併せて考えれば、ミスをする確率は普段よりも高くなる!)


(#,,゚Д゚)(だが忘れちゃならねえのはバスカンでスリーを叩き込まれるケースだ、これだけは絶対に避けなきゃなんねえ)


(#,,゚Д゚)(右腕に思い切りファウルして、確実に外させる!)



川#゚ -゚)「ギコおおおおっ!やめろ!避けるんだっ!!!」


(;,,゚Д゚)ビクッ!


/ ゚、。;/(クーさんが…)


<;ヽ`∀´>(叫んだ!?初めて見たニダ…)



(;,,゚Д゚)(今の声は、クーか?)


(,,゚Д゚)(一体どういう意味だ…?)


(,,゚Д゚)(そういえば、この試合はクーらしくないところが多々あったな)


(,,゚Д゚)(楽しそうに笑いながらプレーしたり、ヘバってたり…w)


(,,゚Д゚)(…いや、今のクーこそが本当のあいつなのかもしれねえな…)


(,,゚Д゚)(このひりつくような試合の中で…ちょっとは俺らに対して心を開いてくれたってことかね)


(,,゚Д゚)(…そういう意味では、VIP高に感謝しなきゃな、この試合、勝っても、負けても)



反射的に、避けていた。
だが、ギコはブーンに全力で飛びかからん勢いだった。
その無理な体勢をさらに強引に動かしたため、肩からコートへ転げ落ちる。



(;,,゚Д゚)「ぐぉ…いって…」


着地は完全に失敗。
ごろごろと数度転がりながらも、目まぐるしく動く視界の中で、ボールを探す。


ボールの行方は、見えなかった。

そのかわりに――



――ぱしゅっ
――ビーーーーーーーーーッ!!


幾度となく聞いた、心地の良い音が聞こえた。
そのほぼ同時か、少し後か、ブザーが鳴り響いた。




( ^ω^)「入ったお…」


(*^ω^)「は、はいったおおおおおおおおっ!!!!」



「ブザービーターで同点スリー!!」

「土壇場の土壇場で追いつきやがった!!」

「延長か!延長なのか!?」




テーブルオフィシャルズが、審判のジェスチャーを確認し、デジタルの得点板を操作する。




今北産大附今北 85 - 82 VIP高校



          カチッ
今北産大附今北 85 - 83 VIP高校



          カチッ
今北産大附今北 85 - 84 VIP高校




今北産大附今北 85 - 84 VIP高校





          
今北産大附今北 85 - 84 VIP高校





( ^ω^)「……あれっ?」





今北産大附今北 85 - 84 VIP高校




( ^ω^)「……えっ」


('A`)「……?」


(=゚ω゚)ノ「?」

  _
( ゚∀゚)「?」


( ´∀`)「?」


(;´・ω・`)(まさか…!)





審判「スコア通り!85-84で、今北産大附今北の勝利です!」



('A`;)「んなっ!?」


(;^ω^)「え?え?」

  _
(;゚∀゚)「お…おい審判!なに言ってんだよ延長だろ!?間違えてんじゃねーぞ!」


審判「間違いではないですよ、5番の彼が打ったシュートは間違いなくブザーが鳴るよりも前に打たれたものでした」

  _
(;゚∀゚)「だーーっから!そうじゃなくて!同点だろ!82たす3で、85!」


審判「…3ではなく、2です」


(;´∀`)「ま…まさか…」


審判「ええ、最後のシュートですが、右足がスリーポイントラインよりも大きくハミ出ていました。だから、2点です」


( ^ω^)「嘘…だお…?」








第12章 

It was another one step...






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