がしゃりと皿の割れる音
何事かと思い、台所へ近づいてみる
そこにあったのは、いつもと変わりない光景
だけどひとつだけ、いつもと変わった光景
川 -)
lw´‐ _‐ノv
クーが倒れていた
マジかよ
||
||
第十八話:厄姫さんと黒色逆転王女さん
いつも通り、クーが食器の片付けをしていた朝食過ぎのことであった
自分の目を疑ったが、確かに倒れているのはクーである
長い髪を床に撒き散らし、割れた皿の破片が飛び散っている
つまりこれは緊急事態というものだ えまーじぇんしーだ
細身ながらも、あの屈強でしたたかなクーが床に倒れているのだから
曙が倒れるのと同レベルにされてしまっては困る
しかし、そこは流石クレバーな私
決して焦ることはなく、的確に状況判断を下す
lw´‐ _‐ノv ・・・・・・
‐ _‐ノv
川 -) ・・・・?
lw´‐ _‐ノv ・・よし
ヒョコッ
川 ゚ -゚) ・・・・
壁にかかってある箒を取り出し、まずは皿の破片を掃除することにした
こういった破片は非常に厄介であるのだ
素足で踏もうものなら、足の裏に刺さってしまうことだってある
私のようなもっちりもちもちポンデリングな肌をもつ人間にとってはまさに驚異
lw´‐ _‐ノv サッサッ
見よ、この箒さばきを
王女だからといって「家事をしない」という訳にもいかん
最近は少々家事だって手伝っているのだ 姫でも箒ぐらいは扱えるのだ
lw´‐ _‐ノv カチャカチャ
大きなお皿も、手を傷つけないよう丁寧に拾い上げ、重ねる
三枚ほど割れただけで床は破片だらけで大変だ
なかなか骨の折れる作業だ
だが、我が従者が犯した失態
それを拭うのは主人である私の仕事だ
lw´‐ _‐ノv サッサッ
川 ゚ -゚) ・・・・
クーの綺麗な髪の毛にかかる破片も除去だ
キューティクルが痛まぬよう、慎重に慎重を重ねる
従者の美容にすら気を使ってやるとは、流石私 素晴らしい
lw´‐ _‐ノv ・・よし
傷一つ無く済んだことに我ながら素敵な感慨を覚えざるを得ない
ふふふ、姫だから何も出来ないと思うなよ皿め
ここでまた一つ状況を確認する
床にはまだ倒れたままのクーがおり、動く気配は無い
lw´‐ _‐ノv ふむ・・
‐ _‐ノv
川 ゚ -゚) ?
lw´‐ _‐ノv ・・よーし いくぞ
ビーッ
川 ゚ -゚) ・・・・・・
リビングからガムテープを持ってくる
何をするのかというと、勿論クーの倒れた跡を縁取るのである
殺人現場でよくやっているやつだ 昔からやってみたかったのだよ
長いクーの髪の毛を丁寧に束ね、ガムテープがひっつかないようにしてやる
さっきから流石過ぎるな こういう些細な想いやりが素晴らしい 自画自賛してしまう
しかしなかなか縁取りは難しい 白いテープがあればよかったのだが残念
lw´‐ _‐ノv 〜♪
お次は勿論、「立ち入り禁止」のテープを入口に巡らす作業だ
これも仕方ないからガムテープで代用
マジックで丁寧に「立ち入り禁止」または「クー死亡中」の文字を書き散らす
lw´‐ _‐ノv うん 出来た
川 ゚ -゚) ・・・・・・
lw´‐ _‐ノv あっ
おお、そうだ 指紋採取とかしないといけない
そう思い立ち、耳かきを持ってきた
耳かきのあのフワフワする綿っぽい部分で指紋採取するのである
少し調べてみたが、あの綿っぽい部分は「梵天」というらしい
そもそも梵天とは仏教の守護神のようだ
勉強になっただろ、感謝しろ
lw´‐ _‐ノv ううむ、出んな・・ 何も出ぬ・・
パタパタ
ふわふわの部分に小麦粉をつけ、採取採取採取
しかし指紋は出てこない なんて計画的犯行だ
そのまま小麦粉のついた綿、
命名して「小麦粉梵天丸」をクーの顔にパタパタしてみる
クーの顔が小麦粉で染まってゆく 面白い
川 -) ・・!
lw´‐ _‐ノv パタパタ
lw´‐ _‐ノv むー 出ん
ポイッ
駄目だ、小麦粉梵天丸駄目だ
そもそもこれでとれるわけねーだろ ふざけんな小麦粉
lw´‐ _‐ノv ゴシゴシ
川 -) ・・・・
クーの顔を拭いてやり、小麦粉を落としてやる
なんてノリのいい肌なんだ 小麦粉が綺麗に肌に吸いついている
ドモホルンリンクル使わずしてこの肌とは恐れ入る
しかし、妙に顔が赤い気がする 死後数分といったところか?
lw´‐ _‐ノv ふうむ・・ なんてこった 証拠がまるで無い
川 ゚ -゚) ・・・・・・
;゚∀从 ・・おーい 何やってんだぁ? ・・うおっ!? なんだこれ!?
ヒョコッ
lw´‐ _‐ノv ! ・・・・・・
lw´‐ _‐ノv パイナッポゥ刑事! お疲れ様です!
今回のヤマは謎が多いですぜ!
从 ゚∀从 ・・! ・・・・・・
从 ゚∀从 ・・・・うむ、御苦労だったなシュークリーム刑事
迷宮入りの予感がするな!
川 ゚ -゚) ・・・・・・
ここにきてハイン、すなわちパイナッポゥ刑事が到着
そして私がシュークリーム刑事だという事実が判明する
ふふふ… 面白くなってきたぞ
从 ゚∀从 これがガイシャか ふむ・・ 外傷は見受けられん・・
毒殺か、デスノートの殺害かの二択に絞られたな
lw´‐ _‐ノv 毒の場合だと、おそらく彼女が最後に食べたエンゼルパイが怪しいですな
从 ゚∀从 エンゼルがデビルに変わった瞬間、か・・ なんとも皮肉なものだ
川 ゚ -゚) ・・・・・・
川 ゚ -゚) ・・さっきから何をやっているのですか・・
ムクリ
lw´‐ _‐ノv あー! ああぁー・・ ・・起きた
从 ゚∀从 ・・ようクー I am パイナッポゥ刑事だ よろしくな
クーが復活
しかし既にガムテープで縁取り済みだ
倒れた形は大まかに分かるぞ 問題は無い
川 ゚ -゚) ううぅ・・ 酷いですよ姫様・・ 少しぐらい心配してくれてm
川 -) あうっ
パタリ
lw´‐ _‐ノv 从 ゚∀从 む?
川 -) あうー・・
また床に倒れたクー
あれ? なんかおかしいぞ
というか、今や顔がトマトの如く真っ赤である
もしくはパプリカのように真っ赤ともいえる
lw´‐ _‐ノv ・・クー?
从 ゚∀从
从 ゚∀从 もしや──
:( ´m`): ──風邪ですな
lw´‐ _‐ノv ・・なんと
从 ゚∀从 ・・なんと
川 ゚ -゚) な、なんと・・
急遽医者を呼び、クーを診断させてみるとなんと風邪ッ
ふうむ、道理で顔が赤い… 目も潤んでいる
:( ´m`): い、い、今・・ 今、風邪が流行っておる・・ おるのでな・・・
プルプル 風邪が・・ 流行っておってな・・ よくかかるのだよ・・ いろんな人がな・・
lw´‐ _‐ノv あっ ニュースでやってた 口蹄疫ってやつだな
川 ゚ -゚) わ、私を家畜にしないで下さい・・!
・・確かにニュースでやってましたね・・ 病院が大繁盛らしいじゃないですか・・
:( ´m`): そ、そ、そのとおりでな・・ 老若男女・・ 来るでな・・
プルプル ま、ま、まぁ、三日も寝れば治る・・ 治る風邪じゃてな・・
心配は・・ 心配はいらぬよ・・ 栄養をとって、ね、寝れば・・ 治るでな・・
lw´‐ _‐ノv ・・すみません あなた大丈夫ですか プルプルしてますよ
从 ゚∀从 クーよりお前の方が心配なんだけど・・ 大丈夫か爺さん・・
川 ゚ -゚) ・・・・・・
:( ´m`): と、と、と、とにかく薬を置いていくのでな・・
プルプル しょ、食後に一回・・ 飲んで・・飲んで寝れば・・ 治るじゃてな・・
わ、わ、わしは帰るでな・・ お、お、お、お大事にな・・
そう言い残しチワワのような御老人は帰っていった
私達は心配でたまらなかった
途中で事故にあうのでは… 無事帰ることが出来るのか…
なにせあの御老体 心配で心配で胸が苦しい
川 ゚ -゚) わ、私の心配してくださいよう二人とも・・
ひ、酷いです・・ うう・・
从 ゚∀从 でもすぐ治るらしいじゃん 良かった良かった
川 ゚ -゚) よ、よくないですよぉ・・ 頭痛いし、なんか気持ち悪いし・・ うえぇ・・
lw´‐ _‐ノv しかし珍しいな クーが体調不良とは
从 ゚∀从 確かになぁ・・ 昔だって、俺ばっかり風邪になってお前はピンピンしてたのに・・
もしかして風邪初めてじゃね?
川 ゚ -゚) 初めてですよ・・ こ、こんなに気持ち悪いのですか・・ 眩暈が・・
lw´‐ _‐ノv ふうむ・・
lw´‐ _‐ノv ・・苦しいのか?
川 ゚ -゚) 苦しいです・・
lw´‐ _‐ノv ・・・・・・
从 ゚∀从 とりあえず、この服脱がせようぜ
ジャージの方が楽だろ
川 ゚ -゚) 自分で脱ぎます・・ ジャージ持ってきて下さいぃ・・
ふむ、きっと疲れていたのだろう
何せこんなにだるそうにしているクーは初めてだ
息も荒いし体が熱い
从 ゚∀从 ほれ、洗濯機に突っ込んで来いシュー
あとジャージ持ってきて
lw´‐ _‐ノv うん
ハインから熱のこもったメイド服を渡され、洗濯機へ向かう
今日のご飯は出前かなぁ そんなことを思いつつ服を押し込む
lw´‐ _‐ノv
lw´‐ _‐ノv ・・あっ
良いこと考えた
lw´‐ _‐ノv ジャージ持ってきたよークー
川 ゚ -゚) ありがとうございます・・
も、申し訳ありません・・ ハインならいざしらず、姫様にまで迷惑を・・
从 ゚∀从 俺にもかけんじゃねぇよ
lw´‐ _‐ノv あ、時にクーよ 質問があるのだが
川 ゚ -゚) なんでしょう・・
lw´‐ _‐ノv ほら、これのことなんだけどさ
手に握っていた「これ」
いわゆるメイドが頭につけている、あのヒラヒラのものだ
たとえジャージでも、これさえ付けていれば「メイド」と呼ぶことが可能となる必須アイテム
lw´‐ _‐ノv これ、なんていうの? カチューシャ?
川 ゚ -゚) ・・? そ、それは・・ ホワイトブリムというものです・・
・・あ、それはまだ洗わなくても・・ だ、大丈夫・・
lw´‐ _‐ノv 何その必殺技みたいな名前 かっけぇ
・・これ、借りるぞ
从 ゚∀从 ん?
そうして、聖属性の必殺技みたいな名前の装飾品を頭に装着する
うむ、なんだか新たな自分の発見みたいだ
ギコに見せたら発情必至だな いかんいかん
lw´‐ _‐ノv どうよ 似合う?
川 ゚ -゚) か、可愛いです
从 ゚∀从 え、なに? コスプレか?
lw´‐ _‐ノv 今日は私がメイドやるから、クーは姫様ね
从 ゚∀从
川 ゚ -゚)
lw´‐ _‐ノv
从 ゚∀从 えっ
川 ゚ -゚) えっ
lw´‐ _‐ノv ふふん
川 ゚ -゚) ・・・・・・
川 ゚ -゚) 何をおっしゃっているのですか、姫さm
lw´‐ _‐ノv 姫様、お加減はいかがでございまするか?
呼吸が辛そうですね あら、こんなに熱もありますわ おほほほほ
川 ゚ -゚) ・・!? ・・お、おやめ下さい姫様! あなたはもっと王女らしk
lw´‐ _‐ノv 姫様! アイアム家政婦ですよ 「シュー」とお呼びになってくださいまし!
今日はたーんと甘えて下さいませーい
川 ゚ -゚) う・・!? よ、呼び捨てなんて出来まs
lw´#‐ _‐ノv えぇい私の命令じゃ! 今日は私がメイドやるんじゃ! お前が姫じゃ!
川 ゚ -゚) !?
全く、分からんヤツだな… 私が「やる」といっているからやれば良いのだ
いつまでもメイドでいられると思うなよ、クーめ
今日は逆転するのだ 逆転裁判をやるのだ いや裁判はやらんのだ
lw´‐ _‐ノv シューとおよびになって下さいませ、姫様
川 ゚ -゚) ・・! ハ、ハイン・・ なんとかしてくださいよう・・
从 ゚∀从 ふむ・・
lw´‐ _‐ノv
从 ゚∀从 ・・お前、どうせなら服もメイドにしたらどうよ 買ってきてやろうか
lw´‐ _‐ノv おーっ
川 ゚ -゚) !? ばっ・・ やめなさい! 仮にも王女にそんな雑用着、着せないでくださ・・
川; -) ぐぇあ・・ き、気持ちわるい・・
フラッ
lw´‐ _‐ノv ! 姫様、大声出しちゃなりませんよ!
お身体に障りまする! それ、ひっひっふー! ひっひっふー!
川 ゚ -゚) それは・・ ラ、ラマーズ法・・
lw´‐ _‐ノv とにかーく! お前h・・ あなたは"姫"ですのよ!
お姫様らしく、上品にふるまいなさいまし!
川;゚ -゚) ハ、ハイイィン・・っ
从 ゚∀从 ・・ま、今日は甘えるのもいいんじゃねぇか?
今まで家事頑張ってもらったしなぁ
lw´‐ _‐ノv なー
川;゚ -゚) うー・・!
川 ゚ -゚) ・・・・・・
川 ゚ -゚) そ、それではお言葉に甘えて・・ 今日一日だけ・・
ひ、姫を・・ や、やります・・
lw´‐ _‐ノv ええ、ええ 存分に私を御遣い下さいましー
あら大変 タオルが熱くなっていますわ 取り換えなきゃいけませんわ
川 ゚ -゚) あぁ、やっぱり・・ あぁ・・
クーで熱々のタオルを冷たい水につけるのであります
おおう、冷てぇ 氷いっぱい入ってるからな
しかし私はメイド クー様の為にも頑張って絞るのよ
それぎゅーっと あ、そーれぎゅーっと
lw´‐ _‐ノv さぁさぁ、熱を下げないといけませんわ
川;゚ -゚) (し、絞れきれてない・・ 首に滴るぅ・・)
ベチャッ
..::;;;゚∀从 あ、シュー 買ってきたぞメイド服 コスプレ用だけど
川 ゚ -゚) !? い、いつの間に・・ ていうかコスプレ品買わないで下さいよもう!
lw´‐ _‐ノv うっひょひょーい! これで私も家政婦だーい
いろんなものを見て見てみまくるぞーい
川 ゚ -゚) あぁ、そんな・・ あ、でも可愛い・・
・・いやいやいや 雑用着なんて着ないで下さいよお・・
lw´‐ _‐ノv ふっふっふ パーフェクトジオングも真っ青だぜ
パーフェクトメイドシュー、ここに誕生 どうよ
从 ゚∀从 迷ったけどクーと御揃いのロングにしといたぜ
川 ゚ -゚) 生足出させるような破廉恥服、私は認めませんよ・・ ううぅ・・
ロングにブラックなメイド服に身を包む私
幾分か機動性が増したような錯覚に陥る
これで私も腹黒メイドだ さぁ、家事をしますわ
lw´‐ _‐ノv よーし まずはお買いものに行きますわ 風邪と言ったらポカリですわね
姫様のためにポカリと・・ えぇと、ポカリと・・ そう、ポカリを買ってくるのです
川 ゚ -゚) 私は・・アクエリアス派・・ というかハインの魔法で行かせて下さいな・・
从 ゚∀从 何事も経験さー ここは「はじめてのおつかい」ということでシューに行かせようぜっ
姫たるもの、労働者の生活も味わうべきだ うんうん
川 ゚ -゚) うー・・
lw´‐ _‐ノv よーし それではおつかいに行ってくるぞう いえーい
从 ゚∀从 いえーい!
川 ゚ -゚) (あぁ、心配です・・)
lw´‐ _‐ノv ──ぽーかぁーりー♪ ぽーかぁーりぃー♪
私の心は水模様〜♪ 糖分高めよ〜♪
そんなこんなで一日メイドby私
即興ポカリの曲を御機嫌で歌い、ぶーらぶらぶらお買い物
ハインの作詞を馬鹿にしてはいけないような気がしてきたがキニシナイ
だってポカリは美味しいもの アクエリアスよりも味が濃くて美味しいもの
lw´‐ _‐ノv なんかいつもと違うから良い気分だな でもク・・
・・姫様のために急がねばなりませんわ 今も苦しんでいるのだわ
私の頭の中に、真っ赤に熟れてしまったクーが浮かび上がる
今頃、涙目で苦しがっているだろう 早くしなければなりませんわ
lw´‐ _‐ノv ポーカリ、ポカリ、語感が素敵よポッポカリィ〜
-------------------------------------------------------------
川 ゚ -゚) うああ、危ないぃい・・! あんな格好で独り歩きは危険・・っ
从 ゚∀从 でも、いい機会っちゃいい機会だぜー 厄の弱まり具合を測れるしな
つーかお前は寝とれ
川 ゚ -゚) ううぅ・・ 大丈夫でしょうか・・
-------------------------------------------------------------
[17話−3へ] 戻る [18話−2へ]