私もこの頃になると、家から長らく離れていると胸が苦しくなることを経験的に覚えていました
自分の存在を理解は出来ていなくとも、御爺様の言っていることは理解できます
ですので、出来るだけ家から近い林の中で遊ぶことにしました


从゚∀从 いいかクー このあみで、ちょうちょを捕まえるのだ
      んでこのカゴに入れるんだぞー

川゚ -゚) わかったぞー


ハインを先頭に、ひらひら舞う蝶を二人で追い回していきました
ぶんぶんと滅茶苦茶に網を振り回し、一心不乱のちびハイン

从#∀从 おらおらおらおらおら! こなくそ! とれろー!

川゚ -゚) は、はいん いたい かお、あたるっ
バシバシ

从゚∀从 わりーわりー・・  ・・あっ!

川゚ -゚) おっ

虫捕り網が私の頬を攻撃しつつも、白い小さな蝶が網の中に収まりました
図鑑で教えてもらった小さなモンシロチョウです


从*゚∀从 !! とれたー! うおおおお!

川゚ -゚) やったー

从゚∀从 よーし、カゴにいれよう! じいちゃんに見せるぞー!
      クー、ていねいにとれよー! 

川 ゚ -゚) お、おおー

網の中から蝶の片翅を掴み、恐る恐る取り出しました
初めて間近で見る生き物に興味津々
可愛いなぁと、子供ながらに感心したものです


从゚∀从 ・・あっ! アゲハ蝶だ! いくぞー!

川゚ -゚) ・・・・・・

私を残し、すぐに次の蝶を見つけて走り出すハイン
その後ろでずっと私はそのモンシロチョウを見つめ続けていました
自由な片翅をぱたぱた、ぱたぱた動かし続けるモンシロチョウを飽きもせずに

それを見ていると、ちょっとした好奇心が芽生えました
私に限らず、人間の子供だって当然のように頭に思い浮かべることでしょう
それはごく自然のこと

潰すとどうなるのだろう
どんな反応を示すのだろう

実行に移すのはたやすいこと


川゚ -゚) おー

音も無く、私の小さな手の中でぺちゃんこでした
手にまみれた鱗粉、ちぎれた翅、丸まったままの触角、滅茶苦茶の胴体

でも、これは私の悪魔としての片鱗ではありません
本当にごく自然、人となんら変わりのない単純な好奇心だったのです
無邪気な子供としての、無邪気な気持ちなのでした


手の中をじっと見つめてると、向こうからハインが駆け寄ってきます
虫捕り網の中にはモンシロチョウよりもずっと不思議な模様の蝶が

从゚∀从 クー! クー! とれたー! アゲハとれたぞー!

川゚ -゚) おー きれいっ!

早速私が同様に翅を掴んで取り出します
蝶の大きさと比例するように、もっと大きな好奇心が沸きだします
そうだ、ハインにもさっきと同じものを見せてあげよう そう思いました


从゚∀从 ・・・・・・

从゚∀从 あれ? さっきのモンシロチョウは?

川゚ -゚) ハイン、みてみてー

从゚∀从 ん?

川゚ -゚) べちゃーんっ

从゚∀从 

ハインに見せつけるように、大きめのアゲハ蝶がべちゃーんと力いっぱい手の中へ
手を開くと、さっきのモンシロチョウの死骸と混ざり合っておかしなことになっていました


川゚ -゚) つぶれちったー

从゚∀从 

从;゚∀从 あああああああああああああああああああああああああああああああッ!?

川゚ -゚) !?
ビクッ

从;゚∀从 な・・ な・・

从#゚∀从 なにしてんのクーッ! なんで潰してんの!? 死んじゃったじゃん!!
      何!? なにしてんの!?

川゚ -゚) ? おもしろいよ?

从#゚∀从 !? おもしろくないよ! 殺しちゃだめじゃん! なにが面白いの!?

川゚ -゚) ・・・・? ・・よくわかんないけど、おもしろい

从#∀从 ・・! ・・・・く、く・・

从#゚∀从 クーの馬鹿あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!

川゚ -゚) !

網を放りだし、そのまま家へと駆けだしてしまいました
突然のことに私は呆然としてしまいました
どうしてハインが怒ってしまったのか、分かる訳もなく…


急いでハインを追いかけ、私も家へと戻ります
すると困惑した顔の御爺様に抱きつくハインが

川;゚ -゚) はいーん・・?

(; ФωФ) お、おお? クーも帰ってきたのか?

从#∀从 ! ・・ふんっ!


私を見ると、一人でまた外へと飛び出してしまうのです
どうすればいいのかわからなくなって、お爺さんの顔を見上げるしかありません

(; ФωФ) 何じゃ、喧嘩したのか? クー、何をしたのだ?

川;゚ -゚) ・・? ちょうちょ、つぶした これー

(; ФωФ) あー そういうことか・・ とにかく布巾で手を拭くがよい

川;゚ -゚) おー・・

( ФωФ) ほれ、こっちに来て座りなさい
        駄目じゃないかクー、ちょうちょさんを殺しちゃ

川;゚ -゚) ・・なんで?

(; ФωФ) 「なんで」って・・ うーん・・?

大量殺戮者が悪魔に命の尊さを教えるという、妙な図の出来上がりです


(; ФωФ) えーとだな・・ そもそも命を安易に奪い取っちゃ駄目でだろう?
        生き物を殺すのは常識的に考えていけないことだ

川;゚ -゚) ・・? なんでー・・?

(; ФωФ) (えぇー・・ やっべー なんて説明しよー・・ 吾輩人のこといえねーじゃん・・)

二人して大困惑です
お爺さんも説明するのに骨が折れたことでしょう
「ちょっとタンマ」と言われて一分後、やっと御爺様の閃いた顔


( ФωФ) そうだのう ハインを思い浮かべてみろ、クーよ
        ここにハインが立っているとしようじゃないか ここにハインがいる いいか?

川゚ -゚) おー・・?

(# ФωФ) そしたらどかーん! ばーん! ぎゃっぼーん! 隕石が落ちてきたーっ!
        ハインに命中だァー! ずっぎゃーん! 頭に激突ゥーッ!! べっちゃああぁーん!!

川゚ -゚) !?

(# ФωФ) ぐわーっ! 飛び散った隕石で側にいた吾輩もぐっげえげほおおおぉぉん!!
        腹に隕石が突き刺さったあぁぁ! ぐっへえぇぇぇ!! 吾輩死亡! 吾輩死亡!
        倒れ伏す吾輩! 飛び散る血飛沫! 折れ砕ける骨々! 家壊滅ッ!
        ぬわああああああ! あっはああぁぁん!! らめええええぇぇん!

川;゚ -゚) ・・・・!?


( ФωФ) ・・と、隕石が落ちてきてハインと吾輩が潰れちゃったとしよう
        二人とも、クーが潰しちゃった蝶々と同じようにペチャンコである!

川;゚ -゚) お、おおー・・

( ФωФ) そしたらどう思う? 吾輩とハインが死んじゃったら、お前はどう思うのだ?

川゚ -゚) ! ・・・・・・

川゚ -゚) ・・いやっ

( ФωФ) だろう? だから、殺すのは駄目なことなのだ
        この蝶々さんが死んじゃったことで、悲しむ他の蝶々さんもいるのだ
        悲しいことはしちゃいけんのだ

川゚ -゚) ・・わかったっ

( ФωФ) よーし、分かったなら蝶々さんに謝ろうな
        んでもって、ハインにも謝ろう 仲直りしなきゃのう

川゚ -゚) おけ ・・ちょうちょさんごめんなさい
     ・・ハインにもあやまってくるー

( ФωФ) うむ、うむ 許してくれるだろう 多分

( ФωФ) ・・・・・・

( ФωФ) (なんじゃ、ちゃんと分かってくれるんじゃないか・・ 悪魔でも)


こうして、私は最も重要なルールを学びました
御爺様がそれを教えるなんて皮肉にも思えますが、ちゃんと身に染みて理解出来たのです
人間の子供と同じように、「悪いこと」というものを少しずつ覚えていく
そのことで一番驚いたのはロマネスク御爺様だったのかもしれません

その日から、御爺様はどこかへ出かけることが多くなりました


从゚∀从 じーちゃん、今日もでかけんの? 謝罪まだおわんねーの?

( ФωФ) 謝罪は終わったぞー ちょっと色々とあるんじゃい
        魔法のお勉強でもしてて待っていてくれな

川゚ -゚) ? どこいくの?

( ФωФ) ちょっとそこまでぇ〜
        帰り遅くなるかもしんないけど、夕飯までには帰ってくるからな
        あ、晩御飯は何がよいであるか?

从゚∀从 おー ビーフストロガノフ食いたい

( ФωФ) ビ、ビーム・・? よくわからんがおとなしくなぁ

ふらっと出かけては、夜には帰って、いつの間にかまた出掛けている
そして帰ってくる時には、どことなく元気のない顔をしている
そんなことが何ヶ月か続きました


…そしてある日の夜
ハインと一緒に眠ろうとした時のこと

川゚ -゚) おやすみーですはいん

从 ∀从 zzz...  zz... サ、サロンパスは・・ タコじゃ・・ ない・・ zzz....

川゚ -゚) もうねてますかー・・

コンコン

川゚ -゚) お?

壁|ФωФ) ・・おーいクーよ 起きとる?
 ヌアァン

川゚ -゚) おじーさま? もうねますよー おやすみなさい

( ФωФ) 待て待て待てーい ちょっと用があるから来てくれんか?
        ハインには秘密の御出掛じゃ

川゚ -゚) ?

その時の御爺様の目は、どこか輝いておりました
探し物を見つけたような、そんな目


川゚ -゚) ハインはおこさないですか?

( ФωФ) うむ ちょいとこっちに来るのだ

川゚ -゚) はーい

御爺様は外出用のローブを着こんでいました
こんな夜中に外出なんて、今までに無かったことです

( ФωФ) よし、吾輩にもっと近づけ
        ほれ、もっともっと 足にひっつくのじゃ

川゚ -゚) ・・? こう?

( ФωФ) うむ・・ よし、いこう

川゚ -゚) !

そう言うと、纏っているローブで小さな私を包みこみました
視界が灰色に染まり、何も見えなくなります
そしてすぐにローブが取り払われると…


川゚ -゚) !? ・・あれ?

たった一瞬だったのに、いつの間にか全く別の場所に立つ私達
暗かったけれど、四方には大きな本棚がいっぱいあるのが分かります

そこは姫様のお城の図書館でした


川゚ -゚) ・・? ここ、どこですかー・・?

( ФωФ) んん、気にせずともよい ・・ええと、明かりは・・

川゚ -゚) !

(;;;:::::∀::) zzzz.. zz.. んごっ・・ オ、オクトパスは・・ 湿布じゃ、ない・・っ zz....

暗い部屋の中、耳を澄ますと誰かが寝言を立てながら寝ていました
毛布を一枚無造作に被り、床に寝ころんでおります
御爺様が明かりをつけると、皆さん御馴染の顔が浮かび上がりました


( ФωФ) お 居たいた おーい、起きろ"モララー" ロマちゃんじゃぞ お茶出せーい

(; ∀ ) zz.. ごがっ・・! ・・は、貼るな・・! タコを・・ 貼るな・・っ zz.. ぐが・・っ!

(# ФωФ) うらっ

(; ゚∀・) ・。”; げっぶふぁっおッふッ!?

御爺様が杖で思いっきり神父さん、もといモララーさんのお腹を付きさします
体中にタコを張り付けられる悪夢から救ったと思えば優しいものです


( ФωФ) 起きたかの? お前寝るの早いな 優等生か

(; ・∀・) !? ・・え!? ロ、ロマさん・・!? ど、どしたんですかいきなり・・!?

( ФωФ) おうおう、お前にちょいと見せたいものがあってのー


(; ・∀・) い、いきなり来て変な起こし方しないで下さいよもおおおお・・っ
       老人はもう眠る時間ですよ、おやすみなさい 紙オムツ忘れないで下さいね

(; ФωФ) ぶっ飛ばすぞお前! そんなにおいぼれとらんわ!

( ・∀・) はいはい・・ で、一体なんの用事d ・・お?

川゚ -゚) ジーッ

( ・∀・) おおっ! 君はもしかして御孫さんのハインちゃんかい?
      はじめまして! 私の名前はモララーです、よろしくね

川゚ -゚) ・・? わたしハインじゃないです クーです こんばんわー

( ・∀・) ? あれ、御孫さんは二人でしたっけ? ・・クーちゃんかぁ

( ФωФ) いや、孫はハイン一人であるぞ

( ・∀・) えっ

川゚ -゚) ?

( ・∀・) ・・・・・・

(; ・∀・) 幼女誘拐ですか・・ ペ、ペドフィリア・・

(; ФωФ) お前は一々失礼な奴だなこのやろう! この子はだな──


(; ・∀・) ──悪魔・・? 人型の悪魔ですか?

( ФωФ) うむ アクマイト光線は出せんが、正真正銘悪魔じゃ

(; ・∀・) この子が悪魔ねぇ・・ 信じられませんよ、見た目普通の女の子じゃないですか

川゚ -゚) ? あくまじゃないよ クーですよ

(; ・∀・) 自分自身のことよくわかってないじゃないですか・・
       ・・あ、もしかしてドッキリですか?

( ФωФ) ちゃうちゃう 正真正銘の悪魔である こう見えても驚異的なパワーを秘めておるぞ
        今まで吾輩が召喚したどの悪魔よりも圧倒的に強力じゃ 腕の一本二本、持ってかれるぞ

( ・∀・) へぇー・・ 戦争なんて終わったのに、まだ召喚魔法なんか使ってたんですか?
      ・・あっ! まさか私に研究させる気ですか? それなら喜んでお引き受けしますよ!

( ФωФ) ちゃうちゃう 戦争終結の二週間ぐらい前に召喚したのだ
        あとお前なんかに渡すかバーカ! 死ね! エロいことしようとしたな! 死ね!

(; ・∀・) ・・え? じゃ、じゃあなんですか? 今までこの子を育てていたんですか!?
       ハインちゃんもいるだろうに・・ 間違えばハインちゃん死にますよ?

( ФωФ) 最初はハインが怪我しないよう魔法で守っておったが・・ 最近はもう安心である
        悪魔特有の残虐性も、今のところほとんど見せるこたぁない
        普通の人間の子供のように育っておるのだ 道徳心というものも芽生えた

( ・∀・) ほう そりゃ興味深いですね 詳しくお聞かせ下さい

川゚ -゚) (・・? なんのおはなし?)


( ФωФ) そーじゃのー・・ なぁクーよ、悪いことはしたら駄目なことだよなー?
        例えばどんなことしたら駄目だか分かるかー?

川゚ -゚) だれかを、きずつけちゃーだめです あと、おさらをわっちゃだめです
     ちらかしたままも、わるいことです

( ФωФ) ほら、な 教育でちゃんと覚えるのだ

( ・∀・) おお! 偉いねぇクーちゃん 大したもんだよ!

川゚ -゚) ? ありがとーございます

( ФωФ) ついでにコイツは殴ってもいいぞ

川゚ -゚) わかりまーした

( ・∀・) わかるな


( ФωФ) まぁそういうわけで、お前にお披露目をしようと思ってな
        ・・そんでもう一つ、個人的にお前に頼みごとがあってのー

( ・∀・) ふーん・・ お聞きしましょうか

( ФωФ) あ、その前にクーよ 暇だろうからそこら辺ぶらぶらしてきてよいぞ
        ほしい本があったら持って帰ろうな

川゚ -゚) おー いってきます

( ・∀・) お前等このやろう


( ・∀・) で、本題はなんなのです? 力になれることならなりますけども

( ФωФ) うむ・・ 某知り合いからちらっと聞いた話なのだが・・
        そいつも酒の席で聞いた話だから確証は無いらしいけども・・

( ФωФ) お前、つい最近"予知夢"を見たそうじゃないか

( ・∀・) !

( ФωФ) ・・で、その結果が芳しくないらしいのう?
        王の子が不吉な子とかなんとか聞いたがそりゃ本当か?

(; ・∀・) あー・・ 勢いで口が滑ってしまった・・
      ・・まぁ、そんな感じでした おそらく厄持ちの子でしょう

( ФωФ) ・・それはお前の個人的な下らん占いではないのだな?
        信頼に値するものと見てよいのか?

( ・∀・) 私も初めて見たものでなんとも・・ ただ、間違いなく普通の夢ではありませんでした

( ФωФ) お前の爺さんは自由に予知を行っていたが・・
        やっと「占い師」の肩書きがはまってきたといった所かのう

( ・∀・) いえ、突発的なものでしたので・・ 自分の意思では行えませんよ

( ФωФ) ふむ ・・で、ここからが重要なのだが・・・・
        お前、その夢のことを国王か何かに話したか? この国の人間に既に教えたか?


( ・∀・) いえ、まだ子供の妊娠の話すら聞いていない状況ですし、下手に混乱させるのはまずいかと
      知っているのは、遠い南方の国に住む友人数人です 酒の勢いで喋ってしまったもんで・・
      後で口止めしておきます 遠方なんで漏れはしないと思いますが

( ФωФ) おお、教えてないか うんうん、好都合好都合

( ・∀・) ・・? 何でまたそんなことを

( ФωФ) ・・さてモララーよ ここからが本題の本題なのだが・・・・

( ・∀・) ?

( ФωФ) 絶ッ〜〜〜〜対にその子の厄祓いはするな
        んで、この図書館にある厄に関する蔵書は残らず破棄しろ
        ・・もっと簡単にいえば「厄は祓えるものではない」と国家内の情報操作してくれんか


( ・∀・) ・・・・・・

( ・∀・) 

(; ・∀・) は?

( ФωФ) ・・・・・・


(; ・∀・) ・・もしかしてロマさん、あなた・・

(; ・∀・) 「厄を瘴気の代替に使おう」って言ってんですか!?
       あの悪魔の子のエネルギーにしようって言うんじゃないでしょうね!?

( ФωФ) おお 察しいいじゃん! やるなモラ助! よっ、色男!
        ・・で、やってくれるよな? 吾輩の死後、クーを生かすためにも・・ な?

(; ・∀・) は!? やる訳ないじゃないですか! 常識的に考えてそんなことする訳ないでしょうが!
       自分が何言ってるのかわかってるんですか加齢臭爺さん! アホか! お前アホか! アルツハイマーか!?

(; ФωФ) 加齢臭とか言うなよ! そんなに枕臭くないわい! あと人にアホとかいうな!

(; ・∀・) つーか個人単位のレベルじゃないですからね!?
      "王の子供"ですよ? 国家単位の問題です! んなことしたら国がどうなるか分かったもんじゃない!
       個人と国! 重さの桁が違うんですよ! ボケてないでさっさと帰って枕洗って寝て下さい!

(; ФωФ) お前さっきからかなり酷いこと言いやがるな・・
        だからこーして頼んでるんじゃないか

(; ・∀・) ・・そもそもあなた、他の悪魔は平気で見殺しにしてたじゃないですか
       それが自然の摂理でしょう? 「あなたも死んで、その子も死ぬ」
       それだけで良いじゃないですか 自然なことですよ

( ФωФ) んー・・ つい最近まで吾輩もそう思っていたんだがのう・・ だが・・

( ФωФ) ・・情が移っちまってのぉ ほっほっほ・・

(; ・∀・) ・・・・・・


(; ・∀・) ・・何にせよ、そんな馬鹿げた話出来るわけないじゃないですか
       他にも方法があるでしょう? 例えばハインちゃんにその召喚術を教え込むとか・・

( ФωФ) それはならん! この魔法は危険すぎる!
        下手をすれば間接的にとはいえ人を殺してしまうことだってあるのだ!
        ハインにそんなものを教えさせるわけにはいかん ・・"呪い"の類もハインに教えるつもりは無い!

( ФωФ) 他の人間に対してもそうじゃ
        悪用すれば、吾輩がやったこと以上の災害が訪れるぞ

(; ・∀・) ・・そもそも情報操作っつったって、上手くいくとは思えませんよ
       無理でしょ、無理無理 すぐバレちゃいますよ
       しかも隠蔽してたとばれたら私もう大変なことなっちゃうじゃないですか

( ФωФ) それが可能なのだ! この国の「小ささ」と「宮廷魔術師」の存在が可能にしているのだ!
        吾輩が調べたところ、魔術師はお前を除いてこの国にはおらんだろう?
        そして魔法のことならお前が誰よりも詳しい!

( ФωФ) その誰よりも詳しいお前が「厄はどうしようもありません」と言えば・・ あとはそれで簡単にすむのだ!
        あとはお前が全ての資料を処分し、他の魔術師を国に近づけさせないようにすれば充分可能!
        外部との接触さえなければいける! この国を一種の「閉鎖空間」にするのだ!

( ФωФ) その為には「厄を弱めること」も許されん・・
        「何かしら出来る状況」があれば、そこに"文献"が存在することを知らしめてしまう
        そうしたら恐らく王か側近かが調べだしてしまう可能性もある・・

(; ・∀・) ・・・・・・


( ФωФ) あとはお前が全力で厄について調べ回るフリでもすれば問題は無い
        無論、なにかしらの意外性が絡んで上手くいかない場合も十二分にある
        だが机上の空論というほどでも無かろう?

(; ・∀・) ・・何故あなたがそこまでこだわるのか、私には理解できないですよ

( ФωФ) あの子は"心"を持っているのだ・・ 今までの残虐なだけの悪魔どもとは違う!
        人を愛し、愛される素質を持っている・・ それに、もう吾輩の「家族」なのだ
        家族の為ならば、どんな犠牲を払おうが構うものか

(; ・∀・) ・・すみませんが、御引き取り下さい
       あなたの家族に対する気持ちなんて私には関係の無いことだし、迷惑に他ならない
       一人の幸福の為に、無関係の人々を犠牲にするなんて馬鹿げてる

( ФωФ) ・・・・・・

( ФωФ) ・・まぁ、そりゃそうだよなぁ
  ケロリ    吾輩とて、お前が素直に了承してくれるとは思っちゃいなかったさ 当然だよな

( ・∀・) ・・は?

( ФωФ) ・・いや、いい もういいのだ
        吾輩がお前の立場でもそりゃ同じこと言うし、そいつブン殴るかもしんないし・・
        分かった、諦めるであるよ 吾輩もちょっと理想を語りすぎた

( ・∀・) ・・・・? 分かってくれりゃあいいんですが・・

川゚ -゚) おじーさまー
 ヒョコ
( ФωФ) お、クーか


川゚ -゚) おじーさま、おりょうりのほんありましたー

( ФωФ) ん? おお、そりゃいいな そいつを貰って家に戻るとするかのう!
        吾輩の用事も終わったことだし・・ すまんなモララー、迷惑かけて

( ・∀・) それでは、また・・ でも本・・ ・・まぁいいや、プレゼントしましょう

( ФωФ) あー・・ ここからは単なる「独り言」なんじゃが

( ・∀・) ?

( ФωФ) 厄を祓うのには・・ そう、御姫様の体が耐えられるまで、最低でも10年ぐらいはかかるからのー
        その間・・ 吾輩、もうなんか居てもたってもいられなくなっちゃってさぁ・・



( ФωФ) ・・"さらって"しまうかも・・・・ なぁ

(; ・∀・) ッ!? な・・・・!?

( ФωФ) んじゃあな ・・また会おうか さぁクー、こっちに来るのであーる

川゚ -゚) ? さよーならですー

(; ・∀・) ・・・・・・

(; ・∀・) (頼む気・・ 最初から・・ 無いじゃないか・・)

(; ・∀・) ・・どこまでも狡猾な──


──その後数年間は、私にとって幸せな期間でした
とてものどかで、心地よくて、のびのびです

自分自身というものを初めて理解したのは、ハインが14,5歳のころだったでしょうか
彼女が熱を出して寝込んだことがありました


从; ∀从 ゼヒー・・ ゼヒィー・・ ぐーる゙ーじーい゙ー・・!

川 ゚ -゚) 熱が下がりませんねぇ・・
     ただかの風邪だとは思うのですが、体力が大分消耗しているようです

( ФωФ) んーむ・・ 仕方がないのう、体力増強の薬でも作ってやるか
        すまんがクー、少し外出してるから看病を頼んだぞ
        材料調達に行ってくるである

川 ゚ -゚) わかりました


こうして御爺様が家を空けました
ハインが体を壊すことはしょっちゅうで、別に珍しくもないこと
私は一人、居間で本を読みながら御留守番

御爺様が家を出て10分程度でした
我が家のドアが珍しくコンコンと音を鳴らしたのです


川 ゚ -゚) (? 珍しいですね、お客さんだなんて)

こんな所に誰かが訪ねてくることは稀でした
道を外れた登山者だろうと思いながらドアを開けます


川 ゚ -゚) はい、一体どなた・・

川 ゚ -゚) おや?

しかし、そこには誰もいないのです
周りを見回しても誰もいません


川 ゚ -゚) ? ・・勘違いだったでしょうか?

小鳥か何かがぶつかったのかしらと思いながら、また居間に戻ります
そして読み途中の本に手をかけようとした時、またコンコンという音
間違いなく人が鳴らす音でした


川 ゚ -゚) (・・? 悪戯ですかね? こんな所まで来て悪戯というのもおかしな話ですが・・)

なにはともあれ、もう一度本を閉じで扉へ向かいました
やんちゃな子供の仕業なら、とっちめて説教せねばと思いつつ

川 ゚ -゚) はいはい、今行きますから少し待っ・・

川 ゚ -゚) ・・・・?


なにかが変でした
動物的な感覚というか… 扉を前にすると不吉な思いがしたのです
こんなことは初めての経験

川 ゚ -゚) ・・・・・・

なんだか扉に近づきたくないような気持ちがして、一瞬だけ足を止めました
たった一瞬だけ、扉をあけることを思いとどまったのです

不吉な予感とは当たるものですね

ざくん、と木が割れる音がしたかと思いきや、キラキラしたものが扉から付き出てきました
それは私のお腹の寸前まで届いており、私の一瞬の躊躇がなければ突き刺さっていたことは確実
長い刀剣だというのに気付いたのはその後です

川;゚ -゚) !?

突然過ぎる出来事に、声も出ないほどに驚いてしまいました
身動きをとることすら忘れるほどです


川;゚ -゚) ・・・・!? な、な・・!?

長い刀剣がひっこみ、扉が飽きます
外には一人の大きな男性が立っていました


/ ゚、。 / 

川;゚ -゚) ・・!? だ、誰です!?

山賊か何かの類だと思い、とっさに身構えます
しかし相手は武器を持った男性です
私に何が出来るというのか、そんなことを考えつつ距離をとりました

/ ゚、。;/ ・・? ・・・・・・
       あれ、おかしいな ハインリッヒ・・ じゃない?

川 ゚ -゚) ・・!?

/ ゚、。;/ 変だな、確かロマネスクとの二人暮らしだと思っていたのだけど・・
       ・・よく見たらハインリッヒとは全然違うな・・ 魔術師というわけでもなさそうだし・・

川;゚ -゚) ・・・・・・

/ ゚、。;/ ・・いや、すまなかった 無関係のものを傷つけてしまうところだったか
       そこのところは本当に謝るよ 怪我は無かったかい?
       女中か何かか? ・・いやいや本当にすまなかった

額に浮き出た汗をぬぐいながらも淡々と話しかけてくる不審者
私に対する敵意は無いようですが、それでも相当な危険人物に違いありません
よく見ると、彼の顔や腕には無数の刃物傷が付いています

その頃には、私も御爺様が戦争で多くの人を殺めたことは知っていました
そのため、彼がどんな目的でやってきたのかも容易に想像できます
御爺様に恨みを持つ人間ということに間違いありません


/ ゚、。 / ああ、察しがいいね いや、そりゃ分かるか・・
       ついこの間、やっとこの家を突き止めてね

川;゚ -゚) ・・ロマネスク御爺様はいませんよ

/ ゚、。 / そりゃそうさ 奴が出ていったのを見計らってきたのだから
       不意打ちだとしても奴には勝てるわけがないだろう
       だからまだ幼いハインリッヒの芽を積もうと思ってきたんだが・・
       いや悪かった、君を殺すところだった 確認したつもりが見間違えたよ

川;゚ -゚) !?

まるで緊張がとけたかのように、友好的とも思える態度で語りかけてきます
しかし私はそれどころではありません
私には危害を加えないとはいえ、ハインを殺そうと言うのです
もう気が気じゃありませんでした


/ ゚、。 / ・・で、ハインリッヒはそこの部屋かい? 通してもらうよ

川;゚ -゚) ・・ハインはいませんっ!

/ ゚、。 / 

/ ゚、。 / 無関係のものを傷つける気は微塵もないが・・
       ロマネスクの血筋の人間をかばおうとするなら話は別だぞ

川;゚ -゚) !


/ ゚、。 / おっと、ハインリッヒに助けを求めようするなよ 幼いとはいえ奴も魔術師だ
       こっちが後手に回れば不利だからな

一度おさめた剣をまた鞘から取り出す男性
そしてそれを私の喉元に付きつけます
いつでも殺せるような、そんなギラついた目でした


川;゚ -゚) ・・! ハインは関係ないでしょう!
     彼女は戦争とは何の関係も無い子です!

/ ゚、。 / 今後の問題だ ロマネスクから育てられた人間だぞ、危険だとは思わないのか?
       戦争がおこれば彼女も多くの人間を殺すだろう 奴の父親もそうやって殺されたんだ・・
       奴の血統の人間はいない方がいいと、君もそう思わないか?

川;゚ -゚) ハインはそんなことしませんっ! 危険な人なんかじゃありませんっ!

/ ゚、。 / 

/ ゚、。;/ お前、本気でロマネスク側に立つのか? 信じられんな・・
       それなら容赦はせんぞ? 大人しくハインリッヒの居場所を教えろ
       ・・とは行っても、どうせそこの部屋だろうが

川;゚ -゚) う

喉に剣を軽く押しつけられ、一筋の血が流れます


/ ゚、。 / ほら、素直に通してくれよ
       私だって君のような少女を殺したくなんかない

川;゚ -゚) ・・・・ハ、ハインだって少女ですっ 普通の、女の子ですっ!
     それに罪のない人間を意図的に殺すなんて、御爺様以上に酷い行為じゃないですか!
     そんなのじゃあなた、ただの悪人d

/ ゚、。#/ 何を言うか貴様ァッ!?

川;゚ -゚) !?
 ビクッ

/ ゚、。#/ お前にィッ! 敵兵ですらなくッ! 訳のわからん"バケモノ"に殺された仲間の気持ちがわかるかッ!?
       理不尽にッ! あまりのも理不尽に死んでいった人間の気持ちが分かるというのかッ!?
       善とか悪とかッ! そんなものとうに捨てているのだッ! 私と! 仲間の! 気持ちが晴れんのだァッ!

彼の抑えていた感情が爆発しました
物腰に隠されていても、彼の心の中はどろどろ
もう無理でした 既に「なだめる」なんて選択肢はなかったのです

/ ゚、。#/ 通せ・・ 今すぐ通せええぇぇ・・っ 殺されたいのかあぁッ・・!?

川;゚ -゚) ・・! ・・・・・・

川;゚ -゚) ・・と、通しませんっ!

/ ゚、。#/ ・・・・! そうかッ! お前もロマネスク共と同じかッ!
       ならばあの世でハインリッヒと会わせてやるッ!

川;゚ -゚) ────!

川 ゚ -゚) ────

川 ゚ -゚) ・・え?


冷たい雨
私は一人、濡れながら外で立ち尽くしていました


どれだけの時間が過ぎたのか、何が起きたのか
全くわからなかった よく覚えていなかった
「人間」としての私は覚えていること、知ること拒否していました
だけど「結果」がそれをいともたやすく突き破ってくる

川;゚ -゚) 

川;゚ -゚) な、に・・ これ・・ なに・・?

悪魔の片鱗としての「結果」は、足元にぐちゃぐちゃになって散乱しておりました
原型が何なのかもよくわからない、赤かったり黄色かったりする、とても汚らしいもの
雨と混じって薄い赤色が草の上を濡らし、そこに漂う生臭さ とてもとても臭かった
爆発でもおこったのではないかと思ってしまうような状況です

家の近くには、真っ二つどころか粉々になった刀の破片
その横には千切れた腕が一本、原型をとどめている数少ない「彼」の残り香
「結果」は私の手にも赤く染みついておりました

川;゚ -゚) ・・・・ど、

川;゚ -゚) ・・どういう・・・・ こ、と・・? わ、私・・? ・・・・? 何・・? なに・・ な・・?


まるで何らかのフィルターを通しているような感覚でした
実際に見ているのに、感じているのに、頭の中にリアルに飛び込んではこないのです
ぼんやりとそこに立っているだけ ぼんやりと周りを見ているだけ ぼんやりと雨の冷たさを感じるだけ
いつまでもいつまでも受動的な拒否を続けるだけ

それも長くは続きません

(; ФωФ) ・・クー?

川; -) !!
 ビクッ

私の後ろにいつの間にか立っていた御爺様
私を見つめる「彼」の恨みの対象は、残虐な悪人なのに慈しみの瞳を持つ不思議な人
その瞳が、私にとてつもなく鋭く刺さってくるのです

川; -) ・・! ち、違う・・ 違うのです・・ 違う違う違う違う違うっ・・っ
     わ、わ、私・・ 私じゃない・・ 違うんです・・ ちが・・ ちが・・
     これは・・ これは、ちが・・ う・・ 私は、こんなことしな・・い・・ 私じゃ・・?

( ФωФ) ・・もうよい、よいのだクー  すまんな、家を空けて
        一緒に家へ入ろう、シャワーを浴びてきなさい ほら、体が冷たくなっているである

川; -) う、 あ う  ぅ・・

ゴツゴツした大きな手が、私の小さな体を抱きしめました
私の黒い心に流れ込んでくる温かい安心感
それでも、この黒色を薄めるのには不十分

私の心は、何もかも飲みこんでしまえる程にどす黒かった



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