ゾンビ「おおおおお・・・お?あれ?アレ?人間いなくね?」前編  [ログ][コメントへ戻る後編へ

*今回雑談は無いので、雰囲気楽しみたい人はログでどうぞ-



ゾンビA「あ、あれ?な・・・なあ」

ゾンビB「おおーーーおおお・・・なんだよ、うるせーな」

ゾンビA「なぁ・・・まさかとは思うんだけどさ、もう皆ゾンビになってるんじゃね?」

ゾンビB「まさかww    おおーーおおーーー」

ゾンビA「だよな・・・ おおおおお・・・おおおお・・・」

ゾンビC「なあなあなあ!今言ってたのマジ!?人間居なくなったの?!」





A「いや、そんな気がしただけで・・・確証は」

C「おおーーい!みんなーー人間いなくなったってよーー!!」

A「おい、声でかいって・・・」

大勢「なんだなんだ」

C「みんなゾンビになったんだってよーー!!」

大勢 ざわざわ







この時、一人のゾンビの発言により ゾンビ達の世界は変革を迎えた

20XX年
ゾンビが出現してから世界は大崩壊へと向かっていった
ゾンビにかまれた人間はゾンビへと感染していく
そしてゾンビになった人間は、もう人間に戻ることは出来ず
永遠に血肉を求め彷徨うのだった

それから2世紀

人間が居なくなってから50年の歳月が流れていた







ゾンビA「これからどうしよう・・・」

彼が気づいてしまったせいで、他のゾンビたちも人間が居なくなったことに気づいてしまった
途方にくれる青年ゾンビを尻目に 他のゾンビたちはそれぞれゾンビとしての役割を放棄しだした

ある者は、とりあえず前世の記憶を頼りに自分の住んでいた家を目指し歩き出す
ある者は、どうしていいかわからず とりあえず 「おおーーおおーー」唸りながら少し前のゾンビになるが
他のゾンビから「もう別にそんなのしなくていいんだぜwww」と諭され とりあえず他のゾンビについていく者
公園に集まり これからどうしようか話し合う者
前からやってみたかったスケボーをやりだす者 そしてコケて足が取れてしまう者

ゾンビ達は混乱していた 





人間がいなくなったという噂は瞬く間にゾンビの世界に広まった

人間の血肉をさまよい人を襲うという本能で動いていた彼らだったが
2世紀半というゾンビの仕事から解放され 彼らは呆然としていた

それから1ヶ月の時が流れた


ゾンビたちは生前の記憶を頼りに、とりあえず自分の住んでいた場所に戻り
本を読んだり 音楽を聞いたりして過ごしていた







ゾンビに寿命はない 人間でなくなった彼らは永遠の生命を人を襲うことに使っていたが
その役目を終えた彼らは、永遠の命をどう使っていくかに悩んでいた


とりあえず、彼らは暇だった・・・ 人間だった頃は街には電気が通っており、TVが放送されており
スイッチひとつでくだらない娯楽は手に入っていたが、人間が居なくなった世界では
夜はとことん暗い 月明かりだけの世界だった そして  途方もなく暇だった

ゾンビは昼間は本を読んで時間をつぶし、夜は、仲間と集まってくだらない話で盛り上がったが
それは3週間くらいしか続かなかった。毎晩毎晩話し続けると大体3週間で話題が尽きてしまった

ゾンビは 寝ることも 飯を食うことも(人間が居ないので) 疲れることも 苦しむこともない

ゾンビ達はここに来て 退屈 という苦しみを味わうことになった







ゾンビ達が 人間が居なくなったと気づいてから1ヶ月たったある夜

街に明かりが点った


ゾンビたちは歓喜した 電気が通ったことで、今まで出来なかった娯楽の一部が
再び復活したのだった

あるゾンビはTVのスイッチを着けた TVには懐かしい砂嵐が映っていた。そ砂嵐を楽しむように日長一日楽しむ者
また、あるゾンビは夜でも本が読めるとベットに寝転がり読書に没頭した
そして、オーディオプレイヤーが動き出すことで ゾンビの街は騒がしくなった だが彼らはウキウキしていた
醜くくずれた彼らの顔に 笑顔が戻った







なぜ、電気が戻ったのか?これは、退屈に耐え切れなくなったゾンビが
前世の記憶を頼りに、発電所の動かし方を思いだし、試行錯誤の上
なんとか発電所を動かしたのだった

この事によりゾンビの暮らしは一新する
電気が戻ったことで、ラジオ局が復活した。前世はおしゃべりなDJをしていたゾンビは
ラジオ局に向かい、かつての名曲と呼ばれた音楽と その音楽にまつわるエピソードを
24時間ずっと語りだした  おしゃべりゾンビが喋ることがなくなると また別のおしゃべりゾンビがDJを努め
ラジオ局は活気にあふれた

そして、ラジオ局が復活してから1週間後に テレビも復活した





記念すべき テレビ放送再開の第1号の番組は お昼のバラエティー番組だった
12時丁度に テレビを着けたゾンビたち そして街中でテレビ番組のテーマが流れだした

「お昼休みはウキウキウォッチンあちこちそちこち いいとも〜♪」
テーマ曲に合わせて、スリラー張りのダンスを披露するゾンビ青年隊
そして 番組の司会者が出てきた  TVを見ていたアジアの島国のゾンビたちはその姿に
懐かしさを感じた

マイクを持ったサングラスのゾンビがスーツ姿で現れると
自分はゾンビになってもやる気はあんましない ということをアピールすると
メガネの禿げたゾンビに 「アンタは生前からそんなちょうしやなー」と突っ込まれていた

お茶の間は大爆笑だった



テレビ、ラジオ、音楽、読書  ゾンビたちの娯楽はある程度揃った

しかし、ゾンビたちは貪欲だった 今ある娯楽も気がつくと飽きていた
ゾンビたちは新しい娯楽を求めた

あるゾンビは、有り余った時間を、芸術に使おうと 世界中の美術館を見てまわるという旅に出た
またあるゾンビは、音楽を勉強して 自分を楽しますだけの究極の音楽を作ろうと意欲する
彼らは 寝ることも食べることもしなくていいので、趣味や習い事に全力を注ぐことができた
だが、食べなくてもいいといことで、グルメを気取っていたゾンビたちは少し歯がゆい思いをしていた

ゾンビたちはより文化的な事を好むようになった




ゾンビたちが地球の支配者になってから数年の月日が流れた


たった数年で街は物凄く清潔になり、活気にあふれていた
ゾンビたちの流行とまではいかないが、自分たちが腐っていて、触れるものを汚してしまうから
住んでるところは掃除して綺麗にしよう という考え方が芽生えていた
特に、読書趣味としていたゾンビたちがこの清潔に気を使っていた
自分の血や体液で大事な本を汚してしまうのを恐れたのだった

そして、今日。ゾンビアップルからiPadが再版され。ついにネット書籍の時代が到来したのだった
ちなみにインターネットは結構前に再開していた




ゾンビたちは音楽を好んだ

彼らの孤独を癒してくれるのはスピーカーから流れる 多種多様のメロディだった
激しい曲を聞けば気分が高揚し、落ち着いたしっとりしたメロディを聞けば、優しい気持ちになれた
彼らは音楽をより一層楽しむことができた 

音楽はここ数年でかなり変わっていた
特に、歌詞がきれいな言葉で溢れている曲が人気だった
なぜかというと、世界がゾンビの物になってから 主教の概念が全部覆されてしまったからだ
救世主は現れなかったし、死後の世界なんてないというか 地獄と現世の違いなんて誰も分かんなかったからだ
皮肉で「ゾンビの世界は地獄だぜ」なんて言う奴はいるが、皆ジョークの一つ程度に捉えている

この事により、今まで反社会的な歌詞やファックやキルなどの単語は ゾンビの世界を味わったものには
特に胸に響かない、共感しない言葉へとかわっていった

なのでデスメタルは ものすごい激しい曲の 讃美歌へと 変わっていくことになった




死ぬことのない彼らにとって 病とは無縁になったが
病院はそれなりに機能していた

病死はないが、怪我で死ぬことはあったのだ
ゾンビは腕が取れても死ぬことはないが、取れた腕は取れたままであった
数年前にスケボーでコケて足を失ったゾンビは 義足のメンテナンスのために
1ヶ月に1度は通院していた

怪我で体の一部を失うということもあってか 義足や義手といった技術はかなり向上した
そして、今日は新しい義足を試す日

片足のゾンビは スケルトンのハイテク機器が見える義足を装着すると
さっそく 病院内を走りまわっていた





自分勝手に好きなことをするゾンビたちが多い中
集団をまとめるゾンビたちもいた

ここ数年で、ようやく国家という概念が復活しだしていた
ゾンビたちは政治に興味はない なぜなら、生活の保証をそんなに気にしなくてすむようになったからだ
ゾンビが気にするのは電気が通っててTVとラジオが動けば大体生活できる
生活というより、暇つぶしが出来ればいいというのがゾンビたちの住む場所を選ぶ条件だった

だが、ゾンビも集団になれば色々と問題が起きる
ケンカを始めれば、死ぬことはないのでどちらかがバラバラになるまでやりだしてしまうのだ
そしてケンカも暇つぶしの一つなので暴れるのを楽しみにする奴もいた

色々と問題が出てきたため、やはり集団をまとめる存在が必要だという考えが出てきた
と言っても、彼らは選挙なんかには行かない ので 以前大統領をやっていたことがあるという理由で
大体の国家元首は続投になっていた




ここで気になるのは、ゾンビの世界の仕事というのはなんなのかである
仕事というのは成功報酬があるから大体の人はやっていると思うのだが
ゾンビの世界での成功報酬とはなにか?

ゾンビは衣食住困らない 食費は0 寝ることはない ちょっとした娯楽があればいいというか
娯楽に全力を注ぐ

なので、生活費というのは殆どかからない

しかし、病院や、テレビ局、ミュージシャン、国家 などが動いている以上
そこで働く職員のゾンビが居ることになるが。彼らは何を報酬に貰っているのだろうか?
答えは 何も貰っていない  無報酬だ

彼らは言うならば社会貢献 ボランティアの精神で動いている。

そして、大半のゾンビは   暇なので仕事をする  いわば、働くことが娯楽になっていた





ゾンビが出現してから3世紀半
人間が居なくなってから1世紀半
ゾンビが人間居なくなったと気づいてから1世紀の月日が流れた

世界は物凄く発達していた
街は清潔感に溢れ、インフラは整備され 自然と人工物の調和が見事に取れた 美しい街に
ゾンビは住んでいた

彼らは文化的なことに力を注いだことにより美的センスは格段に良くなったが
彼らの中にコンプレックスを生んだ

「なんでこんな醜い姿なのだろうか・・・」




ゾンビたちはそのただれた顔を 自然と隠すようになった
昔は、みんな腐った顔をしているのがたり前だったが
いつしか、それを恥じるようになった

ある者はマスクをしてその顔を隠し
またあるものはメイクをしてその顔を隠すようになった  レディ・ゾゾなるゾンビ界のカリスマモデルなども現れる

だが、それでも自分は醜い姿を”隠している”という後ろめたさがあり
より素顔に関して みんなはデリケートになっていった


そんなある日   とある病院から男女のゾンビが出てきた

その姿は、かつてこの星に溢れており、自分たちの前世でもある人間の姿をしていた

ゾンビたちはぎょっとした




人間が生きていたのか!?と驚いたが どうも自分達のセンサーに反応しない
こいつは人間に似ているが人間じゃないぞ?

この人間の姿にかぎりなく近い男女は ゾンビである ただ
皮膚を人工皮膚に総とっかえした 整形ゾンビである


ゾンビたちは歓喜した この整形技術で自分達の醜い姿を美しい姿にすることが出来る 
ゾンビに再生能力はないのでいくらかメンテナンスのため通院が必要だが
それでもゾンビたちはその全身整形に殺到した


それから、ゾンビの街には醜い腐った死体は消え 美しい皮膚と
きれいな香水の臭いで腐臭を隠した 美しい男女だけの世界になっていた




腐った死体が消えてから20年の月日が経った

街はあいかわらず綺麗で清潔感に溢れ 自然と調和の取れた街をしていた
そしてその町の住民は

美しい男女と ガタイのいい超合金のロボットとショッカー大幹部を名乗れそうなモンスターがいた

何故こうなったのかというと ここ1世紀半で というかかなり早い段階で
サブカルチャーが ちゃんとした文化になっているということが 街をここまで変えている


アニメや漫画といった娯楽は ゾンビたちの間では早い段階で受け入れられており
整形革命以前の段階で 義手や義足は 漫画にでてくるロボットの腕をモチーフにしたものが既に出回っていた
なぜ全身整形が簡単に受け入れられたかといのも、すでにコスプレという文化が かなりメジャーになっていたというのが
大きな理由である。 キグルミという文化は ファッション誌の一面を飾る一つのファッションとして確立していたのである






ここは アジアの島国の  サウザントリーフ県  ここは毎年8月と12月になると
1ヶ月間 その県の住民が 県全体を開放し、 創作意欲に飛んだゾンビ達が自分たちの
自作の漫画やアニメやフィギュアなどを販売する
この期間中は町の住民は コスプレをして過ごす
そして街中の至る所で 即売会が起きており 県全体がコミケ会場という自体になっている

まさに、その筋のゾンビたちにとって 聖地 とよばれている

そのせいもあってか、アニメや漫画のキャラになりたいと願うゾンビは多く
全身整形技術を人間に近づけないで ロボットや怪獣に近づける者も多い

実は私も イナズマンの姿でいたいと思っているが内緒だ 




そんなこんなで、ゾンビの街は おもちゃ箱をひっくり返したような状況になっていた
そして、また幾年かの時間が流れると

赤道周辺に 天をも貫くような巨大な建造物が完成した

軌道エレベーター

人類が到達し得なかった夢を ゾンビたちは成し遂げたのである

自らの身体をサイボーグにした技術者ゾンビたちは、自分が見た漫画やアニメに出てくる
宇宙要塞を作りたいなぁ という気持ちが強くなっていた
そして有志を募り 長い時間を自分の趣味に捧げた結果


完成したのである    ゾンビたちは夢と浪漫で生きている そしてそれに全力を注げる存在であった





色々と探索できる範囲は広がった

宇宙、深海 ゾンビたちの探究心はどんどん上がっていったが
別に、財産を増やしたいとかそういう気持ちはなかった
なので、探検した新発見を発表はするが それをどうこうしたいという考えは薄い

知識は広がるが 生活水準が一定を超えているため ゾンビの生活が豊かになることは
実感できる範囲では 向上しなかったというか 誰も困らなかった


どのくらいの月日が経ったのだろうか
地球を取り巻く 人工リングが完成してから10周年
月と地球の行き来が3日でできる時代に

タイムホールが開いたのだ





最初は、空にマンホールのふたが飛んでる 位にしか思わなかったが
なんとそれが 時空間を超えたタイムホールであることが インテリゾンビによって判明した
とは言っても、マンホールの蓋が空に浮かんでいるだけで 自分たちで
同行できるものでもなかった

最初は、恐竜の時代に行って恐竜を見ようという意見もあったが
過去の名作 ジュラシックパークをなんども見たゾンビたちから それは危険だからやめよう
と反対意見があり タイムホールに関しては こちらからは触らない方向でというのが
ゾンビ連邦政府の見解だった

タイムホールが開いてから 3日目
タイムホールが唸りを揚げ出した ゴゴゴゴゴ
黒い電気が走りだしたかと思うと ホールは少し大きくなった

いよいよもって この世の終わりか思われたが  ホールから 黒球体が飛びてたかと思うと
その球体は 地面にゆっくりと下りてきた  そして タイムホールはいつの間にか消えていた







ゾンビたちはその球体に興味津々だった
この世の終わりか、それとも未来からのメッセージか 様々な憶測が飛び交ったが
とりあえず触ってみようという意見になった

さっそく、連邦政府から 専門家とサイボーグ兵士の部隊で球体を取り囲んだ
専門家はこの球体は安定している 触っても大丈夫だと意見した
サイボーグ兵士は 旧時代の文化である 胸で十字を切るしぐさをして
球体に触った


触れた瞬間  黒い球体はカラスが砕けたようにバラバラになった

専門家と兵士はビビったが
壊れた球体の中から 誰か倒れているのに気づいた

ゾンビ「お、おい・・・あれ・・・もしかして 人間じゃないか!!?!?!」




球体の中にいたのは  中学生くらいの少女が倒れていた

取り囲んでいたゾンビたちはどうすればいいのか分からなかったが
とりあえず保護した

少女はさっそく最新鋭の病院へと運ばれた

連邦政府のお偉いさんは大騒ぎだった
人間は滅んだと思っていたのに、まさか人間が出てくるなんて
とりあえず少女が目を覚ましたらどうしようか話し合ったが

一人のゾンビが ひとつの不安を漏らした
「もし、あの少女が目を覚ましたら・・・我々は、文化に興じ知的に過ごしてきた時代を捨てて」
「また、醜く血肉をさまよう時代に逆戻りするではないだろうか・・・」

連邦政府の議会は 急に静まり返った







「なかった事にするべきだ!!!あの少女を消そう!!」
恐怖に駆られた議員がそう叫ぶと 同じく被害妄想に取り付かれた議員もその意見に賛同した

「まて、まつんだ・・・!我々はここ何世紀の間に人間では到達し得なかった領域にまで進化した
文明は発展し、我々はより知的になった。それに、彼女を発見した専門家たちの理性は保たれている」

ああだこうだ、色々と話し合った
ゾンビの世界にとってこれほどまでに政治家が議論したことはない
彼らが議論している間に、球体から人間の少女が出てきたということがマスコミに伝わり
そのニュースは全世界に 月にまで伝わった

そして 世界はかつてないほどの混乱を迎えた







A「どうするんだよ!俺たちまたゾンビに逆戻りか!?」

B「逆戻りも何も、俺達は今でもゾンビだろ?」

A「それとも、あの少女が俺たちを襲いだして、俺達は理性を失った状態に感染させられるんじゃ」

いつの時代もネットの噂はくだらない風評ばっかだった
どんなに進化した世界にもかかわらず 情弱 という言葉はあり
ゾンビッターなるつぶやきを発信するサイトには、人々を不安にする噂がリツイートされていた


世界中が混乱している中
ついに少女が目を覚ました




「ううっ・・・ここは・・・」

病室の照明に眩しさを感じ 少女は目元を抑えながら ベットの中で寝返りを打った
その様子を別室のモニターで見ていた 医師たちと専門家や研究者
彼らの代表が マイクを使い 病室の少女に話しかける

「目が、覚めたようだね・・・あまり動かない方法が良い」
病室のスピーカーから医師の声が響くと 少女は突然叫びだした

「いやあああああああああ!!助けてくれ!たすけて!!」

医師たちは錯乱する少女をなだめるように

「落ち着いてくれ、君みは病院にいる。ここは安全だ、だからあまり暴れないでくれ」
ゆっくりとなだめるように医師はそう呼びつづけたが 少女はかえって恐怖に暴れまわった

それもそのはず、少女の耳には医師の優しい言葉は聞こえていなかった
少女に聞こえるのは 自分の家族を殺し 自分を食い殺すそうとしていた ゾンビの唸り声だったのだ




ゾンビたちの世界には戦争は起きなかった
軍隊はあるがあくまで趣味程度の漫画の読み過ぎで 宇宙人が来たときに
戦うための地球防衛軍は存在するが 国同士の戦争をする軍隊は存在しない
それはなぜかというと

ゾンビになったことでの言語統一により 意思の疎通が物凄くしやすくなったのだ
そしてゾンビ故 三大欲求もないので 国家単位での略奪も起きなかった
人種により差別はない なぜなら皆 醜いゾンビだったからだ

そんなこともあり長年平和を維持してきた


とりあえず、このままでは埒があかないので 医師たちはとりあえず数人で
少女の病室に入ることにした







少女を怖がらせてはいけないという配慮から 病室に入る医師は
皆、人間の姿に似た者だけで入ることにした
イカデビルのような姿の医師は 今回ばかりはホッとしたような残念なような気持ちだった

病室に入る 医師たちを見て 少女は毛布をつかみながら
医師たちを怯えるような目で見た

医者「こんにちは」

医者が挨拶をすると 少女は泣き叫び 病室の角に逃げた 

少女「たすけてーーー ころされるうう・・・」

医者は何故 少女が怖がっているのか分からなかったが
病室の外で様子を見ていたイカデビルがあることに気づいた
「もしかして・・・言葉通じないんじゃないか?」






急遽、紙とペンを用意して こんにちわ を文字にして少女に見せた
しかし、英語で書いたため 少女はよく分からなかった

「この子、アジアの島国人っぽいから・・・ほら、あの、漫画に出てくる文字を使ったらいいんじゃないか?」

とりあえず日本語で こんにちわを書いたら 少女はようやく 目の前のゾンビみたいな声を出す医者は
自分を襲ってこないことを 理解した


医者「わたしたちわ あやしいものじゃない いしゃ です」

少女「お医者さんなの?なんでゾンビみたいな声なの?」

医者「それわ わたしたち ぞんび だから です」

少女「いやああああああああああああああああああああああああああ」





医者たちは少女が怖がる理由は 自分たちがゾンビだからという
すごく初歩的な問題に気がついた

「そう言えば、俺達って人間襲ってたんだよな・・・」
かつて自分が自分が逃げ惑う人々を 手を前にして 「おーーあーーー」と唸りながら
追い回していたことを思い出した
なんとも昔の懐かしい記憶だが
医者は特に少女に噛み付こうとか そんな気持ちにはならなかった

というのも、ゾンビ返りをを恐れた政府の人間により
歯は全部 人工の柔らかいスポンジのようなもの取り替えられ 
顎にはリミッターがついており 一定の圧力しか出ないようになっており
全身をサイボーグ手術により、脳みそくらいしか 元のパーツがないくらい
徹底して 人工物に変えられていたのだ

例え間違いが起きても大丈夫なように




少女との接触(運搬するとき直接触れてる)やここでの会話で過去を思いだしたが
医師たちは特に、ゾンビに逆戻りという事はなかった
どうやら杞憂だったようだ


「あんしん して わたしたわ ぞんびですが あなたを おそわない」

少女にそう告げると 少女は怯えながら 医師たちの優しい笑顔を見て
とりあえず信じてみようという気になった



それから、少女は ゾンビ 地球連邦政府に迎え入れられることになった
最初はマスコミがこぞって来たが、少女のプライバシーを守るために報道規制がされ
少女は今どうなっているのかは徹底して守られた

いつしかしか、少女のことは世間から忘れ去られていくことになる




「私が 町長です」

少女「え?」

「あっ、失礼、大統領の キドと申します」

少女は政府の最高責任者と面会した
少女はここしばらくの生活で、世界がどうなったのかというのを勉強した
人間は皆ゾンビになり、人っ子ひとりいなくなってしまった事と
その事に気づき、ゾンビたちが新しく世界を再建したということを

少女「色々な本を見ました、この国の歴史など・・・」

少女は大統領と会話できていた
少女が、ゾンビになったからではない 大統領が人口声帯を取り付け 人間の言語を話せるようにしたのだ

大統領「色々と大変だったでしょう」

少女「はい、食事が大変でした・・・」




ゾンビの世界になってからという物 食文化は一気に衰退した
飯を食わなくてすむようになったので 飯を作る必要もなくなったのだ
そんな中、少女の食事をどうするかが問題になった

ここ何世紀も 自分の唾液くらいしか飲んだことのない(場合によっては唾液もない)
生活ばかりの人々だったので、食事を調達するということが物凄く困難だった
マンションはだいたい3LD としか表示されない

とりあえず、かつてはシェフだったという ブルドーザーにトランスフォームできる現場親方と
人工衛生の廃品を掃除する スペースバトルシップの艦長務める 料理研究家を呼び寄せ
動物園の バッファローや 植物園の キャベツなどを取り寄せ なんとか食事を作ったのだ
かつては栄養士をしていたことのある 人気漫画家などの意見を聞きながら少女の食事を作った

結果  物凄くまずいものができた
理由は  彼らに 味見ができなかったからだ





味付けをすることも出来ない状況だった 理由は食品業界が存在しないため
調味料各種を作ることができなかったのだ

少女の食事を作ることがここしばらくでもっとも大変だった
そして、医療技術は 成形技術や人工筋肉などに特化してても
医薬品の技術は止まったままであり、点滴一つ打つことすら出来ない状況
義手をあっというまにとりつけることができても、腕の血管に針を通すことができない医者ばかりだった

彼女の体調が心配されたが、水に関しては問題なかった
ゾンビたちは 人間が消滅した後の地球を 特に汚染しないように生活していたため
自然環境の保護には取り組んでいた 大方の理由は観光地を増やしたいというのもあったが
綺麗な 空気と緑 を大事にし、水の水質に関しては問題なかった

色々と試行錯誤の上 少女は生活してきた







大統領「なるほどね・・・」

少女「大統領、お聞きしたいのですが」

大統領「なんだね?」

少女「今後私は、どうなるのでしょうか?」

少女の疑問はもっともだ
食事を取ることさえままならず、水道は公園の花に水を上げるようのしか無いような世界で
少女が生きていくにはとても大変だった

少女「それに・・・、私は、やっぱり皆さんが怖いです」





少女は、ゾンビが地球に溢れ出したころからタイムスリップしてきた

夏休み前の事だった。新聞には謎の奇病により暴動が発生と書かれており
連日連夜テレビのニュースで報道されていた
少女は世界中が混乱しているというのは分かっていたが、それは一刻の物
自分が住む街には関係の無い物 と思っていた

しかし、その日学校に行くと様子がおかしかった
一人の子が体調不慮を訴えると 突然先生に噛み付いたのだ
先生は喉元を食いちぎられ 倒れたが、すぐに起き上がると
今度は生徒を襲いだした

学校は大混乱になり 少女は自分の家に逃げ帰った







家の近所まで来たときのこと ご近所さんの様子がおかしかった
悲鳴が方方から聞こえると、ガラスの割れる音と 「おおおーーおおおお」という唸り声
何かを食べる音などが聞こえた

家の鍵を開け自宅に入ると 窓が割られていた
恐る恐るリビングに入ると 血だらけカーペットの上に 口から血を流した
お母さんが立っていた

少女を見つけると お母さんは 寄生をあげながら少女を追い回した


少女は 悲鳴が聞こえる街を走り続けた
やがて自衛隊に保護されるも わずか3日で自衛隊は壊滅 そして避難民は
またゾンビに襲われていた



火の手の上がる避難キャンプから逃げ出した少女は
自分の住む街に戻っていた

行くあてもない、何処に逃げてもゾンビだらけ
少女は、自分の家から少し離れた場所にある 父親の働く研究所に居た

研究所のガラスは割られ、中にはゾンビもいたが
外にいるゾンビと比べたら まだ数は少ない

少女は父親に会いたかった どうせ会ってもゾンビになっているだろうが
せめて 死ぬのなら、家族に・・・と思っていた


大統領「うううう、ごめんなぁ・・・ごめんなぁ・・・」






研究所の中のオフィスに父の写真を見つけた 家族の写真も飾ってあり
机の中の持ち物に書かれている名前から 父のものだとわかった

オフィスにはゾンビは居ない
父はここに居ないと思い オフィスを出ようとしたその時だった
不意に足を掴まれて 転倒した 少女は叫ぼうとしたが
口を抑えられた  

必死に抵抗しようとしたが ゾンビは少女を襲わなかった
いや、ゾンビじゃなかった  父だった

「どうしてここに!?母さんは無事か!?」
久しぶりの父の声に少女は泣いた

「ここはあぶない、こっちに来るんだ」
父に連れられ、少女はオフィスの下の隠し通路を歩く







付いた先は よく分からないが 白いベットと
それを取り囲むように 何かの装置が取り付けられており 一見、なにに使うのかは分からなかった


「一か八かだ、お前に全てを託すぞ」
父は少女をベットに寝かせると 何かの装置を起動させた

「いいか、お前はこれから一人で生きて行くことになる。そこには世界を滅ぼした悪魔がいるかも知れない」
「だが、そこでお前は生きて行くんだ、生き残りがいるかも知れないし、居ないかもしれない」
「お前は、私にとっての希望だ・・・この私の、最愛の」

父はそこまで言うと 悲鳴を上げた
父の後ろから 排気口を通ってゾンビが侵入していた 

「うわああああああああああ」
父の断末魔が聞こえなくなったあたりで 装置は大きな音を立てて 少女の周りに黒いガスを噴射した
そして 装置の爆発と共に 少女と少女を包む靄は 3世紀半の長い旅に出ることになった






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