( ^ω^)ブーンの願いが叶うようです
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520 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/06(木) 00:17:47.68 ID:+JRL2C3r0
- 長い間、ずっとしまってきたこの手紙。
色がすっかり褪せたボロボロの紙、それが今僕の手の中にある。
( ^ω^)「そろそろかお……」
冬もすっかり深まり、木々は黒に近い茶色しか出していない。
その貧相な物の下で僕は彼を待っている。
実に会うのは10年ぶりぐらいだろうか。
夢を追いかけ、遠くへ行ってしまった友人。
守ってくれるだろうか、10年来の約束を。
いや、守ってくれるだろう。必ず。
僕は彼を信頼している、それが何よりの証拠だ。
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523 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/06(木) 00:19:25.78 ID:+JRL2C3r0
( ^ω^)「さみいお、早く来てくれないと凍死してしまうお」
すると、遠くの方に見慣れた影が。
遠くに行ってしまった、と言う割に小奇麗な顔。
それとは対照的に、使い古されたボロボロのコート。
そして、今でも煌きを失わない子供のような瞳。
やっぱり、来てくれた。
( ・∀・)「……久しぶりだね」
( ^ω^)「だお」
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527 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/06(木) 00:21:29.46 ID:+JRL2C3r0
- ( ・∀・)「こんなとこじゃ凍え死んでしまいそうだからどっかに入ろうか」
( ^ω^)「領空領土了解だお」
(;・∀・)「未だにそのギャグ言ってるのか……」
( ^ω^)「勿論、今でもマイホビーだお」
多少噛み合っていない会話(勿論僕の所為ではないと思いたい)も懐かしい、ああ彼は帰ってきたのだ。
そこらへんにあった、ちょっとアンティークな感じの店。
今の僕達にはぴったりの雰囲気だろう、と目で合図して中に入っていた。
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528 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/06(木) 00:22:48.83 ID:+JRL2C3r0
- ( ^ω^)「いきなりだけど、ここ10年で何があったか教えて欲しいお」
横に来た店員さんに、コーヒー二つ、とだけ告げモララーに話しかけた。
よく見ると、彼の瞳は昔のままだが、顔には幾つもの皺が刻まれている。
苦労の証なのだろうか、年の割にはかなり老けて見えてしまうほどだ。
( ・∀・)「いやー、大変だったよ。何せ掘っても掘っても出てこないんだからね」
( ^ω^)「気がつけば、もう10年たったのかお」
( ・∀・)「全く持ってその通り、未だに当たりは来ず。人生簡単じゃないのさ」
彼から聞ける話は、都会で普通の会社員として暮らしている僕には新鮮そのものだった。
燦々と照りつける太陽。
そしてその光が齎す灼熱地獄。
過酷な労働を毎日毎日。おかげで逞しくなった、と彼は微笑んでいた。
時には砂漠の蜥蜴を食おうともしたことがあったとか。
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531 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/06(木) 00:24:37.71 ID:+JRL2C3r0
- ( ^ω^)「おっおっおっ、随分波乱万丈だお」
( ・∀・)「小学校からそうだっただろ?」
思えば、昔から破天荒な奴だった。
小学校では、野菜を育てるはずなのに化け物トマトを作ったり。
中学校では、ポケモンマスターになるといって学校にサト○の服を着てきたり。
高校では、一年間祈祷師キャラになったり……。
大学に行くと思えば、いきなり夢ができたといって姿を眩ませたり。
そして高校卒業以来、10年ぶりにあったという次第だ。
( ・∀・)「……久々のコーシーはいけるね、苦いのは苦手なんだが、ここのは美味いね」
( ^ω^)「ここはなんか頼んでもよさそうだおね、すいませーん!」
そう言って、メニューにあった適当なものを頼んでみる。
ちょっと頼みすぎたか……まあいいや。
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534 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/06(木) 00:26:51.97 ID:+JRL2C3r0
- ちょびちょび頼んだものが来た頃、僕は彼に一つ尋ねた。
( ^ω^)「ところで、いつ帰るんだお?」
( ・∀・)「もう明日には帰るよ、仕事が山積みなんだ」
( ^ω^)「そうかお……」
( ・∀・)「残念かい? まあ今度からはこまめに手紙を送るさ」
( ^ω^)「おっおっ、それだけでもありがたいお」
( ・∀・)「一週間に一回は送るよ。さてそろそろ帰らんとまずいかな……」
( ^ω^)「おっ?もうかお?」
( ・∀・)「お前が食い終わるまで待ってやるよ」
( ^ω^)「おっ、ありがたいお」
これを食べ終わったら帰ってしまう。
それを聞いて、僕の箸のスピードが少し緩んだ。
それに彼が気づいていたかは定かではない。
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535 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/06(木) 00:27:45.98 ID:+JRL2C3r0
- 無事食べ終わると彼は急ぎ足で帰ってしまった。
その遠くなる背中を、僕は寂寥を感じながらずっと眺めている。
何か、彼が違う意味で遠くに行ってしまう気がして目を離せなかった。
それから数ヶ月、数年経ち、十数年経った。
彼の名前が新聞に載った。
「苦節二十数年、油田発掘に生涯を捧げた男」
その記事を見ながら僕は、古い彼の手書きの文字、それが書かれた手紙を握り締めた。
まるで自分のことのように、僕は喜びの感情を顕わにした。
fin
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537 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/06(木) 00:28:22.63 ID:+JRL2C3r0
- 投下してると感じますが案外短いものですね、自分の作品はこれで終わりです。
ありがとうございました。
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