( ^ω^)修羅場のようです

828以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 19:40:52.97 ID:VbXVb6CW0
( ^ω^)修羅場のようです



肌寒い季節は、今年も勝手に訪れた。
それでも子供は元気。パワフル。
今日も所構わず走って、転んで、擦り剥いて、少し涙目になったけれども、
笑顔で <ヽ`∀´>「ただいまー」の声が玄関に響く。

<ヽ`∀´>「カーチャン、カーチャン! ごはんまだニダー?」

ζ(゚ー゚*ζ「おかえり。もう少しでカレーが出来るから、ちゃんと手洗うのよ。
      宿題も済ませちゃいなさい。お父さんもそろそろ帰ってくるから」

良妻賢母なデレと、小三でやんちゃ盛りのニダー。
ここに会社員のブーンを加えた三人が、内藤一家だ。
念願のマイホームを手に入れて早五年、近所付き合いも良好。
まさに理想の一般家庭。

ζ(゚ー゚*ζ「今日は何して遊んだのかしら?」

<ヽ`∀´>「野球! ウリ、ホームラン打ったニダ! かっ飛ばしたニダ!」

ζ(゚ー゚*ζ「すごーい! それでこそ父さんの子!」

<ヽ`∀´>「本当は球拾いだなんて口が裂けても言えないニダ」

 
830以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 19:41:57.54 ID:VbXVb6CW0
特別裕福という訳では無いが、致命的な不自由がある訳でもなし。
何よりリビングに飾られた写真立て。先日バーベキューのパーティをした時に撮った写真だ。
夫、ブーンの子供のような笑顔。
妻、デレの優しい笑顔。
息子、ニダーの少しおどけて見せたような笑顔。
幸せを物語るには十分過ぎた。

ちなみにその写真を撮ったのは、夜道を全裸で徘徊していた自称おまわりさんだが、
彼はデレの通報により捕まった。
「乳首だけなら許されると思った。気付いたら下も脱いでいた」
と証言しているが、真偽は分からない。


バーベキューの写真の隣りには、ニダーの入学祝に撮った写真。
そのまた隣りには、運動会でニダーが短距離走でゴールした瞬間の写真。
またまた隣にあるのは、幼いニダーの寝顔を撮った写真。
更にその隣りにある写真を、ニダーは手に取った。

<ヽ`∀´>「カーチャン、前から気になってたけど、この写真は何ニダ?」

イケメン……とは少し違うが、若々しく逞しい肉体の男性と、
容姿端麗で、渦巻いた金髪が特徴的な美しい女性。
水平線に浮かぶ夕陽をバックに二人でピースをしている。
多少の色褪せなど吹き飛ばすかのような笑顔を、写真の中の二人は作っていた。

 
831以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 19:43:05.34 ID:VbXVb6CW0
<ヽ`∀´>「ウリがいないニダ! それに多分だけど、この女の人はカーチャン……?」

ζ(゚ー゚*ζ「ああそれねー。お母さんと、肩組んでるのがお父さんよ。
      この頃カッコよかったなー。身体なんかムキムキでね、
      『西の鉄壁』の異名を持っていたのよ。
      『東の青龍刀』『北の大弓』『南の輪ゴム』も目じゃなかったわ
      『東南東のNINZYA』には紙一重で敗北したらしいけど」

グツグツと溶岩の如く煮え滾っているカレーを忘れて、デレは興奮し出した。

ζ(゚ー゚*ζ「あの人昔は写真とか余り撮らないタイプでね。
      もしかして二人で撮ったのは、これ一枚かも。
      パシャパシャ撮るようになったのは、ニダーが産まれてからよ。クソが」

<ヽ`∀´>「へぇ〜これ一枚ニダか」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、厳密に言うと二枚ね。もう一枚は、あの人の背広の内ポケット。
      私が若い頃、お守り代わりに身に付けておいてって言ったの。
      万が一、銃で撃たれても、写真が盾になって守ってくれるかもしれないでしょ」

<ヽ`∀´>「ねーよ」

ζ(゚ー゚*ζ「それでも律儀に持ってるのよ。そういう人なの、ブーンさんは」

 
832以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 19:44:30.49 ID:VbXVb6CW0
――――その彼は今、真剣に悩んでいた。

もし悩みが二酸化炭素に変わるなら、この瞬間南極が消滅するくらい悩んでいた。

(;^ω^)「まずい事になったお……」

一家の大黒柱、ブーンが腰掛けているのは、紛れも無く便座。純白の便座。
用は足し終えた。という事は、取るべき行動は残り一つ。
紙で、優雅に、汚れきったそのゲートを、拭う。それだけ。
だけど、だけど、悲しいほどベタな展開が彼を待ち受けていた。

紙が、無い。

ああ神よ。全能なる神よ。
ブーンは祈りを捧げる。
この愚かな私目を助けて下さいまし。
しかし変わらぬ静寂。
神もアテにならねー、なんて日頃から神仏を信じない彼はぼやく。

弾丸の如くスピードで、隣の個室へ尻丸出しで移動を試みるしかない。
……のだが、それは最早自殺行為に近い。

( ゚∀゚)「ドゥドゥッビドゥー」

社内一のお調子者、同期の長岡がかれこれ一時間も鼻歌を歌いながら髪を整えているからだ。
何でもコンパとやらに行くらしく、仕事そっちのけで外見をキメている。
コイツに目撃されたらお終いだ。噂は一日も立たず会社全体を包みこむ。
何故なら、この長岡君は他人の不幸があれば丼三杯はいけるような糞野郎だからだ。

 
834以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 19:45:43.66 ID:VbXVb6CW0
(;^ω^)(いやだ……こいつの餌にだけはなりたくないお……)

普通に個室から出ただけでも、長岡は大爆笑する事は目に見えている。
しかし周りの社員は、そんな長岡こそ馬鹿だと嘲笑するだろう。
じゃあ何の為の大便器だよ、と。だって大人だもの。

(;^ω^)(だが汚いケツ丸出し個室テレポーテーションは、マズイ!!)

流石の大人も、それは引くわ。みたいな。

(;^ω^)(堂々と尻を拭いて、ここから出るんだおっ!)

こんな時に限ってハンカチもちり紙も無い。
何か紙の代用となる物を求め、ブーンは血眼でポケットの中を探索する。

( ^ω^)「あ」

内ポケットの中。この触感、この質、間違いない。
ペーパーだ。ブーンが最も欲していた、大秘宝である。

しかし、勿論それは……

(;^ω^)「お守りの写真だお……」

やや色褪せた、その写真。
若き日の自分とデレ。
まだまだ尻の青かった頃だ。今は顔が青い。尻は放送出来ない色に染められている。

 
836以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 19:47:01.96 ID:VbXVb6CW0
どうする?
自分に言い聞かす。これで拭くか?
それでいいのか? 写真の中の二人に問い掛けても、答えは返ってこない。

(;^ω^)(どうするお? こんなベタベタな展開に自分が陥るとは思ってもみなかったお。
       一番は早々に長岡が立ち去ってくれる事だけど、無駄に髪型とかに拘るアイツは
       まだまだ立ち退きそうにないお……)

( ゚∀゚)「やっぱ時代は辮髪だよな〜」

(;^ω^)(ちょwwwwラーメンマンかおwwwwwwwww
       時代先取りしまくりんぐwwwwwwwwwwwww)

( ゚∀゚)「この豹柄のゲルマスパッツもキマッてるしな!」

(;^ω^)(こいつwwwwwwwオシャレ杉wwwwwwwwww)

( ゚∀゚)「腰に装着したポケピカも中々良いアクセントになってやがるぜ」

(;^ω^)「ねーよwwwwwwwwwwwwwwww」

( ゚∀゚)「あん? おいおいおいおい、誰だよ。個室から俺の独り言を盗み聞きし、
     その癖ファッションにもケチつけやがったのは……」

(;^ω^)(しまったお!)

 
837以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 19:48:09.39 ID:VbXVb6CW0
今更になって手で口を塞ぐ。
しかし発した言葉が戻ってくる事は無い。
一歩一歩、長岡の足音が近づいていく。天国へのカウントダウンと言ってもいい。

ノブが手に触れる。

( ゚∀゚)「そこに居るのは誰だッ!」

『ガチャリ』



(´・ω・`)「何?」



( ゚∀゚)「社長……」

(;^ω^)(セ、セーフ! 長岡の奴、隣を開けたのかお! てか社長も居たのかお……)

(´・ω・`)「あんまりジロジロ見るなよ。見物料取るぞ」


 
839以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 19:49:24.49 ID:VbXVb6CW0
( ゚∀゚)「す、すいません。今閉めます……」

( ,,゚Д゚)「ええ、絞めてやるわ。今すぐにね」

掃除用具を入れるロッカーが開き、中から長髪の男が出現した。
鋭い眼光は一瞬で長岡の動きを止める程の威圧感を放っていた。

(;゚∀゚)「な、なんだよ。義子か……驚かせんな」

( ,,゚Д゚)「聞いたわよ、またコンパに行くんですってね。私というモノが在りながら……
      他の子にまで手を出すっていうの? 小耳に挟んだけど、アンタ未成年にも
      酒飲ませて、お持ち帰りしてはズコバコしてるらしいわね。
      『西日暮里のスクリュードライバー』なんてあだ名も付いてるわ」

( ゚∀゚)「ああ……西日暮里とか行った事無いけどな……
     大体俺とお前の関係は終わったはずだろ? いつまでもストーカーみてぇに
     付き纏いやがって。そもそもお前男じゃん、姿慎めよ」

 
840以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 19:50:03.57 ID:VbXVb6CW0
( ,,゚Д゚)「嘘よ! 昔、遊園地で組織を一人で追っていった辺りから、
      アンタが有耶無耶にしているだけじゃない! まだ別れるなんて聞いてない!」

( ゚∀゚)「じゃあ別れよう」

( ,,゚Д゚)「酷い! 散々遊んで、いらなくなったらポイなの?」

(´・ω・`)「まぁ待てよ、お二人さん」

( ,,゚Д゚)「黙りなさい!」

バギューン

(´・ω・`)「ぐあー」

(;゚∀゚)「馬鹿な……社長の尻の穴が三つになった……」

長岡は社長が撃たれた事より、元々肛門が二つあった事にショックを隠せないでいた。

( ,,゚Д゚)「もう一度やり直そう? ね、ジョルジュ。
      断るような事があれば、このベレッタが火を噴くわ」

(;^ω^)(一体全体、どういう事になってんだお?)


 
848以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 20:07:45.60 ID:VbXVb6CW0
ブーンは困惑していた。
情報は音のみ、といっても、そこが修羅場であると同時に、殺人現場となっている事は
容易に想像出来る。この状況で自分に何が出来るか、彼は考えていた。

(;^ω^)(そうだお!)

そして導き出した答えは――――

( ^ω^)(パンツを紙の代わりにするお!)

それはつまり、ノーパンで満員電車に揺られ、帰宅するという事だ。

( ^ω^)(よし、そうと決まったら、早速パンツを……)

だがここで問題が発生した。
革靴がブリーフに引っ掛かって、中々通過してくれない。
一本足で立っているブーンは、やがてバランスを失い、倒れた。

ブーンは倒れた。

個室の扉に頭が直撃した。

ここの会社のトイレの扉はすっごく脆いという設定だった。

扉はぶち破られ、外側の義子を巻き込んで、

ブーンは倒れた。

 
852以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [さるの大馬鹿・・・] :2007/12/06(木) 20:27:29.74 ID:VbXVb6CW0
( ,,゚Д゚)「くっ……やられたわ」

(;゚∀゚)「な、内藤?」

(;^ω^)「あああーっ! 長岡、これは、えと、その……」

どんな言い訳も意味を成さないだろう。
尻は汚れ、おまけにフルチンで、ずり下げられたブリーフにはビーファイターの絵が。

(;^ω^)「きょ、今日は噂の大人のちんこ祭りだお!?
       知らないの長岡? 遅れてるお! 今日は魔界で……」

( ゚∀゚)「ありがとう……ありがとう内藤。俺の危機を嗅ぎつけて、助けに来てくれたんだな。
     危うく、そこの変態に殺される所だったぜ」

下半身丸出しのブーン。
その下で伸びてる似合わないロン毛の義子
尻を向けたまま、死んでる社長。
豹柄のゲルマスパッツで辮髪の長岡。

その場には変態しかいない。

( ゚∀゚)「感謝している! 今度お前の実家に菓子織り送るよ! かみなりおこし!」

(;^ω^)「ちょwww手なんか握るなお! 気持ち悪い!」

 
856以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 20:28:47.69 ID:VbXVb6CW0
( ,,゚Д゚)「ぐぐっ、やりやがったわね……」

義子がゆらりと起き上がる。
そして向けられた銃口。引き金に指。
振り返る内藤。真っ青になる長岡。いい笑顔の社長。歪んだ笑顔の、義子。

( ,,゚Д゚)「死――――――」

狙うは長岡。

(;^ω^)「やめるお――――――!!」

だが視界には腕を広げる内藤が。

( ,,゚Д゚)「――――――ね!!」

直線に放たれた銃弾。
その先には内藤の身体。
貧弱なスーツの布を焼きちぎる。
しかし銃弾は停止する。
あの写真に阻まれて、止まる。
内ポケットに隠された、二人の思い出、宝石のような笑顔。

 
858以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 20:31:39.89 ID:VbXVb6CW0






『万が一、銃で撃たれても、写真が盾になって守ってくれるかもしれないでしょ』



(  ω )(ありがとう……デレ……)








( ,,゚Д゚)「だがもう一発!」

バギューン

( ^ω^)「グオオオッ。微妙にポイントをずらされたせいで写真は盾の役目を果たせないッ!」

 
859以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 20:33:22.04 ID:VbXVb6CW0
銃弾はブーンの腹を貫通し、長岡の腹も貫通し、会社の壁をも突き抜け――――


('A`)「うへへ、お嬢ちゃん……パンツの色教えてよ」

ξ;゚听)ξ「キャー、やめてー! 紫よー!」

バギューヌ

('A`)「ぐああああ! 撃たれた――――! 肘を撃たれた――――!」

ξ゚听)ξ「これって、超ディライト」




その銃声のお陰で警察が駆けつけ、義子は逮捕されたのでした。

それから色々あってブーンは残業を免れ、電車に揺られて帰宅したのです、が。

 
860以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 20:34:23.23 ID:VbXVb6CW0
( ^ω^)「家が……燃えてるお……」

ζ(;ー;*ζ「ごめんなさい! 私がカレーを火にかけているのを忘れてたばかりに!
       何とかドリキャスは持ち運んだんだけど、ニダーがまだ中にいるの!」

( ^ω^)「なんだって! シーマンは持ってきたのかお!?」

ζ(;ー;*ζ「ハードだけで手一杯だった……ソフトまで頭が回らなかったわ!」

( ^ω^)「もう間に合わない……お。諦めるしかない……
       でも、この炎……あの日の夕焼けに似ていないかお?
       あの海の日の……燃えるような夕陽……」

ζ(゚ー゚*ζ「確かに懐かしいわね」

マスゴミ「はい、二人とも笑って笑ってー」

( ^ω^)「あの日の再現だお」

ζ(゚ー゚*ζ「ドキドキしてきちゃう」








「はい、チーズ!」

 
863以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/06(木) 20:36:44.42 ID:VbXVb6CW0















翌日

ζ(゚ー゚*ζ「キャー! 何よ、この顔! 心霊写真だわ!」

『<ヽ`∀´>』

( ^ω^)「アンビリバボーに出すおwwwwwwww」





 

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