('A`)セックスリバーサルのようです川 ゚ -゚)1

1 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:04:08.02 ID:XCd6z13x0
サマー三国志参加作品です

本編スタート

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/21(金) 21:05:15.78 ID:XCd6z13x0

一定のリズムで鳴り続ける目覚まし時計のアラームを耳にして、俺の意識は浮上した。
……眠い、あと五分だけ寝よう。
そう思い、目覚まし時計のスイッチを押した。

五分後、スヌーズ機能によって再びアラームが鳴り響く。
……眠い、あと五分だけ。
俺はもう一度寝直した。

「ドクオ、起きなさい」

ドア越しにカーチャンの声が聞こえた。
眠い、もっと寝ていたい。
しかし学校に遅刻してはマズイので起きることにした。

寝ぼけ眼をこすりながら、ベッドを抜ける。
顔を洗うために、俺は洗面所へと向かった。
まだぼやける視界、薄目を開けて水道の蛇口を捻り、顔を洗う。

洗面台には鏡が付いている、そんなことは常識だ。
だけど、鏡に映り込んでいる自分の姿が常識外だった。


川 ゚ -゚)「…………」


誰、これ?



3 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:07:36.27 ID:XCd6z13x0

鏡の中の人は俺の動きとまったく同じ動きをした。
右手で顎をさすればそうしたし、首を傾げれば同じように動いた。
鏡の中には別の世界があって、異世界の住人が俺を脅かそうとしている、というわけではないようだ。

川 ゚ -゚)「…………」

え、つまり、これが、今の俺の姿ってことか。
あ、あり得ない。こんなことがあってたまるか。
朝起きたら女の子になってました? どこの世界にそんな不思議があるというのだ。

これは夢だ。さっき起きたと思ったけど、俺はまだ寝ているに違いない。
俺は訳の分からないまま手鏡を持って自室へと戻った。

ベッドに腰掛け、手鏡で自分の顔を見る。

川 ゚ -゚)

凄まじい美人が映っている。
まったく癖のないストレートの黒髪は、腰までさらりと伸びている。
こんな美人を見かけたら、思わず求婚してしまいそうになるほどの美人っぷりだ。

そして先程から思っていたこと、異様に肩が重い。
視線を下ろせば、半開きになった寝間着の胸元から覗く二つの山。
俗に言うおっぱいが付いていた。

触ってみると、ふにふにした柔らかい感触があった。
……これほど現実味のある、この感覚が夢なわけがない。


6 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:10:01.12 ID:XCd6z13x0

恐る恐る股間に手を伸ばす。

川;゚ -゚)「ちんこがない!」

もはや俺はパニックだ。
この先どうすればいい、カーチャンに何て説明すればいい、
学校はどうすればいい、身分証明はどうすればいい、バイトの面接はどうすればいい……

「ドクオ、いい加減に起きなさい、遅刻するわよ」

目下のところ、まずはカーチャンに説明しなくては。
しかしよく考えたら、見知らぬ少女が我が家に侵入していたと怪しまれるのではないだろうか?
とにかく時間がない、何がなんでも説き伏せなくてはいかん。

川 ゚ -゚)「カーチャン……」

J( 'ー`)し「やっと起k…………」

川 ゚ -゚)「…………」

J( 'ー`)し「…………」

川 ゚ -゚)「いや、あの、実は……」


9 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:13:24.17 ID:XCd6z13x0

J( 'ー`)し「まったくドクオも彼女が来てるなら言ってくれればいいのに、驚いたねぇ。
      こんな美人な子と付き合ってたなんて、知らなかったわ。
      ごめんなさいね、てっきりドクオしかいないと思ってたから」

川;゚ -゚)「いやいや、ちょ、違うから!」

カーチャンが物凄い勢いで勘違いし始めた、早いとこ止めないと暴走してしまう。
いやしかし、これはこれで不審者と勘違いされなくて助かったと考えるべきか?

J( 'ー`)し「今夜はお赤飯炊かないといけないね、もちろん貴女も一緒に食べましょうね。
      今までドクオと付き合ってくれるような女の子なんていなかったんだから、カーチャン嬉しくてねぇ」

や、やばい。早く本当のことを言ってしまおう。
俺は意を決して言葉を発した。

川 ゚ -゚)「カーチャン、聞いてくれ。俺はドクオだ、カーチャンの息子だ。
     何故だか分からないけど、起きたらこんな姿になってた。
     何を言っているのか分からないと思うけど、俺も訳が分からなかった。
     信じてくれカーチャン、俺はアンタの息子だ!」


12 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:15:23.39 ID:XCd6z13x0

川 ゚ -゚)「……」

J( 'ー`)し「…………好きな味噌汁の具は?」

川 ゚ -゚)「あさり」

J( 'ー`)し「自転車の補助輪を外したのは何歳の時?」

川 ゚ -゚)「6歳」

J( 'ー`)し「出生時の体重は?」

川 ゚ -゚)「2910グラム」

J( 'ー`)し「ジョジョで一番好きなキャラは?」

川 ゚ -゚)「ヴァニラ・アイス」

J( 'ー`)し「今までコンプリートしたエロゲの数は?」

川 ゚ -゚)「109」


15 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:18:27.23 ID:XCd6z13x0

J( 'ー`)し「……本物みたいね」

川 ゚ -゚)「カーチャン……!」

唐突に始まった質問は、後になるほどおかしな具合になったが、幾度目かの俺の即答で打ち切られた。
どうやら信じてくれたみたいだ、俺としては大いに助かった。母は偉大だ。
第一の関門は突破といったところか。

しかし問題は山積みだった。
俺はごく普通の何処にでもいるような高校生であり、ありふれた生活を送っている。
女の子になったことで生じる弊害は、それこそ数え切れないだろう。

J( 'ー`)し「ツンちゃんには、まず私が話してあげるわね。その後ドクオが自分で話しなさい」

カーチャンの次はツンだ。
果たして彼女は信じてくれるのか?
いや、十七年間共に過ごしてきたんだ、きっと信じてくれる。

J( 'ー`)し「とりあえず朝ご飯食べなさい」

川 ゚ -゚)「うん」

ツンの説得の前に、腹を満たすとしよう。


16 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:21:42.84 ID:XCd6z13x0

J( 'ー`)し「学校のことだけどね、普通に登校しなさい」

やたら塩分の濃い味噌汁で白米を流し込んでいると、俺の懸念している事についてカーチャンが言った。
俺はたくあんをポリポリと咀嚼しながら答えた。

川 ゚ -゚)「大丈夫かな……?」

J( 'ー`)し「電話で事情を話すから、ドクオは胸張って堂々としてればいいんだよ」

張るべき胸を持っている今の俺だが、流石に堂々としてはいられない。
これから怯えながら暮らす日々が続くに違いない、主に男から目を付けられて。
ksmsに興味のない俺からすれば地獄だ、男に言い寄られるなんて耐えられない。
いや、今の俺は女だから厳密に言えばksmsにはならないんだけど。

何にせよ学校側に連絡してくれるのは助かる。
普通に登校して「女の子になっちゃいました」、なんて言っても教師は信じてくれないだろう。
「早く自分のクラスに戻りなさい」と怒られるのがオチだ。

川 ゚ -゚)「カーチャン……ありがとう」

J( 'ー`)し「頑張って」


18 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:24:59.91 ID:XCd6z13x0

朝食を食べ終わり、食器を台所へと運んでから、着替えを済ませた。
服を脱いだときの自分の身体に見惚れてしまったのは恥ずかしい。

五分後に家のインターホンが鳴った。
学校への電話を済ませていたカーチャンが玄関へと向かう。
ツンだ。幼馴染みの彼女は高校生になった今でも、律儀に俺と登校している。

数分後、カーチャンがリビングに戻ってきて言った。

J( 'ー`)し「行ってきなさい」

川 ゚ -゚)「ツンは何て……?」

J( 'ー`)し「大丈夫、安心しなさい」

カーチャンは判然とした返事をしなかったが、俺は信じることにした。
そうして、俺は玄関の三和土でツンと対面したわけだが……

ξ゚听)ξ「美しい……」

本日のツンの第一声がこれだった。
忘れていた。ツンは、百合乙女だったんだ。


かくして俺の波乱に満ちた日常が始まったのだった。



20 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:28:42.39 ID:XCd6z13x0

ツンの猛攻は防ぎようがなく、俺はのべつまくなし求愛された。
ツンは俺の手を取り騎士の如く、そっと口付けをしたり、美しいという意味の言葉を並べまくったり、
果ては抱きついて離れようとしなかった。俺は、よっぽどツンの琴線に触れる姿をしているのだろう。

川;゚ -゚)「は、離せバカ! 俺だ! カーチャンから聞いてるだろ!」

ξ*゚听)ξ「そんなことはどうだっていいのよ! 今、アタシの前に絶世の美女がいるんだもの!」

そうこうしている内に時間は過ぎ、このままでは遅刻してしまいそうだった。
俺は力の限りツンを振りほどき、駆けだした。相手にしていられない。

ξ#゚听)ξ「ま、待ちなさい! 逃がさないわよ!」

川;゚ -゚)「くそ……何だよ、なんで朝っぱらから全力疾走しなきゃいけないんだよ……」

俺は長い髪を振り乱し、全力で走っているのだが、男だった時と比べると遅くなっているのが分かった。
しかも息切れまでしてきた、体力までなくなっている。俺は手足を動かし続けた。
後ろからは恐い顔をしたツンが迫ってくる。


この日、学校では「通学路を全力疾走する男子服姿の女子とそれを追いかける女子」の話が
取り沙汰される事となるのだった。まったくもって遺憾である。



23 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:31:35.08 ID:XCd6z13x0

川;゚ -゚)「ハァハァ……暑い……」

ようやっと学校へと辿り着いた。ツンに追いかけられていたので、肉体的にだけではなく精神的にも疲れた。
昇降口で後ろを振り返ったが、ツンの姿は見えなかった。どうやら俺の方が足は速かったようだ。
俺は上履きに履き替え、教室へと向かった。

この時は忘れていたのだが、俺は女になっていたのだ。
何の躊躇いもなく教室に入り、自分の席へと座った。
クラスメートの騒がしいお喋りが次第に静まり、やがて彼らはひそひそと話し出した。

不思議に思っていると、隣の席を引く音が聞こえた。ブーンが来たのだろう。
横を向くと、ブーンと目が合った。

川 ゚ -゚)「おうブーン、おはよう」

声を出して気付いたが、俺は女になったのだった。

(;^ω^)「お、オハヨウゴザイマスオ」

やたら余所余所しい様子でブーンが答えた。

川 ゚ -゚)「あ……すまん。俺、ドk」

その時、「ズバァーン!」とでも聞こえてきそうな程の勢いでツンが教室に入ってきた。
当然、クラスメートの視線はそちらへと向いた。

ξ*゚听)ξ「フ、フフフ……ドクオ! 追い詰めたわよ、観念しなさい」


24 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:34:25.86 ID:XCd6z13x0

観念しろと言われて観念するような俺ではない。
俺は断固として抵抗する姿勢でいる。
だから真っ直ぐに突っ込んできたツンを、少しの罪悪感を覚えながらはたき落とした。

川 ゚ -゚)「南無南無南無南無南無南無」

ξ#゚听)ξ「痛ったいわね、何すんのよ!」

川;゚ -゚)「うお、生きてた」

ξ*゚听)ξ「う、美しい……ご無礼をお許し下さい」

(;^ω^)「あ、あのー。何ですかお、これは」

馬鹿なことをやっていると、ブーンが困惑した表情で訊いてきた。
確かに訳の分からない状況だろう、俺だってそうだ。
俺は掻い摘んで成り行きを説明した。

( ^ω^)「そんなアホな」

川 ゚ -゚)「いやいやマジだって」


26 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:37:51.79 ID:XCd6z13x0

( ^ω^)「信じられんお……。あとさっきから気になってたけど、おっぱいが透けて見えてるお」

川 ゚ -゚)「へ?」

ξ*゚听)ξ「ハァハァ……」

視線を下ろすと、白いカッターシャツが汗に濡れて、シャツに圧迫されたおっぱいが透けて見えていた。
ああ、女だったらこれは恥ずかしいな。普通なら恥ずかしさのあまり、駆けだして何処かへ逃げてしまうだろう。

川 ゚ -゚)「俺は男だから別に何とも思わんな、見たけりゃ見ればいい。ただしキモいからあんまり見るな」

(;^ω^)「こ、コイツは……! 本当にドクオなのかお……」

半信半疑というブーンだったが、朝のホームルームで教師から説明があった為に一応信じてくれた。
休み時間には多くの生徒が俺の許へと集ってきた、鬱陶しいことこの上ない。


从'ー'从「ね、本当にドクオ君なの〜? 嫉妬しちゃうぐらい綺麗だよぉ〜」

川 ゚ -゚)「うん、俺もそう思う」
 _
(*゚∀゚)「ドクオ、おっぱい揉ませてくれ! おっぱい! おっぱい!」

川 ゚ -゚)「死ね」

(´・ω・`)「ドクオ……僕でよければ力になるから、いつでも頼ってくれていいよ」

川 ゚ -゚)「サンキュ」


30 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:40:32.96 ID:XCd6z13x0

とまあ、こんな感じで話しかけられた。男子が多かったのは言うまでもない。
告白までしてくる奴がいた。実に現金な奴らだ、忌々しい。
「放課後、体育館裏で待ってます」と言ってきた奴には、「分かった」とだけ答えておいた。

朝の通学の様子を見ていた者が噂を広めたらしく、廊下から教室の中を覗いている生徒が見られた。

川;´ -`)「堪ったもんじゃないな、こりゃ」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ、アタシが守ってあげるから」

川;´ -`)「そりゃどうも」


男子トイレに入って驚かれたという事があったものの、何とか無事に学校は終わった。
無事とは言っても、皆から奇異の目で見られたのだが。
おかげで俺の精神的疲労は溜まりに溜まった。

ξ゚听)ξ「それじゃ、またねっ」

川 ゚ -゚)「おーう」

手をひらひらと振りながら、部活へと向かうツンと別れた。

( ^ω^)「さって、帰るお」

川 ゚ -゚)「おう」

体育館裏には当然行かず、俺はブーンと共に帰路に就いた。


31 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:43:45.61 ID:XCd6z13x0

( ^ω^)「ドクオ、ゴールデンアイやらないかお?」

川 ゚ -゚)「悪い、今日はバイトの面接が……」

ある、と言いかけて思い直した。俺は別人になってしまったので、面接なんて相手にされないだろう。
今の俺には身分を証明する物が何一つ無いのだ、由々しき自体である。

川 ゚ -゚)「いや、いいぞ。俺のウルモフに勝てるかな?」

( ^ω^)「望むところだお!」

面接は電話で断ることにしよう。そう思い、ブーンと共に我が家の玄関を跨いだ。

J( 'ー`)し「おかえり。あら、いらっしゃい」

( ^ω^)「こんにちはー、お邪魔しますお」

川 ゚ -゚)「カーチャン、バイトの面接なんだけどさ、電話で断っておいてくれないかな?」

J( 'ー`)し「分かったわ、適当な嘘吐いて断っておくわね。
      お小遣いのことなら相談に乗るから気にしなくていいよ」

川 ゚ -゚)「カーチャン……ありがとう!」


32 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:46:58.91 ID:XCd6z13x0

(#^ω^)「リモート爆弾を復活地点に設置しとくのはズルいお!」

川 ゚ -゚)「馬鹿め、勝てれば何でもいいのだよ」

白熱した対戦は俺の勝ち越しで終わった、俺強ぇ。
時刻は六時半を回ったところで、窓の外は仄暗くなりつつあった。
ゲームも終わったし、そろそろ帰るのかな、と思っていたらブーンは俺を見つめていた。

( ^ω^)「……ドクオ、マジで美人だお」

川 ゚ -゚)「だよなあ、俺もそう思うよ」

そう言うと、ブーンは神妙な表情で俺に近づいてきた。
こいつ、良からぬことを考えているのではないだろうな、と訝しんでいると、

( ^ω^)「ドクオ、おっぱい揉ませてくれお」

案の定、キモいことを言いやがった。

川 ゚ -゚)「死ね」


男は女の身体のことしか考えていないのだと、身に沁みて実感した一日だった。


33 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:50:42.53 ID:XCd6z13x0

俺が女の子になってから二週間経った。
人間の順応力というのは凄いもので、俺が女であることに違和感を持つ者はいなくなった。
俺自身でさえ、自分が女であることに慣れつつあった。恐ろしいものである。

ただ、お風呂に入るときは、未だにドキドキする自分がいる。自分に見惚れるなんて、
何処のナルシストかと思うかもしれないが、今の俺は俺であって俺ではないのだ。
学校では何とか「鬱田ドクオ」で通っているが、この先そう上手くいくとは思えない。

ああ……何とかならねぇかなあ……、とプールサイドの灼けたアスファルトに座り、女子を眺めながら思った。

从'ー'从「ドクオ君も生理?」

川 ゚ -゚)「うん、そうなんだ……」

女になってしまったからには生理があるわけで、初めて体験したときは死ぬかと思った。
四日前、お腹の奥がずきずきと痛んで、股がぬるぬるした。何事かと思ってズボンを脱ぐと、
股から血が流れていた。その時は家にいたから、カーチャンに助けてもらった。

カーチャンからナプキンを貰ったが、自分の体から血が出ているのだから、俺は困惑した。
このまま出血多量で死んでしまうのではないか、なんて考えたりもしたぐらいだ。下はトランクス一枚という、
珍妙な格好でおろおろしていると、「女ならそれが正常なんだよ」とカーチャンに宥められた。

生理二日目は酷かった。体が怠かったし、お腹の痛みはどんどん増した。
何か苛々するし、考え事も多かった。血の量も多くて、ナプキンが血を吸い尽くし、パンツが血塗れになった。
気持ち悪かったので、トイレに行ってトイレットペーパーで股間を拭いた。その時は、なんだか悲しくなった。

女になって初めて知った。これは、男には絶対に分からない苦痛だ。


34 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:53:56.16 ID:XCd6z13x0

水泳の授業は全て休んでいる、生理もその理由の一つだ。それよりも困った事は、
水着に着替えるとき女子更衣室を使わなければいけないことだった。身体は女でも、心は男なのだから、
例え「全然気にしないよぉ〜」と言われても、俺の無駄な紳士感が女子更衣室の使用を拒んだ。

男子更衣室を使う道はない。男に俺の全裸を見せるわけにはいかないし、襲われるかもしれないからだ。
それ以前に、教師からのお達しがあったのだ。そんな諸々の理由から水泳の授業は全滅。
体育の単位を落とすなんて事になったら大変だが、教師も考慮してくれるだろう、と信じている。

俺はじりじりと太陽に肌を灼かれながら、きらきらと光を乱反射するプールで泳ぐツンを視界に捉え、
アイツ引き締まった良い身体してんな、と思った。
俺は知らず、ツンに見入っていた。


弁当を食べ終わった後、ブーンとツンと駄弁っているときだった。
ショボンが俺たちの許へやって来て、現状を打破する起死回生の情報を教えてくれた。

(´・ω・`)「色々と調べたんだ。そしたらね、憲法で性転換に関する保障があったんだ」

川 ゚ -゚)「憲法で? 性転換?」

(´・ω・`)「うん、ヴィップ国憲法第四十一条。『すべて国民は、法律の定めるところにより、性転換の権利を有する。
      又、その意に反する性転換の場合、性転換の自由は、これを保障する』。で、ドクオの場合は
      『その意に反する性転換』のケースのはずなんだ。過去の事例でもドクオと同じことがあったらしい」

川 ゚ -゚)「え?」

( ^ω^)「何を言っているのかさっぱり分からないお」


36 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 21:56:34.27 ID:XCd6z13x0

(´・ω・`)「まあまあ、とにかく聞いてよ。それで四十一条の下位法が、性法なんだ。
      この法律の条文を簡単に要約すると、『肉体的に性別が明らかなのに、
      精神的にはそれとは別の性別である人は、家庭裁判所に申し立てれば戸籍の性別を変更できる』
      っていう感じかな。これは性同一性障害者に対しての条文らしい」
  ?
川 ゚ -゚)

ショボンの話はやたらと長くてまったく理解出来ない。俺はクエスチョンマークを頭の上に浮かべた。
ブーンとツンを見れば、やはり俺と同じようにクエスチョンマークを浮かべていた。

(´・ω・`)「それとは別に、性法にはもう一つあって、それがドクオの助けになる。こっちも簡単に言うと、
      『家庭裁判所に申し立てれば性転換にかかる費用は全額国が負担、戸籍の性別も変えられる』
      という具合だよ」

やはり話が長くてよく分からない。そもそも話が頭に入ってこない。

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと、それ……どういうことよ! ドクオが男に戻っちゃうってこと!?」

俺が頑張って、うんうん考えていると、何やらツンが切羽詰まったような表情で訊いた。

川 ゚ -゚)「え、マジで?」

( ^ω^)「ドクオ、男に戻っちゃうのかお……」


40 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 22:01:34.38 ID:XCd6z13x0

(´・ω・`)「それは、ドクオの判断次第だよ。戸籍を変更するだけか、それとも性転換手術を受けるかだね。
      ヴィップ国は昔から医療技術が発達してて、完全に性別を変えることができるんだって。
      だから、ドクオの決定に全てがかかるんだ」

ξ#゚听)ξ「そ、そんな勝手なこと、アタシ抜きで決めたら許さないんだからねっ!」

川;゚ -゚)「う、うーん……」

ツンは、ぷりぷりと怒りながら言った。俺は、嬉しいんだか嬉しくないんだか、よく分からなかった。

(´・ω・`)「少しだけ条件はあるみたいだけど、ドクオの場合はスムーズにいくはずだよ」

( ^ω^)「そんな法律があるなんて、全然知らなかったお」

(´・ω・`)「法を学んでる人でも、頭の片隅に残ってるぐらいのレベルなんだって。
      一般人が知らないのは当然だよ」

ショボンの話を総括すると、家庭裁判所に申し立て、そこで戸籍の事と手術の事を保障してもらう。
審判では親族の証言、特別観察官による身元調査が重要になるらしい。ショボンが言うには。簡単に手続きは済むとか。
もっと簡単に言うと、俺が男に戻るか、戸籍というアイデンティティを得るか、だ。

まったく分かりにくい、もっと簡単に話すことは出来ないのか、ショボンの奴め。


41 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 22:05:55.97 ID:XCd6z13x0

(´・ω・`)「そんなわけで僕はどろん!」

とても有益な情報をくれたショボンは、しょぼくれた表情で自分の席へと去っていった。
ありがとう、ショボン。俺にも人並みの生活が出来る権利はあったんだな。

ξ#゚听)ξ「ちょ、ちょっと! 絶対に男に戻っちゃダメだからねっ!
       そんなこと絶対に許さないんだから!」

川;゚ -゚)「ええー……そんなこと言われてもなあ……」

( ^ω^)「絶対に今の方がいいお、ドクオすんごい美人なんだお?」

川 ゚ -゚)「確かになあ……」

从'ー'从「私は、ドクオ君の決めたことならそれが正しいと思うよぉ〜」

どこからともなく現れ、いつの間にか紛れ込んでいた渡辺さんが、
温かい笑みを浮かべてそう言ってくれた。

川 ゚ -゚)「うん、ありがとう」

俺は、選択肢を与えられた。今後の人生に大きく影響する選択だ。
慎重に、慎重に考えないといけない。

放課後になるまで、俺は上の空で授業を聞いていた。


42 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 22:09:55.19 ID:XCd6z13x0

俺は、茜色の西日が差し込む廊下でブーンと別れた。
テスト勉強をするので図書室に行くとか、俺は期末テストが迫っている事を忘れていた。
まあ、一週間前から勉強を始めれば何とかなる。

そんなわけで俺は、珍しく部活が休みだったツンと下校することになったのだ。
空には雲一つ無く、オレンジ色の太陽が沈もうとしていた。

川 ゚ -゚)「しかし、ツンと一緒に帰るのは久しぶりだな。朝はいつも一緒なのに、ちょっと新鮮な気がする」

ξ゚听)ξ「アタシは部活で忙しいからね、アンタとは違うのよ」

川 ゚ -゚)「俺だってバイトしようとしてたんだぞ、それがこんな事になって出来なくなったんだ」

ξ゚听)ξ「……」

とことこと、ゆったりしたペースで俺たちは歩いた。
しばらく無言が続き、俺の隣を歩くツンが言った。

ξ゚听)ξ「ねぇドクオ、貴方、女になって嬉しくないの?」

川 ゚ -゚)「ん……そうだな、正直、前と変わらないような気がする。
     特別嬉しかったことがあったわけじゃないし、悲しかったこともない。
     結局さ、男でも女でも、大した差はないかなって思った」


43 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 22:13:34.67 ID:XCd6z13x0

ξ*゚听)ξ「じゃ、じゃあ今のままでもいいってこと?」

ツンを見る。夕焼けに照らされているせいか、頬が紅い。

川 ゚ -゚)「分かんねぇなあ……俺は男だし、いや男だったし、やっぱり戻りたいって気持ちはあるよ」

ξ゚听)ξ「勿体ないなあ、今のままがいいって」

川 ゚ -゚)「勿体ない」

俺はツンの言葉を鸚鵡返しに言った。

ξ゚听)ξ「そう、勿体ない。アタシは今のドクオでいてほしい」

川 ゚ -゚)「それは結局、お前自身の為じゃないのか」

ξ゚听)ξ「アタシの為でもあって、アンタの為でもあるのよ。
       それだけ美人なら社会的優位に立てるわよ、美人は色々と得なのよ」

川 ゚ -゚)「そんなもん、興味ないな。それに俺は女の子が好きなの、男に好かれたくはないんだよ」

問題はこれだ。俺が女として生きていく事を決めれば、俺は女の子と付き合えない。
中にはツンの様に百合乙女がいることもあるだろう、でも普通のセックスは出来ない。
だとしたら、やっぱり男に戻った方がいいかな、と思った。

ξ*゚听)ξ「アタシがいるじゃない」

ツンが無い胸を張って、きっぱりと言った。俺はそれを黙殺した。


44 名前: ◆K.UbLhmOUU :2009/08/21(金) 22:16:02.64 ID:XCd6z13x0

ξ゚听)ξ「じゃあね」

と言って、ツンは俺の家の隣にある自宅へと帰った。
俺も我が家へと足を踏み入れた。

川 ゚ -゚)「ただいま」

リビングまで行き、台所で夕飯の準備をしているカーチャンに向かって言った。

J( 'ー`)し「おかえり」

俺は冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出し、コップに注いで飲んだ。
喉を通っていくとき、体の内側に広がる清涼感が心地よかった。
ソファーに座り、見たい番組があるわけでもないのに、リモコンでテレビの電源を入れた。

川 ゚ -゚)「なあカーチャン」

J( 'ー`)し「なんだい?」

あらかたの準備を済ませたのだろう、カーチャンは台所から出てきて、俺の隣に座った。

川 ゚ -゚)「カーチャンは、女で良かったって思ったこと、ある?」

なんとなしに訊いてみた。いや、本当は、葛藤する俺の本心がそうさせた。

J( 'ー`)し「あるよ」

あっけらかんとカーチャンは答えた。やっぱり、女にしか分からない幸せというのはあるのか。



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