1 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 08/03/14(金) 18:11:22 ID: FVOz5oBx0

   
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3 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 08/03/14(金) 18:13:53 ID: FVOz5oBx0

飛行機のエコノミー席に、しょぼくれた男が座っていた。
男は新聞を広げ、ぶつぶつと独り言を言っている。

('A`)「連続爆弾魔、今度は都内のビルを爆破……か。怖い世の中になったな。
   しかもまだ捕まってないのかよ。警察の意味ねえじゃねえか」

 

「あの、すみません」

('A`)「はい?」

 

 


(;´ー`)「もう少し静かにして頂けますか?」

(;'A`)「ああ……すんません」

声をかけてきたのは若い青年だった。
青い顔をしていて、何やら気分が悪そうだ。

('A`)「顔色悪いけど、大丈夫?」

(;´ー`)「あ……はい。実は飛行機は苦手で……」

彼らの乗っている飛行機は、現在上空1万メートルを飛行している。

 

 


  
('A`)「ふうん。でも大丈夫だよ。
   俺はもう十回くらい飛行機乗ってるけど、事故した事は一度も無いから」

(;´ー`)「飛行機事故の確率自体は少ないでしょうね。
      会社によって割合は違いますが、平均して0.0009%ですから」

('A`)「詳しいね」

(;´ー`)「これでもパイロットを目指しているので……」

それなのに飛行機が怖いなんて、と男は心の中で笑う。

(;´ー`)「東京には、仕事で行くんですか?」

恐怖を紛らわしたいのか、青年は話を続けた。

 

 


  
('A`)「いや、今まで地方に出張しててさ。
   これから家に帰るところなんだよ」

(;´ー`)「結婚されてますよね?」

男の左手につけられたリングに気がついたらしい。

(*'A`)「そうなんだよ。これが美人の嫁さんでさあ」

(;´ー`)「へえ。子供は?」

(*'A`)「いるよ。今年で小学一年生になったんだ。
    可愛いんだよこれが。ちっちゃくてふにふにで」

 

 


  
男は心の底から楽しそうに語る。
家族をかなり溺愛しているようだ。

(;´ー`)「出張が終わって良かったですね」

(*'A`)「しかも今日は結婚記念日なんだ」

(;´ー`)「ほう……それはそれは」

 

(*'A`)「俺の出張終わり祝いもかねて、パーティを開いてくれるらしいんだ。
    あー早く帰りたい。今の俺は誰にも止められないね!」

 

 

 


 

  
――(#'A`)ドクオは家に帰るようです




Act1:飛行機


 


 
飛行機は、速い。
雑談をしている間に、関東圏内に入っていた。

( ´ー`)「当たり前かもしれませんが、事故が起こらなくて良かったです」

('A`)「着陸失敗したりして」

(;´ー`)「お、驚かさない下さいよ」

('∀`)「はははははは」

ハハ ロ -ロ)ハ「Freez(動くな)!」

( ´ー`)「え」

('A`)「へ?」

 

 


 
ハハ ロ -ロ)ハ「I Nottotta this plain!(この飛行機は乗っ取った!)。
       Nobody can move!(動いた奴は殺す!)」

( ´ー゚)

(゚A゚)

メガネをかけた金髪の女が、拳銃を振り回し叫んでいた。
乗客は震え上がり、誰も動けない。

ハハ ロ -ロ)ハ「HAHAHA hare-hare yukai……」

 

 


  
女はコクピットの方へ歩いていった。

(;´ー`)「ああ何てことだ……。
      ハイジャックされる確率はかなり低いはずなのに……」

(゚A゚)

(;´ー`)「ちょ、ちょっと! 気絶してる場合じゃないですよ!」

(;'A`)「ちゃんと意識はあるよ。ちくしょう……東京は目の前なのに……」

何とか無事に東京に着いてくれ。
男の願いも空しく、間もなく流れてきた機内放送が、乗客を絶望の淵に落とす。

 

 


  
『乗客の皆さんにお知らせがあります』

(;'A`)「?」

(;´ー`)「なんでしょうね……」

 

『ただいま、モナー機長が失禁して気絶しています。
 乗客の皆様の中に、大型旅客機の操縦を出来る方はおりませんか?』

 

('A`)「い……」

(゚A゚)「いるか――――――!!!」

 

 


  
機内がむせび泣く声で満ちる。

「もう駄目だ」「儚い人生だった」「死にたくない」。
泣き声に混じって、そんな呟きが周りから聞こえてきた。

(゚A゚)「ちくしょう……ちくしょう……もう終わりなのか……」

('A`)「ん?」

(;´ー`)「……」

(;'A`)「お前……パイロットを目指してるんだろ!?
    操縦できるんじゃねえのか!?」

乗客たちの視線が青年に集中する。

 

 


  
(;´ー`)「……無理ですよ」

(;'A`)「なに?」

(;´ー`)「僕はシミュレーションでしか運転したことが無いんです。
      そんな僕がいきなり大型旅客機なんて、無理に決まってます」

('A`)「……うるせえ」

(;´ー`)「え?」

ドン、と一発、男は壁を叩いた。
目を丸くしている青年に、男は怒鳴りつける。

 

 


  
(#'A`)「俺は家に帰るんだよ! こんなところで死んでたまるか!」

(;´ー`)「ひぃ!」

(#'A`)「さあ行くぞ!」

席から青年を引きずり降ろし、コクピットへ引っ張っていった。

 

〜 コクピット 〜

(#'A`)「パイロット連れてきたぞ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ほんと!? へーいるとは思わなかった」

そこにいた、ぱっと見小娘に見えるアテンダントが答える。
すぐそばに、ズボンを濡らして気絶している機長の姿もあった。

 

 


  
ハハ ロ -ロ)ハ「Be quick(早く操縦しろ)!」

ミセ*゚−゚)リ「あ、そうそう。ちょっと言いにくいんだけど……」

('A`)「どうした?」

ミセ;゚ー゚)リ「この外人さん、国会議事堂に飛行機を突っ込ませるつもりなんだって」

(゚A゚)「はああ!?」

(;´ー`)「ど、ど、ど、どうして!?」

ミセ*゚−゚)リ「日本は外人を差別する国だから、思い知らせてやる!って……」

 

 


   
('A`)「意味が全く……」

ハハ ロ -ロ)ハ「What(ん)?」

(#'A`)「わかんねえんだよ!」

男の怒りがこもった鉄拳が、ハイジャック犯に振り下ろされる。

ハハ;ロ -ロ)ハ「Outi(っぱねえ)!」

鈍い音と共に、あっけなくKOされてしまった。
床に大の字に倒れて、そのまま気絶する。

その時足下に拳銃が転がってきたので、男はひとまず懐に隠した。
ハイジャック犯が目を覚ました時、取られないようにする為だ。

 

 


  
('A`)「よし、後は着陸するだけだ」

ミセ*゚ー゚)リ「すっごーい! どこの国のエージェントですかぁ?」

(#'A`)「ジャパンのサラリーマンだボケ!」

(;´ー`)「あ、あの……やっぱり無理です」

(#'A`)「ああ!?」

(;´ー`)「……」

(;'A`)「……くそ」

死に神が首に鎌をあてる。
そんなイメージが、男の脳裏によぎった。

 

 


  
(;'A`)「……」

  ――パパ見て! テストで百点取ったよ!

('A`)「……!」

   ――ははは、お前は頭がいいなあ

  ――ママも見てよー!

   ――うむ。見ている

  ――いや、褒めてよママ……

 

 


  
('A`)「……帰るんだ。俺は、家に帰るんだ」

彼の帰りを待つ家族の姿が、死に神を滅する。
彼は帰らなくてはいけないのだ。
世界で一番大切な、家族の為に。

('A`)「俺が操縦する」

ミセ;゚ー゚)リ「はい?」

(;´ー`)「な、何を言って……」

(#'A`)「うるせえ! てめえは指くわえてそこで見てろ!」

二人が唖然としている中、男は操縦席に座った。

 

 


  
ミセ*゚−゚)リ「操縦出来るんですか?」

('A`)「飛行機でGOならやりこんだ」

ミセ;゚ー゚)リ「ひいいいいい!」

ザザザ――。
スピーカーから雑音が聞こえる。

管制塔『こちら管制塔。モナー機長、着陸出来そうですか?』

('A`)「おれはモナー機長じゃない」

管制塔『?』

 

('A`)「鬱田ドクオ。サラリーマンだ」

 

しばし沈黙が流れる。

 

 


  
管制塔『えっと、モナー機長は?』

('A`)「寝てる」

管制塔『は、はい?』

(#'A`)「ごちゃごちゃうるせえ! 細かいこと気にすんな!
    今から着陸するから、やり方教えろ!」

管制塔『な、何なんですかあんた……』

(#'A`)「早くしろ。じゃねえとお前の会社の評判が地に墜ちるぞ」

(;´ー`)「本気でやるつもりなんですか!?」

(#'A`)「当たり前だ! 俺はまだ死ねないんだよ!」

 

 


  
管制塔『……わかりました』

('A`)「よし」

ドクオは管制塔からの指示に従って、システムを着陸モードに切り替えた。

管制塔『後は操縦桿で操作するだけです』

('A`)「タイミングは?」

管制塔『……勘』

('A`)「……やるしかねーか」

(;´ー`)「……」

ミセ;゚−゚)リ「……」

 

 


  
飛行機が傾き、高度が急激に下がってきた。
雲から抜けると、はるか下方に街並みが見えた。

(;'A`)「よし……いける。俺はいける……」

(;´ー`)「……無('A`)「無理なんてほざきやがったら殺すからな」

青年は言葉が出なくなる。

('A`)「いいか。絶対に成功する。俺が保証してやるよ」

ミセ;゚−゚)リ「な、なんでそんな自信満々なんですか? 素人の癖に……」

('A`)「俺がこんなところで死ぬ訳ねえんだよ」

 

 


  
飛行場が見えてきた。
ドクオは操縦桿を握りしめる。

('A`)「……死ねないんだよ」

汗で滑らないように、何度も握り直す。

('A`)「家族がいるからな」

(;´ー`)「……」

(;´ー`)「僕が代わります」

('A`)「あ?」

 

 


  
( ´ー`)「僕にだって、家族がいる。それに、夢がある。
      貴方のそれと同じくらい、大切なものがあるんです」

('A`)「……」

ドクオはじっと青年を睨み付けた。
青年は怯むことなく、真っ直ぐ見返してくる。

その目には、覚悟が宿っていた。

('A`)「よし、やってみろ」

( ´ー`)「はい!」

 

 


  
ドクオが席を立ち、入れ替わりに若者が座った。
シートベルトを装着し、どっしりと席に構える。

まだ一度も運転したことが無い、若者はそう言っていた。
しかしいざ席に座ると、ドクオと違い様になっていた。

(;´ー`)「反動が来ると思います。客室に避難しておいてください」

('A`)「いや、ここにいる」

ミセ;゚−゚)リ「わ、私も……」

( ´ー`)「……ありがとう」

 

 


  
眼前に、飛行場に広がるアスファルトが、ゆっくりと迫ってくる。
若者はレーダーの動きを見ながら、操縦桿を徐々に倒していった。

(;´ー`)「あ……」

(;'A`)「どうした?」

(;´ー`)「……車輪って、どうやって出すんでしたっけ?」

(゚A゚)「しるかあ――――――!!!!!」

もう時間が無かった。
しかし手有り次第ボタンを押すのは危険すぎる。

 

 


  
ハハ ロ -ロ)ハ「Where is here...Who am I...(ここは何処? 私は誰?)」

その時、気絶していたテロリストが起き上がってきた。
ふらふらと立ち上がり、ぼんやりとした目で辺りを見回している。

(;'A`)「ん?」

ハハ ロ -ロ)ハ「……!」

ドクオの顔を見た途端、テロリストは奇声を上げながらつかみかかってきた。
気絶する前の記憶が一気に蘇ってきたらしい。

ハハ#ロ -ロ)ハ「Fuck! Kill you!(てめえこの野郎!)」

 

 


  
(;'A`)「うわ!」

押し倒された拍子に、何かのボタンを押してしまった。
しまった、とドクオは思ったが、若者は逆に歓声を上げた。

( ´ー`)「やりました! 車輪が出ましたよ!」

('A`)「よし、いけるか!」

若者は返事をする代わりに、親指を立てた。

(;´ー`)「……」

(;'A`)セ;゚−゚)リ「……」

ハハ;ロ -ロ)ハ「……」

 

 


  
地面はすぐそこに迫っている。

ガガン――!

重い衝撃が機内に響く。
着地したようだ。

ハハ;ロ -ロ)ハ「Outi!(またかよ!)」

着地の衝撃でテロリストは頭をぶつけ、二度目の失神。
ドクオたちは祈るように、若者の背中を見つめている。

飛行機は徐々にスピードを落としていき、やがて止まった。

 

 


  
( *´ー`)「やった……やったぞー! おおおおお!」

(*'A`)「いやっほぅ! お前最高のパイロットだぜ!」

ミセ*゚ー゚)リ「キャーキャー! 助かっちゃった助かっちゃった!」

ドアの向こう側からも、大勢の乗客たちの歓声が聞こえてきた。
若者は涙を流しながら、両手を振り上げてそれに応えた。

                  :
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タラップから下りると、大勢の警官たちが集まっていた。
モナー機長が予め管制塔に伝えていたようだ。

乗客と入れ替わりに中に入り込む。
やがてぐったりとしたハイジャック犯が、胴上げのような格好で運び出されてきた。

(;´ー`)「ドクオさん!」

('A`)「あん?」

どさくさに紛れて逃げようとしていたドクオを、若者が引き留める。

( ´ー`)「これから警察署に行かなきゃいけないみたいですよ。
      一人一人取り調べがあるんですって」

('A`)「俺パス」

 

 


  
(;´ー`)「え?」

('A`)「今日は用事あるから、また後日出向くよ。
   お前から伝えておいて。じゃあな」

後ろ手に手を振りながら、ドクオは去っていく。

 

( ´ー`)「……不思議な人だったなあ」

ミセ*゚ー゚)リ「ええ」

(;´ー`)「うわっ! いつの間に……」

ミセ*゚ー゚)リ「貴方も良かったわね。いい勉強になったでしょ?」

 

 


  
( ´ー`)「うーん……どうだろう」

ミセ*゚−゚)リ「え?」

 

 

( ´ー`)「でもたぶん、もう飛行機が怖いなんて思わないだろうね」

この若者の名前はシラネ。
後に名パイロットとして名を馳せる事になる者だ。

 

 

ミセ*゚ー゚)リ「そうね。これ以上怖い事なんてないもの」

アテンダントの名前はミセリ。
彼女はその後も、結婚するまでこの仕事を続けた。

 

 


 
彼女が誰と結婚したか。

( ´ー`)「あの……取り調べが終わったら……」

ミセ*゚ー゚)リ「ぱーっと飲みに行きましょ!」

( ´ー`)「はい!」

それは、ご想像にお任せしよう。

 

Act1 『出会いは上空1万メートル』 完

 

 

 


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