67 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 08/03/14(金) 19:17:00 ID: FVOz5oBx0
空港は大混乱に陥っていた。
警官が忙しなく走り回り、事情を知らない者たちは訳がわからず立ち往生している。
荷物チェックをかねたゲートには、大行列が出来ていた。
(;'A`)「……並んでる暇なんてねえんだよ」
一刻も早く家に帰りたい。
妻を抱きしめ、娘の頭を撫でなければいけない。
彼の頭にあるのはそれだけだった。
('A`)(仕方ねえ)
ゲートを諦め、空港関係者しか入れない部屋にそっと潜りこんだ。
警備員は対応に追われていて、セキュリティはざるである。
そのまま適当に廊下をさまよい、数分後空港のロビーへと抜け出ることが出来た。
その際受付の女性と目があったが、ドクオがあまりにも堂々としていたので、逆に怪しまれなかった。
空港前のタクシーを拾い、一直線に家を目指す。
(*'A`)「帰れる……あと一時間もしない内に家に帰れるんだ。
長かった……この三ヶ月は長かった」
運転手「お客さん、出張帰り?」
(*'A`)「あれーわかる?」
運転手「まあ……何となく」
べらべらと家族自慢を始めるドクオに、運転手は苦笑しながらも相づちを打つ。
およそ30分くらい経った頃だろうか。
異変は起こった。
キキキキ――!
(;'A`)「うわっ! な、な、なんだ!?」
運転手は急ブレーキをかけ、ドクオは前のめりにつんのめった。
後部座席のドアが開かれ、がっちりとした体格の男の、胸から下が現れる。
運転手「あんた危ないじゃないか! 急に前に出てきて……」
「乗せてもらうぞ」
男は持っていた紙袋から、銀色の銃を取りだした。
運転手「ひいいいいいい!」
「あ、おい!」
運転手は銃を見るなり、ドクオを置いて一目散に逃げ出していった。
「まあいい。お前が運転しろ」
(゚A゚)「ひぃ!」
銃をつきつけられるドクオ。
男は銃を向けたまま、車に乗り込んでくる。
(メ`ωメ)「早くしろ。死にたくなければな」
(;゚A゚)「な、な、な……!?」
遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
(メ`ωメ)(早すぎる。奴が動いているということか……)
(メ`ωメ)「おい。早く運転席に行け」
(;'A`)「ぐ……嫌だね!」
(メ`ωメ)「あ?」
(;'A`)「俺は家に帰るんだ! よくわかんねえけど、運転は自分でしろ!」
(メ`ωメ)「おい!」
銃をつきつけられているにも関わらず、ドクオは強気だった。
男が乗り込んできた方とは反対側のドアから降りる。
キキキキ――キキ――!!!
(;'A`)「うお!」
タクシーの後方で、数台のパトカーがタイヤを滑らしながら停車した。
警官たちと共に、コートを羽織った女が現れる。
ξ゚听)ξ「おい。お前もブーンの仲間か」
(;'A`)「へ?」
(メ`ωメ)「……」
('A`)ティン!
('A`)(そうか、こいつはブーンっていうのか……)
ドクオは両手を上げて、抵抗はしないという構えを見せた。
誤解を解かなくてはいけない。
+ +
∩(*'A`)∩「違いまーす! 僕は善良な市民でーす!」
+
ゴトン
ξ゚听)ξ「あ」
(*'A`)「え?」
(メ`ωメ)「ん?」
その時、ドクオの懐から、拳銃がこぼれ落ちた。
(゚A゚)「ええええええ!? あ……ああああ――――!!!」
ξ#゚听)ξ「捕まえろ!」
(;゚A゚)「そんな馬鹿な!」
鬱田ドクオ(36)、拳銃所持で逮捕。
そんな新聞の見出しが見えた気がした。
(;'A`)「ま、待って、違うんだ! 俺はこいつとは無関係だ!」
(メ`ωメ)「おいおい。つれないこと言うなよ兄弟」
(#'A`)「テメーといつ兄弟の誓いを結んだ!?」
警察の包囲網が徐々に迫ってくる。
頭が真っ白になり、ドクオは一歩も動けなくなった。
(゚A゚)「ああ……もう終わりだ……」
(゚A゚)「――?」
――あのね、パパ
――なんだ?
――わたし、大きくなったらパパのお嫁さんになる!
――おーそうかそうか! 楽しみにしてるからな!
――駄目だ! これはママのものだからな!
――わたしのだもん!
――ようやく俺のモテ期が来た……感無量だ
(;'A`)「……!」
それは夢か、幻か、走馬燈か。
いずれにしても、妙にはっきりと見えた。
ξ;゚听)ξ「あ……!」
ドクオは開けはなったドアから、運転席に飛び込んだ。
ξ;゚听)ξ「逃げるぞ! 囲め!」
(;'A`)「ちくしょう! 俺は家に帰らなきゃいけないのに!」
砂煙を巻き起こしながら、車体が飛び出していく。
すぐにクラッチ、ギアをセカンドに、スピードを上げていった。
(メ`ωメ)「いいぞ! 飛ばせ!」
(゚A゚)「おおおお――――!!!」
トップギアに入れたまま、ドクオたちは街の中を疾走し始めた。
『止まりなさい!!! 止まれこらぁ!!!!!』
(メ`ωメ)「ちっ」
けたたましいサイレンの音と共に、パトカーが後ろから追ってくる。
(メ`ωメ)「やばいな。投降するか?」
(#'A`)「しねえ!」
(メ`ωメ)「それでこそ俺の兄弟だ」
(#'A`)「だから俺は兄弟じゃねえ!」
パトカーはどんどん距離を詰めてくる。
それでもドクオは走り続けた。
(メ`ωメ)「……もう終わりだな」
(#'A`)「ああ!?」
(メ`ωメ)「俺もヤキが回ったもんだ……」
(;'A`)「く……」
弱音を吐くブーンに、ドクオは怒りを覚える。
(#'A`)「……何ほざいてんだよ」
(メ`ωメ)「あ?」
(#'A`)「悪者だったら最後まで悪者でいろよ!」
(メ`ωメ)「てめえ俺に向かってそんな口……」
(#゚A゚)「うるせえボケぇぇ!
途中で諦めるなら最初から悪い事すんじゃねえ!
やっちまったもんは仕方ねえんだ!
だったら地の果てまで逃げてみろやあああ!」
ガン!
パトカーの鼻先がタクシーを小突く。
数も増えて、今や十台以上のパトカーがぞろぞろと後ろに続いていた。
(メ`ωメ)「俺も出来ればそうしたいところだが、これは流石に無理だ」
(#'A`)「無理じゃねえ!」
(メ`ωメ)「根拠は?」
(#'A`)「ねえよ! でもなあ……」
交差点にさしかかった。
赤信号だったが、ドクオはそのまま突っ込んでいく。
(#'A`)「人間やろうと思えば、何だって出来るんだよ!」
(メ`ωメ)「!」
ギアチェンジ、そして強めのブレーキ。
ハンドルを切ると、テールスライドによって、車が横を向いた。
横滑りしながら、かつ車の波を縫うようにして走っていく。
(メ`ωメ)「グッド」
車の後方から衝撃音がした。
ミラーで確認すると、パトカーと乗用車が玉突き事故を起こしていた。
(;'A`)「はあ……はあ……」
ギアを戻し、再びトップスピードで突っ切っていく。
サイレンの音が、徐々に小さくなっていった。
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ドクオが車を止めたのは、人里離れた山の中だった。
二人は車の外に出て、追っ手がいないことを確認するとほっとため息をついた。
(メ`ωメ)「凄いなお前」
(;゚A゚)「死ぬかと思ったぜ」
(メ`ωメ)「お前何者だ? どっかの国のエージェントじゃないのか?」
(#'A`)「ジャパンのサラリーマンだよ!」
ブーンはタバコを取りだし、火をつけた。
上手そうに紫煙をはき出すと、持っていた紙袋をドクオに差し出した。
('A`)「何だよ。銃ならいらねえぞ」
(メ`ωメ)「銃じゃない」
('A`)「?」
渡された紙袋を覗くと、中には札束がつまっていた。
数えなくても、かなりの額が入っていることは一目瞭然である。
(゚A゚)「お前これ……」
(メ`ωメ)「駄賃だ。お前にやるよ」
(;'A`)「え、ちょ……」
(メ`ωメ)「じゃあな。また会えるといいな、兄弟」
(;'A`)「だから兄弟じゃないと何度言えば……」
ブーンは薄く笑いながら、車に乗り込んでいった。
エンジン音を響かせながら、ゆっくりと遠ざかっていく。
('A`)「はあ……さて」
(;'A`)「って俺どうやって帰ればいいんだ!?」
(;゚A゚)「てか何処なんだよここは――!?」
「札束より車よこせ――!」ドクオの叫びが山々にこだました。
Act2 『この男、凶悪犯につき』 完