ActFinal:決戦 後編

   
ξ#゚听)ξ「あの馬鹿……! 飛び込みやがった!」

警官「どうします!?」

ξ#゚听)ξ「近くの警官に緊急通信だ! 私たちは一度戻って体勢を整え……」

「ああああああああ――――!!!」

狂ったような叫び声と共に、閃光と爆風が巻き起こる。
それはとてつもない衝撃となり、停車していたパトカーを吹き飛ばした。

燃えさかるパトカーと、逃げまどう警官たちで辺りはパニックとなる。
ツンは随分と遠くなった耳、霞んでいく視界で、ひび割れた窓ガラス越しにそれを見ていた。

ξ;゚ )ξ「何が……起こった……」

衝撃により、ツンは頭をぶつけ、脳しんとうを起こしていた。
薄れゆく意識の中で、ただあの男を捕まえなければという想いだけが、くっきりと残っていた。

 

 


  
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燃えさかる高架橋の下、冷たい川の中を、
ブーンはドクオを背負ったまま泳いでいた。

(メ`ωメ)「はぁ……はぁ……」

着水の衝撃で気絶したドクオは、
ブーンの背中の上でぴくりとも動いていない。

(メ`ωメ)(兄弟……死ぬな……!)

水を吸った衣服は重く、人一人背負っている分さらに辛い。
それでもブーンは必死に川岸まで泳ぎきった。
地面にそっとドクオを降ろすと、膝をついて倒れ込む。

 

 


  
(メ`ωメ)(まだ……倒れるのは早い)

ぐっと膝に力を入れ、よろよろと立ち上がった。
ドクオを引き起こして、再び逃走を図るも、体が言うことを聞かない。

(メ`ωメ)「!」

土手を上がったところに、一台の乗用車を発見した。
明かりはついておらず、誰も乗っていないように見える。

ひとまずドクオを降ろし、土手を上る。
足を引きずりながら車に駆け寄った。

ブーンの思った通り、その車には誰も乗っていなかった。
それどころか鍵が開いていて、エンジンキーが刺さったままになっていたのだ。

(メ`ωメ)「へへ……運が向いてきたぜ兄弟」

何故こんな人気のない場所に、鍵がついたままの車があったか。
後部座席に置いてあるアルミケースの中身が何なのか。
そんな事を考える余裕は、ブーンには無かった。

 

 


   
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エンジンの音が、遠くから聞こえてきた。
やがてだんだんと近くなり、今度は体に振動が伝わってくる。

それがある時を境に、一気に鮮明に、現実のものへと変わった。
意識が自分を捕らえ、やがてゆっくりと頭が覚醒していく。

('A`)「……」

ドクオが目を覚ました時は、既に車内の中に運び込まれた後だった。
後頭部に固い感触があり、寝ころんだまま目をやると、銀色のアルミケースが見えた。

うめき声を上げながら、のそのそと体を起こす。
ミラー越しに運転席のブーンと目が合った。

 

 


  
('A`)「……今どこに向かってるんだ」

(メ`ωメ)「ひとまず、警察の追跡が無いような場所を走ってる。
      お前は何処に行きたい? 途中まで送っていくぜ」

('A`)「俺の家だ。場所は――」

大ざっぱな位置だけ教えると、ブーンは「わかった」と返した。
FMラジオが23時を告げる。
車で行けば、途中で降ろされてもぎりぎり間に合う時間だ。

('A`)(……ここまで長かったな)

ボロボロになったスーツを見て、今までの苦労が蘇ってきた。
それも家に帰れれば、きっと忘れられる。
そう考えているドクオは、もう半分家に帰った気でいた。

車は林道に入り、周りに建物が無くなる。
ブーンは時折、いぶかしげな顔でミラーを覗いていた。
後方から、猛スピードで飛ばしてくる二台のバンが見えたからだ。

 

 


   

  _
( ゚∀゚)(逃がしはしねえぞウサギ共……)

ジョルジュはブーンの顔を覚えていた。
だからブーンが運転するこの車を見つけたとき、すぐにドクオも見つけられた。

しかしそれ以上に、彼には人間が失っていた狩りの本能があった。
五感ではなく、いわば六つ目の感覚で、ブーンたちを探し出したのだ。

  _
( ゚∀゚)「レンコン出せ。タイヤを狙うんだ」

ヤクザ「そんな簡単に言われても……」

 

 


  

 

(;'A`)「奴らだ! ヤクザたちが追ってきた!」

(メ`ωメ)「敵が多いな。俺たちはよ」

(;'A`)「ちくしょう……今度こそ終わりだ……」

(メ`ωメ)「どうして」

(;'A`)「お前はあいつらの目を見たことないから、そんなのんびりしてられるんだ」

「あれは人間の目じゃない」ドクオは真顔でそう言った。
ブーンは無言でギアを上げ、車を加速させる。

(;'A`)「くそ……何か武器は無いのかよ」

(メ`ωメ)「拳銃があるが、予備の弾は無いぞ。全部で六発だ。ほらよ」

後ろ手に銃を渡されたが、ドクオは焼け石に水だと思った。
ヤクザたちも銃を持っているし、彼はただのサラリーマンだ。
映画のようなラッキーショットを期待する程、馬鹿ではない。

 

 


  
(メ`ωメ)「そうだ。そこにでっかいケースがあるだろ?
      そいつをフロントガラスにお見舞いしてやれ。
      うまく行けば車一台潰せるぞ」

(;'A`)「あ、ああ……これか」

傍に横たわるアルミケースを見て、ドクオは返事をする。
バンは既に30メートル後方まで迫っていた。
他に良い案も思いつかないので、アルミケースを手に取る。

(;'A`)「そういやこれ、中身は何なんだ」

(メ`ωメ)「さあ。しらねえ」

鍵はついていないようで、留め金を外すとすぐに蓋は開いた。
中に入っていた物を見て、ドクオは言葉を失った。

 

 

 

これで、勝てる。
そう確信したからだ。

 

 


 

  _
( ゚∀゚)「もっと上手く狙え」

ヤクザ「ちゃんとやってますってば」

窓から顔を出したヤクザが、車のタイヤを狙って何度も発砲を繰り返していた。
しかし走行中の車に乗りながら、動く標的に弾を当てるのは至難の業であった。

ヤクザ「ちっ……難しいなこれ」

ヤクザ「俺に貸してみろ」

今までずっと黙っていた中年の男が、銃を貸せと手を差し出す。
多少不満そうな顔をしながらも、若いヤクザは素直に銃を手渡した。

ヤクザ「いいか……明鏡止水だ。銃と一体になる気で狙うんだ」

ヤクザ「はい?」

ヤクザ「狙いはタイヤだ。だが運転しているのは人間だ。動きに癖がある。
    意識をリンクさせて、敵と自分を同化させるんだよ。
    そうすると……0.5秒後の景色が見えてくる」

 

 


  
それはたった一発の発砲だった。
カーブの手前、ヤクザの放った弾がタイヤを捕らえ、車の制御が効かなくなる。

ブーンたちの乗っている車は、カーブを曲がりきれず、ガードレールを突っ切っていく。
そのまま暗闇に覆われた林に突っ込んでいった。

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( ゚∀゚)「見事だ」

ヤクザ「すげええ! 流石っす!」

ヤクザ「ふん……まあまあだな」

二台のバンは路肩に駐車した。
それぞれ懐中電灯を持って、林に向かっていく。

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( ゚∀゚)「急げ。逃げられるかもしれん」

車が通った後には、タイヤの跡や折れた木々の破片が散らばっていた。
ジョルジュたちはそれに沿って、小走りで駆けていった。

車はすぐに見つかった。
太い木にぶつかって、完全にポンコツとなった状態で停車していた。
ジョルジュが目配せすると、ヤクザたちはその車を即座に囲んだ。
中は暗く、何も見えない。

 

 


  _
( ゚∀゚)「おい。開けろ」

ヤクザ「はい」

四人のヤクザが、前部後部の四つのドアに手をかけ、一斉に開けはなった。
懐中電灯の光がもぬけの殻となった車内を照らす。
既に逃げられた後だったのだ。

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( ゚∀゚)「遅かったか……」

ヤクザ「あ、足跡がありますよ」
  _
( ゚∀゚)「でかした。それを辿って――」

 

光が見えた。
目が潰れるような閃光が。

ほんの一瞬だけ、爆発音が聞こえたような気がしたが。
次の瞬間には、ジョルジュたちの鼓膜は破れ、無音の世界になっていた。

体がはじけ飛び、バラバラになった手足が、血の雨と共に降り注ぐ。
燃えさかる車に映し出されたのは、人間のスクランブルエッグだった。

 

 


  

 

ドクオとブーンは、ヤクザたちのバンに乗っていた。
まだ興奮が冷めていないらしく、二人の息は荒い。

(;'A`)「はぁ……はぁ……うまくいったかな」

(メ`ωメ)「失敗しても、足止めにはなっただろ」

アルミケースの中には、爆弾とタイマーが入っていた。
ドクオは林に突っ込んだ後、二分後にタイマーをセットして車から離れた。
その後ジョルジュたちと入れ替わるようにバンに乗り込み、見事逃げおおせたという訳だ。

罪悪感は無かった。
言ってみれば正当防衛であるし、そもそも人間を殺したという感覚は無かったからだ。

(;'A`)「警察に行く用事が増えたぜ……飛行機に、拳銃に、これか……。
    ひょっとしたら犯罪者になっちまうかもしれないな」

(メ`ωメ)「同じ所に行けたらいいな。兄弟」

(;'A`)「え? お前は――」

 

 


  
「このまま逃げるんだろ?」ドクオが問う。
ブーンは運転しながら、片手でタバコを取りだし、火をつける。

(メ`ωメ)「まあ……行けるところまで行くさ」

('A`)「ははは……やっぱりな」

ドクオはブーンがこのまま逃げ続けるのだと思った。
しかしこの言葉は、本当は別の意味が込められていた。

('A`)「なあ。お前何をしたんだ?」

(メ`ωメ)「何って?」

('A`)「だから、何をしたらあんなに警察に追われるんだよ」

「そうだな……」ブーンは思い切り紫煙をはき出す。
何かを思い出すように、目を細めた。

(メ`ωメ)「警察は俺をはめたがっているんだ。
      何とかして、俺に罪をなすりつけようとしている」

(;'A`)「どういう事だ?」

 

 


  
(メ`ωメ)「俺は……元々警部だった」

(;'A`)「マジで?」

(メ`ωメ)「大マジだ。だが俺は、大罪になる警官殺しの罪に問われてる」

(゚A゚)「同僚を殺したのか!?」

(メ`ωメ)「いや、俺じゃない。俺の顔に傷をつけた相手さ。今でも奴の顔は忘れていない。
      ただ状況が悪く、俺と死んだそいつが対立してた事もあって、俺が疑われた」

塞がった片目に、頬を横切る深い傷跡。
ただの怪我ではなく、そこには深い因縁があるように思えた。

(メ`ωメ)「まあ対立してたって言っても、憎んではいなかった。
      むしろ俺は尊敬さえしていたよ。馬鹿がつくほど純粋なそいつにな」

('A`)「……」

 

 


   
(メ`ωメ)「おそらく、警察内での抗争。
      信じられないかもしれないが、黒幕は上層部だろう」

(゚A゚)「う……嘘だろ。そんなのが日本である訳……」

(メ`ωメ)「あるんだよ。この国は闇だらけだ。ちょっとつつくだけで鬼が出る。
      あいつは鬼に出会っちまったんだ。そして、殺された。
      何を知ってしまったのか検討もつかんが、警視庁が揺るぐくらいの秘密だろうな」

おいそれと信じられるような話では無かった。
しかし、嘘とも思えなかった。

(メ`ωメ)「真犯人を捜し出して、この手で捕まえる。
      上手く事が運べば、また警察に戻れるだろう。
      そうしたら俺は、あいつを殺した黒幕をこの手で暴いてやるんだ」

淡々と語っていたが、瞳の中には高熱度の怒りが見えた。
それは汚名を晴らす為であり、友の仇を討つ為でもあるのだろう。

('A`)「……そうか。悪かった」

(メ`ωメ)「いや、いいさ」

 

 


  
街灯の光をくぐり、車は飛ばしていく。
人気の無い林道は薄暗く、ハイビームで走る必要があった。

(メ`ωメ)「そういや兄弟。あの金はどうしたんだ?」

('A`)「ああ、あれか。友達にやったよ」

(メ`ωメ)「ば……! あれはお前への報酬のつもりだったんだぞ」

('A`)「ありがとよ。しっかりと社会に役立てたさ」

「元々は俺の結婚資金だったんだがな」少し寂しそうに、ブーンが呟く。
「相手はいたのか?」という問いに、ブーンは舌打ちで返した。

 

(メ`ωメ)「!」

('A`)「?」

バックミラーを見ていたブーンは、何かに気付いたように突然後ろを振り返った。
ドクオはすぐに悟り、身を強ばらせた。

 

 


   
恐る恐る後ろを振り返り、ドクオはソレを確認した。
闇にとけ込むバンが一台、真っ直ぐこちらに向かってきている。
ライトをつけておらず、接近するまで気がつかなかった。

(;'A`)「……」

(メ`ωメ)「しつこいな……くそ」

そのバンは酔っぱらいのように、ふらふらと走行している。
しかしカーブの度に、徐々に距離を詰めてきていた。
ブーンの運転では、追いつかれるのは時間の問題であった。

 
(メ`ωメ)「く……まずい!」

(;'A`)「うわ……ああああ――――!!!」

カーブで減速したブーンに対し、バンはフルスピードで突っ込んできた。
横から体当たりされた車は、ガードレールにバウンドし、壁に激突する。

後部座席に乗っていたドクオは、車の中でピンボールのように転げ回っていた。
上も下も無くなった世界で、一瞬だけ意識が遠くなる――。

 

 


   

 

 

(゚A゚)「!」

数秒間だけ、ドクオは気絶していた。
エンジンは停止し、車は壁にめり込んでいる。

ブーンはハンドルに突っ伏して、ぴくりとも動いていない。
割れたフロントガラスから、ガレキの屑が中に入ってきた。
ブーンの頭や体に、さらさらと降り積もる。

(;゚A゚)「ブーン! おい……嘘だろ……!」

呼びかけても、何も反応が無い。
身を乗り出して、生死を確認しようとした時、目の端で何かが動いた。

 

 


  
(;'A`)「……?」

(;゚A゚)「――!」

それは、狂気だった。
焼けただれた顔と、血走った目つき。
足を引きずる様は、まるでゾンビの様で。

  _
(※゚Д%)「みぃ……つぅ……けぇ……たぁ……」

 

底なしの悪意を携えたそれは、まさしく狂気のカタマリだった。

(;゚A゚)「うあっ……うわあああああ……あああああ――――!!!!!」

喰われる。
このままでは、あの男に。

殺さなければ、殺される。

倫理も法も糞もない、単純な論理だ。
ブーンから渡されていた拳銃を手に、ドクオはドアを蹴り開けた。

 

 


   
(;゚A゚)「はぁ……! はぁ……! はぁ……! はぁ……!」
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(※゚Д%)「コ……ロス……ぉ……前を……」

(゚A゚)「ああああああああ――――――――!!!!!」

両手で拳銃を持ち、引き金を引く。
しかしジョルジュを捉える事無く、弾丸は虚空へと消えていった。

相手との距離はまだ20メートルある。
素人が撃てば、まず当たらない距離だ。

  _
(※゚Д%)「ぃひぃひひ……コわガル事ハ無ィ……楽にコロしテゃる……」

(;゚A゚)「来るんじゃねえ! 来るんじゃねえ――!!!」

立て続けに二発。
しかしやはり当たらない。

ジョルジュは懐から拳銃を取りだした。
片手で構え、撃つ――。

(゚A゚)「ああああ!!! あああああああ!!!」

 

 


   
映画やアニメなら、格好つけて躱すか、微動だにしないだろう。
しかし拳銃を向けられ、パニックになったドクオは、地面を転げ回った。

それが功を奏したのか、弾丸は当たらず。
再び立ち上がり、ドクオも銃を向ける。

(;゚A゚)「死ね! 死ね! 死ね!!!」

体の震えが伝わり、銃身が安定しない。
撃った弾は目の前の地面に当たり、火花が一瞬辺りを照らした。

  _
(※゚Д%)「コヮイか……? 死ヌのガ怖ィか……?」

(;゚A゚)「う……」

立ったまま、ドクオは胃の中のものをはき出した。
口内に嫌な酸味が広がる。
夕食に食べたガーリックステーキの臭いがした。

 

 


  _
(※゚Д%)「ぉレは怖ク無ぃ……」

ジョルジュのブローニングが火を噴く。
ドクオは反射的に身を仰け反らした。

(;゚A゚)「!?」

肩口に熱を感じ、手で覆う。
ぬるりとした感触で、血が出ているのがわかった。
弾丸が肩をかすめたのだ。

(;゚A゚)「ひぃあ……へああああああ――――!!!!!」

焦燥が頭を焦がし、無茶苦茶に引き金を引かせる。
二発の銃声の後、撃鉄が空回りする音だけが続いた。
弾が、切れた。

(;゚A゚)「あ……あああ……」

 

 


   
足の力が抜け、へなへなと座り込んだ。
もう抗う気力は無かった。

ジョルジュは愉快そうに目を細め、ゆっくりと歩いてくる。
もう距離は無く、手を伸ばせば届きそうだ。

銃がドクオの顔面を捉える。
小さな銃口が、大口を開けた獣に見えた。

(;゚A゚)「――――――――」

 

 

 

  ――よよよ、よ、良かったら……ぼ、僕と結婚……

   ――良いに決まってるだろ。さっさと式場を決めるぞ

  ――や……やったー!

 

 


  
  ――生まれたぞ。お前と、私の子だ

   ――よく頑張ったな!

  ――名前は何にしようか

   ――二人の名前から取って、ナオにしないか?

  ――お前の名前が消えているぞ……

  
  ――パ……パ……

   ――お、おい、今喋ったぞ! しかもパパって言った!

  ――ああ、3日前にママって言ってたぞ

   ――そ、そっか……でも嬉しい!

  ――ふふ……そうだな

 

 


  
  ――パパー! ママが怒るー!

   ――ははは。もう許してやりなよ

  ――お前のパソコンに水鉄砲を撃ったんだが

   ――ば、バックアップあるから……

  ――はっぴぃばーすでぃ!

   ――え、今日俺の誕生日だっけ!?

  ――忘れてたのか?

   ――自分の事となるとどうも物覚えが……

  ――プレゼントだ。ほうれ

   ――ほれー!

  ――び、美女二人が体にリボンを巻いて……! 鼻血が……

   ――ギャ――! パパが血だしてる!

  ――デスマッチ後の大仁田厚みたいになってる! ナオ、ティッシュ取って!

 

 


   

 

(;A;)「……」

走馬燈が見せてくれたのは、最高の思い出だった。
死ぬ前に、良いものが見れた。
ドクオは夜空を見上げ、二人の未来を祈った。

 

 

(;A;)「……幸せにな」

 

 

  _
(※゚Д%)「――死ネ」

 

 

 

 


   

 

鈍い音がした。
あきらかに、発砲音では無かった。

顔を戻すと、銃口をこちらに向けたまま、ジョルジュが静止しているのが見えた。
見続けていると、体がぐらり揺れ、その場に崩れ落ちる。

 

(メ`ωメ)「……」

(;A;)「……」

 

ジョルジュのすぐ後ろに、レンチを持ったブーンがいた。
何も言葉は出なかった。
ドクオはただ、泣き続けていた。

ただし、悲しみではなく、安堵の感情で。
死ではなく、生を感じて。

ただ、泣き続けていた。

 

 


   
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                  :

(メ`ωメ)「ここで降ろすぞ。あとは歩いていけるな」

('A`)「ああ。色々ありがとうな」

ひしゃげたバンからドクオが降りる。
後部座席には、ガムテープでぐるぐる巻きにされているジョルジュがいた。

真夜中のベッドタウンは、静けさに包まれていた。
この近くに、ドクオの住んでいるアパートがあるのだ。

(メ`ωメ)「礼はいらない。言われる筋合いが無いさ」

('A`)「そうか。あ、じゃあ一つ」

(メ`ωメ)「うん?」

 

 


   
(#'A`)「うらあ!」

ドクオは思い切りブーンの頬を殴った。
最初はぽかんとしていたブーンだったが、ドクオが笑うと、つられて笑い出した。

(メ`ωメ)「ふん。食えない奴だ」

('A`)「お前が言うな」

('A`)「そういや……どうするんだよ、そいつ」

顎でジョルジュの事を示す。
ブーンはにやっと笑い、言った。

(メ`ωメ)「俺はこいつに用がある。後は任しとけ」

('A`)「用?」

(メ`ωメ)「こっちの話だ兄弟。じゃあな」

('A`)「あばよ」

 

 


   
バンが走り去っていくのを見届けてから、ドクオは歩き出す。
見慣れた風景が、本当に帰ってきたのだと実感させられる。

しかし時刻は深夜0時を過ぎている。
結婚記念日には、間に合わなかった。

(;'A`)「はあ……」

それに、明日になれば警察に行かなくてはいけない。
全ての事情を話し、場合によっては法廷に行くこともあり得る。
ようやく帰れたというのに、心の中のわだかまりがドクオを憂鬱にさせる。

('A`)「……」

いつの間にか、アパートの前まで来ていた。
自分の部屋には、明かりがついている。
おそらく鬼のように怒っているだろう妻を想像すると、また気分が落ち込んだ。

 

 


  
階段を上り、二階へ行く。
重い足取りで自分の部屋を目指した。
鍵は開いていて、取っ手を回すと簡単に開いた。

(;'A`)「あ……」

目の前で仁王立ちしている女に、ドクオは背筋を凍らせた。
普段から時間に厳しい彼女を、何時間も待たせたのだから。

「……」

(;'A`)「あ……あの……」

「……」

(;'A`)「ごめん、電話した? 携帯が壊れてて……」

「……」

(;'A`)「パーティ開くって言うから、ちゃんと帰ろうとしたんだけど……その……」

「……」

 

 


   
(;'A`)「……ナオはもう寝た?」

「……」

腰に手を当てたまま、女は無言で頷く。

(;'A`)「ごめん……本当にごめん。いい訳はしないよ……」

「……」

(;'A`)「……」

「違う」

(;'A`)「え?」

「お前が言うべきなのは、そういう言葉じゃないだろう」

('A`)「……クー」

 

 


   

 

 

川 ゚ー゚)「おかえり」

 

 

 

                   「ただいま」('∀`)

 

 

 

    終わり

 

 

 

 


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