駅前には大勢の野次馬が出来ていた。
警察やマスコミに加えて、事情を知らない一般人も群れに加わっている。

もみくちゃにされながらも、ドクオは何とか人の波から脱出した。
しかしこの先どうしていいかわからず、途方に暮れる。

(;'A`)(やばい……やばいぞ……! もう時間が無い!
    タクシーを拾って……いや待て。
    今までの展開からすると、乗り物は危ない……ん?)

その時、倒れたままになっている放置自転車がふと目に付いた。
普通に考えて自転車で行くような距離では無いが、もはや交通機関は信用出来ない。

('A`)「……日付が変わるまで残り2時間か」

 

(#'A`)「やってやんよ――!」

 

 


  
近くに落ちてあった傘を分解し、即席のピッキングツールをこしらえた。
それを自転車の鍵穴に差し込み、一瞬でロックを解除する。
高校生時代に身につけた、ちょっと人には言えないスキルだ。

サドルを調節し、ハンドルと同じ高さにしてから乗り込んだ。

('A`)ペッ

手の平に唾をつけ、ぐっとハンドルを握る。
既に心も体も満身創痍だ。
それでも残された最後の力を振り絞り、ペダルに力を入れた。

 

(#'A`)「うおおおおおおお!!!」

 

彼を突き動かしているのは、家に帰りたいとう想いだけだ。
しかしそれは、彼の全てでもあった。

 

 


 

  ActFinal:決戦 前編

 

 

 


  

 

( ・∀・)(良い風を感じるぜ! 今日の俺は絶好調だ!)

やあみんな!
俺の名前はモララー。
今をときめく競輪選手さ。

今俺が乗っているのはイタリア製最高級ロードレーサーだ。
イカしたフォルムをしているが、俺が乗るとさらに格別だろ?

( ・∀・)(遅いぜ! 遅すぎるぜ!)

また一台車を越しちまった。
都内じゃ俺よりも速い奴なんていないのさ。
そう……俺は今間違いなく最速なんだ!

 

 


  
まあそんな事を考えながら、その夜も街中を飛ばしてたんだ。
すると俺の横を、何か大きなカタマリが過ぎていった。

( ・∀・)「……?」

最初は何かわからなかったぜ。
だってそれは、あまりにも速すぎたから。

(  )「うおおお――――――!!!」

( ;・∀・)「……嘘……だろ」

俺は追いかける事も出来ず、その場で立ちつくしていた。
だってそいつは、ただのママチャリで俺のロードレーサーを圧倒したんだ。

猛スピードで離れていく背中を、呆然と見ていることしか出来なかったね。

 

 


  
( ・∀・)「……すげえ」

世の中には、俺よりもずっとずっと速い奴がいる。
認めたくなかったが、それは紛れもない事実だった。

それから俺は、今までの二倍も三倍も練習をこなしてきた。
奢りを捨てて、初心にかえってな。

きっとそれが世界大会の走りに繋がったんだと思う。
俺がチャンピオンになれたのは、あの時の名前も知らない男のおかげさ。

今も俺は、あの背中を追い続けている。
きっとこれからも、俺はチャレンジャーさ。

――モララー著 『世界で最も速い男』 より抜粋

 

 


  

 

(;'A`)「はぁ! はぁ!」

体が鉛のように重く、虫がはえずり回るが如く乳酸が筋肉を痛めつける。
ペダルを一漕ぎする度に、寿命が削られるような苦痛だった。

(;'A`)(絶対! 家に! 帰るんだ!!!)

ドクオの目は、もう前しか見えていない。

だから彼は気がついていなかった。
自分が追われているということに。

 

 


  
プップ――!

(;'A`)「!?」

けたたましいクラクションの音。
ペダルを漕ぐ足を休め、後ろを振り返る。

(゚A゚)「!!!」

スモークが貼られているバンが二台、すぐ真後ろに迫っていた。
誰が乗っているかというのは、一瞬見ただけですぐにわかった。

暗闇の向こうで、忘れたくても忘れられない、獣たちの目が見えたからだ。

(;゚A゚)「うあ……ああああ――――!!!」

 

 


  
あの時の恐怖が蘇ってくる。
ドクオは自転車を加速させ、バンを離そうとした。

しかし交通法規をまるで無視して、バンはぴったりと後ろにくっついてくる。
ドクオをあざ笑うかのように、ギリギリの距離を保ちながら。

「ほらほらもっと走れ!」

(;゚A゚)「ひぃ!」

後ろからジョルジュのはやし立てる声が飛んだ。
少しでも減速したら、そのままひき殺されそうだ

(;゚A゚)(ちくしょう! あと少しなのに! ちくしょう! ちくしょう!!!)

 

 


   

 

ヤクザ「ジョルジュさん」
  _
( ゚∀゚)「何?」

ヤクザ「街中で殺すのはやばいっすよ」

ヤクザ「そうですよ。第一、こいつ殺しても俺らにメリットないし」
  _
( ゚∀゚)「やばい? メリット? 何それ」

ヤクザ「え?」

  _
( ゚∀゚)「俺たちは何だ。言ってみろ」

ヤクザ「……ヤクザ……ですよね」
  _
( ゚∀゚)「違う」

 

 


  _
( ゚∀゚)「俺たちはな、クズなんだよ」

ヤクザ「……」
  _
( ゚∀゚)「社会からはじかれ、組からも破門をくらったクズ共だ」

ジョルジュ一家は、どの組にも属していない。
正確に言えば、ジョルジュが作った愚連隊なのだ。

あまりにも暴力性が高く、誰からも理解されない狂気を持った男たち。
そういう人間たちを、ジョルジュは受け入れていった。

しかしシマが無く、シノギも無い。
たまに回される仕事と言えば、雑用に近い殺しだけ。
もはやヤクザ業だけで食っていけるような収入では無かった。

  _
( ゚∀゚)「舐められちゃ駄目なんだ。例え知らない野郎一人が相手だとしてもな」

 

 


  _
( ゚∀゚)「俺たちは同じヤクザにも煙たがられ、何処にも相手にされないクズだ。
     その代わり……俺たちは従わない。恐れない。逃げない。
     負けない。折れない。振り返らない。そうだろ?」

ヤクザ「兄貴……」

  _
( ゚∀゚)「こいつを殺したら、もうくせえ殺しは無しだ。
     東京中のヤクザを殺して金を奪う。
     それから外へ高飛びする。どうだ、この話?」

ヤクザ「ま、マジっすか!?」

ヤクザ「うわ、最高に面白そうっすね」

ヤクザ「乗りますよ。殺しであれば、何でも」

  _
( ゚∀゚)「……俺たちは誰にも止められない。誰一人俺たちから逃げられない。
     奴を例外にする気は無い。殺して、殺し尽くす。俺たちが俺たちである為に」

 

 


  

 

迫り来る狂気の沙汰に、ドクオは必死にペダルを漕ぐ。
しかし度重なる過負荷によってチェーンが外れ、遂に自転車が壊れてしまった。

(;゚A゚)「うああああああ――――――!」

バランスが効かなくなり、転倒する。
空中に投げ出されたドクオは、バンにはじき飛ばされる自転車を見ていた。

世界が回り、地面が迫る。
受け身が取れず、全身をしたたかに打ち付けてしまった。

二台のバンは急ブレーキで止まり、方向転換を始めた。
地面に倒れたままのドクオを、ひき殺すつもりであった。

(;'A`)「これで……終わりかよ……」

 

 


  
限界を超えて動き続けた体は、もう一ミリも動かせなかった。
今度という今度は、ドクオも諦めている。

怖いのは、死では無い。
死によって、失うものだった。

(;'A`)「ごめんな……パパは……約束守れそうにないわ……」

バンはバックして助走の距離をとった。
ある程度離れると、今度は猛烈に加速し、ドクオの眼前に迫ってくる。

恐怖よりも何よりも、家族に対し申し訳なかった。
目を瞑り、ドクオは最期の時を待った――。

 

 

 


   

 

(;'A`)「……?」

脳の芯に響くような衝撃音。
しかし車が当たった感触は無く、ドクオはまだ生きていた。

(;゚A゚)「!!!」

バンはあさっての方向に飛んでいき、電柱にぶつかっていた。
そしてドクオの目の前には、見覚えのあるタクシーが一台、助手席を開けたまま停車していた。

フロントガラスにヒビが入っていて、バンパーが半分外れている。
体当たりをして、ドクオを助けてくれたのだ。

(#'A`)「く……ぐおお――!」

痺れた体にムチを入れ、精神力のみで立ち上がる。
ドアの淵に手をかけ、倒れ込むように助手席に飛び込んだ。

 

 


     

 

 

(メ`ωメ)「よう兄弟。また会えたな」

 

(;'A`)「……おせえんだよ」

 

 

嬉しくて泣きそうになるのをこらえ、わざと素っ気ない言葉で返す。
血の絆ではない、二人は運命で繋がっていた兄弟なのである。

 

 


       
(メ`ωメ)「飛ばすぜ」

車は急発進を始め、二台のバンを一気に引き離していった。
ドクオはバックミラーでそれを確認し、ほっとため息をつく。

(メ`ωメ)「兄弟。どうして命を狙われてるんだ?」

('A`)「しらねえ。お前の兄弟だからじゃねえのか?」

(メ`ωメ)「なるほどな。ところで、ちょっと俺も今やばいんだ」

('A`)「何だよ」

(メ`ωメ)「いやあ……実はな」

ブーンの台詞は、けたたましいサイレンの音にかき消された。
何事かと思ってドクオが後ろを向くと、身の毛もよだつ光景が広がっていた。

 

 


     
数十台にも及ぶパトカーの大群が、真っ赤なランプをかざしてついてきているのだ。
さしずめ、ハーメルンの笛吹男になったような気分である。

(メ`ωメ)「お前みたいにうまく行かなかったよ。見つかって30分でこれだ」

(;'A`)「ははは……もう驚かねえ」

(メ`ωメ)「それでこそ俺の兄弟だ」

『止まれコラァ! ぶち殺すぞ!』

パトカーのスピーカーから、ヒステリックな女の叫びが聞こえた。
警察が言ってはいけないような罵声が、雪崩のように耳に飛び込んでくる。

(メ`ωメ)「ありゃあ結婚できねえな」

('A`)「同感だ」

 

 


    

 

ξ#゚听)ξ「さっさと車を停車しろ! ケツの穴に38口径ぶち込むぞ糞が!」

警官(この仕事辞めたい……)

警官(お母さん……僕頑張ってるよ……)

助手席でわめき散らす上司に、運転手と後部座席の警官は精神的にまいっていた。
彼女の名前はツン、いわゆるキャリア組で、29歳の警視である。

女性の警視というだけで珍しいのに、現場大好き、喧嘩上等という性格をしている。
抜群の容姿をしているのだが、性格が災いし、お見合いの失敗数はあさぴーを越えていた。

プライベートが充実しない分、仕事にかける情熱は銭形警部並だ。
彼女はブーンを捕まえる事に、使命を感じてさえいるのだから。

 

 


    

 

ヤクザ「どうします? うざいのが一杯来ましたけど」
  _
( ゚∀゚)「奴を殺すのは俺たちだ。先回りするぞ」

ヤクザ「わかりました」

ヤクザ「聞いたか? 先回りするからついてこいよ」

『了解』

携帯電話で連絡を取り合い、獣たちは狩りを続ける。
二台のバンは、警官の大群についていくことをやめて、別の道に分かれていった。

                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :

 


   
リビングのソファーに、一人の少女が座っていた。
テレビに映し出されている光景に、目が釘付けになっている。

从*゚д゚)「ほわあ……」

「どうした?」

从*゚д゚)「ママ! テレビみて!」

それはヘリコプターから撮られた映像で、緊急放送のようだった。
アナウンサーが歯切れの悪い言葉で、状況を説明していく。

しかしその光景は、もはや説明などいらなかった。
ボロボロのタクシーを、数え切れない数のパトカーが追っている。
日本の、いや世界の歴史に残るような、壮絶なカーチェイスである事は見て取れた。

从*゚д゚)「ねーこの車、なんでおわれてるの?」

「悪いことをして、お巡りさんを怒らせちゃったんだよ」

从*゚д゚)「わるいことって何?」

「そうだな……例えば、ママが作ったご飯を残したりとかだな」

 

 


   
真面目に答えてくれない母親に対し、娘は口を尖らせる。
「ふわ……」あくびを一つ、子供にはもう遅い時間だ。

从*゚д゚)「パパ、帰ってこないのかな……」

「……」

从*゚д゚)「まだおしごと?」

「いや、そんなはずは無い。きっともうすぐ帰ってくるさ」

从*゚д゚)「ほんとにー?」

「ああ。必ず帰ってくる。あの人は、約束を一度も破った事が無いんだ」

「それに……」続く言葉は、胸の中に留めておいた。
言葉にするより、想いが届く気がしたからだ。

 

 

――それに

 

 

 


   

――あの人は、世界で一番、私たちを愛してくれてるからな

 

(;'A`)「お、おい! ガソリンが尽きかけてるぞ!」

(メ`ωメ)「結構走らせたからな。メーターもやばい事になってらあ」

(;'A`)「どうすんだよ! このままじゃ捕まる!」

(メ`ωメ)「いや、それよりもやばい事があるぞ」

('A`)「?」

直後に、割れたフロントガラスの前で、何か赤いものがはじき飛んでいった。
ミラーで確認できたそれは、工事現場によくあるカラーコーンであった。

気がつくと、周りに一般車がいない。
その代わりに、危険、立ち入り禁止等の看板が、道の端々に見えた。

(メ`ωメ)「この先は、建設中の高速道路なんだ」

(;'A`)「……まさか」

 

 


  
(メ`ωメ)「……まだ道が出来てないんだよ」

(゚A゚)「嫌ああ――――――!!!!!」

タクシーは上を目指して、未完成の高架橋を上っていく。
明かりがついていないので、いつ事故を起こしてもおかしくない道だ。

例え無事に行けたとしても、そもそも通る道が無いときている。
気持ちばかりが焦り、ドクオは貧乏ゆすりが止まらない。

(;゚A゚)「どうすんだよ……やべえよ……」

(メ`ωメ)「……兄弟。お前は降りろ」

(;'A`)「何?」

(メ`ωメ)「お前は元から罪が無い。警察に追われる必要が無いんだ。
      今ここで降りても、事情を説明すれば何とでもなる」

(;'A`)「いや……しかし」

(メ`ωメ)「あの時の拳銃は、俺からもらった事にしたらいい」

(;'A`)「そうじゃなくて……!」

 

 


  
('A`)「お前は……どうするんだよ」

(メ`ωメ)「……」

高架橋を上り詰め、目の前に真っ直ぐ伸びた道が現れた。
街灯はついておらず、暗闇に覆われている。

(メ`ωメ)「俺は……行けるところまで行ってみるさ」

('A`)「……」

ブーンはブレーキを踏んで減速を始めた。
ここでドクオを降ろすつもりなのだ。

(#'A`)「……」

(メ`ωメ)「!」

しかしドクオはそれを許さなかった。
ブーンの足を蹴飛ばし、アクセルを踏みつける。

 

 


  
(メ`ωメ)「お前……!」

('A`)「降りるつもりはねえよ」

(メ`ωメ)「帰らなきゃいけないんだろう!? どうして……」

(#'A`)「俺は帰る! 絶対にな! でもな……」

('A`)「お前を見捨てちまったら、もう家族に会わす顔がねえんだよ」

サイレンの音が、洪水のようになだれ込んでくる。
後ろでは、暗闇の高速道路が、ランプの赤い色に染められていた。
まるで血の濁流が後ろから迫っているようだ。

(#'A`)「お前が何をしたかはしらねえ。でもな……命の借りがある。
    それを返すだけだ。その先の事は、テメーで考えな」

(メ`ωメ)「兄弟……」

ブーンは押し黙ったまま、力強く頷いた。
アクセルを踏みきり、パトカーを離していく。

 

 


  
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :

世界は私を否定し続ける。
どんなに存在を主張しても、私は世界に押しつぶされる。

川д川「……」

途切れた道、この高速道路はまだ工事中だから、誰もいない。
まるで包丁で切り落とされた大根みたいに、すぱっと道が切れているから、面白い。

 

 


  
途切れた道の淵に腰を下ろし、足を空中に投げ出した。
落ちればタダじゃ済まない高さだけど、恐怖なんて無い。
死よりも怖い生を、私は知っているから。

川д川「……」

すぐ下には川が、その向こうに街がきらきらと輝いて見える。
あの街にいくつの人生があり、どのように交差しているのだろうか。

川д川「……私には……関係無い」

そう、関係無いの。
他人の人生なんて、これっぽっちも興味無いわ。
だって私以外の人間は、全て敵のはずだもの。

川д川「さあ……始めましょうか」

私の可愛い分身さん。
アルミケースから出ておいで。
うん、良い子よ。
今スイッチを入れてあげるわ。

 

 


    
川д川「ふふふふふふふふふふふふふふ――」

最高のエンターテイメントを始めましょう。
そろそろ電車に仕掛けた爆弾も爆発してるでしょう。

でもそれは開幕のファンファーレ。
終幕の劇場は、これから始まるのよ。

タイマーを一時間後にセットし、スイッチを押した。
電子時計がリズムを刻み、終焉に向かって鼓動を始める。

川д川(これで二つ目……あと一つ)

用意していた爆弾は三つ。
この爆弾は、わざと人気の無い場所に置いて、捜査を攪乱させるもの。

最後の爆弾は何処に置こうかしら……ふふふふ。
明日のニュースは、東京を恐怖に陥れる爆弾魔の事で持ちきりね。

川д川「?」

さっさともう一つの爆弾が置いてある所へ戻ろうと、振り返った時だった。
血……血の塊……赤い光の渦……パトカーの大群が、こちらに来るのが見えた。

 

 


   
川゚д川「ど、どうしてここがバレたの!?」

答えてくれる人はいない。
逃げようにも、道は無い。

川д川「!?」

その時パトカーの前に、一台の車が逃げるように走っているのが見えた。
どうやらパトカーはこの車を追っているみたいだ。
私を探してきたんじゃない。
良かった……。

川゚д川「良くない!」

警察が調べたら、ここにいた私がすぐに疑われる。
近くに置きっぱなしにしてある、最後の爆弾も見つかってしまうだろう。
そうなればいい訳出来ない。

あの電車が脱線していれば、何十人もの人間が死んでいるはずだ。
私は極刑になるだろう。

 

 


   
こんなところで終わりたくない。
私はもっともっと高みに上れる。
“工作の女王”として、みんなに褒めたたえられたあの時代に戻るんだ。

もう会社の雑用なんて嫌よ。
工場の生産ラインに組み込まれるなんて嫌よ。
私の手先は芸術なの。
人間の理解を超える、神域なのよ!

津波のようなサイレンの音。
私を飲み込むランプの光。
これが私のフィナーレだなんて。

この汚濁にまみれた世界で、自分の存在を証明したかった。
生きているという事の実感を確かめたかった。
ただそれが、爆弾というだけだったのに。

私は、タイマーの時間を変えた――。

川゚д川「ああああああああ――――!!!!!」

 

 

 


  

 

(メ`ωメ)「うおおおおおお――――――――――!!!!!」

(#゚A゚)「行けえええ――――――――――――!!!!!」

加速し狭まる視界に、女の影が見えたような気がした。
次の瞬間、車は高架橋を飛び出し、月夜の空に雄々しく舞う。

(メ`ωメ)「――――!!――――――――!!!」

(#゚A゚)「――――――――――!!!!!」

無重力になった車内で、二人は吠え続けていた。
少しでも気を緩めたら、気絶してしまいそうだった。

 

 


 

 


前のページへ] 戻る [次のページへ