( ^ω^)ブーンは装術士のようです 九話後編 前のページへ] 戻る [つづく]

     九話「歌姫とマネージャーと怪しい兄弟」(後編)



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:21:39.79 ID:BvZkVppG0 [2/39]
(;´_ゝ`)「な、なんだあいつは!?」

弟者のピンチとワタナベの豹変に動揺した兄者は、ドクオを乱暴に放り投げる。

(;゚A`)「ぐっ!」

地面に落ちた衝撃で意識を取り戻したドクオの目に、
先ほど兄者が見たのとほぼ同じ光景が飛び込んでくる。

从 ゚∀从「ハッハッハ!いーい様だな、さっきまで散々粋がってた癖によ!」

(´<_`;)「く、来るな……来るんじゃない!」

(;´_ゝ`)「おい、弟者!しっかりしろ!」

(;'A`)(お、俺は夢を見ているのか……?)

少し前までとはまったく違う状況に戸惑い、目を覚まそうとして頭を叩く。
痛みだけが残ったがそれによりこれが紛れもない現実であると理解した。

(;'A`)「ど、どうなってるんだ……?」

思わずドクオが漏らしたつぶやきに兄者は心の中で悪態をつく。

(;´_ゝ`)(クソったれ、聞きたいのはこっちだ)


9 名前:ちなみにしばらくは書き直し前と同様になります[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:24:40.21 ID:BvZkVppG0 [3/39]
( ´_ゝ`)(だが今はとにかく逃げるしかない)

兄者は懐に隠し持っていた何かを地面に叩きつける。
するとそこから煙が溢れだし辺り一帯を包んでしまった。

从;゚∀从「なにっ!……おい立会人、こういうのはありなのか?」

立会人「登録外の第三者の介入が認められない限りはどんな行動でも戦略の一つとして扱います。
ただし、ギブアップ後の攻撃はどちらからでも反則とみなします」

返答を聞いたワタナベは不敵な笑みを浮かべ、手の平を空へ向ける。

从 ゚∀从「そうかい、そんなに隠れたければお望み通りにしてやるよ!」

从 ゚∀从「“暗転(ブラックアウト)!”」

ワタナベが叫んだ瞬間、ドクオの目の前が真っ暗になる。

(; A )「こ……これは!?」

(; _ゝ )「なっ……にぃ!」

( <_ ;)「うわぁぁあああああああああ!やめろ!止めてくれぇぇええ!」

兄者の声と弟者の絶叫が聞こえてきたということはこの場の全員が同じ状態というわけか。
少し安心するが、こんな状況の中どう立ち回れば良いのだろう。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:25:59.83 ID:BvZkVppG0 [4/39]
戸惑っていると、何者かから肩に手を置かれた。

('A`)「……!从 ゚∀从「しーっ、ワタシだよ。ワタシ」」

('A`)「お前は……!ワタナベ、さん?」

从 ゚∀从「厳密に言うと違うけどな。後もう少し声を抑えて話せ」

疑問に思ったが、とりあえず言われた通りにする。

从 ゚∀从(この術は視界を遮る事が出来るが、その他は管轄外なんでね)

('A`)(ってことは、これはワタナベさんが?)

从 ゚∀从(そゆこと。今の内に休憩しとけよ)

ほう、と思わず感嘆の息が漏れる。自分はとてもこんな事は出来ない。

('A`)(って……ワタナベさんは魔術も使えるのか?)

从 ゚∀从(ワタシはな。『お前の知ってるワタナベ』は使えない)

('A`)(は?)


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:28:07.58 ID:BvZkVppG0 [5/39]
先ほどから自らを他人の様に語るワタナベに疑問を隠せないドクオ。
聞こうかどうか迷っていると、ワタナベの方から口を開く。

从 ゚∀从(ワタシは、ワタナベの『別人格』だ。詳しくは後でワタナベに聞いてくれ)

(;'A`)(は、はあ……)

結局よくわからないがどちらにせよ今は聞くべき時ではないのは把握した。

('A`)(で、これからどうしようか)

こう暗くては奇襲を仕掛けるのも一苦労だ。
そう考え尋ねてみたのだが、

从 -∀从(じっとしとけ)

(;'A`)(えっ!?)

なんで、と聞く間もなく言葉は続く。

从 ゚∀从(お前も思ってる通りこの暗さじゃ相手の位置もわかんねーよ。
わざわざ動き回ってこっちの場所を相手に教えることはねえ)

('A`)(え、でも)

ワタナベはこちらの位置を把握していたはずだ。
でなければドクオをああやって見つける事は出来ない。


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:29:55.19 ID:BvZkVppG0 [6/39]
从 ゚∀从(ワタシは慣れてるからな。でもお前は違うだろ?)

じゃあワタナベさんだけでも、という言葉は飲み込んだ。
いくら自分より強いとはいえ女性を一人で戦わせる訳にはいかない。

从 ゚∀从(それにこの魔術使ってる間ワタシは他の術使えねえから)

まず向こうから仕掛けてくるような事はないだろうが万が一の時のために待機していて欲しい、ということらしい。

('A`)(わ、わかった)

从 ゚∀从(よし、そしたらこいつ噛んでろ)

('A`)(これは……?)

从 ゚∀从(ミントだよミント。知らないわけじゃないだろ?)

('A`)(ああ……)

知ってはいるものの生のままの実物を見るのは初めてだ。

('A`)(あんまりこういうのは好きじゃないんだけどな……)

そうは思ったが断るわけにもいかないので噛んでみる。

('A`)(……!)


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:31:12.28 ID:BvZkVppG0 [7/39]
从 ゚∀从(どうだ。すっきりしたろ?)

('A`)(う、うん)

ワタナベの言う通り、先ほどまで感じていた倦怠感が少しずつ薄れていく。

从 ゚∀从(ワタシは魔術を失敗したときいつもこれ噛んでんだ)

('∀`)(なるほど……ありがとう)

从*゚∀从(べ、別にお前のためじゃねーし。足引っ張られたら困るだけだし)

態度こそぶっきらぼうであるものの根っこは普段のワタナベと同じなんだろうな、
と思うと自然と笑みが浮かんだ。

从;*゚∀从(わ、笑ってねーで目も閉じとけ!もってかれた分の魔力は回復した訳じゃねーんだから!)

(-A-)(ご、ごめん)

指摘されてあわてて目を閉じると考えが浮かぶ。

(-A-)(『普段の』……俺は彼女の『普段』をどれほど知っているというんだろう)

後ろ向きな考えを頭を振って打ち消し、心を落ち着ける事に専念する。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:32:39.33 ID:BvZkVppG0 [8/39]
( <_ ;)「く、暗いのは嫌だああああぁっ!光を、光をくれ!奴を、魔物を光で追い払わないと!」

( ´_ゝ`)「落ち着け、弟者。魔物なんていやしない」

( <_ ;)「うそだ!兄者はうそをついているんだ!そこらじゅうを魔物がうろついている!」

子供のように闇の恐怖におびえる弟者を見て、兄者は内心舌を打つ。

( ´_ゝ`)(『魔曲(ジョック・ロック)』、存在しない“魔物”の幻覚を見ると言われる魔術……
あんなかわいらしい顔してえげつねえことしやがる)

これだから闇の魔法は厄介なんだ、と考えるもまずは弟者の方をなんとかしなければと思い直した。

( <_ ;)「はぁ……!、はぁ……!」

呼吸すらままならない弟者になるべく穏やかに話しかける。

( ´_ゝ`)「なあ弟者、お前のまわりにいる魔物よりマジギレした母者の方が数百倍恐いとは思わんか」

( <_ ;)「……確かに恐い、恐いが、奴らの恐さは母者とも違うんだ!
……自分がっ、自分が喰われて無くなってしまいそうで!」

その言葉を聞いたとき、厄介だと感じる前に大きな喜びを抱いた。
自分の待ち望んだ相手と戦っているという事実に口の端を上げざるを得ない。

( ´_ゝ`)(ただ恐怖を味わわせるだけでなく『質』すら自在に操るとはな……)


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:35:04.55 ID:BvZkVppG0 [9/39]
兄者は変態である。
自分より強い者を工夫して倒すことは勿論、それに叩き潰されることにすら快感を覚えることがある。
彼には一族の歴代最強と言われる母親がいる。

彼がこの国に来る前、「本気の母者と戦いたい」という理由で自分の良識のギリギリの悪行を働いてみたことがあった。
当然母親は怒り、彼は手も足も出せずに打ちのめされた。
だが気を失った彼はこの上ない恍惚の表情をしていたという。

彼が普段ふざけた態度をとっているのは相手を挑発し怒らせるという側面もあってのことだ。
さて、と思考を切り替える。
母と戦った時も他の強敵と戦った時も、いつも弟が一緒だった。

( ´_ゝ`)「弟者よぅ、お前は心配し過ぎなんだって。今まで色んなこと俺達二人で乗り越えてきただろ?」

( <_ ;)「だが、今回ばかりは……( ´_ゝ`)「俺達はなにもんだ?言ってみろ弟者」」

(´<_`;)「サ……サスガ兄弟」

( ´_ゝ`)「だろう?ならばこんなところでつまづいている訳にはいかんのだ」

( <_ ;)「くっ……確かにその通りだ。ここで退いてはサスガの名折れ……」

弟者は真面目だ。こう言えば絶対に立ち上がると兄者は確信していた。

( ´_ゝ`)(これでとりあえずは大丈夫だな)

今回も当然、最後まで付き合ってもらう。
心の中でそう呟いた。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:38:19.64 ID:BvZkVppG0 [10/39]

――――――――――――

从 ゚∀从(そろそろ休憩時間も終わりだ)

目を閉じ、心と体を休めていたドクオにワタナベがささやく。
魔術の効果が消えつつあるようだ。

从 ゚∀从(おそらく奴らは先ほどまでと同じようにこっちを分断してくるだろう)

(;'A`)(ど、どうする?)

从 ゚∀从(どうもしない。おとなしく分断される)

('A`)(どうして)

从 ゚∀从(一人を弱らせたといってもこっちは急造のコンビだ。長年やってる向こうには敵いやしねえよ)

从 ゚∀从(だったら一対一である程度相手の出方を予測出来たほうがいい。異議はあるか?)

首を横にふる。

从 ゚∀从(よし。じゃあワタシは兄のほうを相手にする。弟は風の装術で見えない打撃を放ってくるから気をつけろ)

('A`)(あ……、えっと兄者って奴はなんか鎖のついた武器と雷を使ってくる)

从 ゚∀从(ああ、大体は見てた。とりあえずまかせろ)

(;'A`)(あ、ああ)


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:40:01.03 ID:BvZkVppG0 [11/39]
从 ゚∀从(そー固くなんなって。そっちはまかせたぞ)

('A`)(うん……)

そうこうしている内に足元のあたりに光がさしてきた。

从 ゚∀从(こっからはおしゃべりはナシだ)

返事の代わりに頷きを返す。



('A`)

从 ゚∀从

闇が明けるとともに、ふたたび戦いの火蓋が切って落とされる。

( ´_ゝ`)

(´<_` )


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:41:08.69 ID:BvZkVppG0 [12/39]
兄者弟者の二人が視認出来るようになった瞬間にワタナベは駆け出す。

从 ゚∀从「ブラック・ペッパー(黒胡椒)!」

兄者たちの視界が明滅する。そして怯んだ一瞬の隙をつき兄者へ攻撃を仕掛ける――
が、予測していたらしくかわされてしまう。
それを見て、兄者に追撃を加えようとしていたドクオは標的を変更する。

(´<_`;)「ちっ!」

少々大袈裟に飛び退いた弟者を追う。
させまいとする兄者にふたたびワタナベが殴りかかる。

从 ゚∀从「はじめからこうする予定だったんだろ?のってやるよ、かかってこい」

( ´_ゝ`)「……食えない奴だな、あんた」

从#゚∀从「お互い様だっつうの!」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:42:43.05 ID:BvZkVppG0 [13/39]
ある程度離れた所で止まった弟者とドクオ。
結果的には兄者達の思惑どおりの形になったが、どう立ち回るか。

(´<_` )「お守りがついてなくて良かったのか?」

('A`)「あんたこそ、兄貴と一緒じゃなくて大丈夫なのかよ?」

(´<_` )「心配には及ばんよっ!」

言いながら攻撃を仕掛けてくる。すんでのところでかわし、悪態をつく。

(#'A`)「くそっ!」

反撃を試みるも、剣の一振りにより軌道がそれて無力化された。

(;'A`)(攻撃にも防御にも自由自在かよ!)

風の魔法の力に驚愕する。
当然同じようなことはドクオも出来る筈なのだが習得していないのでどうしようもない。
それに加え戦闘経験でも他の三人に大きく水をあけられているゆえに弱気になるのは当たり前と言えよう。

( A )(わかってんだ……そんなこと言い訳にならないってことは)

しかしそれでも奮い立つことは出来ず、どうにか攻撃をかわすのが精一杯だ。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:44:29.70 ID:BvZkVppG0 [14/39]
弟者は風での攻撃と兄者も使っていた飛び道具を併用してくる。
かなりの数を持っているらしく、惜しみなく投げ込んでくるために反撃の機会すらない。

(;'A`)(隙を……駄目だっ!)

斬りつけてもいなされ、かわされ、反撃をくらう。
積極的に攻めてくる分、兄者よりも手強い。

(;'A`)(こうなったら距離をとって逃げ続けるしかない……!)

そしてドクオは一つの選択をする。
後ろ向きだが実力で劣っている相手に対して取れる行動は多くない。
賢明な行動をとったと言える――――が。

( <_  )

その相手がそんな行動を想定していないわけがない。
ドクオのいる場所へ正確に飛び道具が撃ち込まれる。

(;'A`)(な……あの距離から威力がまったく落ちないなんて!)

避けながら見てみると飛び道具を投げた後に剣を振っているようだ。

('A`)(だが、金属音はしなかった。それに……)

あんな短い刃で打ったところでドクオの位置まで正確に届かせられない筈だ。
ここまで考えてドクオに一つの答えが浮かぶ。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:45:42.55 ID:BvZkVppG0 [15/39]
('A`)(ま、まさかまた風の力か!?)

ドクオの推測は当たっていた。
弟者は風をカタパルトのように扱い飛び道具を射出していたのだ。
形状もよく見てみると兄者のものとは違い、追い風を受けやすいようになっていた。

(´<_`#)「シッ!」

(;'A`)「くそっ!」

しかしタネがわかったところでどうしようもなく、逃げ続けるしかなかった。
そして、それもすぐに終わることとなる。
ドクオの逃げようとした先に飛び道具が撃ち込まれ、方向転換しようとした隙をつかれ足をすくわれる。

(;゚A`)「――しまっ!」

派手にすっ転んだドクオが立とうとするのを飛び道具で牽制される。

(´<_` )「追い詰めたぞ」

(;'A`)「ぐっ…………!」

なんとか抵抗しようとナイフを構えたドクオに異変がおこる。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:48:05.87 ID:BvZkVppG0 [16/39]
(;'A`)(なんだ!?……呼吸が、苦しい!)

攻撃をよけるために走ったせいだけとは考えられないほどに。
そしてその答えは、弟者からもたらされた。

(´<_` )「すぐに楽になるさ」

(;゚A`)「な……にッ!」

疑問が形になる前にドクオは上からものすごい力で押さえつけられる。

(;゚A゚)「かはっ……ど、どうなって」

(´<_` )「下降気流が発生するように気圧をいじった」

返ってくるとは思わなかった呟きに応答する弟者。

(´<_` )「大規模なものであれば木を薙ぎ倒す程の力がある。君の首の骨は折れなかったが十分だろう?」

自分の力を誇示するようにペラペラと喋る。
弟者はいつもこうして相手から戦意を奪うようにしているのだがドクオは知るよしもない。

(´<_` )「お喋りはここまでだ。君のとどめは兄者に刺して貰うよ」

動けないドクオの頭部に衝撃が走り、彼は意識を手放した。


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:49:36.91 ID:BvZkVppG0 [17/39]
一方、兄者とワタナベ。
接近戦を仕掛けるワタナベを鎖で絡め取ろうとする兄者。
両者ともに魔術は使わずに様子見をするつもりのようだ。

と、ワタナベは足を止めて兄者に話しかける。

从 ゚∀从「くないに煙玉、そして鎖鎌……アンタはニンジャ、だな?」

( ´_ゝ`)「そういう君はジョナサン・ジョースター」

从 ゚∀从「は?……おい、適当なこと言ってごまかそうとしても無駄だぞ」

ワタナベの指摘を受けた兄者は軽くため息をついて言う。

( ´_ゝ`)「ふー。ばれちまっちゃあ仕方ねえな。……アンタアクアリウムの知識があるのかい?」

从 ゚∀从「親戚筋にちょっとな」

( ´_ゝ`)「ま、俺の正体に気付いても俺に勝てる訳じゃないがな……ところで」

( ´_ゝ`)「魔術の準備は終わったか?」

从 ゚∀从「……気付いてやがったか」

( ´_ゝ`)「そりゃ不自然に話しかけてくれば気付くさ」

こちらも準備は終わったと言わんばかりに兄者は指先をワタナベに向ける。


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:51:34.24 ID:BvZkVppG0 [18/39]
魔術が放たれんとした瞬間、ワタナベは身を屈めて兄者に突撃する。
アッパー気味に繰り出された拳をかわしたと思った時にはワタナベの回し蹴りが兄者の側頭部に叩き込まれている。

( ´_ゝ`)「ふう……間一髪」

从#゚∀从「……ちぃっ!」

兄者の頭部とワタナベの足の間に差し込まれたのは束ねた鎖だった。

( ´_ゝ`)「素手で受けたら骨がくだけるからね」

从 ゚∀从(とっさの判断にしちゃあ反応が良すぎる……はなっから魔術を使うとは思ってなかったってことだ)

まんまと兄者の思う通りに動かされたようで癪にさわる。
それにやはりこちらの能力を見極めているような立ち回りが気にかかるところだ。

从 ゚∀从(考える隙なんぞ無くしてやる)

魔術師相手ならやはりインファイト中心に攻めるのが常道だろう。
再び突撃し、今度は体全体を使って大振りのパンチを放った。
勿論かわされるわけだがすかさず小振りのパンチを当て、そののちに距離をとる。

( ´_ゝ`)(……?)

兄者はワタナベの行動に違和感を持ったが、それが形になる前にワタナベの拳が眼前に迫ってくる。

(;´_ゝ`)「……っ!」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:53:43.51 ID:BvZkVppG0 [19/39]
紙一重でよけた兄者の足に衝撃が走る。

( ´_ゝ`)(今度は足か……!)

それに関して思考を巡らせる暇はない。
すぐに強烈な打撃が降りかかってくる。

(#´_ゝ`)(なめるなっ!)

回避しつつカウンター気味に攻撃を合わせようとするが、そのまま突き飛ばされる。

(; _ゝ )「がはっ!?」

地面に倒れこんだ時はじめて当て身を食らったのだと気付く。

(;´_ゝ`)(なりふり構わずかっ!)

すぐさま起き上がり、攻撃に備える。
ワタナベはちょうど兄者から距離を取ったところのようだ。

(#´_ゝ`)(ちょこまかと!)

くないを数本投げつけ、動きを制限しようとするが意に介さず突っ込んでくる。

(#´_ゝ`)(させるかっ!)

パンチを繰り出してきた腕を掴む。
ようやくワタナベを捕らえた。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:55:37.40 ID:BvZkVppG0 [20/39]
だが先ほどのように突き飛ばされては拙い。
すぐに腕を極めよう――そう考えた瞬間兄者の視界が空で埋め尽くされる。
投げ飛ばされたのだと気付いた時にはもう遅く、受け身も取れずに叩き付けられた。

(;#゚_ゝ`)「……っはあっ!」

从#゚∀从「っだらああああああああぁぁぁ!!」

間髪入れずワタナベは兄者の胸部にめがけてかかと落としを繰り出す。

(;´_ゝ`)(防御が……間に合わん!)

とっさに出した両腕では受け止めきれない衝撃をもろに食らってしまった。
腕の骨だけでなく肋骨や背骨も軋む。

(; _ゝ )「ぐ…………」

もはや勝敗は決したかに思われるがワタナベは油断せずにその場を離れようとする。
しかしそれは叶わない。

(; _ゝ )「……今度こそ、……捕らえたぞ」

兄者が全身でワタナベの足にしがみついていた。


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 21:57:40.75 ID:BvZkVppG0 [21/39]
振り払おうとするが、出来ない。
先ほどのダメージなどなかったかのように強い力で掴まれている。

从;゚∀从(こいつどんだけタフなんだよ!)

(#´_ゝ`)「逃がさん……!」

从;゚∀从「くっ……」

蹴りは封じられているのでパンチでなんとかしようとするが、
上半身しか動かせない上に距離も近いので大した威力にはならない。
兄者は少しずつ上にのぼり、とうとうワタナベの肩を掴み相対した。

从;゚∀从(ちっ!)

振りきって逃げようとするが、既にそれは兄者の想定内の行動である。

(#´_ゝ`)「『雷光の槍(サンダースピア)!』」

从; д从「ぐああああああぁぁっ!!」

全身に走る衝撃に思わず倒れこむ。
だがいつの間にか近づいていた兄者に襟首を掴まれてしまう。

从; ∀从「ぐっ…………」


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:00:59.94 ID:BvZkVppG0 [22/39]
( ´_ゝ`)「俺としてはこのままお持ち帰りしたいところだが……
決闘は決闘としてケリをつけねばな。ギブアップの意思はあるか?」

指先を向けながら問いかける兄者にしかし答えないワタナベはゆっくりと首を横にふる。

( ´_ゝ`)「……なら仕方ないな」

兄者がそう呟いた瞬間雷光がきらめいてワタナベを貫いた。

从; ∀从「がっ!!……あ…………」

もはや叫び声をあげる元気すらないのかぐったりとうなだれてしまった。

( ´_ゝ`)「終わりだ」

ワタナベの首を少しずつ締め上げて止めをさそうとする。
だがその腕に激痛が走った。
見れば兄者の腕をワタナベがとんでもない力で握りしめている。

(;゚_ゝ`)「っぐぅぅうう!?」

从; ∀从「……まだ終わってねえぞ……!」

(;´_ゝ`)「…………!」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:02:29.02 ID:BvZkVppG0 [23/39]
なんとか抜け出したとはいえダメージは残っていた。
ふらつきながらどうにか立ち上がる。

从;゚∀从「はぁ……はぁ……」

( ´_ゝ`)(驚いたな。どこにあんな力が)

対して余裕のある兄者はゆっくりと考えながらワタナベに近づいていく。
相手は手負いだ。なにをしてくるかわからない。
ふと、兄者の視界の端に映るものがあった。

( ´_ゝ`)「!、ふぅ……どうやら俺達の勝ちのようだぜ?」

从#゚∀从「何勝手に決めてんだ……!」

(´<_` )「こいつを見ればわかるさ」

ワタナベの問いに答えたのは弟者だった。
言った後に何かを蹴り飛ばす。

从;゚―从「…………!」

ワタナベが見たのはボロボロのドクオだった。
弟者がここにいる時点で予測は出来ていたがやはり実際に見ると驚く。
思わず歯を食いしばってしまっていた。


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:04:20.11 ID:BvZkVppG0 [24/39]
( ´_ゝ`)「そんなわけで2対1だ。加えてそこの少年をどうするかは俺達が選べる立場にある」

( ´_ゝ`)「ま、俺はもうちょい遊んでもいいんだけどね……」

弟者の方をちらっと見ながら言う。
弟者がさっさと決着をつけろとせかしているのだろう。

(´<_` )「さあ、どうする?」

从 ∀从「……ップ、だと?……たら、……前が……」

从 ∀从「………わかってる。……人だって………でもワタシの……在異議はお前を………」

弟者の問いかけにまったく反応せず、何事かをブツブツ呟いているワタナベ。

(´<_`#)「おい、ふざけて从# ∀从「ああぁぁああうるせえ!!お前もこいつも助ける!それでいいだろ!?」」

かと思えば突然頭をかきむしり叫び声をあげる。
弟者に対してではなく独り言のようだが何故相手がいるような口調なのだろうか。

从# ∀从「おい、てめえら」

きっと兄者達をにらみつけ、啖呵をきる。

从#゚∀从「ワタシを追い詰めたこと、後悔すんなよ」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:05:51.86 ID:BvZkVppG0 [25/39]
ワタナベがそう言い終わった瞬間に、ものすごいプレッシャーが彼女より放たれる。
呪文を唱えているようだが……

(;´_ゝ`)(!、なん……だ……これっ!)

( <_ ;)「うぐっ、ヒュー……ヒュー……」

弟者は過呼吸に陥り、声も出せずに全身を守るように屈める。
その間にもワタナベのプレッシャーは高まっていき、彼女の背後に闇が集まっていくのがはっきりとわかる。

(;´_ゝ`)(……あ……れは……いったい!?)

ワタナベの背後に集まった闇が、何かの形をなしていく。
それは獣のようにも、人のようにも見えた。

( <_ ;)「ま……オ…………う……?」

全身の震えが止まらず、気を失いかけている弟者の絞り出したような疑問の声は、
しかしワタナベの魔術を正しく形容していた。

从#゚∀从「そう……こいつは魔王だ……!命が惜しくなきゃかかってこいよ!」

呪文を唱え終わったらしいワタナベは倒れているドクオに何かを囁くと、再び二人の方をむいた。


53 名前:ここから書き直し分です[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:17:06.45 ID:BvZkVppG0 [26/39]
(;´_ゝ`)「どえらいもん出してくれたな……望むところだ、やってやる」

冷や汗をかいているが挑戦的な態度は崩さずにゆっくりとワタナベに向かってくる兄者。

从;゚∀从(こいつマジか……!?正気じゃねぇ……)

死に急ぐかのような兄者の行動に気圧されるが、ワタナベの腹は既に決まっている。

从#゚∀从「そんなに死にてえなら望み通りにしてやるよ!
……食らいな!“魔……(アーチ)”……ッ!?」

二人の方に手のひらを向け、今まさに解き放たれようとしていた闇が突然動きを止めた。

从#゚∀从「……なんのつもりだ!ワタシはお前を……」

またもや『誰か』と話し出すワタナベ。
言い争いになっているようだ。

从; ゚∀从「……くそ!お前は甘ちゃんすぎんだよ!黙って見てろ……クッ!」

ワタナベはとうとう膝をつき、止まっていた闇も少しずつ拡散していってしまう。

从 ∀从「……くそったれ」

地面に手をついたワタナベがそう呟いた時にはもうすべての闇が消失してしまっていた。


54 名前:すみません準備に手間取ってました[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:20:29.78 ID:BvZkVppG0 [27/39]
( ´_ゝ`)「……でかいのはもう終わりか?」

从; ∀从「……ああ、悪いな……品切れだ。好きにしな」

( ´_ゝ`)「……名残惜しいが仕方ねえな。少年が戦闘不能。
アンタが戦意喪失で俺達の勝ち……と言いたいとこだが」

兄者の振り向いた先にはドクオが立っていた。
どうにかこうにか立っているようで、足どりは軽いとは言えない。

从; ∀从「なっ……馬鹿野郎が!……ぐはっ!」

声を上げたワタナベは側頭部を殴られ気を失った。
ワタナベを地面に降ろし、兄者はドクオに話しかける。

( ´_ゝ`)「タイミングがいいのか悪いのか。少年はそんな状態で俺に挑むのか?」

(# A )「当たり前だろうが……!」

( ´_ゝ`)「ふん、その心意気やよし。……痛い思いをしても責任はとらんぞっ!」

そういって兄者はドクオに向かい駆け出す。


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:22:53.26 ID:BvZkVppG0 [28/39]
ドクオは兄者めがけナイフを投げる、ふりだけをして兄者を飛び退かせる。
ドクオの狙いは兄者の後ろで気絶している弟者だった。
だが弟者にナイフをつきつけようとした時、兄者が警告する。

( ´_ゝ`)「おっと、そういうのは無しにしようぜ」

指先をワタナベのいる方向に向けつつ喋る。
ドクオが弟者を攻撃するより兄者が魔術を使う方がおそらく早いだろう。

( ´_ゝ`)「言っておくが戦闘不能の相手を攻撃するのは基本的にはマナー違反だ」

兄者の言う通り決闘では戦闘不能に陥った相手を更に傷つけることは
(ルールには抵触しないが)暗黙の了解として不可になっている。

そしてその相手を(故意であるかどうかに関わらず)
殺害してしまった場合ギルドのブラックリストに記載されることとなる。

( ´_ゝ゚)「……という訳だ。まあその場合俺が地の果てまで追っていってどちらも殺すがな」

そう言いながら壮絶な表情をする。
気圧されたドクオは思わず後ずさってしまうが踏みとどまる。

( ´_ゝ`)「……ま、正々堂々やろうや」


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:24:57.98 ID:BvZkVppG0 [29/39]
(#´_ゝ`)「シッ!」

息を吐き出して兄者はくないなどの飛び道具を投擲する。
今までどこに隠し持っていたのかというおびただしい数を。
だがドクオはそれに怯むことなく飛び込んだ。

(;´_ゝ`)「なにっ!?」

流石にこれには兄者も度肝を抜かれる。
だが地面に倒れこんだドクオはすぐさま起き上がり、腕に刺さったくないを引き抜いた。

( ´_ゝ`)(なるほど、下手に逃げてダメージを負うより結果的に軽傷ですんだ訳だ。
それにしても――)

先ほどまでのドクオならば考えられないような大胆な行動だ。
彼にいったい何が――

(#'A`)「ッ!!」

兄者の思考が固まる前にドクオは兄者の脇腹めがけナイフを突き出していた。
とっさのことに判断が遅れるも紙一重でかわし間合いの外まで逃げる。

(;´_ゝ`)(っあ、危ねぇ!殺る気満々だっただろ今の!)

態勢を整えるために飛び道具を散らばらせて牽制する。


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:27:14.44 ID:BvZkVppG0 [30/39]
防具を服の中に着込んでいるために最悪死ぬことはないだろうがそれにしても危なかった。

( ´_ゝ`)(カウンター合わせると思わなかったのかねえ。いや……)

自分の忠告したことが今になって返ってきただけか、と省みる。

( ´_ゝ`)(少年の纏ってる空気がさっさと全然違うな。別人といってもいいぐらいに)


アクアリウムのことわざ(正確にはサンゴクから伝わってきたものだが)に
「窮鼠猫を噛む」というものがある。
兄者はそれと今の状況を重ね合わせて思わず舌なめずりをしていた。

( ´_ゝ`)(面白い……やれるもんならやってみろ。
ここからはうだうだ考えるのはやめた)

ドクオが捨て身で攻めてくるならばこちらもそれに応えようではないか。


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:30:00.90 ID:BvZkVppG0 [31/39]
(;#'A`)「……ハァッ!……ハァッ!」

繰り出される攻撃をギリギリでかわし続けるドクオはある一つの考えを抱いていた。
だがまだ結論を出すには早い、決定打が欲しい。

('A`)(そのためにも)

とにかく前に出て攻撃を仕掛けなければ。
しっかりとナイフを握り直し兄者に向かって突っ込む。

(#´_ゝ`)「おらっ!!」

兄者は先ほどと同じように全方位に飛び道具を散らしてくる。

(#'A`)(だけどさっきほどじゃない……だったら!)

ドクオは先ほどとは違い余裕を持った体勢でかわせると思いつっこむ。
が、かわしたと思った次の瞬間にはすでに第二波が放たれていた。

(;゚A゚)「―――――っ!!」

とっさに体の中心を守ることしか出来ずにまともに攻撃を受けた。

(; A )「ぐ…………」

堪えきれずに膝をつきそうになったところに更に追い討ちをかけるように第三波がせまる。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:31:59.08 ID:BvZkVppG0 [32/39]
が、それの命中を待つことなく兄者はその場を離れざるを得なかった。
なぜなら――――

(# A )「うおおぉぉぉおおおお!!」

ドクオが両腕に刺さったくないを引き抜き、
体の正面に投げられた物を全て防ぎきり更に反撃を加えて来たためである。

( ´_ゝ`)「…………」

じりじりと近づいていくドクオを鎖鎌で牽制しつつ距離をとる兄者だが、
一連の行動がドクオの疑念を確信に変えてしまった。

('A`)(間違いない……『兄者には今使える魔力がほとんど残っていない』!)

止めを刺せる筈の状況で魔術を使わないということはそういうことだろう。
誘いかという考えもよぎったがことここに至ってわざわざリスクを背負う必要などどこにもない。
それにもしそうならあれだけ執拗に飛び道具を投げ込む訳がない。

('A`)(いや……たとえ罠だとしても結局同じことだ。相手の懐に到達しなけりゃ勝ち目はない)

致命傷こそ避けているものの出血や痛みは相当にある。
このまま立っているだけでは遅くない内に兄者の勝ちが決定するだろう。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:34:21.03 ID:BvZkVppG0 [33/39]
兄者に一矢報いる為には前に進まねばならない。
たとえ負けたとしても。

( A )(……違う)

負けないためにも。

(#'A`)(違う!)

自らの心の声を首を振って掻き消す。
かわりに頭の中に浮かんでくるのはおぼろげな意識の中で聞いた『彼女』の言葉だった。

从 ∀从『お前は全部終わるまで休んでろ。あとはワタシがなんとかする』

(# A )(女の子にあんなこと言われて、黙って寝てられるかよ……!)

負けでも引き分けでもなく勝利に向かうために一歩を踏み出す。
体の中から力をかき集めて右手に集中させた。

(#'A`)(これで終わりにしてやる!)

回収したくない、自らの持っている投げナイフを兄者めがけてありったけ投げ込む。
当然避けられるに決まっている。
そしてドクオの打つ次の手についても兄者はおおよそのあたりをつけているはずだ。

(#'A`)(それがどうした)


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:37:23.73 ID:BvZkVppG0 [34/39]
わかっていてもかわせない攻撃をすれば良いのだ。いや、意地でも当ててみせる。
そう決心した途端右手から力が溢れ出すような感覚に襲われた。
口から自然に出てくる言葉を唱え、右手を振り下ろす。

(#'A`)「吹き寄せろ勝利の風!『破壊の斬撃(ブレイクスラッシュ)!』」

前方に駆けながら放たれたドクオの魔術は、目と鼻の先にいる兄者へ一直線に向かってゆく。

(;´_ゝ`)「……チッ!」

たとえ失敗したものだとしても今のドクオには、
一瞬の隙ですら危ういと考えた兄者はギリギリのところでこれをかわす。
だがドクオは兄者の回避後の隙を狙いそこへナイフを投げ込んだ。

(;´_ゝ`)「……ッ!」

(#'A`)(このギリギリのタイミングなら……っ!)

当たらない訳がない。そう思った。
しかし……

(#゚_ゝ゚)「っだああああああああ!」

無理矢理体勢を変えた兄者は地面に思い切り手をつき、宙に舞う。

(;゚A゚)「っな……!?」


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:40:11.11 ID:BvZkVppG0 [35/39]
(#´_ゝ`)(実に惜しかったな、少年!だがこれで終わりだ!)

全身の残った魔力を人差し指に集中させた。
正真正銘最後の攻撃だが当てるだけで十分だ。

(;゚A゚)「…………!」

ドクオは半ば呆然と兄者が上空に飛び上がる姿を見ていた。
しかし紫の光が兄者の指先に集中すると弾かれたように思考を再開させる。

(;'A`)(くっ……そっ!!……動かないと!)

限界を迎えつつある足をどうにか動かし、兄者の射線上から逃れようとする。
だが向こうは三次元的にこちらをとらえている、どこまで逃げればいいのか……。

(#'A`)(だからって、諦めるかよ!わからねえならどこまでも逃げてやる!)

歯を食いしばってその決意をした瞬間、兄者がドクオの視界から消えた。

(; A )「!?……そ、そんな……」

まさか、兄者は空中ですら高速移動をすることが出来るのか。


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:43:52.73 ID:BvZkVppG0 [36/39]
ドクオを襲う絶望感。
攻撃のダメージを和らげようと体を丸める方法しかとれない。

(;#゚A゚)(クソ!クソ!クソ!!こんなんじゃ今までと同じじゃねえか……!)

自分をののしり奮い立たせようとするが気持ちとは裏腹に体は縮こまったまま動かない。
そのままの体勢を続けていると、いきなり肩を叩かれた。

(;゚A゚)「ッ!!」

逃げるように後ずさってナイフを構える。
だがドクオの肩を叩いたのは立会人だった。

(;'A`)「あ…………」

立会人「驚かせてすみません。
えー、兄者・弟者コンビが両者戦闘不能になったためワタナベ・ドクオコンビの勝利とします」

('A`)「…………え?」

なにがなんだかわからないが、勝ったらしい。
それを聞いた途端、緊張の糸が切れ一気に疲労がきて、

( A )「よかっ……た……」

ドクオは気を失った。


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:51:23.82 ID:BvZkVppG0 [37/39]
なぜドクオは勝利できたのか。
その一部始終を立会人は見ていた。

(#´_ゝ`)

(;#゚A゚)

兄者の魔術が放たれようとした瞬間、兄者は『横から殴り付けられたように吹き飛んだ』
ある種滑稽にも見えたが、これが決着の瞬間だった。
恐らくはドクオの魔術が兄者を追いかけ、絶好のタイミングで直撃したのだろう。

だがそれをドクオは知るよしもなかった。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 22:59:23.09 ID:BvZkVppG0 [38/40]
――――――――
「……オさん、…クオさん!」

沈んでいたドクオの意識を呼び戻したのは、やはりワタナベだった。

从'о'从「ドクオさん!目をさましてください!」

(-A-)「う、うーん」

从;ー'从「よかった!無事だったんですね!……本当によかった」

('A`)「……ああ、悪いな。心配かけた」

そこまで言うとワタナベはドクオに抱きついた。

(;*゚A゚)「…………!?」


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/25(日) 23:09:00.40 ID:BvZkVppG0 [39/41]
いきなりの行動に動揺するドクオだったが、次第に体の軋む音が大きくなっていくのを感じた。

(;゚A゚)「痛ッ……なにこれ痛ッ」

从;ー;从「こんなに傷だらけになって!無理しないでくださいよぉ!」

ワタナベの感情が増すごとにドクオを抱き締める力が強くなっていく。

(;゚A゚)「ちょ……やめ……締まってる……」

从;ー;从「うわぁぁぁぁぁあん!よかったよぉー!」

勝利はおさめたものの、安らぎを得るのはまだ先になりそうだ。
そう薄れゆく意識の中で考えたドクオであった。




9話終わり


前のページへ] 戻る [つづく] [コメントへ