( ^ω^)ブーンは装術士のようです 九話中編 前のページへ] 戻る [次のページへ


     九話「歌姫とマネージャーと怪しい兄弟」(中編)


2 : 忍法帖【Lv=6,xxxP】 : 2011/11/18(金) 21:48:31.76 ID:gC052Dcb0
从'ー'从「そういえば自己紹介もまだでしたよね。わたしはワタナベって言います〜」

('A`)「ああ、俺はドクオって言うんだ。これからよろしく」

握手を交わす二人。

('A`)「それで、これからどうしようか」

从'ー'从「とりあえずお宿を探しましょうよう」

(;'A`)「え、探してなかったの?」

从'ー'从「はい。お金なかったし貰ってから探せばいいやって」

('A`)(案外ギリギリだったんだな)

あのまま若者と一緒にいたり一人で置き去りにしていたらどうなったかを考えると、
マネージャーの話を受けて良かったとドクオはほっとするのであった。

('A`)「寝るだけのとこなら俺が見つけたとこの部屋がたぶん空いてるけど……一応鍵もついてるし」

女の子にはもっといい部屋の方がいいかな、と思いながらもたずねてみる。

从*'ー'从「えっ、そうなんですか〜。じゃあそこにしましょう!」

両手を合わせて喜ぶワタナベを見て、やっぱりどこか普通の女の子とは違うと思うドクオだった。


4 : 忍法帖 【Lv=6,xxxP】 : 2011/11/18(金) 21:51:32.97 ID:gC052Dcb0
('A`)「さて、そうと決まれば早速」

席を立とうとしたドクオの耳に可愛らしいお腹の音が聞こえた。
当然それはワタナベのお腹から発生している。

从*'ー'从「そういえば何も食べてなかったです〜」

('A`)「……それじゃあなんか食おうか」

やっぱり呑気なワタナベの言動にこれからの不安を少し感じた。

――――――――――

从*'ー'从「ふー、お腹いっぱい」

('A`)「じゃあ今度こそ行こうぜ」

会計に行こうとするドクオの腕を掴むワタナベ。

从'ー'从「わたしが払います」

('A`)「こういうのは男が払うもんだろ」

从#'ー'从「わたししか食べてないのにそれはおかしいです。わたしが」


5 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 21:59:11.12 ID:gC052Dcb0
ワタナベの言うことはしごくもっともであるのだが、男としては一度財布を出した以上引っ込める訳にもいかない。

('A`)「ここはマネージャーの言うことに素直に従うべきだよ」

从#'ー'从「そっちこそ雇い主の言うことはちゃんと守るべきですっ」

(#'A`)「ぐぐぐ……」

从#'ー'从「むむむ……」

両者とも頑固で、なかなか結論が出ずににらみ合いを続けている。

店員「悪りーっすけど痴話喧嘩なら会計済ませた後外でやっちゃくれませんかね」

(;'A`)「だ、誰が」

痴話喧嘩だ、と言おうとすると更に言葉を挟まれる。

店員「ま、そりゃ冗談としてもさっさと会計済ませてくれないと。とろとろやってっと後がつかえちまいますから」

後ろを示してそう言う。
確かに何人かの人が会計をしようと席を立っているようだ。

(;'A`)「す、すみません」

店員「はい確かに。これお釣りっす。今後ともバーボンハウスをよろしく」

从;'ー'从「あーっ!」

あわてて会計をすませたドクオにワタナベが抗議の声をあげるが無視して引きずっていく。


6 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:05:20.77 ID:gC052Dcb0
从'―'从「…………」

すっかりヘソを曲げてしまったワタナベの手を引いて宿まで連れていく。

(;'A`)「だから悪かったって。宿の代金はそれぞれ払うんだから良いだろ?」

从'―'从「これじゃどっちが雇い主かわかりません……」

('A`)「別にどっちが雇い主とかそんなにこだわることじゃないだろ?“持ちつ持たれつ”なんだから」

先ほどワタナベが言った台詞をそのまま返し彼女を宥めてみる。

从'―'从「……でもぉ〜」

('A`)「これから旅を続けるんだからこんな小さな借りくらい気にしなくていいさ。
どうしてもってんなら今後いくらでも返せる機会があるだろうし」

从'ー'从「……わかりました」

ようやく納得してくれたようで、やれやれと心の中で呟き改めて宿を目指す。


8 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:10:29.42 ID:gC052Dcb0
('A`)「おーし着いた」

宿主人「いらっしゃいませこんばんは。……おや、そちらの方は」

从'ー'从「ワタナベって言います、よろしくお願いします。部屋って空いてますか?」

店員「ええ、空いております。お嬢さんお一人でよろしいですか?」

从'ー'从「はい、お願いします〜」

('A`)「よし、それじゃあまた明日」

从'о'从「えっ?もうおやすみなんですか?」

('A`)「まあ、今日はもうする事もないしね。明日から本格的に旅が始まるんだし早めにさ」

从'ー'从「うーん、そうですかー。もう少し話したいことあったけど明日にします〜。おやすみなさい」

('A`)「ああ、おやすみ」

色々あったお陰でそれなりに疲れていたドクオは部屋につくなりベッドに倒れこむ。
ワタナベのこと、自分の行く先のことなどまだまだ不明な事が多すぎると思う。

('A`)「しゃーねーか」

旅はまだ始まってすらいないのだから。
そんなことをつらつらと考える内に瞼が重くなっていった。


9 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:13:25.32 ID:gC052Dcb0
ドクオの寝室に朝日が差し込み目が覚める。

(-A-)「くぁ……」

伸びをしたあと軽く体操を行い目を冴えさせる。

('A`)「ワタナベを起こしに行くべきなんだろうか」

孤児院に居たときは男だろうと女だろうとドクオが起こしに行っていたのだが、
同年代の女性を起こしに行くというのは初めての経験なので躊躇する。
しばし考えたあと、

('A`)「ま、いいや。その内起きて来るだろ」

そう決めて顔を洗いに行く事にした。

――――――――――

予想に反してワタナベはチェックアウトの三十分前になっても降りて来ない。

(;'A`)(おいおいギリギリまで寝てるつもりか?)

このあと朝食を食べに行くために時間を少し早めにしたのは確かだが、
よっぽど朝が弱いとかでなければ普通に起きられる筈だ。

σ(;'A`)「……仕方ねえな」

どうも起きて来る様子もなさそうなので起こしに行く事にした。


11 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:18:24.10 ID:gC052Dcb0
どうせ鍵がかかっているだろうと思い宿の主人にもついてきて貰っていたが、どうやら開いているようだ。
ドクオはワタナベの危機管理能力に不安を覚えながらドアを開ける。
ベッドを見てみると布団にすまきになっているワタナベがいた。

('A`)「おーい、ワタナベ……さん。時間やばいぞ」

ゆさぶったりして起こそうとするがなかなか起きない。
らちがあかないとばかりに布団の端を掴む。

(#'A`)「起き……ろっ!」

ワタナベがごろごろ転がりながら壁にぶつかる。

从×ー×从「あ痛ぁ!」

('A`)「目は覚めましたかお嬢さん?」

ワタナベは打った頭を擦りながら、ドクオに文句を言う。

从;ー;从「うぅ〜、ひどいですよぉ」

ドクオ「悪いな、ウチだとねぼすけは男女関係なく同じような目をみるんだ。さ、起きた起きた」

从;'ー'从「もう、わかりましたぁ」


12 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:22:30.42 ID:gC052Dcb0
またミスった、>>11のドクオ「」は('A`)「」です

無事チェックアウトを時間内に済ませ、朝食をとるために近くの喫茶店に立ち寄った。

从'ー'从「ドクオさんって家族多いんですか?」

('A`)「多いけど、なんで?」

从'ー'从「わたしを起こす時とかなんか慣れてるような感じだったし」

('A`)「チビがいっぱいいるからなかなか言うこと聞かなくてね」

从*'ー'从「へえ〜、うらやましいなあ!」

('A`)「そうかあ?」

ドクオからしてみたら食事の取り分は減るわ、毎日賑やか過ぎるわでたまったものではないのだが。

从*'ー'从「一人っ子だからそういうの憧れちゃいます」

('A`)(なるほど、そういうもんかねえ)


14 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:25:33.92 ID:gC052Dcb0
('A`)「その話はおいといて、まずどこに行くか決めようぜ」

从'ー'从「わたしはどこでもいいですよ〜」

(;'A`)「いや良くないだろ!?君にも目的があるんだから」

从'ー'从「あんまり急ぐ旅じゃないんです。強いて言うならおじいちゃんのいる首都に行きたいなあ」

('A`)「お爺さん待ってるんじゃないのか?」

从'ー'从「連絡してないから別に待ってないと思います」

(;'A`)「あ、そう……」

それならば、ということでとりあえずブーン達の行き先の手がかりを得られないか
ギルドに行ってみる事になった。

――――――――――

受付「個人情報の開示は禁止されております」

('A`)「ですよねー」

当然と言えば当然だが行き先を教えてくれる訳はなかった。

('A`)(同じとこ住んでたとはいえ保護者でもないしな……)


16 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:27:39.95 ID:gC052Dcb0
他をあたってみるしかないのかと考えていると横からワタナベの喜ぶ声が聞こえる。

从*'ー'从「やった〜!」

ぴょんぴょん飛び跳ねているので何事かと思い尋ねてみると、

从*'ー'从「わたし、Cランクになったんですよぉ」

(;'A`)「え」

まさかドクオより二つもランクが上だとは。
同年代の女の子に二歩も三歩も先を行かれている事実にかなりショックを受けた。

('A`)(そりゃ俺は駆け出しだけどさ、それにしたって)

ドクオの胸中を知ってか知らずか、満面の笑みをこちらへ向けるワタナベ。
一体どのような力を持っているというのか。

从*'ー'从「?、どうかしたんですか?」

('A`)「……いや、なんでもないよ」

気をとりなおして他に聞いて回ろうか考えているとふと視線を感じた。

(;'A`)「…………!」

すぐにまわりをそれとなく見渡してみたがそんな気配すらなかった。

('A`)「…………?」


23 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:34:19.70 ID:gC052Dcb0
从'ー'从「大丈夫ですか?おトイレに行きたいとか……」

('A`)「いや、誰かに見られてたと思ったけど気のせいだったみたいだ」

从'ー'从「そうですかあ。調子が悪かったら言ってくださいね」

(;'A`)「う、うん」

しばしいぶかしげにしていたが結局目的は達成されなかったようでしぶしぶながらもギルドを立ち去った二人。
しかし、居たのだ。物陰から二人を見ていた者が。

( ´_ゝ`)『どうやら男の方には気づかれたようでござるな。にんにん』

(´<_` )『凄くわざとらしい口調だな兄者』

( ´_ゝ`)『だがそうでなくては張り合いがない。我らの力、思い知らせてくれるでござるよ』

(´<_` )『奴らとやるのか』

うなずく兄者と呼ばれた男。
そしてもう一人の方もうなずくと、そこには既に二人の姿はなかった。


25 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:36:10.89 ID:gC052Dcb0
(;'A`)(どうしよう。昨日の酒場で情報を集めておけばよかった)

今更だと思いながらも後悔せずにはいられない。

(;'A`)(いや待てよ、ブーン達の事を聞いて回るより二人が追ってる“フォックス”の事を聞いた方が早い?
ぐああ、しくじった!)

どうにも最近は調子が悪い。
一旦冷静になるべきだと思い、頭の中を整理する。

('A`)(まずフォックスって奴がいて、ブーンとクールさんはそいつを追ってる。
てことはそいつの行き先がわかれば二人が目指すところもわかる)

そしてここまで考えて、ある事実を思い出す。

('A`)(そうだよ、俺、持ってるじゃん)

ジョルジュから貰った資料。
ブーン達に渡してくれと頼まれたものだが、自分で読んではいけない訳ではないだろう。
そうと決まれば早速落ち着ける場所で読みたい。そう思ってワタナベに声を――

('A`)「あれ?」

いない。
どうやら考え込み過ぎて置き去りにしてしまったらしい。


28 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:39:08.57 ID:gC052Dcb0
(-A-)「こんなんじゃ先が思いやられるな」

反省しつつ後方にいるらしきワタナベを探す。
が、ワタナベは二人の男に囲まれていた。


(*´_ゝ`)「なあ・・・スケベしようや・・・・」

(´<_` )「兄者、それは流石に歯に衣着せなさすぎだろう」

从;'ー'从「ふええ〜、ドクオさーん……」

(;'A`)(ええー……)

どうも彼女は絡まれやすい何かを持っているのかもしれない。
急いで助けに行く。

('A`)「悪いけどその娘俺の連れなんだ。ナンパは止めてくれないか」

(*´_ゝ`)「冗談は顔だけにしときな。お前みたいなビミョメンとは釣り合わねーって」

(´<_` )「兄者も十分にビミョメンだと思うぞ」

(#´_ゝ`)「にゃにおう!?俺がビミョメンならお前だってビミョメンじゃねーか!」

从;'ー'从「本当です、わたしそこのドクオさんと一緒に旅してるんです」


29 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:41:45.54 ID:gC052Dcb0
(;´_ゝ`)「えーマジで?兄者ショック!」

(´<_` )「まあ仲間がいたならしょうがないな。諦めよう」

兄者と呼ばれた男はもう一人に促されると未練がましくしていたが立ち去ろうとする。
が、それをドクオが呼び止める。

('A`)「おい、あんたなに盗った?」

( ´_ゝ`)?

('A`)「とぼけたって無駄だ。あんなに雑にやったら“見つけてください”って言ってるようなもんだぜ」

確かに兄者の手口は元盗賊のドクオだけでなく一般人でも気付くようなずさんなものだった。

('A`)「……なにを企んでる?」

( ´_ゝ`)「ばれちゃあ仕方ねえな」

そう言って懐から取り出したのは、ワタナベの傭兵免許証だった。

从;'ー'从「あ、あれ?いつの間に?」

どうやらワタナベは気付いていなかったらしい。
だが兄者はそれを意に介さずに話を続ける。

( ´_ゝ`)「これを返してほしけりゃ俺たちと決闘しな」


30 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:46:50.43 ID:gC052Dcb0
('A`)「なに?」

わざわざ免許証を盗んでまでこちらに戦いを仕掛ける理由がわからない。
いぶかしがるドクオを見てもう一人が口を開く。

(´<_` )「理由は簡単。ちょっと俺たちの腕試しに付き合って貰いたいだけだ」

( ´_ゝ`)「そゆこと。Cランクの傭兵が大体そこでの標準的な力を持ってるからな」

('A`)「そんなもん」

受けるかよ、とばかりに兄者から免許証を奪い返すドクオ。
そのままワタナベの腕を掴み、逃げようとする。

( ´_ゝ`)「あらら」

(´<_` )「おいおい何やってんだ」

ドクオ達が逃げる様子を見てもまったく動じない二人。

( ´_ゝ`)「おーい、こいつはどうでもいいのかい?」

兄者が何かを掴みながら叫ぶ。
ドクオが振り返って見てみると、

(;'A`)「資料が……!」


31 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:49:35.54 ID:gC052Dcb0
いつの間に盗ったんだ、と問いかける前に兄者が話しだす。

( ´_ゝ`)「ま、いらないってんならこいつはしかるべきところに引き渡すだけさ」

(´<_` )「そうされたくなきゃ受けて貰おうか」

決闘を。
得体の知れない輩の得体の知れない要求に完全に混乱してしまう。

(; A )(ひょっとしてフォックスとかいうやつの仲間なのか?いや、だとしたら何でこんな)「……オさん」

从#'―'从「ドクオさんっ!!」

思考停止に陥りかけていたドクオを引き戻したのはワタナベだった。
ワタナベは更に言葉をつむぐ。

从'―'从「決闘、受けましょう」

(;'A`)「なっ……」

ほとんど素人同然のドクオには信じられない言葉だった。
概要は聞いてはいたが負ければ降格、勝ったとしても怪我は免れない。
そんな戦いを軽々しく受けるなんて……

从'―'从「わたしたちが勝っても負けてもそれは返してもらえるんですよね?」

( ´_ゝ`)「ああ、俺たちには無用の長物だ」


33 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:53:39.35 ID:gC052Dcb0
从'―'从「なら大丈夫です。受けます」

(;'A`)「おい……」

ワタナベを止めようとする。
自分だけなら負けても降格する心配はない。
だがワタナベはCランクに上がったばかりだ。ここで無駄な戦いをして傷つく必要はまったくない。

(´<_` )「おっと、わかってるとは思うがどちらか一人だけが参加しても駄目だぞ」

両方でなければこいつは返せない、と言う。

(;'A`)「……なんでそこまで俺らにこだわるんだよ!」

(´<_` )「兄者の勘だよ。強いやつに関する事で兄者が勘をはずしたことはない」

( ´_ゝ )「ククク……俺の右手が囁いたのさ。“強者の血が吸いたい”ってな」

勘だと。そんなもので自分達は狙われなければならないのか。
ドクオは二人に対し激しい怒りを覚えると同時に訳のわからないものへの恐怖も抱いた。
ふと気付くと、ワタナベがこちらを見ている。

从'ー'从「大丈夫。わたしが助けるって言ったでしょう?」

だから、ね?と優しく声をかけられる。
それに押されるようにドクオはうなずいていた。

(´<_` )「……どうやら合意とみなしていいようだな」


34 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:55:56.82 ID:gC052Dcb0
(  _ゝ )「どうやら俺のギャグはスルーされたとみなしていいようだな」

拗ねている兄者はさておき、決闘の申請をするためにギルドへ向かう。

受付嬢「――では、係のものについて行ってください」

指定された場所に移動、簡単に説明を受けてそれぞれ準備をする。

(;'A`)「俺、ろくに防具もつけてないんだけど……」

从'ー'从「わたしが前に出て撹乱しますからドクオさんはその隙に攻撃お願いします〜」

魔術師と装術士のコンビの基本的な戦術だ。
もし一人だったらそんな方法も取れずに怪物等にやられていたのか、
と思うと少し情けない気持ちになった。

立会人「……では、準備はよろしいですね。私が離れたら始めてください」

奇襲を警戒しおのおの武器を構える。
――立会人が場から離れ、戦いが始まった。


36 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 22:59:47.46 ID:gC052Dcb0
从#'ー'从「行きます!」

ワタナベは先手必勝と前に進み出る。
当然そんな動きは読んでいるといわんばかりに飛び道具が彼女へ一直線に向かう。
横に飛び退きかわすが、既に第二波が移動した場所へ放たれている。

ドクオもナイフを投げ対応するが、相手の手数の方が多い。

(;'A`)「ワタナベさん!!」

直接援護しようと走り寄るが、ワタナベが視線を向けてくる。

('A`)(大丈夫……ってことか?)

その考えを肯定するようにワタナベのグローブが黒い何かに覆われ、
振るわれた拳は飛び道具を全て叩き落とした。

(´<_`;)「ちっ!」

(#´_ゝ`)「弟者!!」

弟者と呼ばれた男の懐に飛び込もうとするワタナベだったが、男が装術を発動させて後ろへ飛んだ事で失敗に終わる。

从'ー'从「風ですか、厄介です」

(´<_`;)「厄介なのはどっちだよ、まったく!」


37 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:02:28.83 ID:gC052Dcb0
('A`)(…………?)

ごくふつうのやりとりに見えたのだが少し違和感を覚える。
先ほどまでとは違い、兄者達は腰が引けているような……

('A`)(いや、そんな事を考えている場合じゃない)

相手が動揺しているならばそこにつけこまなければ。
ワタナベの攻撃のチャンスを作り出すべくナイフを投げる。

(´<_`#)「ふんっ!」

が、それは弟者の起こした風により阻まれ、
返す刀でワタナベにも風で攻撃する。

从;'ー'从「わわっ」

風に押され体勢を崩すワタナベに更に追撃を加えようとして――

从#'ー'从「たあっ!!」

崩した体勢のまま無理矢理回し蹴りを放たれたためにそれはならなかった。


38 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:05:24.32 ID:gC052Dcb0
( ´_ゝ`)「さーて、そろそろ俺も動きますかね」

わざとらしく言って魔術使用の準備を始める。ドクオを挑発しているのだろうか。
だが、

('A`)(俺の使える魔術は家にあった魔術書のやつだけ……)

しかもどんなものが飛び出すかドクオ自身にもよくわからない。
実戦、しかも人間相手にいきなり使用して大丈夫なのか。

(#´_ゝ`)「飛んでイキなッ!!」

躊躇っている間に兄者が魔術を発動させる。
兄者の手元が青白く光ったと思った瞬間、ドクオの腕に刺すような痛みと熱が走る。

(;'A゚)「ぐああああっ!?」

( ´_ゝ`)「戦闘中に考え事は良くないなぁ……死ぬよ?」

从;'―'从「ドクオさんっ!」

(´<_` )「あんたはこっちだ」

从;'―'从「っ……!」


40 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:09:33.61 ID:gC052Dcb0
ワタナベは弟者に阻まれドクオの元に行けない。
とはいえ、二対二であるのだから兄者の方は
本来であればドクオがなんとかしなければならない相手だ。

(; A )「ぐ……」

どうにか立ち直りナイフを構えるドクオ。

( ´_ゝ`)「ククク……そうでなければ面白くない」

またわざとらしく言って武器を構える。
鎖の両端に重しのようなものと刃物がついた妙な武器を扱うようだ。

(;'A`)(距離を詰めるのも離れすぎるのもまずい……!)

近づくと鎖に絡め取られ、離れたら飛び道具と魔術の餌食になる。
兄者の使う魔術は恐らく雷属性のもの。速さも威力も相当で何発も耐えられるものではない。
ギリギリの間合いを保ったままナイフで牽制を続ける。

(;'A`)(どうにかしないと……)

ドクオの頭によぎるのは魔術のこと。
実力で完全に負けている以上不意打ちを食らわせるしかない。

('A`)(やってみるか……)


41 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:11:57.23 ID:gC052Dcb0
中距離から攻撃を仕掛けながら懸命にイメージを作り上げる。
風の刃で敵を打ち倒すイメージを。

(#'A`)「そらっ!!」

( ´_ゝ`)「ふっ!」

ナイフを投げると兄者はかわしながら飛び道具で反撃してくる。
こちらもかわしつつ攻撃のチャンスを伺うが鎖武器が邪魔をする。

('A`)「ちっ……」

そうだ、それでいい。
攻撃を引き付けながら聞こえない位の声で呪文を唱える。

('A`)(気付かれないように、いや)

気付かれたとしても邪魔はさせない。
なんとしても奴に魔術をぶちこむ。
投げナイフも残り少なくなってきたが惜しみなく使う。

(#'A`)「うおらああああああああ!」

(;´_ゝ`)「ちっ!!」


42 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:14:17.06 ID:gC052Dcb0
兄者は石やらナイフやらをひたすら投げてくるドクオに手を焼いている。

( ´_ゝ`)(そんなもんに当たると思っているのか?)

しかしうっとうしいのは事実だ。
それに、兄者が見たいのはこんなものではない。

( ´_ゝ`)(もっと強いところを見せてくれ)

相手に全力を出させ、それを打ち破る事にカタルシスを感じる。
兄者という男は、そんな趣味を持っているある意味変態である。
ゆえに「何かを仕掛けようとしている」ドクオがどういった事をするのか楽しみでならなかった。

( ´_ゝ`)(がっかりさせてくれるなよ、少年)

――――――――――

その男は、兄者と違い慎重であった。
臆病であると言い換えてもいい。
強い者と戦うこと自体に否やはない。

しかし彼は、過程より結果に喜びを見い出す質である。

(´<_` )

ゆえに彼、弟者は目の前にいる少女にも一切容赦をするつもりはなかった。


43 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:18:06.72 ID:gC052Dcb0
从;'ー'从「どいて、どいてください!」

(´<_` )「どけと言われてどくやつがあるか」

从#'―'从「だったら力ずくです!!」

少女は装術を発動させ、殴りかかってくる。
彼女が発する『威圧感』が増大する。

(´<_` )(だが、焦りのせいかさっき感じたほどではない)

この少女を倒すには今が絶好の機会だ。
それを逃さないように一気に攻める。

从;'―'从「う……くっ!」

風に吹き飛ばされないようになんとか耐えているようだが、甘すぎる。
少女に見えないように集め、圧縮した風を彼女の頭部へぶつけた。

从; ― 从「!?」

不可視の打撃に大きくよろめき、倒れる寸前だったがなんとか持ち直す。

从; ― 从「っあ……はぁ、はぁ……っ!」

攻撃の正体がわかったのかは不明だが頭を守り、
距離を取っても無駄だと思ったのだろうか突撃してきた。


44 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:22:03.32 ID:gC052Dcb0
だが、それもぬるい。
少女の足元を風で薙ぎ払う。

从;'―'从「あっ!?」

そして体勢を崩したその腹部にもう一撃先ほどの攻撃を見舞う。

从; ― 从「あ……がっ!」

吹き飛んで受け身も取れずに地面に転がる。
起き上がらないところをみると気絶したか。

(´<_` )「思ったよりあっけなかったな」

――――――――――

(#'A`)「だあっ!!」

(#´_ゝ`)「ふっ!!」

中距離からの攻撃を続けるドクオだったが決定打を与えるどころかまともに当てる事さえ難しい。

(;'A`)(くそ、足止めにすらならない)

準備は終わっている。
だがおそらく兄者の魔術ほどの速さはなく、動き回られては当たらないだろう。


46 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:26:00.57 ID:gC052Dcb0
こうなったら前に出るしかあるまい。
たとえ鎖に絡め取られようと当たればいいのだ。

(#'A`)「っ!」

ナイフを投擲し、当然かわされるが結果を見届けずに兄者がかわした方向へ走り込む。
兄者の投げた飛び道具を前転でかわし、鎖を投げようとした腕に石をぶつけて封じる。
更に距離を詰め、ナイフで切りつけようとするが鎖についている刃物に阻まれる。

手刀を振り下ろし魔術を発動させようとしたが鎖を離した方の手で阻止された。

( ´_ゝ`)(どうやらそれが発動条件のようだがこれで発動できまい!)

蹴りを浴びせて距離を取ろうとした瞬間、ドクオの自由な方の腕が振り上げられた。

(;´_ゝ`)「なにっ――」

振り下ろすだけが発動の条件ではなかったのか。
兄者がそう思った時には既に風が叩き付けられていた。

(; ゚_ゝ`)「うぉぉおおお!?」

強烈な風圧が兄者を襲う。
吹き飛ばないように踏ん張るが、どんどん後ろへ押されていく。

(#´_ゝ`)「ちいぃぃぃいいっ!」


49 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:28:54.69 ID:gC052Dcb0
このまま遠くまで飛んでいくかと思った瞬間、圧力が除かれた。

兄者(なに……?)

(; A )「ぐっ……!」

予想はしていたが兄者には通用しなかったか。
その原因を考えている余裕すらないくらいにドクオは疲弊していた。
ものすごい虚脱感で立っていることすらままならない。

(; A゚)(こんなにきつかったのか、魔術……!)

だが兄者が無傷な以上戦いは続いている。
まずは逃げて体勢を整えなければ……
自分のナイフだけ回収して後退する。兄者の武器を拾って行きたかったがそこまで考えが回らない。

(; A )「うえ…………」

ドクオの頭の中に吐き気を催すほどの負荷がかかっていた。
対して兄者はまったくダメージを受けていない様子で、ゆっくりと武器を回収しながら近づいてくる。

(; A )(こんなの、一発逆転どころか……まるで逆効果だ)


50 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:32:02.66 ID:gC052Dcb0
例によって>>49の兄者「」は( ´_ゝ`)「」です
すいまへん

( ´_ゝ`)(失敗したらしいな)

何故かはわからないが、ドクオの魔術は中断してしまった。
あまりにあっさり消えたため効力を失った訳ではなく失敗と結論づける。

( ´_ゝ`)(ま、そんなことはどうでもいい)

兄者は少なからずドクオに失望した。
未習得の魔術を使うほどに余裕がなかったのか、それともこちらをなめていたか。

( ´_ゝ`)(どちらにせよ俺をがっかりさせた事には違いない)

( ´_ゝ`)(少年には悪いがとっとと倒させてもらおう)

兄者はドクオに一足飛びで近づき、首を締め上げる。

(; A )「がっ!?」

ドクオは逃れようと足掻くが、それは弱々しいものだった。

( ´_ゝ`)「もーすこし楽しませてくれるかと思ったんだがな」

ドクオが意識を失いかけていたその時だった。

『ぐぁぁああああああがあぁあぁ!?』

けたたましい叫び声が聞こえてきて、兄者がそちらに目をやって見たものは――


54 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/11/18(金) 23:33:53.60 ID:gC052Dcb0
( <_ ;)「うっ、ぐっ、はあっ……ぐっ」





胸のあたりを押さえて苦しんでいる弟者と、






从#゚∀从「奇襲成ッ功!ハァッハッハッハイーンリッヒィィイイーッ!!」





壮絶な表情で笑っているワタナベだった。



中編終わり



前のページへ] 戻る [次のページへ