( ^ω^)「誰だお、僕に会いたいって?高校の仲間はみんな会ったお」
( ,' 3 )「高校の卒業アルバムを見て内藤に会いたくなったらしいよ。内藤も知ってる子なんだけどね」
( ^ω^)「僕も知ってる・・・子?子って、女の子かお?」

荒巻は答えずに、助手席のドアを開けた。
内藤が気付かない間に車のそばに立っていた誰かが、助手席にもぐりこんでくる。
たしかに、内藤の知っている人物だった。

('、`*川「やほ。久しぶり〜」
( ^ω^)「・・・伊藤?伊藤じゃないかお」
川 ゚ -゚)「中学以来ね・・・元気してた?内藤君」
( ^ω^)「クーも・・・なんで二人が?」

素直クール、ペニサス伊藤。
共に内藤や荒巻と同じ中学の同級生。どこの高校にいったかも知らなかったが、中学の頃はそれなりに話した記憶がある。

( ,' 3 )「一緒に遊ぼうってクーを呼んだらさ、伊藤もついてきたんだ」
('、`*川「そゆ事。卒アル見たら内藤めりっさ変わってるからさ、会ってみたくなっちゃったw」



  
  
( ^ω^)「はー・・・本当に久しぶりだお」
川 ゚ -゚)「本当に。みんな今どうしてる?」
( ,' 3 )「内藤は大阪、伊藤は京都。僕のことは言わなくていいよね」
('、`*川「内藤京都なの?近いじゃんさー」

4人はしばらくコンビニに車をとめたまま雑談を楽しんだ。
やがて話は猥談に移り、そして恋愛の話に移っていく。
内藤にとって避けたい話題だった。

( ,' 3 )「内藤ってさ、中学の頃ツンのこと好きだったろ?」
( ^ω^)「・・・さぁ?」
川 ゚ -゚)「隠したってバレバレなんだけどね」
('、`*川「もろばれだよ、もろばれ。もう何年も前なんだし隠さなくて良いって」

けど、たまには他人に話してみるも良いのではないか。
多分、この流れなら言える。
言えば、楽になれるような気がした。

( ^ω^)「はは・・・情けないことに、今も好きだお・・・」



  
  
('、`*川「まじで?w」
川 ゚ -゚)「ほう・・・」
( ,' 3 )「おいおいw詳しく話してもらおうか」

内藤は話した。
中学校の頃の自分の気持ち、高校で再会したときの楽しかった思い出。
ツンのことが好きだと思い知ったときの気持ちに、数日前の弟発言。

誰にも話さないと思っていたのに、あっさり話してしまっていた。
ツンのことを考えるといつも気分が曇っていたのに、今日は荒巻たちが楽しそうにしていたから。
だから、気が楽で。つい話してしまっていた。

( ,' 3 )「弟って・・・それダメじゃん」
川 ゚ -゚)「勝機はないな。諦めたほうが良いと思うけど」
( ^ω^)「・・・やっぱり、そうなのかお・・・?」

内藤も心のどこかで思い始めていた。
クーも荒巻もそれが当然のことのように言う。たしかに、客観的に見れば諦めたほうが賢いだろう。

('、`*川「・・・なんかムカツクなぁ・・・それ思いっきりツンに振り回されてない?」



  
  
( ^ω^)「え?」
('、`*川「だってそうじゃん。冗談だったんでしょ?嫁になるとか何とか。しかも彼氏の相談とか案内してくれとかさぁ。何?ツンって悪女?」
(;^ω^)「いや・・・僕の主観だから何ともいえないけど・・・」
('、`*川「多分ね、内藤がツンを好きって思ってるのは未練だよ」
( ^ω^)「未練・・・?」
('、`*川「自分はまだツンのこと好きだって思いたいんでしょ?けど良く考えてみなよ。そんなに悩むほど好き?ツンの事忘れればもっと素敵な人が回りに居るかもしれないのに?」
(;^ω^)「・・・それは・・・」

伊藤の剣幕はすごかった。
なぜ伊藤がこんなにムキになるのかはわからないが、新しい意見ではある。

どうなんだろう。
いつかの夏祭りで再会した後。ツンと過ごした三ヶ月は本当に楽しかった。
自分の失言でツンが離れていったのは悔やんでいるし、あの時あんなことを言わなければと自分を呪った夜も数知れない。
そうやって過ごした眠れぬ夜が、内藤に初恋というものを自覚させた。

それは確かだが、人の気持ちはそのときの環境に左右される。
1年ツンと離れて、挙句に弟のような物としか見ていないといわれた今。
内藤は本当にツンが好きなのだろうか。

(;^ω^)「・・・けど、好きなんだお・・・難しい理屈じゃなくて、ただ、好きなんだお・・・」
('、`*川「それが未練だって言ってるの!」



  
  
(;^ω^)「う・・・」
( ,' 3 )「ま、まぁまぁ。落ち着け伊藤」
川 ゚ -゚)「そうよ、ムキになっちゃって。もしかして内藤君のこと好きだった?」
('、`*川「ちがわーい!ただね、こう・・・歯痒いっていうかなんて言うか・・・うがー!」
川 ゚ -゚)「まったく・・・これだから少女漫画ばっかり見てる女は」
('、`*川「それ関係ないって。だって内藤さ、ツンのこと好きってもHしたいと思う?キスしたいと思う?」
( ^ω^)「・・・・・・思わない・・・お?あれ・・・?」

結局その日は遅くまで雑談し、カラオケにはいけなかった。
内藤の休みももうすぐ終わる。
クーや伊藤にもまたしばらく、もしかしたら何年も会わないかもしれない。

けど、そんな縁の薄い伊藤に言われた言葉は、内藤に重くのしかかった。
ツンのことが好きだというこの気持ちに理由はない。
誰かを好きになるのに理由がいるのだとしたら、内藤はツンを好いてはいけないのだろうか。

( ^ω^)「・・・僕はツンのこと好きだお・・・けど、別に性愛の対象っていうか・・・もっと違う、そう、ずっと一緒にいたいって・・・」

( ^ω^)「一緒にいたいだけなんだお・・・この気持ちは好きじゃ・・・恋じゃないのかお・・・?」



  
  
大阪にもどっても、内藤は悩んだ。
高校の最後の1年のように、また眠れない夜を味わうことになる。
あの時はツンのことを好きなのかどうかで悩んでいた。
今は、好きという気持ちは何なのかと悩んでいる。

( ^ω^)「・・・付き合いたいと思ったら好きなのかお?それとも、セクロスしたいと思えば好きなのかお?」

街で見かけて、容姿が好みだったから好きだとか。
性格の相性が良かったから好きだとか。そんな理由が要るのだろうか。
好きだから、好き。
それでは駄目なのだろうか。

( ^ω^)「ツンの何が好きって聞かれれば・・・全部としか言いようがないお・・・」

理屈じゃなくて、好きだから。
けどそれはもしかしたら、いつか内藤がツンに対して感じたものと同じなのではないか。
好きと思い込んでいるのではないか。

曲がり角でぶつかったとか、命を救われたとか、そんな劇的な出会いもちろんではない。
ツンはただの同級生。確かにここまで好きになる理由があるわけではない。

なら、自分はツンのことを好きと思い込んでいるのだろうか。



  
  
( ;ω;)「・・・もう考えたくないお。もうどうでもいいお・・・なんでこんなに僕は悩んでるんだお・・・?」

思えば、中学校の頃も自覚はしていないとは言えツンのことが好きだったはずだ。
それでも高校になってからは毎日が楽しくて、ツンのことを忘れかけていた。
きっとあの夏祭りでツンを見つけなかったら、ナンパした女の子と付き合いだしたんだろう。

( ;ω;)「そうだお・・・きっと僕はちょっとおかしくなってるんだお。このままツンと疎遠になっていって、あの時何考えてたんだろうって笑えるようになるんだお」

大阪に帰ってきてからどれくらい時間がたった頃か。
内藤はようやく、そう答えをだして。逃げようとした。
自分の気持ちに蓋をして、葛藤から逃げようとした。

けど、きっとツンに悩まされるのは運命だったのだろう。
ちょうどその頃、メールが届いた。

件名:ツン
本文:夏に大阪行くって言ってたでしょ?今週末に行くから(^^)
    美味しいオムライスの店とか探しててね〜



  
  
( ^ω^)「はぁ・・・チーフ、美味しいオムライスの店とか知りませんかお?」
( ´_ゝ`)「美味しいオムライス?・・・北極星とか?どうした急に」
( ^ω^)「いや・・・ちょっと地元の友達が来るんで」
( ´_ゝ`)「オムライス食いにか?・・・それ女?彼女か?ん?」
( ^ω^)「チーフ・・・人には言いたくないこともあるんですお・・・」
( ´_ゝ`)「・・・なるほど。そうか、おかんか・・・確かに母親と二人っきりでオムライス食いに行くのは色気がないな」
( ^ω^)「あんた頭沸いてるのかお?」

ツンは明日やってくる。
一人で大阪まで出てきて、ミルナ君とUSJに遊びにいくそうだ。
そんなことを思い出すたびに気分が悪くなる。

( ^ω^)「はぁ・・・ミルナ君と遊びに行く前にアメ村つれてけとか・・・僕の気持ちも知らないで・・・」



  
  
大阪での内藤の活動圏内は主に難波、心斎橋。
内藤はその日、滅多にこない梅田にいた。

ξ゚听)ξ「ねぇ内藤。私あれ見たいんだけど。屋上に観覧車あるやつ」
( ^ω^)「は?あぁ、フェップかお。確かこっちだお」

なんだかんだいってお洒落してきた内藤と、遠出してきた割りには荷物の少ないツン。
きっと通行人にはカップルに見えているんだろう。

( ^ω^) (・・・あぁ・・・やっぱり一緒にいるだけで楽しいお。僕はツンのこと好きだって思い込んでるのかお?それとも本当に好きなのかお・・・?)

ξ゚听)ξ「ところで内藤、オムライスの店は?w」
( ^ω^)「んー・・・そういえばちょうどフェップにポムの樹って店があるお。行ってみるお?」
ξ゚听)ξ「すっごい並んでるんだけど・・・」
( ^ω^)「女の子が並ぶことで有名なんだお。どうするお、待つかお?」
ξ゚听)ξ「な、なんだか並ぶとカップルみたいね・・・別に他意はないけど、オムライス食べたいし・・・並ぼっか」

( ^ω^) (・・・こういう時、ツンは何を考えてるんだお?ちょっとでも好意を感じるのは・・・僕の勘違いかお?)



  
  
30分ほど並んで、女の子とカップルだらけの店内でオムライスを食べた、
ツンが食べきれなかったオムライスの残りを押し付けられたりして、本当に付き合っているみたいに。
アメ村で服屋を巡ったり、黒人のキャッチに捕まったり。
ツンはずっと笑っていた。内藤も、知らないうちに笑っていた。
本当に付き合っているように。

( ^ω^)「ツン、次はどこ行くんだお?」
ξ゚听)ξ「えっとねー、スタバ行ってみたいなーw」
(;^ω^)「ちょwあれは頼み方わかんないからダメだおw」

本当に、付き合っていたらどれだけ良かったか。



  
  
ξ゚听)ξ「あー、遊んだ〜。今何時?」
( ^ω^)「えーっと・・・ありゃ、もう10時だお。そろそろホテル行くかお?」
ξ゚听)ξ「ホ、ホテルっ!?ちょちょちょ、何する気よあんた!?」
(;^ω^)「違っ!それ違うから!そろそろ宿泊先に行くかお?って意味だお!」
ξ゚听)ξ「あ・・・そ、そう。そうよね。ていうか私ホテルの予約とかとってないよ?」
( ^ω^)「・・・は?」
ξ゚听)ξ「いや、だから予約とってないの。予約して?」
(;^ω^)「はぁぁぁぁ?もう予約とかキツイんじゃないかお・・・?」

ξ゚听)ξ「え・・・そういうもんなの?じゃ、内藤の家泊めてよ」



  
  
-居酒屋-

('A`)「ほうほほう?泊めてとな?」
(´・ω・`)「ツンって頭っていうか、色々と大丈夫?」
( ^ω^)「それは僕にもわかんないお・・・」
('A`)「で、泊めたのか?」
( ^ω^)「さぁ・・・それは秘密だお」
(´・ω・`)「もしかして・・・ヤっちゃった?愛と悩みと悲しみの家内製手工業?」
(;^ω^)「なんだお、それ・・・それも秘密だお」

内藤たちのテーブルにはまた追加の注文が運ばれてくる。
給料後の休みだったせいで豪快に飲み食いしているが、料金を考えると悲鳴が出そうだ。
内藤はペースを落としてカルーアミルクを頼むと、新しいおしぼりで顔を拭いた。

( ^ω^)「ひとつだけ言えるのは・・・僕は大馬鹿者だったお」



  
  
(;^ω^)「・・・OK、落ち着くおツン。自分が何を言ってるかわかってるかお?無い胸に手をあててよーく考えるお」
ξ゚听)ξ「さりげに失礼なこと言うわねあんた・・・別に良いじゃない、泊めてくれたって」
(;^ω^)「あのね、ツン。僕は年頃の男で、ツンは年頃の女の子だお。それがひとつ屋根の下なんてどんだけデンジャyラスかわかってるのかお?」
ξ゚听)ξ「えぇ?やだ、なに言ってるのよ内藤w内藤がそんなこと出来るはずないじゃないw」
( ^ω^)「・・・いや?それはわかんないお?」
ξ゚听)ξ「出来ない出来ないwそんな心配しなくて良いからさっさと案内しなさいって」
( ^ω^)「いや、だからちょっとツン・・・」
ξ゚听)ξ「ほーらーはやくー。明日USJだし疲れとりたいのよ」

ツンは内藤の腕をひっぱって、内藤は必死に踏ん張っていた。
だが、ツンの最後の言葉で内藤の足の力が抜ける。
内藤は反動で転びそうになったツンをどこか静かな目で見つめて。

( ^ω^)「そういえばそうだお。ミルナ君のところに泊まれば良いんじゃないかお?」
ξ゚听)ξ「え・・・?」
( ^ω^)「彼氏の家に泊まるのが自然だと思うお?」
ξ゚听)ξ「・・・・・・」

もし内藤が伊藤の言葉で悩んでいなかったら、嬉々として家に招いたのだろうか。
それとも、散らかっているからと断ったあげく、内心小躍りして家に招くか。
もっと素直な気持ちでいられたら、こんな望んでもいないことを口走らなかったのに。

ξ゚听)ξ「・・・そうだよね。ミルナ君のところに泊まったほうが良いよね。内藤も、迷惑だもんね・・・」



  
  
( ^ω^)「いや迷惑とかじゃなくて・・・」
ξ゚听)ξ「じゃっ!そうと決まれば急がないとね。またね内藤w」
( ^ω^)「あ、あぁ・・・気をつけていくお・・・送っていk」

少ない荷物を入れたバッグを翻しツンは駆けていく。
心斎橋のアーケード街の真ん中。
まるで彼女に逃げられたように見える内藤を、通行人が可哀想な目で見ていた。

( ^ω^) (・・・もやもやするけど、これで良いんだお。ツンと一緒にいないほうが自分のためなんだお)

心は痛い。
ツンと一緒にいたいと、精一杯内藤に主張している。
けど頭は。邪魔をする理性は、がっちり理論武装していた。

( ^ω^) (そうだお。気の迷いさえ断ち切れば、僕もツンも幸せに過ごしていくはずだお。ツンの考えてることがいまいちわかんないけど、ミルナ君が好きなら僕の出る幕はないはずだお)

それに、良く考えてみれば伊藤の言うとおりだ。振り回されている。
せっかくの週末にツンに呼び出されて、付き合う義理もないのに一日を費やして。
ツンはミルナ君を好きだと言うのに。
自分はポイント稼いで。そんなにツンの気を惹きたいのか。

( ^ω^) (・・・我ながらなんて・・・女々しいお・・・!)



  
  
家までの道のりはいつもより遠く感じた。
いや。今日、今までを短く感じていただけだった。
一人無言で道を歩くことの何と寂しいことか。

( ^ω^)「は・・・本当に女々しいお・・・さっそく後悔かお」

そうだ。自分はツンを好きじゃないはずだ。
気の迷いのはずだ。
昔好きだったから、未練を引き摺っているだけのはずだ。
内藤は携帯を取り出した。
今は誰かと話していたかった。ギコならまだ起きているだろう。

( ^ω^)「・・・もしもー。ギコ、起きてたかお?」
(,,゚Д゚)「ちょ・・・起きてたってなぁ、お前。今からお楽しみってとこだろーが!下らん用だったらお前宛にうまい棒1000本くらい送るぞ?」
(;^ω^)「そ、それは悪かったお。切ったほうが良いかお?」
(,,゚Д゚)「もう電話でたし遅いっつーの。で、なんだよ」
( ^ω^)「いやぁ・・・ちょっとこう、まぁ聞いてくれお」

内藤は努めて明るく、今日の出来事を話した。
実はちょっと、大分気になる娘がいるんだけど、今日はこういうことがあったと。
そういえば昔もこんなことがあって、それで今に至ると。
高校の頃の楽しかった話から、今までの経過。伊藤にいわれたこと。それを、笑いながら話した。
その笑いは、自虐にしか聞こえなかった。



  
  
(,,゚Д゚)「おま、それ平気なん?俺聞いてるだけでむかつくんだけど」
( ^ω^)「へ?」
(,,゚Д゚)「その女って何がいいたいわけよ。明らか気をもたせてるじゃん。それなのに『私彼氏のこと好きだしー』って。もうね、アホかと。馬鹿かと」
( ^ω^)「・・・・・・」
(,,゚Д゚)「だろ?なんでお前へこんでんの?良いじゃん。むしろラッキーじゃん。ほっとけってそんな馬鹿女」
(#^ω^)「・・・・・・・・・」
(,,゚Д゚)「おっと、怒るなよ?気持ちはわかるけど、別にその娘をこき下ろしたい訳じゃないんだ。ただ、どう考えてもおかしいだろ?お前のことどう思ってるんの?馬鹿にしてんの?ってなるだろ、普通に」
( ^ω^)「む・・・言われてみればまぁ・・・結構な扱いではあるかもしんないお・・・」

ギコの言っていることは、おそらく正論だ。
内藤だって他人から似たような話を聞かされたら同じ事を言う自信がある。
ならなぜ、ツンに対してまったく怒りがわかないのだろう。

( ^ω^)「けど、むかつかないんだお。実際に」
(,,゚Д゚)「・・・はぁ。そっか。そりゃお前あれだよ、もう呪いだって。むしろ呪縛?お前が吹っ切るらないといつまでもついて回るぞ」
( ^ω^)「・・・僕の弱さってことかお。あー・・・んー」



  
  
気付けば、足が止まっていた。
歩きながら話して暇を潰そうと思っていたのに、ツンと別れた場所からあまり進んでいない。
ツンと別れてからどれくらい経っただろうか。

内藤と反対方向に歩いていくまばらな通行人の足音。
静かな足音の中、やけに感覚が短くてうるさい足音が耳に障る。
内藤の近くで止まった足音と、荒い呼吸音。
振り返ると、そこには。

ξ゚听)ξ「はぁ・・・はぁ・・・内藤・・・」
( ^ω^)「・・・ツン・・・」


(,,゚Д゚)「あん?ツン?・・・その女の名前か?お前なぁ・・・まったく。惚れた弱みって怖いよなぁ」
( ^ω^)「・・・ああ・・・まったくだお・・・そろそろきるお。邪魔して悪かったお」
(,,゚Д゚)「あー。ま、帰って寝れば気も晴れるさ。じゃなー」

切れた携帯をしまわずに、その手は力なく下がっていく。
呆然と見つめるしかなかった。
ミルナ君のところに行ったんじゃないかとか、駅はあっちだよ、とか。
そんな言葉なんか出てこない。
ただ、認めたくはないが、確かに嬉しさだけがわいて出てきた。
それすらも今の内藤を悩ませるのだが。

( ^ω^)「・・・ギコ。気は晴れそうにないお・・・」



  
  
( ^ω^)「で・・・どうしたんだお、ツン・・・」
ξ゚听)ξ「はぁ・・・ふーッ・・・。えへへ、実はさ。ミルナ君の住所、知らなかったや・・・w」
(;^ω^)「なっ・・・はぁ?それはないお?じゃメールでもして聞けば良いお」
ξ゚听)ξ「寝てるみたいで出ないのよね。それでどうしよっかなー・・・って」
( ^ω^)「どうしよっかなーって・・・僕の家に泊まるしかないなぁ、と?だから・・」
ξ゚听)ξ「内藤〜、お願いって!・・・・・・お願い・・・」
( ^ω^)「・・・」

しばらくの問答の末、結局。
内藤は折れた。
内藤が断るたびに、ツンの顔から笑みが消えていったから。
それだけならまだしも、形容しがたい切ない表情まで浮かべられたら内藤が悪者みたいではないか。

( ^ω^)「・・・あ゛ぁぁ!わかった、わかったお!はぁ・・・泊まってくといいお」
ξ゚听)ξ「うん・・・ありがと。ごめんね」

謝られると、ますます断れない。
こういうのを惚れた弱みと言うなら、内藤はツンに惚れているんだろう。
とどのつまり、人を好きになるなんて頭でするものじゃない。
こういうときの頭の仕事は、どれだけ自分の働きを放棄するかだろう。

(#゜ω゜) (うヴぉあぁぁ!!もう何なんだお!?好きなのかお、勘違いなのかお!?僕はどうすりゃいいんだお!)

だんだん、むかついてきた。


  
  
-居酒屋-

('A`)「なんかお前そろそろ発狂しそうだな」
(;^ω^)「誰がするかお」
(´・ω・` )「けど結局泊めたんじゃないの。それからどうなったのさ」
( ^ω^)「んー・・・?」
('A`)「やっちゃったのか?」
( ^ω^)「ん〜?」
(´・ω・` )「・・・ぶち殺すぞ?」

(;^ω^)「・・・結局ツンは僕の家に来て、元気を取り戻したお。ぶっちゃけ・・・僕も楽しかったお」



  
  
もう深夜の内藤宅に、包丁の音が響いていた。
普段ならありえない。
宿泊代代わりに、同級生の女の子がご飯を作っているなんて。

( ^ω^) (・・・く、悔しいけど・・・嬉しいのは否定できないお・・・!僕はどうすりゃ良いんだお?)

内藤はすっかり綺麗に掃除された室内で、喜怒哀楽の百面相をしていた。
喜ぶ自分に怒りを覚え、ミルナ君の存在を思い出し哀しくなり、やがて思考を放棄し楽になって、包丁の音で喜んで。
それをずっと繰り返していた。

ξ゚听)ξ「内藤、ご飯よー・・・って何してんのあんた」
(;^ω^)「・・・が、顔面運動・・・」
ξ゚听)ξ「・・・?とりあえずはい、箸」
(;^ω^)「あぁ・・・どうもだお・・・」

何をしているんだろう、自分は。
ツンにはミルナ君がいて、ツンはミルナ君が好きで。
自分はツンのことが好きだったけど、それは思い込んでるだけだって周りは言って。
けどツンと居たら楽しいのは事実で、なぜかツンは今自分の家に居て。

( ^ω^) (・・・本気でわかんないお・・・何をどうすれば・・・)

本当は何も考えなくて良いのに。
好きだから、好き。それだけで良いのに。



  
  
誰が何と言おうと、好きなものは好きだからしょうがない。
そりゃあ、後で嫌われたり、本当になんとも思われてなかったりするかも知れない。
そうなったらさぞかし泣きたくなるだろう。

ξ゚听)ξ「ところで内藤。冷蔵庫にはいってた卵使ったけどさ、賞味期限きれてたよ、あれ」
( ^ω^)「・・っ!?ちょ、腹痛くなったりしたらどうすんだお!?」
ξ゚听)ξ「大丈夫じゃない?あんた昔賞味期限切れの牛乳飲んで平気だったじゃない」
(;^ω^)「それ中学校の頃の話だお・・・もうそんなに若くないお」
ξ゚听)ξ「あ、そうそう。中学校って言えばさ、2年生の運動会覚えてる?3階からドクオ君が落ちた事件」
( ^ω^)「あぁ、三階のベランダで応援の練習してたって奴かお。ドクオ頭悪いから・・・w」
ξ゚听)ξ「ほんとよねー。なんでベランダの、しかも手すりの上にのって練習してたんだろ?」
( ^ω^)「はは、馬鹿は高いところが好きらしいおw」

(;^ω^) (・・・って、いかんいかん!何自然に談笑してるお!僕はさっさと諦めるべき・・・)

諦めれば、このまま時が解決してくれるだろう。
この葛藤も、いつか青臭かったと笑い飛ばせる大人になれるだろう。
それでも、悔いは残るのではないか。

それなら、この楽しい時間が手に入る可能性が少しでもあるのなら。
どうせこのまま心に悔いを残して、それを見てみぬフリをして生きていくのなら。
惨めったらしく足掻いてから、泣きじゃくれば良いではないか。

きっとその方が格好いいから。



  
  
( ^ω^) (ふ・・・カッコイイ、かお。笑っちまうお。結局人間、自分のことだけで手一杯ってことかお・・・)

ξ゚听)ξ「・・・?どうかした?その、ちょっと辛かったとか・・・?」
( ^ω^)「いや・・・美味しいお。暖かい味だお?」
ξ゚听)ξ「そ、そう?別に褒めても何にもでないわよ?」
( ^ω^)「・・・ツン。幸せについて本気だして考えたことあるかお?」
ξ゚听)ξ「え?・・・何よ急に」
( ^ω^)「僕はあるお。そりゃもう、自信をもっていえるお・・・ツンはどうだお?」
ξ゚听)ξ「そんな難しいこと言われても・・・けど、そうね。自分の幸せ考えられない人は、相手を幸せにすることは出来ないとは思うかな」
( ^ω^)「ほう。立派なこと言うお。なるほど・・・自分の幸せを第一に、かお」
ξ゚听)ξ「ていうか、まぁ。そういうことになるのかな」
( ^ω^)「それなら、僕も幸せ第一、自分第一で生きるお」
ξ゚听)ξ「・・・」

( ^ω^)「僕の幸せはツンの幸せ・・・ツンの側にいてずっとツンに笑顔を見ていたいお」



  
  
ξ゚听)ξ「・・・」
( ^ω^)「・・・」

とんだ不意打ちだったのか、ツンはまさに鳩が豆鉄砲食らったような表情をしていた。
対する内藤は、穏やかだが確かな覚悟が感じられる表情を浮かべている。
悩みを突き抜けた、男の表情だった。

ξ゚听)ξ「あー・・・あはははwやーね、内藤、からかわないでよw私はm」
( ^ω^)「ツン。もうはぐらかさせないお。僕はツンが好きだお。だからこそ、一緒にいたいお。ずっと、ずっと・・・僕自身の幸せのために」
ξ゚听)ξ「・・・・・・」

内藤はまっすぐ、揺るがない瞳で。
ツンの揺らぐ瞳を見据えていた。
内藤の視線も言葉も力強かった。ツンの顔を背けさせないほどに。

ξ゚听)ξ「わ、私は・・・彼氏いるし・・・ほら、だってさ、私だよ?きっと内藤にはもっと良い人がさ」
( ^ω^)「僕はツンが良いんだお。ツンが何と言おうとそれは変わらないお・・・そのためなら、全力でツンを奪うお!何日でもツンを説得するお!うざがられたって、嫌われたって、自分の納得いくまで!」



  
  
内藤はずっと、ツンの揺らぐ瞳を見つめていた。
まるで世界が止まったように、二人は微動だにしなかった。
動いているのは揺らぐツンの瞳だけ。
時計の音が聞こえるが、内藤にとってこの空間の時間は確かに止まっていた。
やがて時は動き出す。

ξ゚听)ξ「・・・私、泣いちゃうよ・・・?」
( ^ω^)「なんでだお?嫌だったかお・・・?」
ξ゚听)ξ「違うわよ・・・違う・・・」
( ^ω^)「僕は、出来れば嬉しいって言って欲しいお。気持ち悪いかもしれないけど、本当に・・・」
ξ゚听)ξ「ううん、気持ち悪くない・・・違うよ・・・!」

止まっていたときが動き出し、ツンの瞳から揺らぎが消えた。
揺らいでいた涙は一筋の道を作り、落ちる雫が増えていく。
内藤が手を動かそうとしたとき、ツンは涙もぬぐわずにテーブルに身を乗り出して。

ξ゚听)ξ「嬉しいのよ!嬉しいけどさぁ!・・・だったら・・・!だったら、なんであの時・・・!『嫁になるってギャグかましてないで』なんて言ったのよぉっ!!」



  
  
あの時というのは、高校最後の夏。
内藤の心の中でまだ輝く、あの篝火のような時間。
ツンも、同じことを思ってくれていたのだろうか。
大切な時間だったって。

ξ゚听)ξ「楽しかったのに・・・ずっと、あのまま過ごしていけると思ってたんだよ?それなのに・・・」
( ^ω^)「あ・・・ツ、ン・・・」
ξ゚听)ξ「私がかっこいい男子がいるなんて言ったのが悪いの・・?私は、内藤はそんなこと気にしないって思ってた。だってさ、内藤と一緒にいるときは本当に、何も飾らずにいられたんだよ・・・」
( ^ω^)「ツン・・・!僕は・・・自信がなか・・・」
ξ゚听)ξ「嫌だ・・・聞きたくないよ!内藤は私がはじめて、何も考えずに笑ってられる人だったのに・・・内藤は私のこと女として見てないんだとか、悩んで・・・普通の友達として接しようと思って頑張って・・・」
(;^ω^)「・・・・・・!」
ξ゚听)ξ「なんで・・・今になって、そんなこと言ってくれるのよ・・・!」

そういえば、ツンと出会ってから何年になるか。
10年くらいだろうか。そんなに長い間付き合いがあって、多分、最初の頃から好きだったのに。

( ^ω^)「・・・ツン・・・僕は、謝らないお。けど・・・」

ツンと出会ってから10年も経った今。内藤ははじめてツンを抱きしめた。
目を閉じて、腕に万感の思いを込めて。

( -ω-)「けど・・・その償いをすること、許してほしいお。今からでもツンの側に居ても良いって、許してお・・・」



  
  
-居酒屋-

('A`)「くせぇーっ!安いメロドラマ以下の匂いがプンプンするぜーっ!!」
(´・ω・`)「・・・悪いけど客観的に・・・ねぇ?」
(;^ω^)「なんとでも言うが良いお。ぶっちゃけ反論できねぇお」
('A`)「お前にキモイって言われたのが良く出来たギャグに思えてきたぜ」
(´・ω・`)「・・・なら内藤は、ツンとくっついたの?けど・・・」
('A`)「それでふられたら大爆笑なんだがなぁ・・・」

( ^ω^)「まったく・・・散々な言われようだお。続き話すのが怖くなったじゃないかお」



  
  
ξ゚听)ξ「なによぉ・・・許してくれって・・・私が悪いみたいじゃない・・・」
( ^ω^)「悪いのは僕だお。ツンは何も悪くないお・・・ほら、泣き止んでくれお」
ξ゚听)ξ「べ、べつに、泣いてないんだかぁ・・・っく・・・うぅ・・・〜〜っ!」

何だろう、この状況は。
頭は混乱していたが、とりあえず内藤はツンの肩を優しく叩いた。
幼子をあやすように。いつものツンなら内藤を突き飛ばして離れていくだろうに、今日だけはされるがまま。
ツンも混乱していると思えるのが、たまらなく嬉しかった。

( ^ω^)「ん・・・落ち着いたかお?ツン」
ξ゚听)ξ「・・・グスッ・・・」
( ^ω^)「ツン?」
ξ゚听)ξ「・・・お風呂はいる・・・」
( ^ω^)「・・・え゛?あ、ちょ・・・え?」

ツンは内藤の腕から抜け出し、まるで自分の家のように風呂場に向かう。
内藤の家、といっても、当然一戸建てではない。普通のワンルームマンションだ。
つまり、脱衣所などもない訳で。

(;^ω^)「いっ!?ちょ、ちょっとベランダに居るお!タオルは勝手に使ってくれお!」



  
  
( ^ω^)「・・・あぁ、食器片付けといたほうが良いかお」

シャワーの音が気になる。
大丈夫だろうか。一人暮らしの男が普段それほど風呂場を綺麗にしているはずがない。
ぶっちゃけると、その。陰毛とか排水溝のあたりに絡まっているのでは。

(;^ω^)「・・・ツンー、食器洗うから水出すおー」
「・・・うん。どうぞ」
( ^ω^)「そのー・・・洗顔とか男物だけど大丈夫かお?」
「・・・うん」
( ^ω^)「・・・お湯ちょっと熱めにしてるけど、大丈夫かお?」
「・・・大丈夫」
(;^ω^)「そ、そっかお。じゃゆっくりしてくれお」

食器を洗い終わり棚に置く。
振り返るときに洗濯籠にはいったツンの衣類がどうしても目にはいる。
あろうことか、一番上に下着がある。
下着は最後に脱ぐだろうから当然といえば当然だが、こういう時普通は隠すものではないだろうか。

(;^ω^) (もし僕がフガフガ匂い嗅いだらどうする気なんだお、まったく・・・)

「・・・ねぇ内藤・・・」
( ^ω^)「ん?なんだお?」
「一緒にはいる?」

( ^ω^)「・・・はい?」



  
  
(;^ω^)「・・・それは僕にツンと同じ湯船につかることを許してくれる上、せまいユニットバスの中でくんずほぐれつになっても怒らずしっとり包囲陣形ってことかお?」
「それに加えて私が背中流す権利もつけるわよ」
( ^ω^)「・・・っく!なんという誘惑だお!!」
「・・・まぁ、別に嫌なら良いんだけどね」
( ^ω^)「いやいや、嫌なはずがないお!」

だがしかし、ツンは女である。
女という生き物は時に男を試すようなことをするものだ。
例えば、二人っきりのカラオケでおもむろに服を脱いだりとか。
もしかしたらツンも自分を試しているのではないか。

ほんの数秒で内藤の脳裏に二通りの未来がよぎった。
喜び勇んでドアを開け、蹴りだされる未来。
そして、ツンが潮らしく迎えてくれる未来。

( ^ω^) (どうするお・・・!?)
  
「・・・内藤?」

あまり長い間悩むのも良くない。
そもそも、悩む必要があるのだろうか。

( ^ω^)「・・・ツンが良ければ、入らせてもらおうかなー・・・」
「・・・うん、その・・・良いわよ、別に」

ここで入らなければ男じゃない。
服を脱いでいつも入っている風呂場のドアを開けるだけじゃないか。
ツンは自分を試しているのかもしれないが、入るほうが正解の可能性だってある。
内藤は深呼吸すると、風呂場のドアに手をかけた。

( ^ω^)「失礼、しますお・・・」



  
  
( ^ω^) (あ、そういえば換気扇つけてなかったお)

まず目に入ってきた湯気のせいで、そんな間抜けなことを考える。
曇った鏡に暖かい空気。シャワーの音は止んでいた。
毎日見ている場所なのに、まるではじめてみるような気がする。

ξ///)ξ「・・・」

それもあながち間違いではないか。
いつもなら、湯気のなか内藤に背を向けているツンの姿がないのだから。

( ^ω^)「えっと・・・シャワー出して良いかお?」
ξ///)ξ「・・・勝手にすれば?な、内藤の家じゃない・・・」
(;^ω^)「う・・・ち、違いないお・・・じゃあ遠慮なく」

頭を洗って、体を洗って。
その後は、気合を入れなければならない。やっと何かが変わりそうだから。
内藤は体を洗いながら、精一杯高鳴る胸を落ち着かせていた。

ξ///)ξ「・・・背中、流さないといけないよね。さっき言っちゃったし・・・」

がんばれ男の子。



  
  
(;^ω^)「はっ!?・・・おお、お願いしますお・・・!?」
ξ///)ξ「お、お願いされます・・・」

ところで、ユニットバスといえばどんな物を想像するだろう。
トイレと湯船が一緒になったものを想像する人が大多数ではないだろうか。
だが、内藤宅は少し違う。
内藤は本来なら家賃が8万ほどかかるはずの贅沢な家を、社宅として格安提供されている。

つまり、ユニットバスとはいえトイレとは別々。
しかも普通の家の風呂場のように広い。
となれば当然、湯船につかっていたツンは一歩二歩歩かなければならない訳で。
熱めに設定させたお湯につかっていたツンは、当然のぼせているはずで。

ξ゚听)ξ「・・・あっ・・・?」
( ^ω^)「・・・ん?」

のぼせていたら、足取りがおぼつかなくて。軽く倒れてしまっても不思議ではないだろう。
問題なのは倒れた先に、背をむけた内藤がいたことだけ。

(;^ω^)「っっっ!!??」
ξ///)ξ「〜〜〜〜!!!!」

そして、内藤の背中に思いっきり抱きついてしまっただけだ。
背中にマシュマロを押し付けられたと思えば何でもないじゃないか。



  
  
(;^ω^)「あ、あ、あのー・・その。ツン、そんな大胆に背中流さなくても・・・!」
ξ///)ξ「あぅ・・・や、違、ながす・・・あの・・・そ、そう!せんたくいた!?」
(;^ω^)「ちょ、そんな自虐的なネタかましてる場合かお!しかもちゃんとおっぱ・・・」
ξ///)ξ「やー!言うなぁ!!」

シャワーの音とわずかな泡、たちこめる湯気と床を流れるお湯。
そして、互いに背を向けて離れた男女。
正座して俯いているツンと、風呂場用の椅子に座り眉間を揉んでいる内藤。
実に初々しい。

どれくらいそのままで居ただろう。
ようやく落ち着いた内藤は、思い切って提案してみた。

( ^ω^)「ツン・・・せーので振り向くとかどうだお?」
ξ゚听)ξ「・・・い・・・い、良いわよ・・・せーの、ね・・・うん、ら、楽勝?」
( ^ω^)「そ、そうかお・・・じゃ、せーの・・・」
ξ゚听)ξ「はっ!!」
( ^ω^)「せいっ!!」

状況に似合わない裂帛の気合とともに、内藤とツンは振り返った。
内藤の目の前には正座して斜め下を向いているツンが。
ツンの前には、体を洗うタオルで下半身を隠した内藤が。

(*^ω^)「・・・あ、う・・・」
ξ///)ξ「・・・ しんじゃいそう・・・」



  
  
濡れてストレートになった巻き髪。
それから伝う雫が白い肌をより扇情的に見せる。
膝の上に置いた強く握られた手。細腕で隠れたわずかなふくらみ。
そのすべてが内藤の理性を破壊しようと牙を向く。

(*^ω^) (・・・辛抱たまらんお・・・!けど、ここは辛抱だお・・・!)

( ^ω^)「・・・ツン」
ξ///)ξ「はいっ!」
(;^ω^)「い、良いお返事だお・・・その、背中お願いするお」
ξ゚听)ξ「ま、任せなさい・・・私はかつて背中流しのプロって言われてたんだから・・・!」
(;^ω^)「いったい誰にだお・・・」
ξ゚听)ξ「・・・お父さん・・・」

一度向き合ったせいか、少しは緊張もほぐれたような気がする。
再び背を向けた内藤の背をツンが控えめに洗っていく。
内藤は背中に感じる戸惑いがちな力加減に、改めてツンと一緒に風呂場にいるというこの状況をかみ締めた。

ξ゚听)ξ「・・・力加減はこのくらいでよろしいですかー」
( ^ω^)「あぁん!もっとめちゃくちゃにしてぇ!!」
ξ゚听)ξ「・・・・・・」
(;^ω^)「ちょっ!痛い痛い!ごめん悪ノリだったお!ギブミーチョコレート!」
ξ゚听)ξ「ふふっ・・・ギブアップ?」
(;^ω^)「参りました」

ξ゚听)ξ「けど・・・内藤の背中おっきくなったね。私達、大人になっちゃったんだよね・・・」




 [前のページへ]   戻る   [次のページへ