ちょきちょき、ちょき。



(私はハートの形に切ってほしい)



ぱちぱち、ぱちん



(僕は綺麗に切り揃えて欲しいんだ、そのままの姿がいいんだよ)







「わかってる、わかってるよ」



じゃきじゃき、じゃきん



(ありがとう)(こんな風になりたかったんだ!)



(´・ω・`)「どういたしまして」










僕は心を読めた。

人や、花や、木々の

どんな風に切れば木々が喜ぶかだって知っていた。











嗚呼、だけど、

あなたの、あなたのためならば、




その3

庭師の話

  








ショボンは心が読めました、

彼は庭師の息子に生まれ、

いつしか毎日仕事に励むようになりました。


(´・ω・`)「どうしたいのさ」

(星にしておくれよ、あの空に浮かぶ星に)

(´・ω・`)「わかったよ」


じゃきじゃき、じゃきん


(わあ嬉しいな!ありがとうショボン!)

(´・ω・`)「どういたしまして」





植物の心を聞いて、切っていくと、

不思議と景色に彼等は溶け込んで、

世界を彩ってくれました。


「やあ!これは綺麗な庭だ!」

「きっと良い庭師がいるんだろうね!」


そんな声がよく聞こえてきました。


(*´・ω・`)(嬉しいな…)


ショボンもまんざらではありませんでした。




ある日の事です。

ショボンはある良家の家に雇われました。

ショボンの腕を見込まれて、の事でした。


(;´・ω・`)(緊張するな……)


そこで彼は、




「紹介しておこうか、こちらが娘のクーだ」


川 ゚ -゚)「よろしく」

(*´・ω・`)「あ、よろしくお願いします」




(*´・ω・`)(綺麗な人だな)


始めての恋をしました。



しかし所詮、彼は庭師。

身分違いの恋に夢見る事など彼には出来ませんでした。


(´・ω・`)「どうする?」

(私はシルエットが三角形になるようにしてほしいな!)

(´・ω・`)「はいはい」


ちょきちょき、ぱちん

いつものように庭の手入れをしていた日の事です。






(綺麗な庭だな)

(;´・ω・`)(あ、)


声が、聞こえました。

それはこの家の、


川 ゚ -゚) 「……」


お嬢様の心の声でした。






ショボンは恋い焦がれました。

嗚呼、どうしたらあの人に見てもらえるだろう。

嗚呼、どうしたらあの人の心に触れられるだろう。

毎日、そんな事ばかり考えていました。

ちょきちょき、ちょき……


(-@∀@)「どうしたショボン?元気ないぞ?」

(´・ω・`)「いや、ちょっと疲れただけだよ、大丈夫」


仲間の庭師にもそんな事を言われてしまいました。




ある日、思いきってショボンはお嬢様に尋ねました。

午後の、彼女が庭でお茶をするときに勇気を出して。


(´・ω・`)「お嬢様」

川 ゚ -゚) 「ん?」

(´・ω・`)「お嬢様は、その、どのような庭がお好きですか?」

川 ゚ -゚) 「?」

川 ゚ -゚) 「私は今の庭が好きだぞ?」

(´・ω・`)「そうですか」


会話はそれだけ、ただそれだけでした。

でも、



(この庭は好きだ)

(しいて言うなら、)

(私が好きな庭は……)

(こんな……)

(それで……)


その会話の中で、

お嬢様の心を覗きました。

どんな庭が好きなのか、

それをショボンは理解したのです。





あなたが望むならそうしよう。



ちょきちょき、ちょき。



あなたがそれが好きならば、



ぱちぱち、ぱちん。



あなたが少しでも喜んでくれるなら、



じゃきじゃき、じゃきん。



例えそれが報われない思いでも、



(´・ω・`)「……」

(待ってくれ!なんでそんな形に!)


じゃきじゃき、じゃきん。


(´・ω・`)「……」

(私はハートの形がいいの!どうして!?)


ぱちぱち、ぱちん。




あなたが、あなたが望むなら。

ショボンは植物達の声を無視し続けました。




ショボンは心を読まなくても優秀な技術を持っていました。


じゃきじゃき、じゃきん。

ぱちぱち、ぱちん。


(´・ω・`)(お嬢様の好みはこんな庭なんだな)


少し、心が痛みました。

植物達の声を無視して、勝手に切っていく事は、

まるで暴力を振るっているようでした。




やがて、


(頼むよ!どうして急に!)


彼には、


(聞いて……!いるん……!!)


ショボンには、


(……!……!!)


何も、


(…………)


何も、






(´・ω・`)「静かだ……」

(´-ω-`)「とても、とても」

(´-ω-`)「押し潰されそうなくらい」



心の声が聞こえなくなりました。





やがて時が経ち、

お嬢様が結婚することになりました。


(´-ω-`)「……」


わかっていました、報われない、

元から叶わぬ恋なのです。


でも、一つだけ、一つだけショボンは望んでいました。




結婚式では雇われている者たちが皆でお嬢様に贈り物をするのです。

コックは料理を、

使用人たちは職人に美しいネックレスを頼んだそうです。

そして、

そして庭師は、


「ひとつ、何か植物のオブジェを作ろうじゃないか!」


これがショボンの目標でした。




オブジェは庭師が全員で作ります。

ただ、それを先導するリーダーは一人です。

長い間仕えました。

長い間庭の手入れをしてきました。

長い間お嬢様の望む庭を作ってきました。


(´・ω・`)(リーダーは、僕だ……)


ショボンはそう信じていました。

それで、それで僕の恋は報われる。




でも、


「オブジェを作る、リーダーは」


その願いは、


「アサピーだ」

(*-@∀@)「本当ですか!?」

「ああ、君だ」

(*-@∀@)「頑張ります!」


水泡に消えました。






(;´・ω・`)「……え?」


誰よりもお嬢様の好みを理解した。

誰よりもお嬢様好みの庭にした。

ずっとずっと、

たくさんの声を無視してまで、


(;´・ω・`)「……」


ショボンは呆然と立ち尽くすだけでした。




(´・ω・`)「……」


夜に一人で庭の木々を見ていた時です。

とても懐かしい、彼等の声が聞こえてきました。


(アサピーは望んだように切ってくれたよ)

(私達の声は聞こえなかったけどね)

(彼は私達を見てくれていたよ)


いやだ、聞きたくない。

ショボンは耳を塞いでうずくまりました。

ずっと、ずっと。




あなたのために切っていた。

あなたのために声を聞かなくなった。

あなたの望みを叶えたくて、

叶えたくて、


(´;ω;`)「……」


しくしくとショボンは泣くだけでした。




結婚式の時です。

お嬢様と目が合いました。


川 ゚ -゚)

(´・ω・`)


とても透き通った目で、

ショボンには見つめる事など出来ず、


(;´・ω・`)「……」


思わず俯いてしまいました。

まるで、

まるでお嬢様の目が、






「あの時の庭は素敵だったのに」


と、語りかけてくるようで、








それからショボンは腑抜けてしまいました。

何をしてもぼんやりとして、

仕事にも身が入らなくなりました。

そして、


(´・ω・`)「さようなら……」

「さようなら」


ショボンは庭師を、

解雇されてしまったのです。





小さい時から庭師の仕事だけを教えられてきました。

ただそれだけをやってきました。

それ以外の仕事なんて知りません。

色々な家の庭師になりました。

色々な家の要望に応えてきました。


「いまいちだなぁ……」

(´・ω・`)「……」

「他の人のがいいや」


いくら望みに応えても……いや、応えようとすればするほど、

ショボンからは魅力の無い物ばかり生まれました。






いつしかショボンはふらふらと、

ふらふらとふらふらと、

あてもなく、旅をするようになりました。

目的も何も、何も残っていないのに。




そんな毎日を何年も繰り返したある日の事です。


(;´・ω・`)「うわぁ……」


とても、とても汚いお城を見つけました。

城のあちらこちらにツタが張り、

木々は伸び放題。

ちっとも手入れがされていないようでした。


(;´・ω・`)「これはひどい」





(;´・ω・`)「……」


それは体に染み付いていたのかも知れません。

気がつけばショボンはハサミを手に持っていました。

伸び放題の木々をすこしづつ切り始めます。


ちょきちょき、ちょき。

ぱちぱち、ぱちん。


(;´・ω・`)「……」


何も考えず、ただ思うがままに切って行きます。

ショボンはそれをとても懐かしく感じました。





それは誰にも頼まれなかった事、


ぱちぱち、ぱちん。



それは自分で始めた事。



ちょきちょき、ちょき。



それは……



じゃきじゃき、じゃきん。





(……)

(´・ω・`)「……」

(……!)


そしていつしか、



(ねえ……!…!)

(´・ω・`)「……」


無くしたはずの、




(僕はまあるくなりたいんだ!)

(私はハートがいいの!)

(綺麗にしてくれよ!伸び放題でうんざりなんだ!)


無くしたはずの声達が、



(((頼むよ!ショボン!)))



(´;ω;`)「うん、うん……」


帰ってきたのです。





それはいつしか忘れていた気持ち、


ちょきちょき、ちょき。

ぱちぱち、ぱちん。

じゃきじゃき、じゃきん。


彼等は話します。

どんな風に変わりたいか。

どんな風になりたいか。


(ショボン、君はどうしたい?)

(´;ω;`)「僕は……」





(´;ω;`)「僕は……」


ずっと庭師として育てられた。

ずっと庭師として生きてきた。

だけどそれがずっと続いてきたのは、


(´;ω;`)「庭師として…生きていたいよ……」


それが本当に好きだったから。





そんな時です。



「な、なんか城が綺麗になってるお!」

「凄いですねー」

「魔法みたいニダ!」



(´;ω;`)「ん……?」



何やら城から声が聞こえました。





( ^ω^)「ん?」

(*゚ー゚) 「あら」

<ヽ`∀´>「ニダ」


(´;ω;`)「……人がいる?」


放置されていると思っていた城から、

人が出てきたのです。


(ここの人だよ)

(太った人は王様なんだ)


植物達が教えてくれました。




( ^ω^)「これ、君がやったのかお?」

(;´・ω・`)「ええ…まあ……」

( ^ω^)「ふむふむ」


王様は考えました。


( ^ω^)(きっと彼は一流の庭師なんだお)

( ^ω^)(僕が城に引き止めれば彼の雇い主はとっても困るに違いないお!)

( ^ω^)(クックック…ノーとは言わせないお)

( ^ω^)9m 「君!」

(;´・ω・`)「は、はい!」

( ^ω^)9m「ここの庭師になりたまえだお!」



「え、いいんですか、やります!」

「え!?あ、もちろんだお!」

「わー凄いですね」

「綺麗な庭ニダ!」

(何かおかしいお……まあいいお……)









その3

庭師の話 終わり








(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)(ありがたい話しだ、本当に)

(´・ω・`)(でも、だからこそ、)

(´・ω・`)(気になった事がある)

(´-ω-`)(さっき少しだけ王様の心が読めた)

(´-ω-`)(王様、あなたは、)

(´-ω-`)(あなたはどうしてそんなにも……)






(ずっと悲しんでいるのですか?)





  その3

庭師の話 今度こそ終わり






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