彼は王様になりました。

使用人を見つけました。

コックを見つけました。

庭師を見つけました。

商人を見つけました。


彼は、自分の目標としていた王様になったのです。





ξ゚听)ξ「それで?」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「あなたの本当の願いは、」


王様が、本当に、本当に、願っていたことは、


ξ゚听)ξ「叶ったの?」

( ^ω^)「……まだだお」


未だに叶ってはいませんでした。






ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「……」


こうして魔女と話す事は何回目でしょう。

毎回おんなじ内容です。


「あなたの願いは叶ったの?」


答えはいつも同じでした。




ξ゚听)ξ「ま、どうでもいいけどね」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「でもね、」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「時間はどんどん近づくわ」

( ^ω^)「わかっているお」


終わりはいつもこの会話。

そうして魔女はどこかへ行ってしまうのです。




( ^ω^)「……」


王様一人の部屋に、響く音。


コンコン、げほげほ、

コンコン、げほげほ、


(  ω )「……」


王様の、咳込む音でした。

誰にも聞かせていない、音でした。




(*゚ー゚) 「ねえ王様!今日はお皿をピカピカにしたんですよ!」

( ^ω^)「これは凄いお!輝いているお!」


それでも毎日は続きます。


(*゚ー゚) 「今日はお部屋の隅々まで磨いたんですよ!」

( ^ω^)「おおう!滑ってしまいそうだお!」


毎日は、続きます。




<ヽ`∀´> 「王様!新しいキムチ料理ニダ!」

( ^ω^)「おっお!これは辛くて美味しいお!」


王様はそんな毎日を、


<ヽ`∀´> 「王様!キムチ以外の料理を作ったニダ!」

( ^ω^)「流石我がコックだお!これで僕もより一層偉くなるお!」


いつしか好きになり、




(´・ω・`)「どうですか王様」

( ^ω^)「流石ショボンだお。美しい庭だお」


いつしか大切に思うようになり、


(´・ω・`)アイカッチュー

(;^ω^)「ん?」

(´・ω・`)「いえ、なんでもないです」


いつしか、




/ ゚、。 /「今日は美味しいお肉ですよ」

( ^ω^)「素晴らしいお!夕食が楽しみだお!」


そんな毎日が、


/ ゚、。 /「まあキムチ……」

( ^ω^)「キムチ……」


何より愛おしく思うようになりました。







でも、












大切で

愛おしくて、

かけがいの無いものでも、








王様の願いには変わりません。


コンコン、げほげほ、

コンコン、げほげほ、


(  ω )「……」


だから、だから、


だから王様は……





( ^ω^)「おまえら全員クビ」

(*゚ー゚)

<ヽ`∀´>

(´・ω・`)

/ ゚、。 /

( ^ω^)「野垂れ死ねバーカ」



そういう道しか選べなかったのです。




*****


「しつもんがありまーす」

「なんだい?」

「魔女は伝説だとききました」

「そうだね」

「どうして伝説なのですか?」

「それはね、」





「坊やに、魔女は願いを叶えると教えたね」

「はい、教えてもらいました」

「大抵の願いってのはね、」

「はい」

「魔女に頼む必要なんて無いんだ」

「?」





「地位が欲しい男は魔女を呼ぼうとした」

「……」

「だけど魔女を呼ぶよりも、努力して偉くなる方がずっと簡単だったんだ」

「……」




「お金が欲しい男がいた」

「……」

「だけど同じような伝説の錬金術を探すほうが、」

「……」

「ずっとずっと簡単だったんだ」

「……」

「魔女には代償として来世が奪われるからね、みんなそっちを選んだ」




「じゃあ、じゃあどうして王様は魔女を選んだんですか?」

「……世界のどこにもね、」

「……」

「人を生き返らせる伝説はなかった」

「魔女なら?」

「魔女でも無理さ」

「じゃあどうして!」

「魔女はね、自分が無いんだ」

「自分が?」





「魔女を呼び出すために必要な、悲しみの香辛料、呼び出す者の生き血、」

「……」

「その中にある、気持ちから魔女は、姿を作る、顔も性格も、」

「……」

「魔女の姿がここの文献に無いのはそういう理由なんだ」

「じゃあ、王様は」

「……」


*****









その5

王様の話







それは彼がまだ、幼かった日の事です。


( ^ω^)「僕は王様になるお!」

ξ*゚听)ξ「ふーん」

( ^ω^)「そしたらツンはお妃様だお!」

ξ*゚听)ξ「……ありがとう」

( ^ω^)「約束だお!」

ξ*゚听)ξ「うん……」


それは子供達の約束、

どこにでもある、小さな約束。




二人はとても仲良しでした。


ξ*゚听)ξ「お花の飾りはこうやって作るの」

( ^ω^)「おおー、ツンは物知りさんだお!」

ξ*゚听)ξ「ふ、普通だよ」

( ^ω^)「それでも僕は知らなかったお!だから凄いお!」

ξ*゚听)ξ「ありがとう……」


毎日のように二人は遊びました。

二人は毎日を輝くような笑顔で過ごしていました。




やがて二人が大人に近づいていって、

関わり方が変わっても、


( ^ω^)「今日はお仕事だお!」

ξ゚听)ξ「……気をつけてね」

( ^ω^)「おっおwwwwツンにそう言って貰えるだけで百人力だおwww」

ξ*゚听)ξ「バカ……」


二人はとても仲良しでした。










だけど……そんな日々は続きませんでした。









西のお城と、

東のお城と、

南のお城と、

北のお城が、

みんながみんな、


戦争を始めたのです。





二人は離れる事になりました。

男は戦場へ、


( ^ω^)「待っててくれお」

ξ;凵G)ξ「絶対…帰って来てね……」

( ^ω^)「もちろんだお!」


彼女を守るために、

戦場へ。





殺しました、

何人も何人も、


(# ω )「うおおおおお!!」


ただ、ただ守りたかったから、

ただ、ただ彼女の下へ帰りたかったから、


( ;ω;)「うおおおおお!!!」


その、一心で、

何人も、何人も、

殺しました。








だけど、だけど、

戦争が終わって、

ようやく、ようやく戦争が終わって、











(  ω )「……」


彼が自分の居た場所へ帰った時には、







(  ω )「どうして無いんだお……」

(  ω )「僕の家も、向かいのおじさんの家も」

(  ω )「となりのおばさんの家も、公園も、僕の町も」

(  ω )「ツンの、家も……」

(  ω )「どうして……」

( ;ω;)「どうして何も無いんだお!!!」




「どうして!!!!!」











何も、残ってはいませんでした。









「あの村?」

「ああ襲われたんだって?」

「きっとみんな■■ちゃいないよ」

「みんなみんな■■じまった」

「酷いことをするよな」




不快な言葉を何度も聞きました。

何度も、何度も、


(  ω )「生きてるお」


だけど彼は、


(  ω )「きっとツンは生きてるお」

(  ω )「死体が無いお、墓が無いお」

(# ω )「だから絶対に生きてるお!」


それを信じようとはしませんでした。




彼は探しました。

ツンを、大切な人を、

西へ東へ、

南へ北へ、

彼は探しました。






だけど、


(  ω )「見つからないお」


西も東も、


(  ω )「見つからないお」


南も北も、


(# ω )「どうして見つからないんだお!!!」


どこにも彼女はいませんでした。




( ;ω;)「……」


西にも東にも南にも北にも、

どこを旅しても、

彼女はいませんでした。


( ;ω;)「ツン……」


悲しみに沈みそうな、

そんな時でした。

彼がそれを、

思い出したのは。





「僕は王様になるお!」

「ふーん」

「そしたらツンはお妃様だお!」

「……ありがとう」

「約束だお!」

「うん……」



それは幼い日の約束。




( ^ω^)「僕は、」


もしも偉くなったら、

もしも王様になったら、

彼女が僕を、

彼女が僕を見つけてくれるかも知れない。


( ^ω^)「王様に、なるお」


もう一度、会えるかも知れない。





彼女を探す旅で彼は色々な事を知っていました。

魔法のような事だって、

錬金術だって、

なんだって知っていました。

だけど、

それでも彼は、



( ^ω^)「へいへい!魔女さん!願いを叶えてくれお!」

ξ゚听)ξ「……いいけど、わかっているの?」




魔女を、呼びました。




もしかしたら、

もしかしたら、彼はわかっていたのかも知れません。

彼女が、

彼女が、もういない事を。

それでも彼は、王様は、

いびつに歪んだ夢を、それだけを信じて、






(; ω )「ガハッ!ガハッ……ツン」


生きてきたのです。





(; ω )「……」

ξ゚听)ξ「……」


それはもう何回目かすらわからない会話の時でした。


ξ゚听)ξ「このまま、終わる?」
(; ω )「……」


ただ、


ξ゚听)ξ「まだ二つ、願いを叶えられるのに……」

(; ω )「……」


今日は少しだけ違いました。





それは彼の記憶が魔女に影響したのかもしれません。


ξ゚听)ξ「このままだと、死んじゃうよ?」

(  ω )「……」

ξ゚听)ξ「ねえ、それでもいいの?」

(  ω )「……」

ξ;凵G)ξ「ねえったら!」


それは、

まるで、彼女が言うような言葉、




だけど、


(  ω )「……いいんだお」

ξ;凵G)ξ「……」

(  ω )「もう……いいんだお魔女さん……」

(  ω )「ツンは、ツンはきっと、」


王様は、彼は、


( ;ω;)「死んでしまったんだお……」


疲れてしまっていました。





ξ;凵G)ξ「……」

(  ω )「もう叶えられる願いなんて、しらないお」

ξ;凵G)ξ「……」

(  ω )「……彼等に、」

ξ;凵G)ξ「彼等?」

( ^ω^)「僕が、追い出してしまった彼等のために、」



「使ってくれお」









ふたつめの願いは、

家臣達の幸せ







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