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  (´・ω・`)僕と不思議なドクオの木のようです








学校が休みになり僕は家に篭っていた。


体に突き刺さるような日差しから逃げたかったわけではなく、
ただ外に出る理由が無かったから僕は家にいた。
言ってしまえば僕には友達がいなかったのだ。

いじめなどがあったわけではない。
ただ休みになってまで会うといった関係の人がいなかっただけだ。
要は空気、クラスにいてもいなくても変わらない存在だったのだ。僕は。

とはいえ何もせず家にいると色々と両親は口を出してくる。

「もっと遊んでもいいのよ?」
「たまには友達と遊びにいったら?」


困った物だ。友達がいないから家にいたのだけれど。

まぁ年頃の息子が家で勉強だとかばかりしているのは逆に不安だったのだろう。
じわじわと蝉が鳴き続ける外に出るのは正直面倒だったが、
まぁ致し方ないと諦め出かけることにしたのだ。






(´・ω・`) 何処へ行こうかな


特にいく宛もなく家を出たためいきなり困ってしまった。
ああどうしようかな、そんな思考だったのだ。


(´・ω・`) ……


少しばかし考え僕は近くの山で森林浴をすることにした。
図書館等も少し考えたが何故か行く気にはならなかった。


(´・ω・`) あ、これください


虫除けスプレー等をコンビニで購入して準備を整えた。
僕は少しワクワクしていたのだと思う。




森林浴はなかなかに気持ちの良いものだった。
想像していたほどの暑さはなく、
風が吹けばむしろ涼しさすら感じた。


(´・ω・`) いい場所だなぁ


僕は少しだけ外に出た事を楽しく思っていた。
ひとつ深呼吸をしてみる。
家でのエアコンを通して出された空気とは違い、
どこか木々の匂いを感じた。







そうしているうちに普段はあまり思わない発想が出てきた。
夏は人を開放的にするらしいが僕も例に漏れなかったらしい。
つまり、山に登りたくなったのだ。


(´・ω・`) うん、このぐらいなら大丈夫かな


山と言ってもそれほど険しいわけではない。
休日には家族がピクニックに来たりするような山だ。
道も舗装されている。


(´・ω・`) ふふん


けれど引きこもりがちな僕には大冒険、
そういうと少し陳腐だが貴重な体験だったのだ。







(;´・ω・`) ふぅ……


普段運動をしない僕にしてはかなり活動した方だった。
頂上に着いた時には額から汗がだらだらと流れ落ちていた。
幸い、まだ夕方にはなっておらず時刻は3時を回ったところだった。


(´・ω・`) ん?


そこで初めて気づいた。


('A`) ダリー


頂上に一本、とても大きな木があることに。

それに顔がついていることに。





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(´・ω・`) ……おーい

('A`) え?だれ?

(´・ω・`) きみ、なんだよ


つい、好奇心から話しかけた。




そして最初の会話だ。


('A`) やあ、大きな木だよ

(´・ω・`) 貧相な顔だ

('A`) うるさいなぁタレ眉

(´・ω・`) 焼き払うぞ

('A`) やめて


初対面の人……人ではないか。
初対面の木に失礼な発言だが何処か自然と軽口を叩いてしまう雰囲気が木にはあった。

なんというか……どこか親近感を感じたのだ。







(´・ω・`) 大きな木とかではなくてね

('A`) なんで木と顔が付いてるかって?

(´・ω・`) そうそう

('∀`) ききたい?

(´・ω・`) きめぇ

('A`) ヒデェヤ







僕にしては珍しいくらいに好奇心が刺激されていたと思う。

好奇心、猫をも殺すみたいな言葉が一瞬ちらりと頭を掠めたが、


('∀`) エヘヘ

(´・ω・`) キメエ

('A`) ヒデエヤ


一瞬で消えた。

彼の根元辺りに入る。
いい感じに影が出来ていて涼しかった。
そこから僕の住む町が見えた。


(´・ω・`) なかなか綺麗じゃないか

('A`) え?俺が?

(´・ω・`) マッチマッチ

('A`) やめて




(´・ω・`) そんなことより


町の景色にも心を奪われかけたが好奇心を捨ててはいなかった。
なんだいキミは。
そんな気持ちがどんどんと湧いてきたのだ。


('A`) ああ、俺かー

(´・ω・`) そうそうキミだよキミ

('A`) うーん、自分でもあまりわからんのだがドクオの木だよ俺は

(´・ω・`) ドクオの木?


初めて聞く名前だ。
十数年という短さではあるが今までの人生で、一度も聞いたことの無い名前だった。






('A`) ドクオのドクは孤独のドクでね

(´・ω・`) ……

('A`) まぁ大なり小なり孤独な奴が見れるんだよ。ごめん、俺もよくわからねぇや

(´・ω・`) きみの方が孤独な気がするよ

('A`) うるせぇ


孤独。
そんな事を感じた事は無いと思っていた。
だから「そんなの嘘っぱちさアハハ」
なんて笑い飛ばせたはずなのだけど。


(´・ω・`) 孤独のドク、ねぇ

('A`) らしいぜー





どこか笑い飛ばせない自分がいた。

学校や家や、町の至るところで、
僕は人と少しはふれあっていたはずなのに。


(´・ω・`) きみは寂しいと感じた事はあるかい?

('A`) 寂しい?

(´・ω・`) そう。孤独を嫌に感じたりした?

('A`) んー……


シュールな光景だったと思う。
ひたすら木に話しかける少年と言葉を使う木。
非日常というものは案外近くにあるみたいだ。






('A`) どうなんだろうなぁ

(´・ω・`) ずっとここに一人なんだろ?

('A`) んーそれがあんま記憶がない

(´・ω・`) そうなのか

('A`) お前みたいな奴とはよく語り合った気がするよ

(´・ω・`) 類は友を呼ぶのか……

('A`) みたいだねぇ


僕には友達はいなかった。
だけれど言葉を交わす程度の付き合いのクラスメイトはいた。






(´・ω・`) 不思議だなぁ

('A`) 何が


家には母さんがいた。父さんがいた。
極々普通の家庭だ。
僕は適当に学校の事を食事の時にはなすくらいだった。


(´・ω・`) いやぁなんだか人恋しい

('A`) 人はいないが木がいるぜ

(´・ω・`) たたっきるぞ

('A`) ひでえゃ


町の八百屋さんやお肉屋さんと世間話もした。
まぁ天気とかそんなどうでもいいことだけど。







(´・ω・`) 僕って孤独かね?

('A`) さあ?俺が見えるなら孤独かもしれんね

(´・ω・`) 結構人とは話けどねえ

('A`) リア充が……死ねっ……

(´・ω・`) あ、ライター落としそう

('A`) ごめんなさい


どうしてこんな気持ちになっているのだろう。
やたら僕はセンチメンタルな気持ちになっている。
孤独じゃあなかった、はず。

寂しくなんてなかったはず。


そんな風に言い聞かす自分がいた。







気がつくと時間は経っていた。
僕のいる場所からはオレンジ色に染まった空が見えた。


(´・ω・`) ……


帰ろうか。そんな事を思った。


('A`) お帰りかい?

(´・ω・`) ああ、そうだね

('A`) そうか、あーと、ええと

(´・ω・`) 名前はショボンだよ

('A`) そうか、じゃあなショボン

(´・ω・`) またくるかもわからんね

('A`) そうかそうか


どこかドクオは嬉しそうに見えた。
やはりこんな山でも頂上に一人でいるのは寂しいのだろうか。





食事の時には森林浴をした話をした。
ドクオという友達と行った、という嘘を交えてはいたが。
珍しく自分から両親と話した気がした。


(´・ω・`) なかなか悪くなかったよ、森林浴


母さんと父さんは嬉しそうだった。
少し心がじんわりとした感覚を覚えた。





夜、ベッドで横になりながら明日もまた山に昇ろうなんて考えていた。

不思議な感覚だ。木とはいえ自分以外の誰かと会うからだろうか。


(´・ω・`) なんなのだろうね


昔、こんな気持ちを感じたのを思い出した。
なんだったかな。
……そうだ、小学生の時だ。






(´・ω・`) あの時は友達と言えるような人がいたっけ


そういえばそうだった。
すっかり一人に慣れていたのかどうかわからないが、僕にも友達がいた時があった。
これはその時の、翌日に遊ぶ約束をした時の、夜の気分だ。


(´・ω・`) ……

(´-ω-`) 懐かしいなぁ……


ゆっくりと目を瞑る。
外の風が吹く音なんかに意識を委ねている内に僕は眠りに落ちていた。






(´・ω・`) ……


翌日、僕は図書館にいた。
別に山にいく予定を中止にしたわけじゃない。
昨日、森林浴をしていた時間を図書館に当てただけだ。


(´・ω・`) 別に目的はないけれど


なんでここに来たのかはわからない。
山の頂上、ドクオに会いに行くのは決まっていたとして、
何処か別の場所にも行きたかったようなのだ。僕は。






かりかり、かり


そんな音をたてながら勉強を少しした。
特に何かあるわけでもなく時間は過ぎていった。


(´・ω・`) そろそろいくかな


お昼過ぎになった頃、僕は図書館を出ることにした。
まぁ勉強はそれなりに集中できたしいいか。
そんな事を考えていた。






(´・ω・`) おっと


図書館を出ようとした時だ。
扉のところで人に肩をぶつけてしまった。


(´・ω・`) ああごめんなさい


そう言おうとして相手の顔を見ると懐かしい顔だった。

( ^ω^) お!ショボンじゃないかお!

(´・ω・`) ブーン?


昨日、寝る前に少し思い出した小学生の時の友達の、
ブーンだった。





( ^ω^) 勉強かお!

(´・ω・`) うん


久しぶりに会ったにも関わらずブーンは小学生の時と変わらず接してくれた。
ブーンも勉強に来ていたらしい。
僕がこれから用があるというと、


( ^ω^) そうかお!よかったら今度勉強を教えて欲しいお!

(´・ω・`) いいけど、わざわざ勉強しにくるくらい勉強熱心なら僕いなくても大丈夫じゃない?

( ^ω^) いや、補修の課題で……

(´・ω・`) ああ…なるほど……


また明日の午前中にでも図書館で会おう、そう約束した。





('A`) ほお、よかったじゃないか

(´・ω・`) まぁね、勉強教えられるかわからないけど


出会って2日目にも関わらず僕はドクオと自然に会話出来るようになっていた。
やはりそれは僕が孤独で、
彼が孤独な僕がいたから現れたからだろうか。


('A`) 友達は大切にした方がいいぜ。俺いないからわからんけど

(´・ω・`) そうだね、それと

('A`) あん?

(´・ω・`) 僕が友達なってやるよ

('A`) ありがたいねぇ


一人と一木(この言い方が正しいかはわからないが)で少し笑った。




ドクオと話すことはどうでもいいことばかりだった。
天気がどうだとか、この山の土は栄養がないだとか。
そんなことばかりだった。

だけれども、どこかそれは楽しかった。
今まで学校のクラスメイトとしてきた会話と対して変わらない会話だ。


(´・ω・`) 相手が違うからかね

('A`) あん?

(´・ω・`) いやなんでもない


そんな風に思った。




(´・ω・`) んじゃあまた明日来るよ

('A`) おうおう


そんな会話をしながら帰路に立つ。

頂上から見える夕日を僕は好きになっていた。


(´・ω・`) (明日も晴れるといいな)


今までは景色も気にしなかったはずなのに、
そんなことまで僕は楽しんでいた。






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