ある日の集まりのない日。ブーンは自宅でクーを待っていた。
いつもの時間にクーが来る。
実はこのころブーンはクーに恋心を抱いていた。
カウンセリングを受けているうちに
クーの考え方や性格、自分自身に厳しいところ、それに話の論理性に惹かれた。
ブーンはこんな聡明な女性がいるんだと知った。
しかしブーンは悩んでいた。言っていいものか。
印籠的効果でクーを悩ませるだけじゃないか。

 




悩んでいるうちにクーがきた。いつもの言葉。

川 ゚ -゚)「おじゃまします、ブーン君のカウンセリングに来ました。」

もう慣れたものでクーはそのままブーンの部屋へと向かう。
一応ノックをして確かめる。

川 ゚ -゚)「やあブーン君、入るぞ。」

ブーンの返事があるまでクーはその場で待っている。
一度ブーンがトイレに入っていて返事がないときでも
十分ほど待っていたことがあった。
それ以来ブーンはクーが来る時間には部屋で待ったいるようになった。
ブーンがどうぞと声を出しなかに招く。

 




川 ゚ -゚)「こんにちは。今日はだいぶ顔色がいいな。
     睡眠を取っている顔をしている。」

クーは一度も調子はどうだと尋ねたことはなかった。
受け取り側がどんなふうにでもとれる質問をきらっていたからだ。
ただこのころブーンは不眠症になっていた。
寝る前にどうしても死を考えてしまうから。
自分は何者だ、自分はいったい何なんだと考え
もうすぐ来る死を思い起こし恐怖に襲われるからだ。
だから寝る前はいつも睡眠薬を服用する。

 




( ^ω^)「こんにちわですお。」

挨拶をしてクーを座るように促す。

川 ゚ -゚)「さて今日は何の話をする?」

ここ最近ブーンとクーはよく死について語りあっていた。
お互いに自分が考える死の定義などを話し合い
矛盾した所や、何でそう考えるかを教えあい
理解しあおうとしていた。

 




( ^ω^)「今日は自分の意識についてですお。」

ブーンは話す内容を前もって考えておいた。
考えていたというより日記に書いた疑問を話すようになっていた。

川 ゚ -゚)「ほう、それはどういうことかな?」

( ^ω^)「死がせまってきてよく考えるんですお。
      僕が死んだら意識はどこに行くのかって
      パソコンのデータを消すようにまったくなくなるのか
      それともどこかに残るのかって。」

川 ゚ -゚)「ふむそうだな。私は、まったくなくなると思うんだがな。
     やっぱり人間も一種の機械と考えるとブーン君が言ったみたいに
     データを消したときのようにまったくなくなってしまうと考えるな。」

( ^ω^)「そうですかお。」

ブーンは少し悲しそうな顔をする。
 




そしてクーが続ける。

川 ゚ -゚)「だがな、こうも考えるよ。
     私は意識というものは自分は何者だと考えるところにあると思う。
     確かに死んだらブーン君の意識はなくなるだろう。
     しかし、もしどこかで誰かが自分は何者だろうって考えたらそれは
     ブーン君になるんじゃないかな。」

( ^ω^)「どういうことですかお?」

川 ゚ -゚)「例えば二人の少年がいたとしよう。
     太郎君が自分は何者だろうと考え、次郎君は考えなかった。
     このとき太郎君が死ねば太郎君は存在しない。
     だけど、次郎君も自分は何者だろうと考え始めたら
     それは太郎君と同じになるんじゃないのかなって。」

 




ブーンはよくわからない顔をしている。

川 ゚ -゚)「つまり、自分は何者だろうと考えたら
     その考えを持つものは皆同じ存在になると考えているんだ。
     同じ時間、同じ考え、同じ疑問を持っているんだからな。
     答えがあるかわからないが探しているならば道は一緒のはずだろう。」

ブーンは話に聞き入った。そんな考え方もあるんだなと。
そして確信する、やっぱり自分はクーのことが好きなんだと。

( ^ω^)「僕は自分は何者だろうと考えているお。
      クーさんもそう考えているなら同じ存在ってことかお?」

川 ゚ -゚)「そうだな、そうなる。自分は何者だろうって考えた瞬間
     新しい意識ができるからな。その意識が共通だったら同じ存在だろう。
     このことを考えた瞬間、私は君でそして一つの存在になる。
     本当にそうかはわからないが、同じ空間を生きているならば
     その生きている人の数だけ意識があるわけだからな。」

 




こんな会話を繰り返しているとブーンは安心する。
自分が死んでも意識を受け継ぐ人がいると思えるから。
クーは自分の考えを言っているだけだがそれでもブーンはそれに救われていた。
またクーも、自分の話を理解しようとするブーンに興味を抱いていた。

川 ゚ -゚)「ブーン君は珍しいな。私の話を理解しようとするものは
     半年病患者の中にはいなかったのに。」

そう言うとブーンは照れた。
クーのことが好きだから理解しようとしているのに
その下心と思えるものを褒められたのだから。
もっとクーを知りたいブーンは質問した。

( ^ω^)「そうですかお。
なんで半年病患者には理解しようとする人が
いなかったんですかお?」



話そうかどうか少し迷い、ブーンなら大丈夫だろうと思い話し始める。

川 ゚ -゚)「そうだな、これは偏見のように思うんだがやっぱり
     死の恐怖が関係していると思う。
     誰だって恐怖からは逃げたい。ましてや死だ。
     宣告された恐怖から考える余裕がなくなるだろう。
     そうなると、わかりやすく都合のいい解釈を求めると思うんだ。」
 




( ^ω^)「例えば?」

ブーンはさらに深く聞こうとする。

川 ゚ -゚)「実際に統計があるんだが、この国の半年病患者のうち40%が新興宗教に入っているんだ。
    ただその宗教ではお金を払って壷だの掛け軸だのを買えば
    天国へいけると言われるんだ。
    この国で暮らしていればお金で買えるものがほとんどだと誰もが思っている。
    そしてお金さえ払えばなんでもできると考えているんだな。
    その結果、お金さえ払えば天国へいけると思い込み大金をつぎ込むんだ。
    大金をかけて安心したいんだろうな。これで大丈夫って。
    それまでの経験上からお金を払うという行為を信じてるんだろうな。
    もっとも、患者自体が少ないからこのことは問題視されてはいないけどな。」

 




言い終え時計を見る。

川 ゚ -゚)「おっと、そろそろ時間だ私はもう帰ろう。」

クーはいつも話が盛り上がったところで帰る。
ただブーンは引き止めることはしない。
もし帰る理由を聞いてそれが夕飯の時間だからと言われたら
落ち込むからだ。
自分は夕飯以下なのかと思ってしまうから。

クーが帰った後、今日聞いたことを日記にまとめ自分の意見を書き入れた。
そこであることに気づいた。
まだクーが何でカウンセラーになったのか聞いていなかった。
忘れないように書きとめ今度聞いてみようと思った。
しかし、それが後日ブーンにとって辛い体験となる。

 

 



ブーンが死ぬ何日か前ついに飛行機が完成した。
しかし、プロペラは力の伝達効率が悪くまだ製作を繰り返している。
ただ、グライダーのように自動車で引っ張り飛ばすことは可能だった。
そこで、せめてブーンに少しでも空を飛ばしてやろうと考えたドクオとショボンが
軽トラックを借りてきて広い場所で飛ばそうと企画していた。

 




三人が集まりのある日、ドクオとショボンが朝早くからガレージに集合し
飛行機を分解していた。

(´・ω・`)「ねえねえドックン、これどうやってはずすの?」

飛行機を作るのに必要な計算をしていたショボンは
いまいち実作業になれていなかった。
一方ドクオは図面を描くことを担当していたので構造は熟知している。

('A`) 「ここは先にこのボルトはずすんだよ。
    気をつけろよ、強度が弱い部分もあるからな。」

そう言いながら分解を進める二人。
それでも二人は浮き浮きしていた。
自分たちが作った飛行機が初めて空を飛ぶ。
その瞬間を今日見れるのだと。
こんなふうに目標に向かっていくのは初めてだった。
だからこそ余計に楽しくなっていた。
分解をしながらドクオはそう考えていた。
 




('A`) 「しっかしブーンのやつしっかり作ってんな。
    寸法値がかなりの精度だぞこれ。」

寸法値通りに自作するのは根気のいる作業だ。
工学系の二人にはその苦労がよくわかっていた。
それは、そこまでブーンが空に憧れていたということだ。
ただ、ドクオには心配もあった。
この飛行機、飛ばないんじゃないかなと。
確かにブーンの夢は感動を与えることだった。
でも、空を飛びたいに決まっている。
そんなことはよくわかっていた。
ブーンを空に飛ばしてやりたい。しかし失敗したらもうほとんど時間がない。
 



('A`) 「なあショボン、これ本当に飛ぶかな?」

ドクオは不安を口にし、ショボンと共有しようとする。
だがショボンは不安な素振りはまったく見せず言った。

(´・ω・`)「大丈夫だよ。計算上は30〜40キロほどで飛べるよ。」

確かに何度も計算した。シミュレーションもやった。
それでもドクオは心配だった。
ショボンから、もしかしたら飛べないかもしれないねと聞きたかった。
そうすれば、ブーンを飛ばせなかったとき自分一人でなく
二人の責任になると思ったから。
しかしドクオはそのことに気づいてなかった。
ただただ不安だった。
ブーンから責められるんじゃないかなと。

('A`) 「そうか、でも不安なんだよ。
    ブーンを飛ばせなかったら、あいつどんな顔するかなって。」

まだ同意を求めるドクオ。
それはしょうがないことに思えた。
人が一人死ぬ。
それも一緒にやってきた友達が。
わかっていたことだ。
今まで抑えてきたのにその瞬間が迫るとやはり現実なんだなと実感する。

 




(´・ω・`)「飛べなかったらそれはそれでしょうがないじゃん。
     ブーンは僕たちを責めないよ。僕たちは三人でやってきたんだ。
     計算をしたのは僕、図面を描いたのはドクオ、作ったのはブーン。
     でも、どれも三人で納得しながらやってきたじゃない。」

一人がずっとその作業をやってきたわけじゃない。
お互いを手伝い合い、意見を言い合い作ってきた。
ショボンはそのことの意味をよく知っていた。
失敗しても連帯責任だからと甘えるわけじゃない。
そんなショボンの言葉にドクオは少し不安が柔らいだ。

('A`) 「そうだな、飛べなかったらやり直すだけだ。
    直し終わったとき、そのときブーンはいないかもしれないけどな。」
 




その日は晴天。雲がぷかりぷかりと浮かぶ綺麗な空だった。
ブーンが集合時間にやってきた。
分解作業はもう終わっている。
軽トラに積み込み早くも運転席に乗っている二人。

('A`) 「よお。今日はこいつをテスト飛行させに行くぞ。」

ブーンがガレージに入ってくるなり予定を伝えるドクオ。
しかしブーンは軽トラと分解された飛行機を見てすぐ理解する。

( ^ω^)「まじかお、今日いくのかお。」

ブーンにはテスト飛行のことを伝えていなかったのでびっくりする。
だがすぐに満面の笑みに変わった。
これからすることへの期待。
三人が半年近くかけて作ったものの成果を試す期待。
いい笑顔だった。
目の下のくまと、死の不安に怯え表情をのぞけば。
 




(´・ω・`)「ほら早く乗って。荷台しか空いてないけど。」

('A`) 「特等席だぜ、わざわざ真ん中に機体の座席を置いたんだ。」

ショボンとドクオが急かす。かなり楽しみのようだ。
ブーンが荷台に積んである飛行機の座席部分に座る。
これから空を飛ぶという期待に胸を膨らませ。
しかし、そこでブーンが二人にあるお願いをする。

( ^ω^)「ごめん、ちょっと待ってほしいお。
      空を飛ぶとこクーさんにも見せたいお。」

ブーンはガレージによく顔を出していたクーにも見せたいと思った。
また、空を飛ぶかっこいいと思える姿を見てもらいたかった。
別に急ぐわけでもない。今日は一日晴れの予報だ。
二人がブーンを急かしていたのはただ早く飛ばしてみたいから。
 




ブーンがクーの携帯に電話をかけ了解をとる。
クーがくるまでに一時間ほどかかるようだ。
ドクオがその間にドンキヘ行って
映画に出てくるような飛行服を買おうと言う。
安っぽいものでも雰囲気は大事だ。
三人はドンキに行きそれっぽい服とそれっぽい帽子を買った。
ついでにとバイク用だがゴーグルも買った。
ほかにもいろいろ買いガレージへと戻っていった。

ガレージの外にクーが立っていた。

川 ゚ -゚)「おはよう、ついに飛ばすんだな。」

簡単な挨拶を済ませ軽トラに乗り込む四人。
ショボンがドンキで買ったステッカーを軽トラに貼る。
そのステッカーはこう書かれていた。
最大積載量夢いっぱい。
荷台に飛行機とブーンとクーを乗せ出発していく。
ショボンがクーと席を替わろうとするがドクオがそれを察知し止める。

 




道路を走っているときブーンはご機嫌で飛行機の座席に座っていた。
それだけでも空を飛んでいる気がした。
交差点を曲がる度にブーンは子共みたいなことを言っている。

( ^ω^)「右旋回だお、次は左旋回。ブーン
      敵機発見、赤信号を破壊だお。ダッダッダッダ。」

まるで飛行機の模型を持って走り回る子共のようだった。
そんなブーンを見てクーが笑っている。
それに気づいて我にかえるブーン。
照れくさいのか、それとも恥ずかしいのか
弁解がましくクーに話す。

(;^ω^)「いやこれは、男の子ならみんなやるお。
      ていうかやりたくなるお。ねえドクオ、ショボン。」

 




ブーンが車内にいる二人に話しかける。
だが二人は聞こえないふりをして黙っている。
耳を真っ赤にし俯いているブーンにクーが声をかける。

川 ゚ ー゚)「面白そうだな、ちょっと私にも代わってくれないか。」

笑いながらクーが言う。
ブーンは席を代わりはじめる。
ここに座れば絶対にやりたくなるはずだと思ったから。

信号待ちのわずかな時間に席を交替する。
信号が青になってからけいと軽トラが進みだす。
クーが飛行機の座席に座っている。
だがブーンのやったようにはしゃぐことはない。

 




川 ゚ -゚)「なかなかいいもんだな。空を飛ぶってのはこんな感じなのかな。」

素直な感想を述べる。
とても冷静だ。ブーンはさっきの行動を思い返し赤面した。
だが、クーにも先ほどやったことを薦めた。
そうすればもっと空を飛んでる気持ちになれると言って。
それに頷きクーが声をあげる。

川 ゚ -゚)「右旋回だ、次はターン。
     私から逃げられると思うなよ。
     それ信号機破壊だ。」

 




映画で見た台詞を真似る。
クーの声はまだまだ続く。

川 ゚ -゚)「このヘナチョコが。
     帰ってママにキスしてもらいな。」

クーが自分の世界に入り込む。
それを見てブーンが笑う。
その笑い声でクーが現実に帰ってきた。

川 ゚ -゚)「悪くないな。確かに臨場感が増したよ。」

ブーンが自分の気持ちをわかってくれたと思い笑う。

川 ゚ -゚)「なんで笑う。
     ブーン君がやれと言ったんじゃないか。
     そんなに笑ったら恥ずかしいじゃないか。」

その一言で車内の二人も笑い出す。
さっきまで大声で叫んでいた者と同一人物とは思えないギャップに。

 




出発して一時間ほどで目的地に到着した。
ピクニックコースが近い川沿いの道だ。
本来車は乗り入れ禁止だがそこには目を瞑り
長い直線の道へと入っていく。
車から降りて三人が飛行機を組み立て始める。
今回はブーンがいるので作業が早かった。
組みあがった飛行機を見て感に浸る三人。
早速ドンキで買ってきた飛行服っぽいものを着る。
順番に思い思いのポーズで飛行機と写真を撮っていく。
最後にクーを入れて四人で写真を撮った。
そしてロープで軽トラと飛行機を繋げる。

 




('A`) 「ついにこの時がきたな。」

ドクオが緊張のためタバコを何本も吸っていた。
ブーンもショボンもクーも緊張していた。

ドクオが運転席に乗り込む。
ショボンは外から携帯電話でブーンに指示を出す役目。
目的地に着いてから少し時間が経っていたためギャラリーがいる。
それが三人を余計に緊張させた。

('A`) 「そろそろ飛ばすぞ。ロープのフックをうまく外せよ。」
 




ブーンに軽く注意をして軽トラをゆっくり走らせる。
ロープのテンションがあがり引っ張られる飛行機。
そして徐々に軽トラを加速させていく。
時速37キロになった瞬間、飛行機が浮かび始めた。

(´・ω・`)「ブーン、昇降舵のレバー回して。
     ゆっくり高度を上げていって。」

飛行機が少しずつ地面から離れていく。
五メートルほど上昇したところでまた指示を出す。

(´・ω・`)「ブーン、フックを外して。そのままその姿勢を保って。」

フックがはずれ、よたよたと滑空する飛行機。
ギャラリーが歓声を上げる。
ドクオが軽トラを端によせ強引に止める。
急いでドアを開け飛行機を見ようとする。
ちょうどそのときドクオの上をブーンが飛んでいった。
はじめて見る真下からの機体。
興奮を隠し切れず叫びだす。

('∀`)  「いけぇ、ブーン!!
     どうだ気持ちは?最高か?」

 




( ゜ω゜)「ふぉおおおおおお。」

初めて見る景色。
ブーンにとって最初で最後のフライト。
フックを外して機体を安定させてから
ドクオとショボン、ギャラリーそしてクーに手を振る。

その後、飛行機は乱暴に着地した。
軽トラでドクオが迎えに行く。

('∀`)  「どうだったブーン、飛べたな、飛べたな。」

誰かが通報したらしくパトカーがやってきた。
エンジンは積んでいないので航空法にはひっかからず
クーを含め四人がその場で厳重注意を受けた。
そして、その日の新聞に小さくブーンたちのことが載った。
お騒がせ少年、ギャラリーの応援のなか飛行機を飛ばす、と。

 




帰り道、今度はドクオとショボンが荷台に乗った。
往きでやったように、二人が座席に座り叫んでいる。
軽トラは笑いと充実感を積んで走っていった。
 




翌日、ブーンが自宅でクーを待っている。
クーがいつもの時間にいつもの声で部屋へと入ってくる。

川 ゚ -゚)「さて今日は何の話をする?」

その日は、昨日の興奮が冷めないブーンが空を飛んだときの話をする。
その熱っぽい口調を見てクーが羨ましそうに言う。

川 ゚ -゚)「いいな、私も飛んでみたいもんだ。」

ブーンは空を飛んだときの興奮をしゃべり続ける。
だが、急に声のトーンが下がった。

( ´ω`)「でも、もうすぐ僕は死んでしまいますお。
     もっともっとあんな気持ちを味わい続けたいですお。」

( ;ω;)「いやだお、いやだお、死にたくないお。
       まだ生きていたいお。もっと生きていたいお。」

ブーンが突然泣き出す。明るく振舞っていても死が目前に迫っている。
そんな状態で落ち着いてなどいられない。
クーの前でかっこ悪いところを見せたくなかったがどうしようもない。
心臓の奥から冷たい液体があふれ出してくる。

 




川 ゚ -゚)「落ち着きたまえブーン君。」

一言だけ言う。
クーにかっこ悪いところを見せたと思い
泣きながらもブーンは黙る。
これ以上かっこ悪いところ見せてたまるかと。
心臓にがんばって蓋をする。

川 ゚ -゚)「半年間ブーン君を見てきたが、ブーン君はとても立派だったぞ。
     確実に死が迫っている恐怖のなか、自分のしたいことを見つけ
     それに向かって努力してきた。普通そんなことはできないぞ。
     私はとても立派なことだと思う。」

ブーンを褒める。
慰めでもなんでもなく、クーは思ったことを正直に伝えた。

( ;ω;)「そうですかお。」

川 ゚ -゚)「ああ、君は私が見てきた男性の中で一番かっこいいぞ。」

 




そう言ったあと、ブーンがクーにお願いをする。
今まで恥ずかしくて言えなかったこと。
拒否されるのがこわかったこと。

( ;ω;)「お願いがあるお、少しでいいから僕を抱いて甘やかしてくれお。」

クーは無言でブーンの近くにより向かい合って座った。
そしてブーンの頭を自分の胸に押し付けた。

川 ゚ -゚)「こんな感じでいいか。」

クーの行動に拒否の感情が見つからなかったので
ブーンはそのままの状態で泣いた。
心臓の音が心地いい。
自分の心臓とはまったく違うものみたいに思えた。


 




ブーンがまだ聞いてなかったことを、抱きつきながら聞く。

( ;ω;)「そういえば、なんでクーさんはカウンセラーになったんだお?」

ほんの一瞬間クーの体がこわばった。
それを敏感に感じ取るブーン。
聞いてはいけなかったかなと思う。
だがクーが話し始めた。

川 ゚ -゚)「そうだな。私がカウンセラーになった理由か。」

クーにはカウンセラーになった理由があった。
でもそれを誰かに話したことはなかった。
理解してもらえないだろうし、しようともしないと考えたから。
それに説明する過程で相手が自分に引け目を感じると思うような内容だったから。
しかし、ブーンなら理解しようとするんじゃないかという期待もあった。
誰かに理解してもらいたいという感情もあった。
半年間つきあってきて多分ブーンならわかってくれると思ってた。
だから話した。

 




川 ゚ -゚)「私はな、人間を知りたいんだ。
     何でそんな感情になるのか、何でそんな考えになるのか
     自分では自分のことしかわからないからな。」

ここまではブーンもおとなしく聞いていた。
だが、ある疑問を口にしてからそれはおこった。

( ;ω;)「わかったお。でも何で半年病患者なんですかお?」

単純な疑問だった。
なぜ普通のカウンセラーではなく半年病のカウンセラーなのか。
患者が恐怖に耐え切れずに、また健康な体のクーを嫉妬して
襲い掛かる可能性もあるのに。
クーの体がまた少しこわばった。

川 ゚ -゚)「それはな半年病患者のほうが都合がいいからだ。
    確実に迫る死の中、健康体で死の実感をできず
    亡くなっていく人の心の動きが一番身近で見れるからな。
    体は健康なのだからその分、心の葛藤が激しいんだ。
    私はそんな人の心の葛藤を分解して知りたいんだ。」

 




何事も簡潔に結論から話すクーの癖があだになった。
誰もがこの話をここまで聞いたら半年病患者を利用しているのかと
思える内容だ。
自分の疑問のために、人の死に向かう葛藤を喜んでいるようにも思える。
ブーンも同じように思った。
自分はクーに利用されていただけだと。
いままでのどんな話もクーが自分のためだけに行ってきたのだと。
クーに抱きついていたブーンだが、途端にクーの体が汚らしいものに思え
体を乱暴に引き離す。

 




何事も簡潔に結論から話すクーの癖があだになった。
誰もがこの話をここまで聞いたら半年病患者を利用しているのかと
思える内容だ。
自分の疑問のために、人の死に向かう葛藤を喜んでいるようにも思える。
ブーンも同じように思った。
自分はクーに利用されていただけだと。
いままでのどんな話もクーが自分のためだけに行ってきたのだと。
クーに抱きついていたブーンだが、途端にクーの体が汚らしいものに思え
体を乱暴に引き離す。

 




( ;ω;)「ふざけるなお。僕はお前の疑問に答えるために半年病になったんじゃないお。
      僕は死にたくないお。なのにお前はそんな人の心で楽しんでるのかお。
      今まで話したことは全部、お前の楽しみだって言いたいのかお。」

大声で言い募るブーン。
クーは言い方がまずかったかと思い話を続けようとする。
ここから先は誰にも言ったことがない話。
誰も理解してくれないと決め付けていた話

川 ゚ -゚)「いやブーン君それは違うぞ。
     私は昔、だん…」

初めて人に話そうと思ったがクーの言葉をブーンがさえぎる。

( ;ω;)「何がちがうんだお、言い訳なんて聞きたくないお。
      出てけ、ここから出てけぇ!!」
 




信じていた相手から裏切られたと思うと、もうその相手の顔も見たくなかった。
ましてや恋心まで抱いていた。
そんな自分が情けなく思いブーンは怒鳴った。

川;゚ -゚)「話を聞いてくれブーン君。私は…」

クーは必死でわかってもらおうとする。
ブーンの前でこんな顔をするのこれまでに一回もない。
だが、怒りと失望感で興奮しているブーンは気づかない。
なおも出てけと怒鳴る。
もうそれしか言わないと決めたように。

川;゚ -゚)「わかった、とりあえず今日は帰ろう。
      いつでもいい、落ち着いたら連絡をくれ。」

( ;ω;)「早く出てけぇ!!」

クーが帰っていった。ブーンは見送りもしない。
一人になった部屋で半年病が発覚したときのように
怒りにまかせて物にあたりまくった。

 




( ;ω;)「信じてたのに、信頼していたのに、信用していたのに。」

大声でわめき散らす。
そしてブーンが薬瓶を壁に投げつける。
粉々になり中の錠剤が床に散らばった。
睡眠薬だ。
それを手でかき集め口に入れる。
ガラス片も混じっていたがお構いなしに噛んで胃に流し込む。
もうどうなってもよかった。どうせあと一週間もあれば自分は死ぬ。
そのままブーンは睡眠薬が効いてくるまで暴れ続けた。


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