( ^ω^)ブーンがトライアスロンに挑戦するようです 3レース目




しかしと言うかやはりと言うか……試合会場には魔法でもかかっているのだろうか。
昼前にはギラギラと照りつける陽射しが選手達の皮膚に鋭く突き刺さる。

選手達はその気候を待ってましたと言わんばかりに意気揚々としていた。



……風はどうした。

どこから吹き付けることも無い、みるみる上昇する気温。


暑い。


応援者達は額の汗を拭った。



     プア〜



いい加減この気合の入らないスタート音にも愛着が沸いてくる。
選手は一斉にスタートを切った。

今回のレースは今まどと違い砂浜からスタートだ。
紐でくくられたスタートライン、立ち並ぶ沢山の選手。
季節的なものか、ウェットスーツで泳ぐ選手が多い。


砂浜から海へ猛然とダッシュし、バシャンバシャンと選手が海に入っていく。
少しでも走って距離をとろうとする人達は、水面が膝に来るまで無理矢理走り、そこから泳ぐ体勢に入る。


浜からのスタートは、水に浮いてスタートするフローティングスタートに比べ人が固まり易い。
我先にと人波をかき分けて海に飛び込む者が多く、人間の上を泳ぐことだってある。

(;゚∀゚)(この……乗るな……ッ!)

ジョルジュは選手に上に乗っかられてしまい、泳ぐ事はおろか息継ぎさえままならない状態にあった。
仕方なく息継ぎをせずにバタ足と軽い手の動きで泳ぎ始める。

そうこうしていると次の瞬間には人の上に乗ってしまい、勢いが止まった。

(;゚∀゚)(くああ、もう厄介だなコイツら!)

ジョルジュは浜からスタートの大会は初めてだった。
参加者は少ないにも拘らずいつも以上の人の塊、いつも以上の腕のぶつかり合い。

お腹が蹴られた。
肘を頭にくらった。

バラけない集団。

自分のペースで泳ぐことなど到底ままならなかった。

(;゚∀゚)(集団心理でも働いてんのかコイツら……さっさとバラけろって!)

前にも横にも一面の人波。
その一部と化している自分。


苛立ちは募ったがどうしようもなかった。

ブーンはスタートの直後、我先にと詰め掛ける人間に萎縮してしまい後ろからのスタートとなった。

目の前で起こる大量の水しぶき。
海面が見えないほど人が敷き詰められた状況。
そこへさらに飛び込んでいく選手達。

とてもその中には混ざれないと思い、一人端のほうから泳ぎだした。

(;^ω^)(しかし……やっぱりちょっと肌寒いお……)

ウェットスーツを持っていないブーンは今回もトライスーツで挑んだが、思いのほか海は冷たい。
泳いでいればどうにかなるだろうとちょっと速い目のペースで泳いだ。

体もすぐに温まり、気付けばトップグループにいるのだから調子がいい。

(;^ω^)(そろそろスイムを一番で上がってみたいお……)

ブーンにはそんな野望があった。

ドクオもブーンと同様、後ろからゆっくりとスタートした。
他人のペースに合わせるのが嫌だったのだ。
大回りで少しぐらい距離を多く泳いでもいいから、自分のペースを守りたかったのだ。

そして思いのほか他の選手と争う事もなく順調に泳ぎ出せた。

('A`)(とりあえず、500m……それくらい泳いで腕の感覚が麻痺してきたら……)

水泳ではある程度泳ぐと腕の感覚が麻痺してくる。
そうなると疲れたと思う事無く一定のペースで泳げるのだ。

相変わらずドクオは自己流で水泳練習を続けてきた。
練習回数と距離をこなしたドクオだからこそ、ペースは体に染み付いていた。


(;'A`)(波が……荒いな。本番だしちょっとくらい無理しても大丈夫だろう)

波にあわせて体を上下させながらも、ドクオは一定のペースで泳ぎ続けた。

(;゚ω゚)「……フヒュッ!! ……ヒュッ!」

荒れる波、そんな中でブーンは思いのほか疲労していた。
いつも通りのペースだと思っていたが、波のために想像以上に体力を消耗していたようだ。

腕はまだまだ大丈夫だが、呼吸が辛かった。
バタ足も使いたくなかったのだがこの波では仕方ない。

(;゚ω゚)「……フヒュッ!」

しかしブーンは今、一位の選手と並んで泳いでいた。
しかも内側を泳いでいる、カーブでは断然有利だ。

一方相手も負けるかとペースアップをしてくる。
おそらくスイムには相当の自信があるのだろう。

(;゚ω゚)「……フヒュッ!」

まさにプライドのぶつかり合いだった。
まだ500mも泳いでないだろう、途中で相手が折れたら調子よく泳ぎ続けれるだろうが、自分が先に折れたら……
考えるだけでも精神的に折れそうだ。

(;゚ω゚)「……フヒュッ!!」

勝てば官軍、負ければ死刑。
そう、そんな感じだ。

大きな麦わら帽子が太陽からの陽を遮っていたが、それでも額を汗が伝う。
砂浜での車椅子はまったく意味がない。
とても一人では応援など無理だっただろう。

ξ*゚ー゚)ξ「ごめんなさい、わざわざここまで押してきてもらって……」

('、`*川「いえいえ、全然気にしないで下さい。一人だと心細かったですし」

ブーン達の同僚である伊藤は、車椅子のデレを押しながら応援場所を移動していた。
スタートを見ていたのだが、直後に巻き起こった激しい水しぶきにあっという間に望みの選手を見失ってしまったのだ。
しぶしぶ次のバイクの応援準備にかかった。

('、`*川「ブーンさんは分かり易くていいですね、きっとあのトップのどちらかですよ」

ξ*^ー^)ξ「そう信じたいですね、あの人は泳ぎだけですから」

笑うデレに、伊藤も笑顔で応えた。
でも探している人が分かるのは羨ましい限りだ、ドクオやジョルジュなどどこにいるのか想像も出来なかった。

コースはブイ(浮き)が375mの間に並んでおり、その周り1周750mを2周で1.5kmだ。
ただ波が高く、逐一コースの先を確認しないと気付けば全然違う方向に泳いでいたりする。
隣の選手につられて泳いでいると、一緒にコースを外れてしまったりした。

(;゚∀゚)(これは……今回は最悪だな……)

ジョルジュは隣の選手が押してくるものだから進行方向を逆方向へと逸らしていたが、気付けば明後日の方向を向いていた。
慌ててコースを修正するも集団でコースをずれたのは痛い、思うように元のコースに戻れない。

(;゚∀゚)(オマエら……いい加減邪魔だ、早くバラけろ!)

また自分を押してくる隣を押し返し、相手の進路を強制してやる。
相手もコースを外れていると気付いたようで、慌てて進行方向を変えた。
それでもまだまだ集団は思うようにバラけない。

(;゚∀゚)(くっそ……もう腕が疲労しているな……これはマズイか)

今回は予想以上に進みが遅い、きっとドクオよりも彼はまだ後ろに位置していただろう。

集団の隙間を見つけると、ジョルジュは一気に加速して塊から脱出した。
腕には一気に疲労が溜まる。
呼吸が苦しい、酸素が足りない。

考えていた以上に辛い戦いを強いられていた。

ブーンは何とか1周目を終えた。
腕はもうパンパンでいつ止まってしまってもおかしくないほどだ。

バタ足も残す余裕がない、ウェットスーツを着ていないブーンは浮力が少ないので尚更だ。

(;゚ω゚)「ハヒュッ! ……フヒュッ!」

隣の選手もなかなかスピードが落ちない。
互いに一進一退していた。
片方がペースを落とすとつられてもう一方もペースを落とし、逆にペースを上げればもう一方も上げた。

このまま二人で競いながらゴールまで行こう、負けたくないと思う反面二人ともそう考えていたのだ。
自分一人になったら間違いなくペースは落ちるから協力していきたい。
でもスイムで負けたくない、そんなプライドと精神の葛藤。

(;゚ω゚)「……ハヒュッ!」

呼吸をする瞬間、隣を泳ぐ選手の息継ぎも聞こえてくる。
フォームを見れば相手が疲労していることも分かる。

それでも……相手を裏切って一気に勝負を決めようという気にはならなかった。

(;'A`)「……ハフッ! ……ハフッ!」

短い息継ぎを繰り返し、酸素を取り入れようと頑張る。
喉が痛い、塩水とはこうも泳ぎにくいものなのか。

それでもドクオは自分のペースを守って泳ぎ続けた。

腕は早くもいい感じで麻痺している、ここで無闇やたらにとばしたりさえしなければ、このペースでいける。

(;'A`)「……ハァッ!」

呼吸は短くて苦しかった。
でも体力はある、矛盾するようだが楽だった。

隣の選手が自分の方向に少しづつ寄ってくると、ドクオは素直に距離をあけた。

ぶつかって今のテンポ、今の調子を崩したくなかった。

(;'A`)「……ハフッ!」

いい感じだ、前回よりもきっと速いに違いない。
調子のいい自分に驚き、息継ぎをしながら口元に笑みを浮かべてしまった。
そんな余裕すらあった。

ジョルジュは体にのしかかる強烈な疲れに苦悩した。

スイムでペースの変化を行うのは、想像以上に体へと負担をかける。
呼吸器が、腕の筋肉が、そして疲労を感じると供に精神的にも激しい負担となる。

(;゚∀゚)「……ハパァッ!」

息継ぎをしようとしたら、タイミング悪く波が口の中に入った。

突然のことに水中でむせる。
急いで手の回転を早めると、数度息継ぎをして呼吸を安定させた。

(;゚∀゚)(はぁ、はぁ……これでまたテンポが崩れたな……今回はボロボロだな)

どうしてこうも不幸は続くものなのか。
肉体的な負担もさることながら、精神的な負担がより彼を苦しめた。

ブーンは相変わらず1位で競り合いをしていた。

ペースを一瞬だけ上げる。
逆に一瞬だけ落としたと思わせて突然ペースアップの素振りを見せる。
だが互いに自分が威嚇していると同時「相手が威嚇している」という事も分かっていたようで結局は並んだ状態だった。

(;゚ω゚)(そろそろ……落ちてもらいたいお、これ以上は精神的に厳しいお……)

ブーンは少しずつ相手に泳ぎながら寄っていく。
すると望むところだと相手も自分に寄って来た。


二人の手がビシッと接触した。


肩にドスンと重荷が乗っかったような衝撃がはしる。
しかし互いに泳ぎに自信があるのだ、安定したフォームは崩れない。

(;゚ω゚)(これくらいじゃ全然疲労しないお、腕も全然余裕だお、ダメージないお。
    でも相手はそうもいかないお、今頃接触した事を後悔しているはずだお)

暗示のように繰り返し、ネガティブな考えを浮かばなくする。
精神的に、なんとしてでも有利に立たなくてはいけなかった。
ここまでくると実力じゃない、心の勝負なのだ。

トップを泳ぐ2人が、ようやくゴールまであと数十メートルとなった。
観客達もいよいよかと手に汗を握って待っていた。

('、`*川「2人……のままですね……」

ξ*゚ー゚)ξ「どちらかがブーンだといいんだけど……」

選手が泳いでいる時は、ほとんど応援など聞こえない。

スイムはそれなりのペースで泳いでいれば息が乱れ、苦しくなりとても集中力を使う。
聴覚にまで気が回らないのだ。

それでも大会では絶え間ない応援が続く。
それがトライアスロンという競技、選手と応援者が一体となる場所なのだ。
選手が頑張る限り、応援者は決して応援を絶やす事はない。

ξ*^ー^)ξ「がんばれー! もうちょっとー!」

小さな声で叫んだ。
届かなくてもいい、叫ぶことに意味があるのだから。

(;゚ω゚)(ラスト、まだ100m以上はあるお……でも行くお!)

痺れを切らし、とうとうブーンは先にスパートをかけた。
ただこれで相手が闘争心を失い、後退していってくれれば気持ちは幾分も楽になる。

しかし相手はついて来た。

(;゚ω゚)(泳ぎは無茶苦茶だお! 早く落ちるお!)

そう思いながらも、ブーンこそすぐに減速した。
そして再び二人並んだ状態になった。

(;゚ω゚)(負けたくないお、負けたくないお……)

同時に様々な心配がブーンを苦しめた。

先ほどのスパートで決める事が出来なかったため、体はすでに限界だ、もうペースアップは無理だ。
このままのペースなら負けん気で何とかついていけるが、相手にここからスパートをかけられたらとても抗えない。

(;゚ω゚)「……ハヒュッ!」

呼吸をする時に聞こえる、相手の苦しそうな呼吸音。
きっと無理だ、相手はスパートなんて出来やしない。
そう信じる事でいっぱいいっぱいだった。


そしてブーンの望みどおり、相手はスパートをしなかった。
しなかったのか出来なかったのかは分からないが、そのまま二人は並んでスイムを終えて岸に上がった。
トランジットエリアは海岸にあり、スイムを終えてからそこまでは砂浜を走らなくてはならない。

  「頑張れーッ!」

  「負けるなーッ!」

二人同時にスイムを終えるというの白熱した場面に、歓声も大きく響く。
どちらが一番にバイクをスタートするのか、観客はもう二人の動向に目を奪われた。

(;゚ω゚)「……ハァッ、はっ、はっ!」

砂浜に体全体が埋まりそうになる。
地面を蹴っても進まない、頑張ってモモを上げて体を動かした。
フォームは滅茶苦茶で、腰は力なく曲がっている、そんな状態でもブーンは頑張って走った。

トランジションエリアまでのランニングでは僅かに相手に先を譲った。
しかしブーンは足の砂を素早く払うとすぐにバイクシューズをはいた。

(;゚ω゚)(先に……スイム、一番で……!)

ξ*^ー^)ξ「がんばれー!」

('、`;川「すごいよ、トップだよがんばれー!」

二人の応援など届いていないのだろう、ブーンは必死の表情でヘルメットをかぶるとバイクを押してスタートラインへ駆ける。
ブーンがバイクの乗車ラインを超えるとさらに歓声は大きくなった。
彼がスイムを1位で終了した瞬間だった。

会場全体が揺れるかのような人の声。
応援に来ていた二人の声など打ち消された。

ξ*゚ー゚)ξ「……やっぱり妬いちゃうな」

('、`*川「……ん?」

ξ*^ー^)ξ「ううん、何も。それよりも次はどちらが来るのか楽しみね」


ブーン:
スイム 19'45"(1位)

(;^ω^)(フサギコさんがいなかったから……ようやくスイムで1番取れたお……)

嬉しさで顔が歪む。
そんなブーンをスイム2番の選手がすぐに抜き去ったが、ブーンは全然気にしなかった。

足はいつもの乗り出しと同じで良く回転する。
呼吸はやはり辛い、塩水のせいもあって早くも乾いた呼吸になっている。

それでも……ブーンは笑っていた。

(;^ω^)(いける、いけるお……勝てるお……!)

スイムを1位で通過した事で精神的な余裕が生まれていた。

今回は無駄にスピードアップをしようとは思わなかった。
ただ、今の気持ち良くこげる状態でずっと行きたいとだけ思った。

(;^ω^)「……ふっ、……ひゅぅ……ッ!!」

呼吸はやはり酷いものだ、まだ乗り出しだというのに。
腕もガクガクで油断すると直線にも拘らず転びそうだった。

(;^ω^)(いける……勝てる……!)

それでもブーンは笑っていた。
精神的なアドバンテージはかなり大きかった。

(;'A`)「……ハヒュッ、……ハフッ! 」

スイムが終わりに近づくと、自分のペースで泳いでいたとはいえ体への負担は相当なものだった。
それでも……前回のスイムに比べれば格段に楽だった。
前回は最悪な結果を残したが、それをバネに彼は精神的強さを手に入れた。

(;'A`)(もしかしたら……奇跡ででもジョルジュさんに勝てないかな……)

疲れている、疲れているがこの後バイクとランならいける疲労だった。
これ以上泳げと言われると無理だが、そうでなければ何とかなる……そんな疲労。

むしろあまりにいい具合に力を使い切っていて、気持ちいいくらいだった。

(;'A`)(あーあ、やっぱ俺生粋のマゾかもしれんな)

短い息、苦しい。
肩が痛い、筋肉はパンパンに張っている。

そんなドクオのスイムはあと少しで終わりだ。

(;'A`)「……ハフッ、……フヒュッ!」

(;゚∀゚)(くそ、全然スピードが出ない……)

もう腕は限界を超えていた。
水がかけない、こうなると一気に呼吸器にも負担がかかる。


もっと息が吸いたい。


(;゚∀゚)「……プハヒュッ!!」

腕が上がらない、悔しい……でもどうしようもない。

まだまだ苦しい。


苦しい。


(;゚∀゚)(苦しい)


肉体的限界の後に来る、精神的な悪循環。

続々とスイムを終わらせていく選手達を、2人は一人一人チェックしていた。

ξ*゚ー゚)ξ「そろそろ来そう……」

('、`*川「ジョルジュさんが先に来るとも限らないですよ、もしかすると……があるかもしれないですよ」

選手が競技を終える瞬間、この時は応援者が最も緊張する瞬間だ。
誰が、いつ来るのだろうかという期待や心配が交錯する。

トライアスロンでは安定した実力を出すのは難しい。
総合タイムが5分程度変動することだってざらにある、思わぬエネルギー切れで一気に減速することだって珍しくない。
実力よりも精神的面が記録を左右するシーンばかりだ。

だからこそ、応援者も供に頑張ろうという気になるのだ。
応援に熱が入るのだ。


ここでデレが、見慣れた人物を発見した。
あれは……前回ブーンと一緒に出ていた同じ会社の人だ、間違いない。

ξ*゚ー゚)ξ「伊藤さん、来たみたいですよ」

('、`;川「え、はい!」

伊藤は慌てて、今まさに海から出ようとしている人物に目を向けた。

ξ*゚ー゚)ξ「ごめんなさい、私まだちょっと分からなくて……あれはどちら様?」

筋肉質で背の高い影が、砂浜をトランジションエリアへと向かって走っていた。

('、`*川「あれがジョルジュさんです」

ξ*^ー^)ξ「ありがとうございます。
    ジョルジュさん、がんばれーッ!」

やはり応援しても気付いてくれない、焦りながらも慎重にウェットスーツを脱いでバイクの準備に掛かる。
そしてバイクを押してすぐに乗車ラインへと向かった。

('、`*川「あ、ドクオ君も来た!」

その時スイムを終えたドクオがトランジットエリアへ来た。
バイクを押していくジョルジュの背中を見て、小さくガッツポーズしていた。

(;'A`)(よし、これくらいの差なら……)

ジョルジュは後ろにいるドクオに気付いていない。
そのままバイクを押して乗車ラインを跨いだ。


ジョルジュ:
スイム 26'43"(16位)

('、`*川「ドクオ君、がんばれー!」

ξ*^ー^)ξ「ドクオさん、ジョルジュさんはすぐ前ですよー!」

二人の声にドクオはチラと顔を向けると、照れ臭そうに笑った。
自信に満ちた笑顔だった。

手早く準備を終えると、バイクを押して乗車ラインへと向かう。
そして乗車ラインを超えると、すぐにバイクをこいで行ってしまった。

ξ*^ー^)ξ「……ドクオさん、頼もしい笑顔でしたね」

('、`*川「はい、期待できそうです」

そして二人はバイクの応援場所へと移動した。


ドクオ:
スイム 26'58"(18位)

既に1.5kmものスイムを終えたはずだが、体は不思議と疲労を感じなかった。
後からズシンと来るのだろうが、今はむしろいい感じで体が動く。

(;'A`)(ジョルジュさん……見えた!)

ドクオがバイクをこぎ始めると、すぐにもジョルジュを確認した。
思ったよりも距離がある、しかしドクオはそれをもろともせずにペースを上げた。
風もあまり感じない、これなら……いける。

(;'A`)(前回のバイクタイムは1時間8分……今回は1時間5分だな……)

ドクオは加速して行く。
すぐにもジョルジュへと並んだ。
そのまま一気に抜き去る。

(;゚∀゚)(コイツ……早えぇぇぇぇ!!)

あわよくば後ろにつこうとも考えていたが、そんな暇も与えないほど一気に抜かれた。

(;゚∀゚)「……はぁ、はぁッ!」

(;゚∀゚)(今のオレが38km/h……40km/hは出てるな……もつのか!?)

そう思いながらもドクオに抜かれた事でジョルジュは一気に疲労を感じた。
まだ乗り出してすぐだというのに……ジョルジュは顔を大きくしかめた。

(;'A`)(よし、ジョルジュさんは来ない……!)

ジョルジュを抜き去り、相手が自分について来ない事を確認してドクオはさらに調子を上げた。

スイム、バイク、ランとトライアスロンには3種目あるが、共通する事、それはリズムだ。
特にスイムとバイクはそれを大切にする事が重要だ、自分に適したリズムが絶対にある。

リズムは毎日違う。

疲れや体調などによって、その時々に合ったリズムが存在するんだ。
そしてそれは練習を重ねる事で、次第に明確になってくる。


ドクオはそれだけの練習を重ねていた。
特にバイクは彼が最も力を入れた種目だった。
前回の初トライアスロンで良い記録を出してから、彼はさらに練習を重ねた。


(;'A`)「……ふぅ、……ふぅ」



そして今日は調子が良かった。
最高のリズムだった。

(;^ω^)(よし、1周目終了だお!)

今回のバイクは10kmのコースを4周で40kmと、1周がかなり長い。
一度選手が通過してから次来るまで15分以上あり、応援者には少々辛いか。
同時に選手にとっても気持ちの切り替えが難しい。

そんな中、ブーンは気を楽に持って1周目を終了させた。

(;^ω^)(流石に足に少しきてるお……)

それでも精神的な疲労はかなり少ない。

ξ*^ー^)ξ「がんばれー」

('、`*川「ファイト!」

デレと伊藤がいるのが見え、応援を聞くと軽く手を振った。
大丈夫だ、全然余裕がある。

同時、ブーンは思った。

(;^ω^)(バイクでドクオとジョルジュさんに抜かれなかったら……勝てるんじゃないかお?)

考えが浮かぶと同時、足に力を入れてスピードアップしていた。

('、`*川「ブーン君、手を振るなんて余裕ね」

ξ*^ー^)ξ「まだ1周目だからかな、でも調子良さそうだったからよかった……」

スイムの貯金があるブーンは、バイクは遅かったがまだ順位は上位に食い込んでいた。
デレの言うとおりまだ1周目だ、半分も終わってない。
それでも気持ちよくバイクをこいでいたブーンを見ると良い結果が出そうな気がした。

それからすぐドクオとジョルジュが来るかと待ったが、やはりスイムの貯金がものをいっているのか、二人は中々来ない。

('、`*川「遅いですね……」

ξ*゚ー゚)ξ「でもそろそろじゃないかしら……」

話をしていると、ようやくドクオが姿を表す。
必死の応援に気付く事無く、真剣な面持ちで二人の前を通過していった。

ブーンに比べると格段に疲れていそうな、そんな表情だった。

('、`;川「大丈夫ですかね?」

ξ*^ー^)ξ「でもこの前の大会もドクオさんはすごくバイク速かったから、今回もすごく期待できますよ」

軽く話をしてその後すぐに来るだろうジョルジュを二人は待ったが……
ジョルジュは姿を表したのは少し後だった。




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