( ^ω^)ブーンがトライアスロンに挑戦するようです 3レース目後半



ジョルジュはブーンやドクオよりもさらに辛そうな表情で通過していった。
体全体で息をして、選手3人の中でも一番疲労の色を露にしていた。

('、`;川「……まだ1周目ですよね?」

ξ;゚ー゚)ξ「そのはずだけど……ジョルジュさん大変そうでしたね」

まさか1周でここまでジョルジュとドクオの差が開くとは思ってもおらず、二人は驚きを隠せないでいた。

(;゚ω゚)「……はぁっ、はぁっ!!」

ペースアップと同時に来る体への疲労、負担。
先まで調子良かったのが嘘のようだ。
顔に笑みはもうない。

(;゚ω゚)(逃げ切れるお、ジョルジュさんからも……ドクオからも……勝てるお)

このままのペースで頑張ればきっと勝てる。
減速する事無くこのまま行けば絶対に勝てる。

そう信じてブーンは必死にバイクを走らせた。

(;゚ω゚)(もうモモの筋肉が……このまま40kmはもたないお……)

分かっていてもペースを落とすわけないはいかなかった。

しかしドクオとジョルジュの差はもう大きく開いており、
ジョルジュはバイクの後ランに移れるのかというほど疲労を見せていた。


(;゚ω゚)(逃げ切るお、このまま……抜かれないお……!)


(;'A`)(ブーン、まだか……流石に足が……くそ!)


(;゚∀゚)(だめだ、ペースは悪くないが疲労が……)


ξ;゚ー゚)ξ(ブーン、頑張って……)


('、`;川(ドクオ君、もうちょっとでブーン君の所にまで……)

そして3周回目の終わり、とうとうドクオはブーンへと追いついた。

(;゚ω゚)(ドクオ……!)

そのまま一気に抜き去る。
スピードの違いは明らかだった、とても抵抗できるようなスピードでなかった。

ブーンへ襲い掛かるいきなりの疲労。
足の回転は遅くなった。
筋肉が途端に固まる。


(;'ω`)(ドクオ……)


既に彼は見えなかった。
完全なスピードの違い、ブーンはみるみる間に減速した。

ラスト1周に差し掛かった直後の出来事だった。

しかし同時にドクオもブーンを抜いた事で安心してしまったのか、大きな疲労を感じた。
目標がなくなってしまったのだ。

何とかと力を入れるが思うように進まない。

リズムが悪い、今の力でこのままこぎ続けることは不可能だ。


(;'A`)(ちくしょ……1時間5分が……くそ、体がいう事きかねぇ)


残り10kmを切り、ブーンとドクオは同時に失速した。

バイクが始まって間もなくドクオに抜かれたジョルジュは激しい疲労を感じ、思うようにスピードに乗れずにいた。

しかし中盤にもなると初めの方にペースを上げなかった事が功を奏したか、体は動き精神的に楽になってくる。
後半に入り調子を上げてきていた。

(;゚∀゚)(よし、初めの方はダメだったがこのまま後半減速なければいい感じでいける……!)

最後の周回に入ってもまだまだ体は十分に動く。
呼吸は苦しい、モモはパンパンですごく熱を持っている。


でも、いける。


ラスト1周、ジョルジュはペースアップしないまでも、キープしてバイクをこぎ続けた。

トランジットにはバイクを終了した選手がちらほらと現れ出した。
最後の周回に入った直後にブーンはドクオに抜かれていた、まずはドクオが来るだろう。

('、`;川「そろそろですね」

ξ*゚ー゚)ξ「ドクオさん、どれくらいで来るかしら……」

また一人、また一人と選手が到着する。
トップの方は集団で来ても3人程度だ、大きな選手の塊ができることは珍しい。

ξ*゚ー゚)ξ「……今来た選手で6番目ですね」

('、`;川「ドクオ君……がんばれ……」

まだかまだかと待っていると、次第に汗が噴き出してくる。
やはり暑い。
特にこうやって選手を待つときは心が急いて、余計に暑く感じた。


そんな中、いよいよドクオが登場した。

ξ;゚ー゚)ξ「すごい……」

まさかこんな上位まで登ってくるなど想像もしておらず、見ている方としても驚きと興奮が入り混じる。
またさらに暑さを感じた。

('、`*川「ドクオ君、がんばれー!」

ξ*^ー^)ξ「ドクオさん、ラストいけー!」

応援する二人の方を見て軽く手を出すと、すぐにもヘルメットを脱ぎ靴を履き替えて走り出した。

前回とは違い、安定していた。
期待が十分に持てそうな走りだった。

ドクオはランのスタートをいち早く切った。


ドクオ:
スイム 26'58"(18位)
バイク 1:06'31"(3位)
スプリット 1:34'29"(8位)

前回の初大会ではバイクで完全燃焼してしまい走るどころではなかった。
実際あまりの辛さに走る事を放棄して歩いてしまった。

しかし今回は違う。

(;'A`)(よし、走れる……!!)

腰が上下して思うようなテンポを作れずに困るも、思いの外足は動いた。
予想をはるかに超える出だしだ、今回もバイクでかなり体力を使ったからどうなるかと思っていたが、上手く走れそうだ。

(;'A`)(……くっ!)

しかし酷使しきった足、体に蓄積された疲労。
毎日ランニングの練習をして自分のテンポを掴んだつもりでいたが全然分からなかった。

どれくらいのテンポでいけばいいのだろうか。

予想外に動く体がさらに彼を悩ませた。

(;'A`)(このまま行ける訳はないが……行けそうな気がする……)

困惑した。
まるで他人の体で走っているようだった。

ドクオが来てからブーンとジョルジュを待っていたが、やはりそれなりに時間が空いた。
ドクオは相当なタイムでバイクをこいできたのだろう。

トライアスロンでは精神力が重要な事は何度と説明したが、
その上で「自分はバイクが速い」などと自己暗示をかけている場合はさらに強い。
逆に「自分はバイクが弱い」などと思っていると想像以上に脆く簡単にペースを乱すことになる。

ブーンはバイクに自信がなかった。


ξ;゚ー゚)ξ「いくらなんでもそろそろ……」

('、`*川「あ、来ましたよ!」

若干蛇行しながらブーンはバイクの最後の周回を終えると、すぐにトランジションエリアへ入ってくる。

(;^ω^)(まだジョルジュさんに抜かれていないお、このままドクオを抜いて逃げ切るお……!)

目に見えて焦りながら靴を履き替え、ヘルメットを脱いだ。

ξ*^ー^)ξ「ブーン、がんばれー!」

('、`*川「ブーン君、がんばれっ!」

応援が届いたらしくブーンは二人の方をちらと見ると、ふっと笑った。
そしてそのまますぐランのスタートを見据える。

(;^ω^)(何とかジョルジュさんに抜かれなくて良かったお、抜かれていたら精神的にきつかったお……)

帽子をかぶるとすぐにも走り出した。
ドクオの姿はないが、きっと追いつける。
そう信じて体を動かしていく。

地面を蹴る感覚が分からず、体が思った以上に弾んでリズムを作れない。

(;^ω^)(何とか、ドクオまで……)

ドクオが見えればきっと力はみなぎってくる、ドクオを見つけるまでのランが勝負だ。
大きな応援の中、歯を食い縛ってランのスタートラインを跨いだ。


ブーン:
スイム 19'45"(1位)
バイク 1:16'52"(29位)
スプリット 1:36'37"(11位)

('、`*川「ブーン君、ドクオ君に追いつきますかね……?」

ξ*゚ー゚)ξ「表情を見てると厳しそうだったけど、ドクオさんも逃げる方は大変そうですしね」

逃げる方と追う方、その精神的な優劣はドクオがどこまで逃げ切れるかで決まる。
終盤まで逃げ切れば追う方は精神的に辛くなるが、前半の内に捉えられれば逆に心が奮い立つ。


何よりも勝負は二人の勝負ではない。
もう一人、実力的にはもっとも強い男がまだいるのだ。


ブーンよりもさらに少し遅れてジョルジュはトランジットに姿を表した。

('、`;川「ジョルジュさん来ました!」

ξ;゚ー゚)ξ「結構差が開いたけど……大丈夫なのかしら」

ジョルジュは慣れた手つきでヘルメットを脱ぎ靴を履き替えると帽子をかぶった。
そして走り出す前に軽く水を含む。

(;゚∀゚)(勝負はランか……やべ、楽しいわ)

ジョルジュは笑っていた。
体はもう疲労だらけで、まだ最後にランを残している状態で、身内の順位は最後だったのだが……彼は笑っていた。

ξ*^ー^)ξ('、`*川「ジョルジュさんがんばれー!」

(;゚∀゚)「おうっ!」

大きな声で応援の二人に返事してジョルジュは駆け出した。
そしてすぐにもランのスタートラインを跨いだ。

追う者、追われる者、そして追い追われる者。
とうとう勝負は最後のラン種目に委ねられた。


ジョルジュ:
スイム 26'43"(16位)
バイク 1:11'02"(10位)
スプリット 1:37'45"(13位)

この大会のランのコースは、バイクと同じ10kmのコースを1周だけする。
これは応援する者にとっても競技する者にとっても辛かった。

応援する者にとっては、スタートしてからゴールするまでその選手の状況が分からない。
声援もかけれない、ゴールする寸前までひたすら待ち続けることしか出来ないのだ。

競技する方は距離感がなく、いつ見えるか分からないゴールに向かって走り続けるしかない。
途中僅かにあるキロ表示はアバウトで、意識しすぎると思わぬしっぺ返しをくらう。


(;'A`)「はぁッ、は……ッ!!」


逃げるドクオにとっても、当然辛かった。
どこまで逃げ切ればいいのかが分からなかった。

常に追われているというプレッシャーは自分を急かし続ける。

(;'A`)(ダメだ、このペースはオーバーペースだ……!)

しかし止まらない。
このままだとすぐにも限界が来る……分かっていてもプレッシャーを跳ね除けることは出来なかった。

(;^ω^)(ドクオ……全然見えないお……!)

少しでも早くドクオを捕らえようと走り出したブーンだったが、ドクオは一向に見えてこない。
ペースは遅くない、むしろ飛ばしているはずだが……影も形も見当たらない。

(;^ω^)(早く捉えないと……)

ジョルジュに自分が追いつかれる前に、ドクオを抜いて精神的な余裕を持っておきたかった。



何よりブーンは前回の大会からランニングばかり練習を頑張った。

スイムは既にある程度の速さがあり、練習しても大きくタイムが伸びる事は望めない。
そしてバイクの練習は彼にとって辛いだけだった。




『泳いでる、楽しんでいるブーンが好き』


彼は楽しくないからバイク練習はしなかった。
ただ、その代わりにラン練習を精一杯頑張った。
とうぜん楽しいわけではない、それでも辛いとばかり思って運動をする事は自身が許せなかったのだ。

(;^ω^)(今までの僕よりももっと速く走れるお、絶対ドクオに追いつけるお……)

既に足は上がらない、地面を蹴る力が出ない。
呼吸が苦しい、腕を振れず肩を動かした。


それでも……頑張った。
追いつける、そう信じて走り続けた。


笑ってゴールをする。


それが一番楽しい事だから、そのために。

ジョルジュは飛ばし過ぎずに自分のペースを守って走った。
それでも今までのレースに比べると格段に速いペースだった。

(;゚∀゚)(えらいな……でも久しぶりに楽しいわ)

笑いながら走っていた。

当然足はボロボロだ。
肩が揺れて腰の位置が安定していないのは今回だって例外じゃない。

それでも……不思議と精神的に楽だった。

疲労困憊といえるほど大きな疲労だったにも拘らず、走れないとは思わなかった。

(;゚∀゚)(ブーンにドクオ……待ってろよ。今回だけは負けれないからな)

ジョルジュがトライアスロンを始めたのに然程大きな理由はない。

マイナーで、一人で出来て、そして体を酷使するスポーツ。
それに当てはまっていたから彼はトライアスロンを始めたのだ。

彼はトライアスロンを始めて今年で3年目になる。
その3年間、初めての大会以外で彼は心の底から楽しいと思って競技をしなかった。
自分を傷付けることだけに満足していた。

初めて出た時は経験として楽しいと思ったがそれだけだ。


勝ちたいと思わない人間に力は出ない。

今まで最後のランニング種目で彼は本気で走った事などなかった。
ある程度のペースで走っていれば結果的に全力を尽くしたような形にはなるが、
あくまで自分を追い込み、最後の最後まで足が動かなくなるほど追い込んだことは無かった。


どこかで求めていたのだろう、一緒に競技できる仲間を。
競い合えるだろう仲間を。


そして今、彼は勝ちたいと心から思った。
それが楽しかったのだ。

(;゚∀゚)(ブーンにドクオか……感謝だな)

ブーンを誘ったのも深い意味はない。
偶然プールで会って、トライアスロンをやっていると話した。
そして社交辞令の一環として、半ば冗談で彼を誘ったのだ。

(;゚∀゚)(どこにトライアスロンに出るか聞かれて「出る」って即断するバカがいるんだよ……)


そこにいたんだ。


そして偶然にもそのバカに声をかけてしまったんだ。

(;゚∀゚)「……はぁっ、はぁっ、はッ!」

考え事をしていたが、ペースは落ちていない。
体は相変わらず今にも砕けそうな状態だったが、やはり走れないとは思わなかった。

選手を一人抜くたびに、抜いた相手に「ファイト」と軽く声をかけた。

余裕を見せているわけじゃない。
ただそれくらい嬉しかったんだ、楽しかったんだ。


(;゚∀゚)(まだブーンは見えないか……)


ジョルジュはペースを上げた。
ただでさえ限界の体に極度の負担がかかるも、やはり走れないとは思わなかった。

看板に残り4kmと表示されるころ、ようやくブーンはドクオを発見した。

(;^ω^)(ドクオ……見えたお!)

とうとう来た、ブーンにみなぎる闘志。
精神的アドバンテージ、ペースは無意識に上がった。

(;^ω^)「……はぁ、はッ!」

ドクオはこちらに気付いていない。
この隙に一気に抜き去る。


気付くな、気付くな、気付くな。


ペースを上げるな、上げるな、上げるな。


そう思いながらブーンは走り、ジワジワとドクオとの距離を詰めていった。

残り3kmの看板が見える頃、ドクオとの距離はあと10m程度にまで縮まっていた。
もう少しだ、彼の真後ろにまで行ったら一気に抜いてやろうと思っていた。


そんな矢先、誰かがブーンを抜き去った。


ジョルジュだ。


確認するや慌ててペースを上げてジョルジュに喰らいつく。
ただでさえドクオに近付こうとペースアップしていたのだが、ジョルジュはそれよりも速いペースでブーンを抜いた。

ブーンはすでにいっぱいいっぱいのペースで走っているつもりだったが、つられて更にペースは上がった。

(;゚ω゚)「……フヒュッ、フハヒュッ!!」

喉が痛い、フォームは一気に崩れた。
それでも必死にジョルジュへ喰らいついた。

(;'A`)(あと3kmもあるのか……しんどいな……)

ドクオは初めにペースを上げ過ぎたために、5km程度から一気に失速した。
何とか頑張って一定ペースに留めようとするも、バイクでの疲労が思うようにさせてくれない。

体力がほとんどない状態での残り3kmは、いつも以上に長く感じた。
追われる者の精神的な余裕はまだ生まれてこない。

(;'A`)(ブーンには抜かれていないぞ、このまま……)

そう思って振り返った先にはジョルジュとブーンがいた。
顔が引き攣る。

振り向いた時には10m程度あった距離が、すぐにも縮められた。
並びかけられる。

(;'A`)(こんなペースで……ッ!?)


並んだと思うとすぐに前に立たれた。
逃がすかとばかりにドクオもブーンの後ろにつく。

ついに3人は縦に並んだ。

(;゚∀゚)(ドクオもついて来たか……後ろを振り向かれなかったら一気に抜くつもりだったのにな……。
    どっちか早く落ちてもらわんと、オレが危ないな……)

精神的な余裕があっても、やはり肉体は正直だ。
一番後方から走ってきたジョルジュの体はとっくに限界を示している。

地面を蹴る足に一回一回力を入れる。
気を抜けば地面を蹴れずに足が止まる気がした。



(;゚ω゚)(ドクオ……来るなお……! このままのペースは絶対に無理だお……!)

こんなスピードでまだ走れる自分に驚くほど、ブーンは精一杯のペースで走っていた。
筋肉が熱く痛い、脹脛の筋肉が今にも膝まで上がって足が攣りそうだ。
腹筋ももうもたない、ひどく前傾姿勢で走らざるを得なかった。



(;'A`)(二人とも、やっぱり……速い……)

ドクオは思わず二人について行こうとペースを上げたが、すぐに限界がきた。
モモを上げなければ付いて行けないようなハイペース。

バイクで最も足を酷使したドクオにとって、ここまでのペースで走られれば初めに脱落するのは目に見えていた。



残り2km。
ドクオがとうとう脱落した。

もうモモが上がらない。
呼吸だって限界だったが、それ以上に足が耐え切れなかった。

リズムを戻して自分のペースへと減速する。

(;'A`)(くそ……とんでもないペースだ……)

しかしドクオも完全には落ちない。
ジワジワと距離を広げられるも、完全に離されない様にと走り続ける。

(;'A`)「ひぅっ、ひッ、はひッ……!!」

(;'A`)(ブーンとジョルジュさん、どっちが次に落ちてくる……?)

まだまだ分からない、どちらかが減速しようものなら十分追いつける距離とスピードで必死にドクオは走った。
毎日練習を重ねたんだ、スピードが無くても引けをとらないだけの体力はあった。

(;゚∀゚)(よし、ブーン……決めるか?)

残り1kmの看板がまだ見えない頃に、痺れを切らしジョルジュが一気にスピードを上げた。
ラストスパートと呼ぶには早過ぎる。
ペースだって明らかにオーバーペースだ。

(;゚ω゚)(ジョルジュさん、こんな所で……)

慌ててブーンも追いつく。
二人一気に加速した。

残り1km以上を残してのスパート、先に諦めた方が負ける。
勝った方は精神的優位に立てる、負けた方は一気にのしかかる疲労にやられてペースを落とす一方だろう。

(;゚ω゚)(キツイ、もう持たないお……)

(;゚∀゚)(くッ、まだ来るか……)

残り1kmの看板がようやく見えた。
長いラスト1kmの攻防が始まった。

トップの選手は既にゴールし、少しづつ終わりの選手が見えてくる。

('、`*川「今何人ゴールしました?」

ξ*゚ー゚)ξ「この選手で4人目ですよ」

('、`*川「まだもうちょっとかかるかな」

そんな話をしていると、5位の選手が見えてきた。

ξ*^ー^)ξ「がんばれー!」

('、`*川「ラストファイトー!」

スタートとゴールでしか応援できない今回のレースでは今まで以上に熱い声援がゴール選手に寄せられた。
遠目に選手が見えようものならだれ彼構わず応援の声がいくつもこだました。

そして5人目の選手がゴールする。
また歓声が大きく響き渡った。

ξ;゚ー゚)ξ「……? 伊藤さん、あれ……」

('、`;川「あ……!!」

それもそのはず、6位の選手がこちらに向かってくるのが見えていたのだから。

ラストスパートとばかりにモモを上げ、スピードを上げた。
今日何度目になるのだろうスピードアップ。
思うようにペースは上がらなかったが、そのまま必死に走った。

(;゚∀゚)「……はっ、ヒュハッ!」

ξ*^ー^)ξ「頑張れジョルジュさんー!」

('、`*川「ラストスパート、ゴールもうすぐー、頑張れー!」

デレと伊藤の応援が届いたのか、二人の方を見て大きくガッツポーズすると、ジョルジュはゴールテープを切った。

まだまだ歓声は止まない、次の選手がこちらへ向かって走ってきている。
知らない顔だったが、その更に後ろには知っている顔が二つ並んでいた。

ブーンとドクオだった。

(;゚∀゚)「ガンバレッ!!」

ジョルジュはアスファルトに寝転がったまま、切れ切れの息遣いで叫んだ。

ξ*^ー^)ξ「がんばれー!」

('、`*川「ラストだ行けーッ!!」

ブーンとドクオよりも一足お先に7位の選手がゴールする。
同時に更に大きくなった歓声の中を、二人は走ってきた。

(;゚ω゚)「……ヒュフッ、ヒュッ、ハヒュ!」

(;'A`)「……ヒュッ、ヒュッ、ハヒュッ!」

揃った息の切れる音。
残りの距離はあともう僅かだ。

(;゚ω゚)(ドクオ、まだ……負けれないおッ!!)

その二人の争いは、ブーンが先行していた。
ジョルジュとのスパートに負けて一度はドクオに追いつかれたが、再び残り少なくなったところでスパートをかけたのだ。

ドクオはバイクでモモを完全に使い切っていて、今以上スピードを上げて走れなかった。
スパートをかけたブーンとの距離は無常にも開いていった。


そして残り数十メートルでブーンは更にスパートをかけて、一気にゴールテープを切った。


数秒遅れてドクオもゴールテープを切る。




長かった試合が終わった。

('、`*川「お疲れ様!」

ξ*^ー^)ξ「お疲れ、みんな」

ドリンクを持って駆け寄ると、3人は我先にと奪い合ってすぐに飲み乾す。
慌てて応援の二人はドリンクを貰いに行ったが、やはりすぐに飲みほされた。


しばらく荒い息遣いだけが響いて、誰も声を出さなかった。
膝が笑い、それぞれが立つことも出来なかった。


(;゚∀゚)「……お疲れ様」

(;^ω^)「……だお、おっ」

(;'A`)「です……」

やっとジョルジュが声を出すも、皆覇気の無い声だった。

ξ*^ー^)ξ「みんな凄かったよ、見ていて凄く興奮した、ね」

('、`*川「うん、本当にお疲れ様」

そう言って二人はそれぞれにタオルを預けたが、一同寝転がったままだった。


また少しゆっくりすると、ジョルジュがフゥと息を吐いた。
頷くようにドクオ、ブーンと続いて大きな息を吐く。


(;゚∀゚)「あー、マジつっかれたもう走れねーッ!!」


(;'A`)「ああああー、もうぜってえトライアスロンなんてやらねぇぞおおッ!」


(;^ω^)「もう限界だおしばらく運動はしたくないおおおおッ!」


そしてそれぞれが思いのまま、大きく叫んだ。





VIPトライアスロン ニューソク海岸大会


ショートの部:51.5km(スイム1.5km、バイク40km、ラン10km)
     参加者  64人


ジョルジュ:
スイム 26'43"(16位)
バイク 1:11'02"(10位)
スプリット 1:37'45"(13位)
ラン 43'48"(7位)
総合 2:21'33"(6位)

ブーン:
スイム 19'45"(1位)
バイク 1:16'52"(29位)
スプリット 1:36'37"(11位)
ラン 44'33"(10位)
総合 2:22'10"(8位)

ドクオ:
スイム 26'58"(18位)
バイク 1:07'31"(4位)
スプリット 1:34'29"(8位)
ラン 47'47"(21位)
総合 2:22'16"(9位)



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