ξ゚听)ξ壁殴り代行始めました 3−2


(´・ω・`)うふふ。ツンちゃんも壁殴りやってみるかしらん? 良い代行師になれると思うわよん。

全力でお断りさせていただく所存である。お琴(ry
ダディ風に言えば No Thank You である。

やはりどうにも胡散臭い職業だという印象はぬぐえない。
国家資格という大義名分がなければ、到底認められないように思う。

(´・ω・`)うふふ……。そのうち分かるときが来るわよん。

ξ゚听)ξイラッ

だからそのフリはやめろと百万回(ry そろそろ(ryもしつこい。
この世の中にオカマの含み笑いほど神経を逆撫でするものはないのではないだろうか。

(´・ω・`)〜♪

カーステレオから流れ出した夏の扉のメロディにあわせて、オカマが気持ちよさそうにハミングする。
今冬だけどな。


(´・ω・`)とうちゃーっく♪

目的地そばの時間貸し駐車場に車を止めて徒歩三分、今日の作業場は、どうやらあの小綺麗なマンションのようだ。
駅近で建物自体も新しそうだし、エントランスからしてオートロックである。
くっそいい所住んでやがるな。

(´・ω・`)えぇと、3、0、5号、っと……ピンポーン♪

<……ハイ

(´・ω・`)こんにちわぁん! 壁殴り代行サービスでぇす♪

<……ドウゾ

入り口のドアノブがガチャリとなって、鍵が外れた音がした。
……ハイテクだな。別にうらやましくなんかないけど。
そのまま奥に入っていくと、階段横には金持ち御用達のエレベーター。
こんな贅沢してると人間駄目になるよ。年取って歩けなくなっても知らないから。でも乗るけど。

いったいどういう種類の人間が、こういう場所に住むのだろう。
やはりご多分に漏れず、犯罪すれすれのグレーな商売でのし上がった野郎たちであろうか。
不公平な世の中だよ何が格差社会だよ全部小泉さんのせいだよ。


ξ゚听)ξ……ブルジョワですね。

(´・ω・`)……そうねぇん。

<チン♪

エレベーター降りてすぐ右手が、305号室だった。
たかだか出入りごときに手間かけさせやがってふてぇ野郎だ。
ふん、とくとその面拝ませてもらおうじゃねーか。

(´・ω・`)ピンポーン♪

<……ハイ、イマアケマス

そして、出てきたのは

川 ゚ -゚)……。

おそらく私と同年代であろう、若い女だった。

……美人である。チクショウ。


川 ゚ -゚)こんにちは。どうぞ。

(´・ω・`)はぁいん。 こんにちわぁん♪ 失礼しまっすぅ♪

ペコリξ゚听)ξ……。

間取りは2LDK。案内されたリビングは綺麗に整頓されていて、あまり生活臭がしない。
どうやら一人暮らしのようである。きっとどこかの金満社長の愛人とかだろう。絶対そうに違いない。

川 ゚ -゚)すいません。少し電話をかけなくてはいけないので、待っててください。

ふん、嫌な女である。
チヤホヤされて当たり前、すべての男は私の奴隷よ? とかいっちゃう種類の人間だな、うん。
銀座のクラブで働いてたけど馴染みの土建屋社長に札束で頬ひっぱたかれて囲われることになりました愛人24歳です。
まぁ確かにさ、顔はさ、綺麗だけどさ。別に嫉妬なんかしてねーよshit!!

(´・ω・`)……綺麗な人ねぇん。

オカマがため息混じりにそう呟いた。
ふーんだ!


川 ゚ -゚)お待たせしました。早速はじめてください。

しばらく後、電話を終えたらしい愛人24歳が大して悪びれた風もなく帰ってきた。
私は器が大きい人間なので、あの閉経52歳ですらお茶出すくらいの心遣いは出来ていたのにとかそういう寂しいことは言わない。
が、随分自分勝手な野郎である。

(´・ω・`)……うーん?

珍しくオカマも怪訝な表情を見せている。そうだろうそうだろう、嫌な女だよなこいつ、ねっ!!

川 ゚ -゚)……どうしました?

(´・ω・`)うぅん……あなた……。

あん、どうした? 腹痛か? ぽんぽんシクシクか?



(´・ω・`)……まぁ、これもお仕事よねん。

そういって気を取り直したように、リビングの壁に向き合うオカマ。
そうだそうだ、遠慮はいらんぞ。むしろ壁以外にも色々ぶち壊しても許されるんじゃなかろうか。
むしろ是非そうしていただきたい。

(´・ω・`)じゃ、スッキリタイケンコースで良いわねん。

川 ゚ -゚)はい、お願いします。

なんだよ、遠慮すんなよ。もっと派手にぶちかまそうぜ!

(#´・ω・`)それじゃぁ……いくわよおおおおうっ!!!

……ちぇっ。つまんないの。


(#´゚ω゚`)らぶりいいいいいいいいッ!!!!

川 ゚ -゚)……!

うふふ、驚いてる驚いてる。たたでさえガチムチのオカマが、
目の前でみるみる膨らんでいくのだから、当然である。

(#´゚ω゚`)ちゃあみいいいいいいいッ!!!!

川 ゚ -゚)……。

ふん、どうせ暇つぶし程度の軽い気持ちで依頼してきたのだろう。
ぶち抜かれた壁をみて、せいぜい後で後悔するがいいさ!

(#´゚ω゚`)ばあああああいばあああ

川 ゚ -゚)……ちょっと待って。

ξ゚听)ξ

……なんですと。


(´・ω・`)……。

膨張を途中でさえぎられたオカマは、それでも中途半端に膨らんでしまった体をもてあましたように無言で立ち尽くしていた。

川 ゚ -゚)ああ、失敗しちゃったな。こんなに早いんだ。

愛人24歳がそういって、困ったように額に手をやる。なんだ、何言ってんだこいつ。

川 ゚ -゚)……あ、来てくれたかな?

小さくつぶやいて、愛人24歳が窓の外に視線を移した。
遠くからなにやら耳慣れたサイレンの音が聞こえてくる。これは……。

川 ゚ -゚)……ごめんなさい。後でお詫びはするから、許してください。

どういうことか問いただそうと私が一歩詰め寄った、その時だった。
玄関のドアノブがガチャリと回り、顔を引きつらせて鬼のようになった形相の男が一人、勢いよく室内に駆け込んできた。

ミ#,,゚Д゚彡てめぇら何してんだコラアアアアアッ!!!!!!!!!

川 ゚ -゚)助けてフサさんっ!!! この人たちがっ!!

……はあ?


丸暴42歳はすばやくオカマと愛人24歳の間に体を入れて、
ゆうに自分の体積の三倍はありそうなオカマと対峙して、いまにも飛び掛らんばかりの姿勢をみせた。
対してオカマはただ無言で、面白そうに成り行きを見守っているだけである。心なし、顔がニヤ付いている。

ミ#,,゚Д゚彡あんたら、何のつもりだっ!!! 説明しろっ!!

説明が欲しいのはこちらのほうである。

川 ゚ -゚)この人たちがいきなり押しかけてきて!! 怖かった!! 怖かったよう!!

……はああん?
何言ってんだこいつ、電波ちゃんか?
私が説明しようと口を開きかけたのをさえぎって、オカマがつぶやくようにいった。

(´・ω・`)……こい、ねぇ。

……濃い? ……あなたの顔がですか? ソースのお話ならもう三回目ですよ?
だが私にとっては意味不明なその呟きは、愛人24歳に対しての効果は抜群だったようだ。ダメージ2倍である。あれ、1.5倍だっけ?

川 ゚ -゚)……っ。

端整な顔をすこしゆがめて、愛人24歳がかすかに同様の兆しを見せる。


(´・ω・`)……。

ミ#,,゚Д゚彡……。

ξ゚听)ξ……。

川 ゚ -゚)……ふぅ。

張り詰めた空気をやぶって、しばらくしてその口から漏れた言葉は、わが耳を疑いたくなるようなものだった。


川 ゚ -゚)……なんだ。ばれちゃったのか……。つまんないの。

ミ;,,゚Д゚彡……ああ? クー、お前……。

(´・ω・`)うふふ……。うぶねぇ。

……一人だけ取り残されたような気分である。何言ってるんだろうこいつら。
お兄様!咲耶妊娠しちゃうワッ!!!何言ってるんだッ!!\(゚∀゚)ノ

川 ゚ -゚)……気づいてたんですか。……ふふ、肝心の本人は全然分かってくれないのに。

ミ;,,゚Д゚彡おい、クー……どういう……。

川 ゚ -゚)……寂しかったの。お仕事忙しいのは分かってたけど、最近全然会えないし……。お店にも来てくれないし……。
 
……は?

川 ゚ -゚)……変な人に乱暴されそうって言ったら、フサさん、助けに来てくれるかなって……。
    フサさんが前にお店で話してくれた、壁殴りの人なら、おかしな人っていってたから心配してくれるかなって。

……はあああああああああああああああああああああああん?


(´・ω・`)うふふ、乙女ねぇん。かぁわいいん。うふふふ。

川 ゚ -゚)……ごめんなさい。ちょっと心配してかけたら、後でちゃんと謝るつもりだったんです。

はああああああああああああああああああああああああああああああああ?
何なのこいつお姫様気分が味わいたくて自作自演してみましたってことか?
ありえねえあんたありえねえよ愛人どころの騒ぎじゃねーよ完璧メンヘラじゃねーか。

ミ,,゚Д゚彡クー、お前……。

そうだ! いけ! ここはぶちきれる場面だぞ! あんたの気持ちはよく分かるよ!
こんな脳内お花畑の妄言に振り回されて何させられてんだって話だよな! 
いけっ! シッペデコピン馬場チョップぐらいなら全然許されるぞ! むしろ平手の一発までなら許容範囲だ!!

ミ,,゚Д゚彡……すまねぇ。……おれが気づいてやれなかったばっかりに。

のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!

川 ゚ -゚)……ごめんなさい。いけないことだって分かってたんだけど……。
    そういう女の人が昔いたって本で読んで……。私もそうすれば、フサさんに会えるかなって……。

八百屋お七かよネタ元は聞いてねーよあれはそういう阿呆な女が居たって話であって
こうすればアナタも彼のハートを鷲づかみ♪ とかそういうことじゃねーんよ思考パターンがサイコパスじゃねーか!!!


(´・ω・`)うふふ。いじらしいんだからん♪ 二人は、知り合いなのん?

川 ゚ -゚)……はい。私、ホステスやっていて……前に、たちの悪いお客に絡まれたことがあって、
    そのときお店に来ていたフサさんが、助けてくれたんです。

なんだよこいつマジでキャバ嬢かよくっそちょっと顔が良いからって調子に乗りやがって
何でもかんでも自分の思い通りになると思うなよああもうやだあたしおうち帰る!!

ミ,,゚Д゚彡……本当に、すいませんっ!! 全部俺が悪いんです!
     酒の上の話で、ちょっと面白い職業の人たちが居るって……それでこいつは……。

(´・ω・`)あらぁん。かまわないわよう! うふふ! 

川 ゚ -゚)……ごめんなさい。その、もし良かったら、壁殴り代行のお仕事、拝見させてください。   
    料金はちゃんとお支払いします。迷惑かけてしまって本当にごめんなさい。

ミ,,゚Д゚彡俺からもお願いします! 是非!

馬鹿か人舐めんのもいい加減にしろよこちとら遊びでやってんじゃねーんだよプロだぞプロ
国内で13人だぞちょっと見てみたいんでやってみてくれませんかとかそんなレベルの話じゃねーんだよ阿呆が
もういいよこいつらほら帰ろうぜ!! 帰ってオセロしようぜ馬鹿馬鹿しいわ!!

(´・ω・`)うふふ! もちろんおっけーよん! 任せといてん!

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

怒りが有頂天すぎて自制が効かない。もう付き合っていられない。助けて吉野家。あたしおうちかえゆ。


今日、壁殴り代行のアルバイト行ったんです。壁殴り代行。
そしたらなんか依頼人がめちゃくちゃ美人で嫌な女なんです。
で、よく話してみたらなんかその女メンヘラで、八百屋お七が、とか言ってるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前な、男がかまってくれない如きで普段呼んだこともない壁殴り代行なんて頼んでんじゃねーよ、ボケが。
遊びじゃねーんだよ、遊びじゃ。
なんか相手の男とかも来ちゃうし。公務ほっぽらかして白馬の王子様気取りか。おめでてーな。
ごめん……俺が悪かった、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前らな、こちとらおままごとに付き合ってるほど暇じゃねーんだよと。
壁殴り代行ってのはな、もっと崇高な職業であるべきなんだよ。
壁に向かいにあった代行師がいつ力尽きてもおかしくない、
壊すか壊されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。お花畑は、すっこんでろ。
で、やっと帰れるかと思ったら、そいつらが、記念に壁殴ってってください、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、記念になんてきょうび許されねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、記念に、だ。
お前らは本当に壁殴り代行して欲しいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前ら、壁殴ってるとこ見たいだけちゃうんかと。
壁殴り代行に携わってる私から言わせてもらえば今、代行師の間での最新流行はやっぱり、
マックスバキバキコース、これだね。
マックスバキバキ。これが本物の壁殴り。
マックスってのは限界まで、てこと。住居全壊までやる。これ。
で、それにバキバキ(エアロ)。これ最強。
しかしこれを頼むと明日から住む家がなくなるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前らド素人は、枕でも殴ってなさいってこった。


帰路をひた走る車の中で、それでもまだ私の怒りはおさまることを知らなかった。
当然である。あんな頭沸いてるメンヘラの妄言に付き合わされて、穏やかに笑っていられる方がどうかしているというものだ。
もうむしろ私が壁殴り代行を頼みたいくらいの思いだった。

ξ#゚听)ξとんでもないですよね本当に! ちょっと顔が良いからって何しても許されると思ってるんですよああいう女って。
    フサギコとかいう人も頭おかしいですよ。サイレンまでならして吹っ飛んできて、公私混同もはなはだしいですよ!
    あげくに怒りもしないで全部俺が悪いとかホント、なに考えてんのって感じ!!
    相手が美人だったら何でも良いですかね男の人って。ホントしんじらんない!

(´・ω・`)うふふ。いいじゃないのん。ラブラブで、うらやましぃわん。

ξ#゚听)ξ所長も人が良すぎますよ! あんなのに付き合う必要なんてなかったのに!
     壁殴りのとき、手加減までするなんて! 
     家中壊しちゃっても良かったくらいなのに、ちょっと殴って何にも壊さないで帰ってきちゃうなんて 
     修理も呼べなかったら全然お金にならないじゃないですか!

(´・ω・`)あらぁん、手加減なんかしてないのよん。あんまり張り切る必要がなかっただけよう。
     むしろちょうど良い息抜きになったくらいだわん。うふふ。

あれだけのことをされて、それでもまったく気にしていないそぶりのオカマの気持ちが、私にはまったく分からなかった。
そんな私の様子を横目で楽しそうに眺めながら、オカマが話し始めた。


(´・ω・`)……この仕事って、楽しいことも多いけど大変なことのほうがずっと多いのよん。 
    一流の壁殴りをするには、相手の気持ちになって、嫌なことも悲しいことも全部引き受けてあげなきゃいけないからん……。
    長く続けられる人が少ないのは、そういう理由もあるのん……。

でもね、と言って穏やかな微笑みを浮かべたまま、オカマは続けた。

(´・ω・`)大変なことより、やりがいのほうがずっと大きいんだって、私、思うのん。
    誰かのために辛いことを引き受けてあげられるって、凄いことなんだって思うのん。
    でも……やっぱり疲れちゃうこともあるから、今日みたいな微笑ましいお仕事があると、なんだかほっとするのよん。

ξ゚听)ξ……。

……チクショウ。そんなこといわれたら、憤りまくってた私が凄い小物みたいじゃないか。

(´・ω・`)……うふふ。明日もきっと、いい天気なのねん。
    
オレンジ色の夕日に照らされてハンドルを握るオカマの横顔が、そのときだけはなぜか、とても、綺麗なものに見えた。


(´・ω・`)うふふ。それにしてもあの二人、アツアツだったわねん! 
    ツンちゃんもお年頃なんだから、いっぱい恋しなきゃだめよん♪ うふふふ!

ξ゚听)ξイラッ

くっそ!
ブルータス、お前もかっ!!





        領   収   書

                   素直クール 様

      ¥         1,200 −
     但し スッキリタイケンコース


上記金額正に領収致しました


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