プライドという言葉には、ベクトルが二つある。
ポジティブな意味のそれは、矜持、自尊心、誇り、であり、
ネガティブな意味の場合、傲慢、虚栄心、驕り、自惚れがそれにあたる。
ξ゚听)ξ……カビちゃってるわね。
実はこの二つのベクトルの違いが中々厄介な問題で、
前者がなければ人は社会で生きていけぬし、かといってそれも度が過ぎれば鼻に付く後者に早代わりだ。
バランスって、大事だね。ご利用は計画的に。
他人は自分を映す鏡である、なぞとはよく聞く台詞だが、
かの有名なマルクス兄さんも、そのことについて次のように言及している。
曰く『まず他人との関係ありき、それを通して初めて自分は自分に関係する』なのだ。
コミュ障には耳の痛い話である。
では、誰かの鏡に映った自分が理想とかけ離れていたとしたら。
それを実像と捉えるべきか、それとも虚像と捉えるべきなのか。
イメージとのギャップに傷つけられたプライドは、それは自尊心なのか、それともただの自惚れか。
他者の評価と、自己のそれとの埋まらない溝に直面したとき人h
ξ゚听)ξ……食えないことはない。
カビパンうめぇ……。
面倒くさくなったので続きはwebで。
ξ゚听)ξ壁殴り代行始めました 案件5:木原モララー様
ξ゚听)ξ……。
今朝いつもどおり出勤すると、事務所の前の公道に上り棒が立っていた。
目測で七メートルくらいありそうなその金属製の棒の先は、逆L字型に事務所の壁に固定されていて、
どうやらオカマが先日ぶち破った窓の修理のときにあわせて改造したようだった。
昨日まではダンボールとガムテで補修されていたはずなので、してみるとこれは一晩で完成した代物らしい。
ジェバンニも形無しである。
一見して使途が不明だったのだが、しばらくそれを眺めているうちになんとなく得心がいった。
本来窓があったはずの部分にドアノブのようなものが付いている。というか窓がドアになっている。
おそらく有事の際にはあのドアもとい窓をさっと開け放ち、消防師よろしく颯爽と滑り降りられるように、というオカマの遊び心なのだろう。
面倒くさいので華麗にスルーすることにしようと思う。ていうか有事ってなんだし。
ξ゚听)ξ……ふぅ。
ため息を一つつき、気分を切り替えてビル横の階段を上がっていた。
くすんだ壁面も、腐ってはがれかけたゴム製の滑り止めも、いつものままである。
いつもどおりって気持ちいいね。あのオカマももっと物を大切にする心を持たないと駄目だね。
窓もしかり、壁もしかり、壊してばっかりでまったくもう。
そんなことを考えながら押し開いたドアの先に、
/ ,' 3 おお、やっときたかえ。
何故、糞爺が居るのか。
(´・ω・`)あらぁん、おはようツンちゃん♪
ξ゚听)ξ……おはよーございます。
/ ,' 3 うむ、おはよう。
お前には言ってない。何でここに居るんだ。
(´・ω・`)今朝、荒巻さんと二人でねぇん、あの人に会いに行って来たのよん、河内さん。可愛い猫ちゃん飼ってたのよぅ。
ξ゚听)ξ……?
/ ,' 3 ほら、ミルナじゃよ。ツンちゃんが助けた。
ああ、あのリストラ47歳か。別に私が助けたわけではないけれど。
あと、お前はツンちゃんって呼ぶな。ていうかいつの間に連絡先交換してたんだし。
どうやら朝早くから二人してプチ家庭訪問を決行してきたらしい。リストラ47歳もいい迷惑だったろうに。
アフターサービスか何かのつもりだろうか。とことんお節介なやつらである。
(´・ω・`)河内さん、知り合いの工場で働かせてもらえることになったって言ってたわよん。
良かったわねぇん。
……へぇ、うん。アイツ、働き口見つかったのか。そりゃ良かった。
名前すらぱっと出てこなかったくらいの関りあいだけど、まあ良かったね、うん。
/ ,' 3 袖振り合うも多生の縁とういやつじゃな。あのまま放っておくわけにもいかんでのう。
(´・ω・`)後のケアもばっちりよねん♪ 荒巻さん、そういうところ細かいからぁん。
/ ,' 3 カカカ! 豪快にして繊細なのが、一流の仕事というもんじゃ!
繊細な人間は、初対面でいきなり胸がどうだなどという話はしないと思う。別に気にしてないけど。本当だよ。
とりあえず用が済んだのであれば早くおいとま願いたいものである。ぶぶ漬けを七十杯くらい出したい気分である。
私、この爺嫌いなんだ。第一印象から決めてました。
/ ,' 3 いやあ、カカカ! もう一度お前さんに会いたくて寄らせてもらったんじゃ!
ξ゚听)ξ……。
自分が好きな人間には相手にされなくて、嫌いな人間にはなぜか気に入られる。
こういうことって、あるよね。
件のリストラ47歳の一件の後、オカマが語ったところによると、糞爺は壁殴り業界の、言わば大御所的な存在であったらしい。
若かりしころは業界きっての花形代行師だったようで、その勢いは老いてなお衰えることを知らず、
古希を迎えた今でも国内全土を精力的に回って本業の傍ら、若手の育成などにも熱を入れているということだった。
オカマとは昵懇の間柄のようで、まだオカマが駆け出しの代行師だったころ随分世話になったというような話もしていた。
わりとどうでもいい情報である。そもそも壁殴り業界ってなんだし。
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> わりとどうでもいい <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^ ̄
ヘξ゚听)ξヘ
|∧
/
大事なことなので言い直しました。
最近リアルでこれをやりたくなるときがまれに良くある。
ξ゚听)ξ……お茶、淹れますね。
(´・ω・`)あらぁん。ありがとねん♪
/ ,' 3 わし、緑茶がいい。
ξ゚听)ξイラッ
水道水でもありがたく思ってほしいものだが、一応雇い主の客である以上無視も出来ない。
そうか、これが力なき労働者の悲哀というやつか。うわさのパワーハラスメントというやつか。
私は今、現代社会が抱える闇に直面している、いや、既に飲み込まれかけているというべきかも知れない。
くそう、ブルジョワジーが憎い。血の通わない拝金主義が憎い。
だが私は負けない。力尽き倒れていった数え切れないほどの同志達、
そして後に続く力なき者たちのためにも、ここで負けるわけにはいかないのだ。
例えこの身が業火に焼かれ!! 脈打つ赤き心の臓がその鼓動をとめたとしても!!
熱き魂(ホットソウル)の叫びが私に逃げることを許しはしないのだっ!!!
ξ#゚听)ξ天が呼ぶ地が呼ぶ赤が呼ぶッ!!!!
ξ#゚听)ξ資本を倒せと俺を呼ぶッ!!!
ξ#゚听)ξ聞けッ!! ブルジョワジーどもッ!!
俺の名はッ……!!
ξ#゚听)ξ仮面フリーター・プロレタリーア!!のようです
近日公開予t
* *
* + うそです
∧_∧
+ bξ゚听)ξb
Y Y *
ティーバッグってマジ便利。下着の話じゃないよ、お茶の話。
お茶うけは緑茶に合わせて和菓子にしよう。TPOをわきまえてる私ってさすがDANE!
あれ、でもこれってただのお茶汲みOLってやつじゃやめろ考えるな。
ξ゚听)ξ……どうぞ。
(´・ω・`)ありがとねぇん♪
/ ,' 3 おお、あちち……ずいぶん苦いのう……。
うるせー黙って飲め。そしてさっさと帰れ。
/ ,' 3 しかし……本当に……うーむ……。
糞爺が私のつま先から頭までじろじろと眺め回し、なにやら口中でぶつぶつとつぶやく。
なんだその目つき。セクハラか。セクハラ爺か。こっち見んな。
(´・ω・`)……ねぇ?
/ ,' 3 うむ、逸材じゃのぅ。
ξ゚听)ξ……なにがですか?
(´・ω・`)ツンちゃんの、代行師としての素質の話よん。
ああ、またそれか。毎度、思わせぶりなやつらである。
/ ,' 3 なんじゃショボン、話しとらんのか。
(´・ω・`)こればっかりはねぇん、自分で気が付かないと……。
/ ,' 3 ……それもそうかの。
ξ゚听)ξ……。
なにやら気に障る言い回しである。別に気が付かなくて良いのだけれど。
そもそも私はいわば腰掛けてきな心情でこのアルバイトにいそしんでいるのであって、
これをライフワークにしていこうなぞという気はさらさらないのだ。素質がどうのといわれてもこちらとしては何も得るものがない。
本当に欲しい才能は手に入らなくて、どうでも良いことばかりに能がある。
こういうことって、あるよね。
あれ、でもよく考えたら本当にやりたいことも特にやめろ考えるな。
ところどころ薄くなって破れている合皮製のソファに、我が物顔で座り込む糞爺。
そこ、どいてくれないかな。私の指定席なんだけど。
/ ,' 3 ……それでのう、内藤のことなんじゃが……。
(´・ω・`)……まさか、リジェクト?
/ ,' 3 いや、その心配はないといっておったわえ。
ただ……あれもまだまだ、未熟じゃからのぅ……。不安はある。
ムシャムシャξ゚听)ξ(美味しいわぁ……)
なにやら難しい顔をして話し込む二人を尻目に私は、ただひたすら銘菓『ひよこ』の完成された美味しさに浸っていた。
愛らしいその見た目もさることながら、肝心の味も、銘菓と自称するにふさわしいだけの実力を十二分に兼ね備えていると思う。
しっとりとした生地の香ばしさの口当たりも滑らかに、
その皮に包まれた少し黄色がかった餡がまた、上品でほどよい甘さをかもし出している。
あまりの美味しさに、ついついお茶がすすむ。
やっぱ緑茶には和菓子だね。最強コンボといっても過言ではないだろう。
私は普段紅茶派であるが、こればっかりは否定できない真実である。
(´・ω・`)……私が、引き継ごうかしらん?
/ ,' 3 うーむ……もう少し様子を見たいのじゃが……。何事も経験じゃて。
(´・ω・`)そう……。でも、大事になる前に何とかしなきゃだわぁん。
/ ,' 3 そうじゃのう……。すまんが、そちらにも気を配っていてくれると助かるわえ。
わしも、もうこの歳じゃ。そろそろ無理もきつくなってきたわ。
ズズーξ゚听)ξ(ああ、もう死んでもいい……)
こうちゃおいしい!りょくちゃそこそこ!
こうちゃのみたい!りょくちゃのみたくない!
でも、和菓子には・・・?
!?
りょくちゃおいしい!
ふしぎ!!
そう、和が付く食べ物には、絶対に緑茶があうのだ。これぞ先人たちの英知の結晶であるといえよう。人間って凄い。
(´・ω・`)あらぁん、なにいってるのよぅ。まだまだ頑張ってもらわないと、困っちゃうわよう。
/ ,' 3 カカ、まぁ出来る限りは続けたいと思うがのう。
(´・ω・`)そうよぅ、ただでさえ人が少ないのに、
この上荒巻さんまで居なくなっちゃったら、大変どころじゃないわよぅ。
/ ,' 3 カカ、ま、そう言ってもらえるうちが華じゃの。カカカ!
ズズーξ゚听)ξ(……もう一個、食べようかな)
スイーツ笑も嫌いではないが、洋菓子の甘さというものは、少しストレートにすぎると思う。
十把一絡げに断定してしまうのは乱暴だが、言ってしまえば、味に深みがないのだ。
直接的な甘さはあるのだが、奥行きにかけると言い換えても良いだろう。
(´・ω・`)うふふ、まだまだ、あと十年は続けてもらわないと……。
さって! そろそろ時間ねぇん!
/ ,' 3 おお、仕事かえ。うむ、ではわしもそろそろ帰るとしよう。
すまぬが、よろしく頼むぞ。
もちろんこれは個人的な意見であるし、例外など数え始めたらきりがないのだが
やはり私は洋菓子より和菓子が好きだ。大味な洋菓子は、本当に時々食べるくらいがちょうど良い。
が、和菓子は毎日食べても飽きが来ない。大体毛唐の料理というものは基本的に味が直s
(´・ω・`)はぁいん♪ じゃ、ツンちゃん、そろそろ出るわよぅ!
……んあえ? ああ、仕事か。はーい。
/ ,' 3 では、また近いうちにの!
茶飲み話を十二分に満喫したらしい糞爺は、上機嫌な様子でそれだけ言い残して、
映画の中でしか見たことないような大型のハーレーにまたがり、颯爽と去っていった。
何だアイツ、カブ乗れよカブ。やはり好かない野郎である。
(´・ω・`)うふふ、私たちも急ぎましょう!
そう言って、げっきょくさんの駐車場に向かっていくオカマ。
余談であるが結局上り棒は使われなかった。本心をいえば、ちょっとだけ期待してしまった私が悲しい。
(´・ω・`)あ〜♪ わ〜たし〜の〜こ〜いはぁぁん♪
ξ゚听)ξ……。
相変わらず絶好調のオカマの歌声が、狭い車内によく響く。この季節感の無さが、またたまらない。
日産マーチの今にも死にそうな独特のエンジン音に軽い同情を覚えながら四半時、
今日の現場は閑静な住宅街の小奇麗な一軒家だった。
車二台分くらいのスペースの庭に、これまたスタンダードなタイプの犬小屋があり、
レトリバーと思われる長毛の犬がだらしなく寝そべったまま、来訪者の私たちを眠そうな目で見つめている。
THE 中流家庭、そんな感じ。
(´・ω・`)ピンポーン♪
<……ハイ
(´・ω・`)こんにちわぁん! 毎度ありがとうございまぁっす!
壁殴り代行サービスでぇす♪
<……イマアケル
(´・ω・`)……はぁいん♪
ξ゚听)ξ……。
少し間をおいて、ドアを開けて出てきたのは、あまり派手ではないけれど小奇麗な身なりの、働き盛りといった風な男だった。
( ・∀・)いらっしゃい。
まぁ平日のこの時間に在宅している以上、推して図るべし、ではあるだろう。
ていうか飯時に予約入れんなし。
( ・∀・)あーどうぞどうぞ、入って。
(´・ω・`)失礼しまぁっす♪
ペコリξ゚听)ξ……。
ちらりと目を走らせた上がりかまちには、男物の靴が何足かしか並んで居らず、ということはどうやら一人者のようである。
独身で家持ちか、いい身分だな貴様。
( ・∀・)こっちこっち。
(´・ω・`)はぁいん!
ξ゚听)ξ……。
男の案内に従い、廊下の突き当たりの一室に連れて行かれる。
明け開かれたドアの向こうは
(´・ω・`)……まぁ!
ξ゚听)ξ……うわぁ。
十畳ほどの広さの部屋に、所狭しと様々な機械類が並んでいた。
TVカメラのようなものが三台、何かのモニターが五台、デスクトップ型のPCが三台に、ノート型も二台ある。
そのほかにも大型のステレオアンプやミキサーのようなものまでそろっており、
それらの配線が複雑に入り組んで、ちょっとしたカオスの様相を呈していた。
なんだ、何のスタジオだこれ。
( ・∀・)ああ、俺、フリーで映像関係の仕事しててね。ここはその機材置場兼仕事場なんだ。
男が、若干得意げな様子でそういった。
ああ、そうか。どうもさっきから気に入らないと思ってたらそういうことか。
世の中の文化人気取りはすべからく、鼻持ちならない一種独特な雰囲気というものをかもし出しているというのが私の持論であるが
この男もご多分に漏れずそういった空気を身にまとっていると、薄々感じてはいたのだ。
チノパンにカシミアのセーターなんか着ちゃってさ、上品ぶりやがって。文化人気取り31歳、それがこの男の正体である。
(´・ω・`)まあ! お若いのにすごいのねぇん!
それで、今日のお仕事はどういったご依頼ですかしらん?
( ・∀・)あーそのことなんだけど、
どうせゲージュツ上の悩みが、とかそんな感じだろ。
被写体の木の葉の一枚が右向いてようが左向いてようが、常人からしてみれば大差ないっつーの。
( ・∀・)ここにある機材、全部ぶっ壊して欲しいんだよね。
なにそれ恐い。
(´・ω・`)それは……?
さすがのオカマも意図を計りかねたかのように、その温和な表情を曇らせた。
( ・∀・)だからさ、この機材、もう全部いらないんだよね。
あんたら、そういう廃品処理みたいなのが仕事なんだろ?
ξ゚听)ξイラッ
ちげーよ。うちは壁殴りが本業であって、壊す作業はあくまで副産物というか結果というか、まあ大抵ぶっ壊してるけど。
でもその言い方は無いんじゃない? 例えるなら、八百屋に行ってさも当然のように牛肉を注文するようなものだ。
うん、うまい比喩だな、牛肉だけに。ホラ、いってやれよオカマ。
(´・ω・`)……壁殴り代行業っていうお仕事は、お客様のフラストレーションを代弁するっていうお仕事ですからぁん……。
ただ壊してくれっていうのは、ちょっと……。
( ・∀・)あれぇ、違うの? 頼めば何でも壊してくれるって聞いたんだけど……。
それならわざわざ人を雇って壊させたりしないで、しかるべきところに下取りにでも出せばいいじゃないか。
詳しくはわからんがPCだけでも結構な金になるだろ。また金持ちの道楽か、これだからブルジョワは。
めんどいから全部引き取ってこっちで下取り出さないか? 今思いついたけど。
(´・ω・`)……大切なお仕事道具なのよねぇん? もし良かったら、事情をお聞かせくださらないかしらぁん?
( ・∀・)……。
……良い考えだと、思うんだけど。オカマもとことん世話焼きである。
若干の沈黙をおいて、文化人気取り31歳がしぶしぶといった様子で語り始めた。
( ・∀・)……あんたらにこんな話、してもしょうがないんだけどさ、
じゃ、言うなし。いちいち癇に障る野郎である。
( ・∀・)仕事、やめようと思って。
(´・ω・`)あらぁん? どうしてかしらぁん?
( ・∀・)いや、なんつーか……。
(´・ω・`)……。
言葉を濁してためらいがちに伏せた視線の先には、シンプルなデザインがクールな黒い金属製の机と椅子。
その椅子の背をじっと見つめながら、つぶやくように文化人気取り31歳が続けた。
( ・∀・)……なんかどんだけ頑張っても、認められないんだよね、俺。
……昼ごはん何食べようかなぁ。オカマに言ったらおごってくれないだろうか。
久し振りにガッツリ脂っこいもの食べたいな、トンカツとか。
( ・∀・)結局、俺の作った画って、いつまでたっても『まぁまぁ』なんだよね。
いや、俺自身は仕事の上で妥協したことは無いよ。それは断言できる。
でも、クライアントが、さ。
(´・ω・`)……。
でもなぁ、最近ちょっと体重がなぁ……。
いくら食べても太らない人っているけど、あれ、どうなってるのかね本当に。羨ましいんだけど。
お腹に虫でも飼ってるの? やっぱ、運動しないと駄目なのかな。
( ・∀・)……。
……んあ? 聞いてる聞いてる、どうぞ続けて。
( ・∀・)……実力主義の業界だからね、そんなかでも俺は、よくやってるほうだとは思うよ。
スケジュールだって埋まるくらいの仕事は来るし。
ただ……どうあがいても、中堅なんだよね、俺の評価って。
無難、安全パイ、可もなく不可もなく、そんなんばっかしでさ。
力なくそう言って、自嘲気味に笑ってみせる文化人気取り31歳。
だが視線の先の机の上に無造作に投げ出されていた携帯には、
某からあげが声優を務めたことでも有名な、電波JKアニメのキャラクターストラップがぶら下がっている。
なんかかっこいいことを言っているようで、隠れオタなのはバレバレ愉快。
( ・∀・)いい訳みたいで嫌なんだけど、さ……。
ξ゚听)ξ……。
次にお前は『俺には才能が無い』と言う。
( ・∀・)……結局、才能無いんだろうね。最近やっと分かったんだ、それが。
そら来た。テンプレ過ぎるだろ。
( ・∀・)だからさ、もうやめようと思って。なんか悲しいじゃん?
良いと思ってるのは結局自分だけでさ、道化もいいところだよ。
ξ´・_⊃・)ξ……。
思わず、ソッカー、と応じたくなる話の内容である。
あーそう。英語で言うとass hole.
飯食えてるだけ贅沢なんじゃね。
( ・∀・)この仕事が好きなだけに、余計つらいんだよね。地獄だよ、はは……。
まあホラ、あれだ。人間、向き不向きってあるからさ。そういうことも稀に良くあるよね、うん。
ところでお昼ごはんトンカツとラーメン、どっちがいいと思う?
( ・∀・)……。
それきり押し黙ったまま、神経質そうに髪をかきあげ、なにやら黄昏る文化人気取り31歳。
……気まずいな、だれかなんか喋れし。みんなでお昼ごはんの献立でも考えたら? 楽しいよ?
(´・ω・`)……人の評価は大切よねん、それは確かにそうだわねぇん。
重苦しい沈黙に身を任せること数分、静かに話を聴いていたオカマが、ようやく口を開いた。
やっとか。よし、いけ。
でもね、といってオカマは続ける。
(´・ω・`)あなた、自分の仕事にプライド持ってやってるわけでしょうん?
( ・∀・)それは……まぁ……。
(´・ω・`)じゃ、それで良いじゃないのん。
( ・∀・)……だけど、
(´・ω・`)人から認めてもらうのは確かに大切よねん、でもそれだけじゃないでしょう?
最後は結局ねぇん、自分が納得できるかどうかだと、私なんかは思っちゃうわよぅ。
( ・∀・)自分が、納得……?
(´・ω・`)そうよん。だって、自分のことが一番よく分かるのって、自分だからぁん。
( ・∀・)……。
(´・ω・`)本当のところなんか、自分以外には分からないんじゃないかしらぁん。
人の評価は社会的な価値であって、自分の価値とはまた違うのよん。それが分かるのは、自分だけなのよぅ。
( ・∀・)俺の……価値……。
(´・ω・`)もちろん、人の評価がすべてと思って、それを自分の価値だと納得できるなら、それはそれでいいのよん。
でも、そうじゃない人もいるでしょぅ?
( ∀ )俺は……。
(´・ω・`)自分が誇れる仕事をしている人、99%で満足しないで、
100%の納得が出来る仕事をしている人のことを、一流って言うんだと思うのん。
あなたは違うのかしらん?
( ∀ )……。
(´・ω・`)……足りないのは、才能じゃなくて自信だと思うわよん。
( ∀ )……。
……よく口の回るオカマである。
でもさ、それって結局自己満だよね。いや、別にそれで何が悪いって言われれば何も悪くは無いけれど。
でも全員が全員、アンタみたいに胸張って自信満々に生きられるわけじゃないじゃないじゃないじゃn
( ・∀・)……ハハ、まいったなぁ。
そうつぶやいて、文化人気取り31歳が俯けていた顔を上げた。びっくりするからいきなし喋んなし。
( ・∀・)才能じゃなくて自信、か。はは……そうか。
(´・ω・`)そうよぅ。うふふ。
( ・∀・)……確かに、あんたの言うとおりかもしれないな。
俺はただ、自身がなかっただけなのかもしれない。
……あー。ブルータス、お前もか。
はいはい、所詮お前はそっち側の人間だ
よ。
なんで 前らは、揃いもそろって……こ
お う、……。
……別に。
……いいけ さ
ど
(´・ω・`)……ツンちゃん?
ξ゚听)ξ……んあえ?
……ああ、いかんいかん。文化人気取り31歳の自分語りが長すぎて、ついついぼんやりしてしまった。
(´・ω・`)……大丈夫かしらん?
ξ゚听)ξああ、すいません。なんでもないです。
なにやら若干気分が悪い。貧血かしら、朝ごはん食べなかったからなぁ……。
早く仕事終わらせて、昼飯食べに行こうぜ。
(´・ω・`)……。
( ・∀・)……ま、手間かけて悪かったね。何か、人に話してみたらスッキリしたよ。
もう一度よく、考えてみようと思う。自分のことについて。
あーそう。単純な野郎である。
( ・∀・)……良かったらさ、アンタの仕事、見せてくれないかな?
(´・ω・`)うふふ! もちろんですわよう!
……ここでやんの? PCとか大丈夫なの? どかしたほうが良くないか?
(#´・ω・`)じゃぁ……いくわよおおおおうっ!!!
……まぁいいや。壊れたら壊れたで飯ウマすればいいし。
とりま早く済まして帰ろう。
(#´゚ω゚`)らぶりいいいいいいいいッ!!!!
( ・∀・)!! ……おお。
(#´゚ω゚`)ちゃあみいいいいいいいッ!!!!
( ・∀・)すげぇ……。
ξ゚听)ξ(……うるさいな、こいつ)
(#´゚ω゚`)ばあああああいばああああいッ!!!!
( ・∀・)……いけええええええ!!!
ξ゚听)ξ(……耳元で怒鳴るなし)
すばやく壁に向かって打ち出された拳は、ちょうど打突面だけを綺麗にくりぬき、穴を穿つ。
いつものような派手さや、豪快さは押さえ気味でありながら、しっかりとした存在感のある仕事っぷりである。
そういえば若干膨らみかたがこじんまりとしている。器用なことしやがるなコイツ。
バシュウウウン(((((((´・ω・`)))))))……ふぅ。
( ・∀・)……これが、壁殴り代行……。
文化人気取り31歳がそれを見て、感嘆の呟きを漏らした。
パチッ(´・ω-`)^☆ うふふ、今日も絶好調ねん♪
( ・∀・)……さすがだ。
ξ゚听)ξ……。
なにがだ。
大丈夫か、お前。もう少し考えて生きな?
( ・∀・)……ありがとう。おかげでスッキリしたよ。
(´・ω・`)いーえん! じゃ、ツンちゃん領収書お願いねん♪
ξ゚听)ξぁ、はい。
やれやれ、ようやく終わりか。
玄関先まで私たちを見送りについてきた文化人気取りが、突然思いついたように言った。
( ・∀・)その……ムーヴィでもドキュメンタリーでもいい。
もし良かったらいつか、あんたたちをモデルに、作品、撮らせてくれないかな?
(´・ω・`)あらぁん、うふふ! もちろん喜んで♪
( ・∀・)はは! 良かった、ありがとう。
アンタも大概物好きだよ。
(´・ω・`)ありがとうございましたぁん! またよろしくねぇん♪
ペコリξ゚听)ξ……ありがとうございました。
はい、じゃ、頑張って。
息も絶え絶えといった様子のマーチのエンジン音に抱かれながら、
私はただ黙って流れていく外の世界を眺めていた。
オカマがハンドルを握りながら、しっとりとした口調で言う。
(´・ω・`)……ツンちゃん、今考えてること当ててあげようかしらぁん、うふふ。
いきなりなんだコイツ。キモいからやめて欲しい。
そのセリフは※ただしイケメンに限るというやつでござる。
(´・ω・`)……自分に自信がある人はいいなぁって。才能がある人はいいなぁって。
……マジでやめろし。
(´・ω・`)私はどうなんだろう、って。とってもあんなふうにはなれないなぁって。
……やめろって、言ってるだろ。しつこい。
ξ゚听)ξ……。
黙り込んで返事をしない私に、オカマが優しく語りかける。
(´・ω・`)……大丈夫よう、ツンちゃん、本当は才能なんてそんなに大切なことじゃないのよん。
本当に大切なこと、なんだか分かるかしらぁん?
ξ゚听)ξ……なんですか?
(´・ω・`)前を向く、意思よ。意志の力こそが重要なのん。
ξ゚听)ξ……意思。
その言葉が、私の頭の中で、何度もこだまする。
(´・ω・`)そぅ……だから、ね。ツンちゃんは大丈夫、大丈夫よん。
そう言ってこちらを向き、にっこり微笑んだオカマ。
優しすぎるそのまなざしに、どうしてか私は、まともに顔があわせられなかった。
ξ;゚听)ξ!!? 所長っ!! 前!! 前見てっ!!! ハンドルっ!!!
(;´・ω・`)!? ちょまっ!!? あぶなっ!!!
ξ;゚听)ξ!!…………ふぅ。
(´・ω・`)……ふぅ。うふふ、これで分かったでしょう?
だから前を向くって、大切なのよん、うふふ。
ξ゚听)ξイラッ
うるせー馬鹿! ドヤ顔する場面じゃねーよ!
領 収 書
木原モララー 様
¥ 3, 000 −
但し キッチリショクニンコース
上記金額正に領収致しました
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